2011年1月31日月曜日

i7-2600K ついに来たる

先日秋葉原で手に入れることができなかったi7-2600Kが手に入った!Sandy BridgeはSSEの拡張命令AVXを持っていて、ベクトル化が更に高度に進んだ数学ユニットを利用できる。面倒なのは、FORTRANコンパイラとして、以前のIFCが使えなくなってしまったこと。ただし、改良されたIntel Composer XEというのを使えばよいらしい。一部に「驚異的な」結果が報告されているので、without OCでも面白そうだ。その上、OCで上を探っていけば、まさにNext Levelのパフォーマンスが体験できるかもしれない。

実は、P67/H67を積んだm/bをまだ買ってないのである。よく調べて、近いうちに購入する予定。次回に続く。

Core i7-875Kのベンチマーク (その3)

余分なグリスを拭って、薄く平らにまんべんなく塗布した状態でi7-870, i7-875Kのベンチマークテストを行った結果、両方とも小数点切り捨ての値で一致した(fMark=59)。つまり、両者ともにデフォルトでは等価なCPUということが示された。このときの、CPU温度はだいたい45°前後になっていた。ノーマル周波数は2.93GHz, TB周波数限界は3.20GHzとなっている。

いよいよTBのOCに入る。まずは倍率を22xから28xに上げてみた。あまり上げすぎると温度上昇が激しくなるかもしれず、TBがうまく作動しないかもしれない。そこで、30xよりちょっと下目でまずは試そう、という訳である。が、BIOS付属のCPUモニターでみると、この入力に対し、システムはTBを30xに自動修正するように反応した。このときのCPU温度はおおよそ49°前後、そしてTB周波数限界は4.0GHzとなった! この状態で、Fedora 13を立ち上げ、Intel Fortran CompilerでfMarkのベンチマークを実行した。

その結果はfMark=65であった。

ついに最速記録は(半年ぶりに)更新された。ちなみに、今までの最速はi7-870で出したfMark=59。

OverClockがどこまでいけるのか、まだ詳細を詰めてはいないが、かなり期待できそうだ。とりあえず、目標は70を超すこととしよう。

2011年1月30日日曜日

Core i7-875Kのベンチマーク (その2)

前回のレポートで、「i7-875Kはi7-870よりデフォルトで遅い」と書いたが、間違いであったことをまずは最初に訂正しておく。詳しいことは後述する。

まずは、今日BIOSのアップデートをしたので、そのメモを書いておく。先日ベンチマークをしたときのBIOSはバージョンF2で、TurboBoostの「限定解除」に対応してなかった。そこで、限定解除に対応したF8にアップデートして875Kの実力を引き出そう、というのが目的。使用したのは、Q-FlashというGigabyteのシステム。マザーボードのBIOSの中に組み込まれているプログラムで、BIOSに入ってからF8キーを押すとQ-Flashに移行できる。ENDキーを押しても起動できるのだが、ちょっと苦労したので、使わないほうがよいだろう。

今回使用するGA-P55-UD3RのBIOSはGigabyteのホームページからダウンロードできる。バージョンF8のものは、motherboard_bios_ga-p55-ud3r_f8.exeという名前がついていて、これはWindowsの実行形式のファイル。しかし実際は圧縮ファイルになっていて、実行するとファイルがいくつか展開される。そのうちのp55ud3r.f8というファイルだけがBIOSアップデートに必要になる。最初はFDに書いてみたのだが、FDを最近あまり使っていないせいか、いろいろ忘れてしまってなかなか先に進まない。(というか、そもそもFDD自体がマザーボードにつながってなかったり、FDDケーブルがなかなか見つからなかったり、さらには壊れてないFDを物置から探し出すのに苦労したり、と「ステージ0」のところで苦労している内に、嫌になってしまったのである。)

そこで、USBメモリを使うことにした。USBメモリにp55ud3r.f8をコピーし、USBスロットに差込む。そのまま、リブートをかけてQ-Flashを起動する。するとFD以外のデバイスが認識される。HDD-xxxxxxとか行った感じの識別ラベルが出るので、それを選びp55ud3r.f8を選択する。後は自動的にBIOSの書き換えが進行する。再起動すると、BIOSはF2からF8にアップデートされていた。(注意:Endキーを押して直接Q-Flashに入ると、FDDしか識別してくれないことが多く、いろいろ悩まなければならない。)

BIOS設定を見てみると、特に大きく変更されたところは無いように見えた。ちなみに、i7-870を挿して倍率変更しようとしても22x以上にすることはできなかった。(大きな数字を打ち込んでも、自動的に戻ってしまう。)

i7-870, 875Kと順番に検査するとき、シリコングリスの量が、やっぱり、ちょっと多いな、と感じたので、指で2カキほどグリスを拭ってやった。すると効果てきめんで、88度に上がっていた875Kの温度が、45度近くまで下がった!TBを動かすには温度が大事な因子となる。つまり、作動に余裕があればあれほどターボがかかる設計になっているから、低温で作動させるのが速く動かすためには大切な条件となる。どうやら、先日の「がっくりの結果」は、私のグリスの塗り方の問題であって、875Kの問題ではなかったようだ。Turbo Boostテクノロジーには、排熱処理がとても大事で、グリスの塗り方も、塗りたくりすぎず、偏らず、薄くまんべんに塗る、という基本を忠実に守る必要がある、と学んだのであった。

結果へ続く。

「宇宙論入門」を読む

佐藤勝彦著、「宇宙論入門 —誕生から未来へ」(岩波新書、2008年11月)

多忙で激務の東大の先生が「書いた」本。あとがきによると、口述筆記に加筆したものらしい。「サトカツ」さんが本気を出したら、もっといい本が書けるはずとは思うが、忙しくてそんな時間は無いはず。だから「この程度かな」と納得はできないことはないが、ちょっと不満に感じるのも確か。

現役の研究者による「入門」は、最新の知識の紹介という点からすると、貴重な書物だ。しかし、それは同時に、万人向けの新書の形態にはそぐわない、ということも意味すると思う。背景やら基本知識を、面倒くさい方法で「一般的に」記述する必要が生じるからで、肝心のテーマまでなかなかたどり着けない。

この本は、そんな「回り道」をしている最中に、基本的な事柄に関する記述が不明瞭になってしまって、本筋に至るまでに、読者に「なにそれ?」とか、「本当に?」など、疑心を植え付けてしまっている可能性がある。例えば、真空の相転移の説明で、超伝導をひきあいに出しているが、実は前者は一次であり、後者は二次であるから、かなりその現象に違いがある。また、超伝導の基本理論はBCS理論であり、ギンツブルグーランダウ理論はどちらかというと現象論に片寄ると現代物理では思われているのだが、本書では後者の理論しか紹介していない。むろん、こういう細事は最新の研究には直接は関係してこないから、多少粗い記述であっても結論は揺らがない。しかし、せっかく啓蒙書をかいているのだから、基本概念については、初学者や素人の目を開かせてくれるような「ああ、そういうことなんだ」とか「その意味初めて分かった」といった含蓄ある記述を期待したいものだ。そういう意味では、急いで要点をまとめた「現役研究者らしい」本になっていて、岩波新書には合わない感じがした。サトカツさんが引退してから書く本に期待したい。

役に立った情報は本書の後半に多い。特にWMAPの成果についての紹介は面白かった。例えば、

  1. WMAPはラグランジュポイントのL2に位置すること。これは月軌道の向こう側だということ。
  2. WMAPによって宇宙論のパラメータのうち3つが決まったこと。(ハッブル定数、暗黒物質とバリオン密度を合わせた「物質」密度、そすて暗黒エネルギー密度。)これをルメートル模型に代入すると宇宙の年齢が137億年と決まること。
  3. 宇宙背景輻射が完全には等方ではないことから、インフレーション理論が正しそうだということが示されたこと。
「宇宙論」といっても、結局は「膨張宇宙モデル」につきる。その中に、ビッグバンがあったり、加速的膨張があったり、宇宙項(暗黒エネルギー)があったりするから、ある意味すごく単純な分野だといえる。ただ、宇宙論の面白い点は、物理学の様々な結果を寄せ集め、総合的に適用して、理解しようとする点。プラモデルの組み立て+改造にちょと近い感じの楽しさを感じる。

2011年1月28日金曜日

Core i7-875Kのベンチマーク

秋葉原に行って来た。Core i7-2600Kは残念ながら入手できなかった。そこで、Lynnfieldのi7-875Kを購入してOverClockingしてみることにした。値段は結構する。3万円弱。

私の場合、OCの目的は、ただ単に高い周波数を出すことではなく、速い数値計算を実現することだ。なぜかというと、Turbo boostのついてるCore-iシリーズは、ノーマル状態の周波数を上げたとしても、TBのパフォーマンスが悪ければ、計算が遅くなる可能性があるからだ。たとえ4GHzで作動したとしても、計算速度が遅くなったんではまったく意味がない。

i7-875Kの「K」の意味ってなんだろう?誰しも思う疑問だが、ちょっとばかり調べると「周波数倍率がロックされない」ということらしい。しかし、発売当初に皆が戸惑ったように、そのロックとはノーマルの部分にかかるものなのか、それともTBにかかるものなのか?という疑問が湧く。どうやら後者であるということが、ここで報告されていて随分役に立った。

前回のベンチマークで、i7-860/870やi5-750が圧倒的なパフォーマンスを見せたのは、TBのおかげ、と結論づけた。またPhenom II x6が遅いのも、TBに相当する機能の弱さだと推論した。だからこそ、TBの制限を解除している「K」シリーズは、計算機屋にとって、なんとしてもチェックせずにはいられないデバイスだ。

今回使ったm/bはGigabyte GA-P55-UD3R。リリース直後の購入で、なにもしてないから、そのBIOS のバージョンはかなり古いはず。BIOS設定モードに入り、確認作業をまず行う。ノーマルの周波数設定はできるのだが、案の定TBがいじれない。CPUモニターを見ると、ノーマルは22Xにデフォルトで設定されていて、TBは24x前後を揺れている。最初シリコングリスの塗布に不備があり、CPU温度が88度になってしまったが、いい機会だと思い、そのままベンチマークをしてみた。fmark値にして40ちょっとという結果が出る。i7-870のスコアが60弱だったから、明らかに高熱のためTBが入らない状態になっている感じ。グリスを塗り直してから再度測定すると、温度は60度程度まで落ち、fmarkのスコアは52まで上がった。しかし、それでもi7-870の60弱には遠く及ばない。ちなみにHTを入れるともっとスコアは落ちた。TBの倍率を見ると25xの前後で揺れている。

この結果から言えるのは、どうも875Kはデフォルトで870より遅いらしい....ということ。 OCしなかったらこのCPUはまったくの詐欺だ。

仕方ないので、OC、つまりノーマルの周波数を上げてみることにした。25xを設定すると、3.33GHzに上がった。(26x=3.46GHzも大丈夫だった。)この状態でベンチマークをすると、fmark値45.8...なんだそりゃ?これは多分、周波数が上がったせいで発熱も上がり、TBできなかったのであろう。

以上より、手動でTB倍率を設定しないとアグレッシブなTBが実現できないことがわかった。Gigabyteのホームページで確認すると、875Kがリリースされた直後(2010年6月)に、F8にアップデートしている。これに書き換えればもう少し面白いことができそうだ。とりあえず、875Kをいじるのは、今日のところはここまでにする。

ところで、安くなったi7-870を昨年末に買っておいたのだが、忙しくて買ったまま放っておいた。今日はいい機会なので、875Kと同じ条件で、どのくらいのパフォーマンスが出るか試してみた。OCはせずデフォルトの22xに戻す。fmark値は58.4だった。875Kよりずっと速い!

まとめ:BIOSをバージョンアップして、TB倍率を上げてから再度測定するべし。
つづく

2011年1月26日水曜日

Intelの新型CPUリリースされる: Core i7-2600K

同僚からインテルの新型CPUの話を聞いた。今月出たばかりの、新アーキテクチャSandy Bridge.データ処理関係の命令が改善されている、と噂に聞いた。並列計算にもってこいのCPUらしい。なんとかして、i7-2600K(3.4GHz)を手に入れたい。(Kはクロック制限の無い、AMDでいうBlack Editionみたいなモデルを意味するらしい。)噂では、i5-2500K(3.3GHz)も入手が困難とか。明日、秋葉原に行けば、すべて分かる。

今回の特徴は、i3でやったように、グラフィックス関係の機能をCPU内に入れてしまうというもの。ゲーマーが飛びついているはずで、品薄になるのも頷ける。対応するマザーボードは、H67というチップセットを積んでいれば、GPUが動かせるが、P67のモノは動かせない。人気はどちらにあるんだろうか?

値段がべらぼうに安い!3万円でおつりが来るとか。本当なんだろうか!驚きである。

2011年1月25日火曜日

野辺山の電波望遠鏡

三滝の後、野辺山へ上った。長野県の中でももっとも寒い地域とはいえ、この日はそれほど寒くなかった。ここは開拓地で、牧場が多い。国立天文台の電波望遠鏡と八ヶ岳を一緒に写真に収めようと思ったが、八ヶ岳は雲の中にあった。きっと中は嵐なんだろう。

メインのパラボラは南西を向いていた。なにを観測しているのだろうか?もしかして、太陽?
左の長い雲の中が八ヶ岳。
シャトレーゼの工場直営販売のカフェにいった。もうすこし落ち着いた雰囲気かと思ったら、騒さいスキー場にある安っぽいレストランのような状態。がっくり。ケーキはおいしいが、コーヒーがだめ。夏もこんな状態では、ここは使えない。いっそのこと、清里まで出て「まきば牧場」にいったり、小淵沢のカフェにいってしまった方が、ずっといいだろう。

それにしても、日本(特に長野?)のスキー場では、なんであんな場違いな音楽を大音量で流すんだろうか?アメリカやヨーロッパだと、もっと静かに雪の風景を自然に楽しむことができるんだが。とにかく、シャトレーゼのカフェは全部残念。

2011年1月24日月曜日

三滝の氷柱

厳冬の今だからこそ、北相木の三滝へ行く。例年は節分直前辺りがベストだったと記憶しているから、ちょっと早いかもしれない。かの滝を訪ねるのは、小学校の時以来ほぼ30年ぶり。地球温暖化の影響で、昔ほど見事には凍ってはおるまい、とあらかじめ予想しておき、落胆しないよう心構えして置いたが、それは杞憂だった。

小海の駅のところで千曲川を渡り、ジュラ紀の地層が広がる山中地溝帯の奥山に分け入る。見事な節理の岩崖が左右に迫る。その向こうに、山水画でみるような岩山が見えた。きっとあの下が滝壺だろう、と思いつつ、一歩間違うと崖下転落となるような、細い崖脇の道を車で上っていく。大きな駐車場が突如眼前に現れ、驚くと共に安心した。そこから、よく整理された階段にて斜面を昇る。昔と違って観光地になってしまったようだ。

2月の厳冬の斜陽を浴びて、凍えながらこの長い山道を時間をかけて登ったのは遠い昔のことになってしまった。今日の三滝(大禅滝)は次のような状態だった。

7、8割といったところだろうか。上の方ではまだ滝が流れている。その水が氷の中に入り込んで流れていたので、まだ完全には凍り付いてないのは明らか。昔は、この滝の中にテラスのような隙間が空いて、その中に歩いて入れた。青みはもっと強くて一面氷の世界だったと思う。温暖化の影響があるのだろうか?しかし結論を出す前に、もう一度、節分の前頃に再訪して確認する必要があるだろう。とはいえ、山中に突然、この氷の巨大な柱が現れると、圧巻の風景だった。

ちなみに、小禅滝は全面氷結していた。

2011年1月23日日曜日

「図説 天体望遠鏡入門」を読む

神保町の明倫館で買った古本だが、なかなか役に立った。特に、赤道儀の使い方は勉強になった。

先日、12センチの反射望遠鏡を購入したのだが、赤道儀が付属品に付いてきた。赤道儀の使い方がよく分からいまま、木星を見てみたのだが、なんて面倒な代物だというのが最初の感想。しかし、目視に頼らず座標で天体を探す方法をこの本で知って、「なるほど、これで暗い天体でもちゃんと写真が撮れるのか」と感心した。

天体の座標が網羅してある本が三省堂に置いてあったが、赤道儀を使った観測のための本だったことが、ようやく判った。

また自動追尾装置なしでも、手動で長時間露光撮影がなんとか可能であることも、この本で知った。ぜひ、試してみたいと思う。

「天体望遠鏡入門」田中千秋著、立風書房(1988年9月)

ダイヤモンドダスト

明け方はとても寒くて、金星の観察をあきらめる。土星は夜中に見えるようになったらしい。窓からみると、スピカと一緒に双子星のようになって輝いていた。明日の観測にまわそう....と、そのままベッドに潜った。

日が上る。今日も快晴、無風なり。青空が気持ちよい。きらきら光るものが空から降ってきている。久しぶりのダイヤモンドダストだ。

公式の記録では、軽井沢の今朝の外気温はー6度。実際にはー10度くらいいっているんじゃないか?暖冬だと思ったら、だんだん寒くなってきた。節分まであと10日あまり。今が寒さのもっとも厳しいところだと思う。これを乗りきれば春も近い。

2011年1月22日土曜日

新機材のテスト:M42 オリオン大星雲

久しぶりの信州。待ちに待った、新機材による天体撮影のテスト。まずは、T-ringを用いた望遠鏡撮影を試みる。目の前に上っているオリオン座のM42から撮影してみることにした。

まずは、30秒の露出で、RAW形式のファイルを画像処理したもの。いちおう、ガスらしきものは映っているが、星雲の形はよくわからない。色も真っ赤という感じではなく、なんとなく赤っぽい感じ。M43(写真上左部の青っぽい2つの星のある辺り)は映ってない。

jpeg形式の同じ写真を処理したのが、次のもの。少し白っぽくなるが、肉眼で見たときにかなり近い色合い。ただ、これではまだ鳥の形には見えない。

新機材のテスト:アンドロメダ銀河

次に、アンドロメダ銀河を撮影してみた。同じくT-ringを用いて、カメラ(Canon EOS kiss F)と望遠鏡(Vixen POLTA AII A80Mf 屈折式の口径8センチ)を接続。露出時間は10秒とした。RAW形式のものはうまく画像処理できなかったので、jpegのみを掲載する。


肉眼で観察した感じによく似てる。でも、もっときれいに撮りたい!(後に撮った、多少ましになった写真はこれ。)

新機材のテスト:冬の大三角


今度は、望遠鏡からカメラを外し、三脚に固定して撮影する。望遠鏡で拡大しないので、長時間露出しても星の航跡が目立たない。また、広い視野で撮影することができる。手始めにオリオンの周辺を30秒露光で撮影してみた。
オリオン座周辺
なかなかよく撮れていて嬉しいのだが、実は、ファインダーを通してみると、一眼レフとはいえども、星が暗くなっててしまって、どこを向いて撮っているのかハッキリしなかった。今回はシリウスを手がかりに方角を決めたので、思いのほか巧い具合に、写真の真ん中にオリオンを持ってくることができたが、結構難しい撮影だと思った。

写っている星座を下にまとめてみた。今年の干支、ウサギが写っている。

冬の第三角、ウサギ座など

上の写真を画像解析すると、下のようになる。もっと暗い星も、実は記録されていたのであった!M42やバラ星雲が若干見え始めている。いっかくじゅう座がよく見えるようになったので、バラ星雲を見つけやすくなった。(とはいえ、まだこのレベルだとバラの形には見えないが...)

画像処理後



2011年1月21日金曜日

「ミクロな化石、地球を語る」を読む

技術評論社から、2010年11月に出版されたばかりの新しい本。科学啓蒙書。筆者は上野の国立科学博物館の研究者。顕微鏡で見るような微生物の化石の研究から、大昔の気候や地理に関しての理解を深めよう、という趣旨。たとえば、日本海や地中海は数千万年前は大きな湖だったことや、地球の温暖化と寒冷化の周期がどういう風に起きたか、などについて解説がある。

研究の道具は珪藻。殻が硅素(岩石やガラスの主成分)なので、生物が死んでも化石となって地層の中に残る。珪藻には淡水種と海水種があり、地層中での出現頻度によって、海になったか、湖になったか知ることができる。

珪藻はそれ自体が幾何学的な形をしていて、とても美しい。できれば、この辺りの話を数学的に掘り下げて解説して欲しかった。また、微化石の採集や分析、保存、記録のしかたなどについてもう少し書いてもらいたかった。化石の本というよりは、地学の本だと思う。でも、なかなか面白い本だと思う。

東京のカワセミ

このところ連日カワセミを見かける。昨日などは目の前に来てとまった。「2匹目のどぜう」を狙って、今日はカメラをもって出てみた。さすがに目の前という訳にいかなかったが、カワセミの鮮やかな青色を撮ることができた。ちょっと嬉しい。今度はもっと大きく撮りたい。

そういえば、この間カナリア(オウム?)の群れを見た。明るい緑色で、尾羽がオナガのように長い。3匹の群れだった。東京の冬はあったかいから、熱帯の鳥も生きのびられるんだろう。

うみほたるにて

先日、館山に化石/貝殻採集にいった。ちょうど昼飯の時間にうみほたるについた。残念ながら、チマキの屋台はやってなかった。「あさりまん」はあまりすきじゃないので、結局なにも食べず、もっぱら風景を楽しんだ。

よく晴れていて、富士や東京、横浜の景色なぞも見えた。Tokyo SkyTreeもみえた。羽田に行く飛行機、横浜港に向かう船など、東京湾は忙しい。それにしても、天体観測用に購入したEOS kiss Fの表現力はすばらしい。
海ほたるからみた富士と横浜みなとみらい
日の光がきれいだが、この太陽光線の角度を測ると日付が計算できるのだろうか?

2011年1月19日水曜日

T-ringによる撮影

望遠鏡をカメラのレンズとして使用すれば、コリメート法よりもよい撮影ができるはず、と思い、Vixenから発売されているCanon EOS専用のT-ringというアタッチメントを購入した。このアタッチメントは、レンズを外したカメラの本体と、接眼レンズを外した望遠鏡の鏡筒をつなぐ、ねじこみ式の接続部品である。さっそく、今日の月(月齢14.1)を撮影してみた。

生のデータでみると、コリメート法でとった像より随分小さい。上の写真は、画像処理によって拡大し陰影を強調してある。その結果、ピントが甘くなっているように見える。細部の詳細がコリメート法に比べて落ちる。とはいえ、撮影とても快適で、ものの10秒で3枚近くも写真をとることができた。手ぶれの心配はほとんどない。

像が小さくなってしまう原因は明らかで、それは接眼レンズを取り去って対物レンズだけで写真をとるからだ。細部を研究するには、手ぶれと戦いながらコリメート法でやった方がよいだろう。ただ、拡大筒とかいうアタッチメントが別売りであるらしい。これに接眼レンズをつければ、T-ringで接続しても、大きく写真が撮れるらしい。次はぜひ試してみたい。

2011年1月18日火曜日

月の写真

月を撮ってみた。(月齢12.1)8センチ屈折望遠鏡を使った、Canon EOS kiss Fによるコリメート撮影。シャッタースピードは1/100秒。この日の月は-11等、さすがに明るい。


「ウサギ」の後頭部の後ろにある、危難の海がよく見える。クレーターは、ティコ、コペルニクス、アルキメデスなどがよく見える。Tychoの放射線(Ray)が美しい。ウサギもよくわかる。クレーターは、影と光の境界辺りのものが、特にきれいにみえる。拡大して、その辺りをよく見てみることにした。


赤道よりちょっと下にある、虹の入り江の近傍に見える黒いクレーターはプラトーだ(ギリシャの哲学者だっけ?)。雨の海の上部にある灰色のクレーターはアルキメデス。(偽造貨幣の選別という難問に苦しむも、風呂に浸かっているときに閃き、ユーレカ!と叫んだことで有名な数学者。)真ん中の白くて大きなクレーターはコペルニクス(地動説!)その真下の小さな黒いのはケプラー(天体の楕円軌道、面積速度一定の法則、周期と楕円長半径の関係式の、いわゆるケプラーの法則を発見した数学者、天文学者)だ。識別できた主なクレーターは下の図にメモを入れてみた。


とにかく、一眼レフと望遠鏡の組み合わせの、驚異的な撮影能力に感心した。ピントをもうちょっと合わせた方がいいとは思うが、多分手ぶれの効果もあるはず。

2011年1月17日月曜日

木星の観測写真:はじめの一歩

Cyber-shotで点状の恒星を写すのみならず、惑星や星間雲、そして銀河をもっと大きく写してみたい、というのは天文ファンの共通する望みだろう。私も、木星の大気の様子をなんとか写真に収めてみたいと思い、ついにデジカメ一眼レフを(中古で)購入してしまった。昔のフィルム式一眼レフの望遠レンズが再利用できるかもという打算から、同じキャノンのEOSシリーズを選択。その中でも最安値ということで、EOS kiss Fという機種にした。2008年6月発売だという。

ガリレオ衛星の時と同じように、Vixen POLTA A80Mf屈折望遠鏡を用いて、コリメート撮影を試みた。今回は一眼レフなので、直接カメラのファインダーから風景が確認できる。つまり眼球の感度で天体に焦点を合わせることができるのでやりやすい。とはいえ、手ぶれとの格闘は割けられない。手ぶれを抑えるため、そして木星の光量を制限するため(木星はとても明るい星なのである)、1/100秒にシャッタースピードをセットして、シャッターを切る。液晶モニタで確認すると、小さな明るいポッチが写っているので、なんとか成功。これをコンピュターで画像処理したのが次の写真。
木星(18:09頃)
やったー!ってなもんである。木星大気の層状の模様がわかる。オレンジ色っぽい太いのが一つと、薄いのが一本ちょっと。大赤斑はないように見える。これで、ガリレオ衛星も写っていれば最高なんだが、露出時間が異なるので、画像の合成が必要になるだろう。また、手ぶれを防ぐために、カメラの三脚とレリーズが必要になると思われる。

ちなみに、もっとレベルの上の人たちの写真を見ると、今、木星はこうなっているそうだ。大赤斑はしばらく消失していたらしく、今でもかなり薄い色になっているようだ。「薄いのが一本ちょっと」と書いたが、その「ちょっと」の部分が大赤斑になっているんだろう、きっと。

ガリレオ衛星の撮影

Cyber-shotとVixenの屈折望遠鏡A80Mfを組み合わせて、木星の衛星(ガリレオ衛星)の撮影に挑んでみた。高級な機材がないので、接眼レンズを覗き込んで撮影する「コリメート撮影」を採用した。

最初はノーマルモード(露出時間は1秒以下)で撮ってみたが、明るい木星しか写らなかった。が、これだけでも、木星が惑星であることが確認できる。つまり、点として写る恒星と違って、円盤状に写る。次に、Cyber-shotにある夜景モードにして、20秒ほどの露出撮影をする。暗いガリレオ衛星もこれなら写る可能性がある。しかし、同時に手ぶれとの闘いにもなる。この日は、この冬最高の冷え込みだったが、息を止め、身動きせずに、カメラと望遠鏡を支えつつ、何度もシャッターを切る。パソコンで画像処理すると、手ぶれがひどく写真としては駄目なものばかり。しかし、その手ぶれの航跡を見るとはっきりとガリレオ衛星が浮かび上がっている!(手ぶれはどうしても出てしまったが)一番ましなものを、記念すべき最初の観測写真として下に掲げておこう。

ガリレオ衛星と木星(午後8時34分ころ)
上の2つは、上よりガニメデ、エウロパ。木星のすぐ下にあるのがイオ、そして下方で少し暗めに写っているのがカリスト。木星の直径を基準(「1」とする)として測ると、衛星間の間隔は、ガニメデより1.2:2.7:0.7:3.0だった。目測と違って、写真に撮ると物差測定できるので、より正確な数字が出せるのは大きな利点だ。

2011年1月16日日曜日

デジカメで天体撮影

なかなかうまくいかなかった天体の写真撮影だが、やっとコツを掴み始めた。

まずは、昨年、霧ヶ峰で、石の上に落として壊してしまったSONY Cyber-shot DSC-S730による撮影を試みた。このデジカメは、霧ヶ峰の落下事故以降、液晶に画像がうまく映らない。とはいえ、シャッターを押すと写真は記録されるので、完全に壊れているというわけではないらしい。が、CCDの画像を内蔵モニターに映せないので、実用的にはかなり不便だ。このカメラは、数年前のクリスマスの日、イギリスのLeatherheadという町で購入したのだが、「ヨーロッパモデルのため日本には部品がないのでは」と修理に二の足を踏んでいる。

しかし、天体写真の場合、特に恒星の写真を撮るときは光量不足になるので、液晶モニターにはどうせ何も映らない。だから、この壊れかけのデジカメは、まさに恒星撮影専用カメラとしてうってつけだ、ということに最近気がついたのである。(参考になったのはこの記事。)いろいろ撮ってみたが、生の写真をみると真っ黒で何も写ってないようにみえる。

年末にフィルム式一眼レフで天体撮影を試したとき、カメラ屋さんは「失敗ですね」といって、ほとんど現像してくれなかったが、普通に現像したら、どれも真っ黒だったからに違いない。しかし、フィルムを明かりに透かしてよくよく見てみると、ちゃんと星らしい点々がちゃんと映っていたから、「写真屋のプリント技術が低いのが悪い」とフィルム式には見切りを付けた。ということで、またデジカメに戻ったのだった。

デジタル写真は、画像処理がソフトウェアでできる。これが天体写真をデジカメで撮る最大の利点だと最近気がついた。MacのiPhotoで簡単な画像処理ができるが、その「シャドウ」値をいじった時「奇跡」が起きた!真っ黒の画面から、恒星が2、3個浮かび上がって来たのだ。
オリジナルの画像(真っ黒)

画像処理したもの(カシオペア?と電線が浮かんで来た)

2011年1月12日水曜日

MacBook Airを使って2ヶ月経った

MacBook Airを使い始めて2ヶ月経った。使ってみて気がついたことがいくつかある。

良い点:
  1. 「HDDが無い」という事の意味が初めてわかった。こんなにも静かで、ファイルアクセスが速くなるとは。起動の速さ、スリープからの復帰の速やかさには驚かされる。SSDは冷却ファンが不要で静音が可能であり、アクセスも「回転するまで待たされる」みたいなことがないため、直接ターゲットのアドレスに辿り着けるから速いのだろう。この点だけでも、MacBook Airは(PowerBook G4やDynabook ss RX2に比べて)満足できる。
  2. 結局、軽くて薄くて持ち運びしやい、というのは宣伝通りで満足。Dynabook ss RX2もいいんだが、ちょっと厚みがあるのが(Airに比べると)気にかかる。
  3. やっぱりアルミ筐体はデザイン的に素晴らしい。Dynbaook ss RX2筐体のプラスチックは安っぽく見え、ちょっと恥ずかしい感じがしてきた。
  4. 電源供給部分の接続が磁石になった。これはとてもいい!PowerBook G4の電源ジャックは、折れやすい、潰れやすい、壊れやすい、と散々な評判だった。デザインもコンパクトになり、丈夫になった感じがある。
悪い点:
    1. 学会で知り合った人から、「システムが落ちやすくないか?」と聞かれた。彼も、同じ新型のMacBook Airを最近購入したそうだが、特に、MS Officeとの相性が悪いそうだ。実は、私もOffice2011を購入して使用中だ。MS wordはあまり使わないが、Excelはよく使う。しかし今のところ問題は「ほとんど」ない。(一度落ちただけ...)Powerpointはまだ使ってない。(keynoteを使う予定。)MacBook Airのシステムは落ちやすい、というのは別のルートの噂でも聞いたことがある。真偽のほどはわからないが、ちょっと気になる話ではある。
    2. DVDが外付けなのはときどき問題となる。一度、出先で必要になった時、外付けのDVDを持っていくのを忘れてしまい、不便さを感じた。とはいえ、いつも外付けドライブを持ち歩くのは厄介だ。仕事の内容が定まらないようなときは、Dynabookをもっていくようにしている。
    3. Ethercableを差し込むとき、中間にUSBへの変換ケーブルが必要となること。これも、肝心なときに持ってきてない、ということが起きた。全部無線接続にしようとしても、スピードが欲しいときはやっぱり有線を使いたい。また、東急インなどで、有線が必要になるときもあるだろう。忘れたらアウトだ。
    4. 音声出力の反応が遅い?たとえば、Ear speakerのジャックを差込んでも、しばらく内蔵スピーカーから音が聞こえたりする。
    5. Ctrlキーの位置が嫌い。Shiftキーの上にあるのは正直言って最初辛かった。だいぶ慣れたけど。
    結論は、「値段からみてとてもよい買い物をした」である。買って正解だった、というのが今のところの実感。最近は、このブログもMacBook Airから編集している。写真の管理、メールもAirに移行してしまった。正直なところ、iPod touchよりよく使っているかも。

    2011年1月11日火曜日

    大磯にて化石採集

    大磯に行った。まずは吉田茂邸。庭木の剪定作業をしていて、今日は中には入れなかったが、海岸沿いの高台の斜面に張り出す、英国風のConservatoryからの眺めはきっと抜群だろう。大きな白富士、そして間近に青い太平洋が見えるはず。この屋敷の脇を流れる川伝いにしばらく行くと、海岸に出ることができる。

    血洗川という物騒な名前の川の河口近くに、大磯層と呼ばれる凝灰岩風の堆積岩の露頭が砂浜から顔を出していた。貝、サメの歯、クジラの骨などの新生代の化石がここから出ると聞いて、久しぶりの化石採集を存分に楽しむことにした。

    昨年の千葉以来、日本に帰国して3度目化石採集となる。英国にいたときは毎週土日に採集に行っていたから、それに比べるとかなりペースが落ちた。日本の採集場所は規模が小さく、すぐに荒れてしまう傾向がある。それを防ぐためには産地がよくわからないのが良いこともあるが、アマチュア研究家にとっては、あまり情報が出てこないのはちょっとつらい。幸い、大磯のこの場所に関してはかなり有名なようで、いろいろと情報が手に入って助かった。

    天気は素晴らしかったが、西北風がちょっと寒かった。とはいえ、信州のそれと比べれば、まったく問題無し。釣り人は結構いたし、トレーニングで走っている若者、散歩している老夫婦、たき火している親子など、さまざまな人が様々に楽しんでいた。東京からわずか30分のところに、こんな素晴らしいところがあるとは驚いた。吉田茂が家を作るはずだ。

    今日は、二枚貝と巻貝の化石を採集した。貝殻が方解石に置換されているものがきれいだ。しかし、ほとんどの化石は保存状態がよくなく、掘り出すと、すぐにぱらぱらと崩れて壊れてしまった。きれいなサメの歯が出ることもあるようだが、結構石を割らないとだめだろう。今度はコーミングで探してみようと思う。Seatownで絶大な力を発揮した方法である。

    2011年1月7日金曜日

    月落烏啼霜満天

    寒い一日となった。最高気温が0度とは人を馬鹿にしている。夕方、三日月が西の山に沈むのをみた。地球照が美しい。峠の向こうの東の空にはオリオンや双子など、たくさんの星が輝いて見えた。カーテンを開けて外を覗くと、道脇に停めた車が、霜で真っ白となって街灯に照らされていた。

    月落烏不啼、霜満天而成星
    (月落ちて 烏啼かねど 霜天に満ち 星となる)

    正月のにわか覚えの百人一首のひとつも添えておこう。
    かささぎの渡せる橋におく霜の 白きをみれば夜ぞ更けにける
     なるほど、こちらの方が日本の風景にあう。私の場合、「橋」を「車」に置き換える必要があるが、それでは絵にならないから、けふはいぢらず、そのままにしておこう。
     

    グラスマン数のデルタ関数

    グラスマン数の復習をやる。

    グラスマン数のデルタ関数は、指数関数とその積分で定義される。でも、この指数関数をテイラー展開すると、2次以上の項が消滅してしまう、というのが特徴。しかも、その線形表現が「厳密に正しい」と来ているから、ちょっと調子が狂う。計算の末、δ(x,x') = -(x-x')、ただしx, x'は Grassmann、となるのをみると失笑すること間違いなし。

    もう一つ、調子が狂うのが、積分の中の、デルタ関数を置く位置。反交換するということ、デルタ関数が線形だということから、やたらな位置におけない。デルタ関数は被積分関数の先頭にもってきて、かつx’について積分しないと、デルタ関数の役割を果たさない。初心者は(自分のこと)、このミスをよくやりそうな感じがするので、要注意かも。

    2011年1月6日木曜日

    梅の花

    国分寺崖線にある、とある文人宅跡の公園へ行く。この庭には湧泉の池があって、昔の武蔵野の風景をわずかに残している。周りには大きな畑もまだたくさん残っていて、散歩していて心地よい。その畑の一角に梅林があった。まだ正月だというのに、白い梅の花が咲いていた。東京の冬は本当に短い。

    2011年1月5日水曜日

    冬の霧ヶ峰

    冬の霧ヶ峰にいってみたが、楽しく散歩できた、というのは驚きだ。暖冬ではないか?積雪は多分30センチ以下。もちろん風景は真っ白だが、凍えるような寒さではないし、足がはまって動けなくなるような積雪でもない。この時期の霧ヶ峰は、人を容易には寄せ付けないような、もっと厳しい世界であってほしい。それだけその美しさが増す訳だし。

    とはいえ、冬の霧ヶ峰は下界よりはずっと寒い。帰り道「陶仙房」という喫茶店に寄った。霧ヶ峰/蓼科に来るとよく立ち寄る店である。ここの主人は陶芸家も兼ねていて、彼の「白樺焼き」なる焼き物で供されるコーヒーや料理を楽しめる。当然焼き物自体の販売もしている。今回は陶器は買わず、暖かいコーヒー目当てに立ち寄った。ここは暖炉の薪がいつも燃えていて、それも目当てでもあった。

    霧ヶ峰の雪散歩の後だったので、おなかが減っていた。すでに午後3時頃になってはいたものの、豆入りドライカレー(ライスは黒米)を注文した。いつもはサンドイッチにするのだが、もう少し暖かいものがよいなと思い、初めてカレーを頼んでみた。これが大正解。とてもおいしく、体にもよさそうな、すばらしい高原の昼飯メニューだった。

    客は我々以外になく、薪の燃えるパキパキという音が響く。心持ちの落ち着く、よい昼飯であった。

    吹雪とて楽しき カレー待つからに。

    2011年1月4日火曜日

    New-year-day riot at HMP, Ford in West Sussex

    イギリスにいた頃、よくフリントのウニの化石を取りにいった。そこに行く途中、よく使った近道に沿ってFordという村がある。海に近い、この小さな村の中心部にはHer Majesty's Prison (HMP)、つまり英国政府の刑務所があった。赤煉瓦の高い塀の上に鉄条網が張り巡らされていて、ちょっと物騒な雰囲気はあったが、普段は概して静かな村であり、まさかそこで暴動がおきるとは思わなかった。

    報道によると、年末から年始に掛けて、刑務所内のアルコール検査を強化したという。それに対して不満を持った一部(といっても50人近くの囚人)が、2011年の正月、建物に火を着けたり、ガラスを割ったりして暴動を起こしたという。この刑務所の看守は常時3、4人しかおらず、囚人たちは自由に外からモノを持ち込んでいたよう。酒、携帯電話などが持ち込まれ、とんでもない状態だったらしい。

    現在、暴動は鎮静化したらしいが、こんなことが起きるんでは、あちこちにあるHMPの脇を通り度に警戒しなくてはならないじゃないか!村人がとても気の毒だ。そういえば、英国での部分日食を観測する一年前に住んでいたところにもHMPがあった。そこは女囚専門の刑務所だったが、自殺が多発するとかいう報道があって、問題視されていた。牧畜風景の広がる素晴らしい環境の中にあるそのHMPでは、どんな恐ろしいことが起きていたんだろうか?

    2011年1月3日月曜日

    武蔵野夫人を読む

    大岡昇平の「武蔵野夫人」という小説を読んだ。時代背景は終戦直後。狭山丘陵を含む、野川周辺に広がる「国分寺崖線」に沿った地域、すなわち多摩川の河岸段丘地域の描写が興味を引いた。大岡昇平は地理/地学に興味があるようで、細かい科学的/地理的な説明が、風景の描写の中に混じっていて、なかなかおもしろかった。

    人間の描写に関しては、話の筋が唐突に変わるきらいが目立つ。起きる事件に関しては、現代の観点からするとあまり目新しくない感じもある。ただ、50年ほど前の日本の姿を垣間みながら、そこに、それから50年後(つまり今)の日本文明の没落を予感させるような精神の荒廃、文化の絶滅などが記録されているように思えた。それを目の前に見ながら、自分ではどうにもできない焦燥感みたいなものを感じた。例えば、歴史書を読みながら「あーこんなことが起きなかったら良かったのに」と後悔する感じ、あるいはタイムとラベルしても目の前の事象に参加できず苛つく感じ、などに似ているかもしれぬ。

    戦争はそれ自体が無意味だが、最低でも勝ち目の無い戦争は全力で阻止すべきである。その代償は少なくとも100年は続く。沖縄、北方領土も、戦争を起こした日本が払わねばならぬ代償なんだろう。その苦しみを、戦争を起こした人間及びそれを許した人間が引き受けないのは、本当に卑怯だと思う。

    2011年1月2日日曜日

    金星と土星の観測

    大晦日の明け方3時頃、不意に目が覚めた。きっと、犬が寝ぼけて吠えたのだろう。ここひと月、挑戦し続けては敗北してきた早起き観測のチャンス到来である。寒さをこらえ、Vixen POLTA AII A80fMで明けの明星を見ようと庭に出た。

    細い下弦の三日月が東の空に上ってきた所だった。そのすぐ左脇に、明るく輝く金星があった。本当に明るい。(月以外で)全天一の明るさというだけのことはある。(あとで調べてみると−4.5等だった。)まずは、月を覗いてウォームアップとする。あまりにも細すぎて、月のどこをみているのかよくわからない。光と影の境界上に大きなクレーターが2、3見えた。一つは黒いもの、一つは白いもの。Tychoなんだろうか?地球照の中に大きな黒い海の領域が見えたが、どの海かはわからなかった。

    次いで金星を覗く。月と同じ下弦の三日月のはずである。が、大気の揺らぎと色収差が激しく、はっきりとその形を見分けることは難しかった。点ではなく大きさがあること、そしてそれは円ではないこと、の2点はわかるものの、それが半月なのか、三日月なのかは、今ひとつはっきりしなかった。

    金星と月のある領域から黄道にそって上に視線を移すと2つの明るい星がみえる。下にあるのがスピカ、そして上にあるのが土星だ。土星の輪を望遠鏡で見ること:それは、ど素人の至上の望みである。高校時代、地学部の観測会で、ハレー彗星と共に見せてもらったのが土星の輪であった。今回は自分の望遠鏡で望む分だけ、感慨が深かった。8センチの屈折望遠鏡では、とても小さくなってしまうが、輪の存在はくっきりとわかった。残念ながら、カッシーニの間隙、およびタイタンなどの衛星の存在は確認できなかった。この望遠鏡の限界だろう。それでも、黄金に輝くこの異形の天体を見ると感激せずにはいられなかった。2009年には輪の角度が0度になり、地球から見るとあたかも消失したかのように見えたそうだ。それから一年ほど経った今では輪を確認することは容易だが、その角度はまだ浅く、輪の厚みをみることは難しい。毎年観測してどのように傾きが変わるか調べるのは、きっと楽しいはずだ。

    ちなみにこの日の日没直後の頃、かなり明るく、長い線を引いて落ちる流れ星を続けて2つ、ペガサスの少し下に見た。あれほど長い線を引いた流星は初めて見た。最初のものは、首を右から左に回して流星を追ったくらいだ。

    2011年1月1日土曜日

    うさぎ

    英国の写真の中に次のような写真が含まれていた。
    期せずして時節にあった写真が出てきて、思わず笑ってしまった。日食を観測するちょっと前に、自宅の庭で撮影したものだ。この庭には毎日、ウサギが5匹、10匹とたくさんやってきては、芝生を食んでいた。大きな鹿が時折やってくることもあったし、Badgerもよく見かけた。野鳥もたくさん来たが、そのうちGreen WoodpeckerとThrashの写真が残っていた。

    Green Woodpecker

    Thrash
    そしてなにより、ここから見た夜空はとてもきれいだった。天の川は冬でも夏でも、いつでもよく見えた。ただ、夏の蠍座はほとんど地平線ぎりぎりにしか上らず、北斗七星とカシオペアはいつでも北の空に両方上っていた。北緯51度の夜空は異国の地に住んでいることを、強く感じさせたものだ。

    蠍座の見える星空、郷の空
    阿倍仲麻呂も似たような気持ちでいたのかな、と思ったものである。彼の唐への留学の最後の日に詠んだものと習った。
    あまのはら ふりさけ見れば春日なる みかさの 山に出でし月かも。