2015年5月27日水曜日

セシウム汚染の現状:ツバメの巣の汚染

ツバメの巣は、周辺の泥や藁などを材料とするため、セシウム汚染のレベルを的確に反映する。この点に気付いたのが、鳥類の研究では国内随一の実績をもつ山階鳥類研究所だ。その結果が、東京新聞などに最近掲載された。
東京新聞の記事より引用
図に示された、紫色の地域がセシウム汚染が確認された県。

私も個人的にセシウム汚染の境界を探ってきたが、静岡と愛知に境界があることが、ツバメの巣からも確認できる。やはり南アルプスが盾になったのだ。また、箱根を越えて、富士やそのまわりにも汚染は広がり、八ヶ岳周辺まで広がっているのも、一致している。長野では調べられていないが、きっと美ヶ原から中央アルプスのラインに境界がくるはずだ。

一方、驚いたのは、石川県に汚染が及んでいる点。まだ、自分自身では研究していないが、新潟の汚染は下越(新潟市など)、中越(魚沼市など)に及んでいるのは、群馬や長野との県境の状況からみて、間違いないと思っていたが、上越から親不知、糸魚川をプルームは突破して石川まで汚染が伸びていたのは驚いた。きっと、富山もやられているだろう。問題は、石川のどの部分が汚染されているかだ。予想するに、きっと能登半島の付け根あたりに限られるのではないか?しかし、佐渡にも汚染が広がっているということは、意外にも能登半島の先端も汚染されているのか?興味は尽きない。

また、東北地方の汚染がどこまで広がっているかの、よい指標にもなっている。山形は汚染が確認されたものの、36ベクレル/キロという軽微な汚染に留まっている。この程度の数字というのは、汚染の境界に近いところであることを(私の今までの経験から鑑みて)意味している。きっと、秋田や青森には汚染が及んでいないのであろう。

いずれにせよ、今回の山階鳥類研究所の研究成果は、北陸地方の汚染度合いを緊急に調べなくてはならないと感じさせた、すばらしい結果だと思う。

2015年5月26日火曜日

太陽黒点の増減:マウンダー極小期の再来の可能性

日本物理学会5月号(2015)に、太陽黒点の増減についての論文があった。なかなかおもしろかったので、記録しておこう。

太陽の活動レベルは、約11年周期で変動していることが知られている。ガリレオらによる黒点観測が始まったのが17世紀初頭であり、それ以来4世紀近くに渡り人類は黒点の数を数え続けてきたが、この11年周期の変動は常に確認されてきた。たった一度の例外を除けばだが。

太陽黒点がガリレオらによって観測されてから間もない、1645年から1715年にかけての70年だけは、この11年周期が完全に崩れた。黒点がまったく太陽表面に現れなくなってしまったのだ。この期間は「マウンダー極小期」と呼ばれる。この時期、地球は氷河期に陥ったことが知られている。400年間に渡る太陽観測の歴史の中で、マウンダー極小期のような状態が発生したのは只の一度のみである。どうしてそうなのか、まだ誰も答えを知らない。

2001年に太陽活動のレベルは11年周期の極大期を迎え、2008年の極小期に向けて穏やかに活動を減速させていった。しかし、2008年が過ぎても、太陽の黒点数は今まで通りには回復せず、活動レベルが停滞したままの状態を続けていた。「マウンダー極小期の再来かもしれない」と関連する科学者たちは緊張感に包まれたらしい。

そんな緊張感を尻目に、太陽は2009年に活動レベルを活発化させ始め、2013年には予定された通りの極大期を迎えた。しかし、観測された黒点数は、前回の極大期2001年の半分程度にしか満たず、やはり2008年に長引いた極小期には、なんらかのメッセージが込められているのかもしれないと考える科学者は多いようだ。

実際、過去のデータを見ると、これに似た状況が、マウンダー極小期が発生する22年前、つまり「2周期前」に発生している。とすると、今から22年後に、2度目のマウンダー極小期がやってくるかもしれない。氷河期だ!

太陽黒点の増減が、なぜ地球の気候に影響を与えるのか、その直接的な理由はまだはっきりはわかっていないようだが、今回の論文の筆者は、「銀河宇宙線」から地球を守っている「太陽圏磁場」が関係していると考えている。極小期が長引くと、太陽圏磁場が防いでいた銀河宇宙線に被曝する期間が増え、地球上で雲が発生しやすくなるのだという。

銀河宇宙線というのは、超新星爆発などによって加速された素粒子(主に陽子)である。太陽は銀河系内を回転移動しているが、銀河系の渦巻きのうち、「腕」と呼ばれる領域、つまり恒星密度の高い領域に突入すると、超新星との遭遇確率が上がって、銀河宇宙線のフラックスが大きくなる。私たちの住む天の川銀河において、太陽が「銀河腕」を通過する間隔は約1.4億年と見積もられていて、それは地球物理の測定(深海底の地層データから推測される海水温の変動など)により確かめられているそうだ。

銀河の超新星に由来する、高速で飛来する陽子が地球の大気中で、水やその他の分子と衝突することによって、雨粒の種(雲核)の発生が活発化する、という説を筆者は提唱していて、実験的にもその仮説はよく支持されているようだ。

そうだとすると、太陽の活動レベルの低下によって太陽圏磁場が弱まり、そのタイミングで銀河腕に太陽系が突入すると、地球は大量の銀河宇宙線を被曝することになる。その結果、大気中で雲の発生が活発化し、天気が悪い日が増える。太陽からの日射しが地表面に到達する日が減れば、太陽エネルギーの恵みをうけて巡回する地球表面の環境システムは打撃を受ける。その端的な影響としては、太陽光エネルギーの低下による冷温化が起きるだろう。氷河期の到来である。

英語の先生が、英語ができない...

東京新聞で読んだ記事。

「日本の中学、高校の先生は、英検に合格できないほど英語力が低い...」というニュース。

確か、中学生3年生程度の英語力があれば3級、高校3年(もしかすると2年かも)程度の英語力があれば2級、そして大学生程度であれば準一級がとれるはずだ。私も、中学2年の時、なぜか学校全体で受験することになったので、3級だけは持っている(たしかクラスの半分くらいが合格したと記憶がある)。高校で、文系に進んだ友人たちは、たしか2級の試験勉強を一生懸命やっていて、みんな結構合格していたような記憶がある。(私はTOEFLやSAT/GREの勉強をしていたので、英検はやる気がなくなってしまった。) アメリカの大学に通っていたときに、日本から来た留学生友達たちに聞くと、大抵の人が準一級を持っていた。

こう見てくると、たしかにふれこみ通りの内容だと思う。英検準一級というのは、それほどの特殊技能というわけではない。

ちなみに、一級というのは、通訳の能力も試されるようで、これはなかなかの特殊技能らしい。合格はとても難しいと聞く。(だから準一級が後で創設されたとか。)高校の時の英語の先生の一人は、たしか一級を持っていたので尊敬していた。そういえば、オーストラリアから留学生が来たとき、ちゃんと会話ができたのは、あの先生だけだった...(今から考えると、2級程度の能力があれば、まあ会話くらいなら問題なくできるはずなのだが...)

そして、現在の中学、高校の先生の英語力はというと、大学生レベルといわれる準一級に合格できないまま、学生たちに英語を教えているのだという。これは大きな問題だろう。特に中学校がひどい。英語ができない英語の先生に教わった学生の悲劇は、容易に想像がつく。はやく改善したほうがよいだろう。

とはいえ、なにも準一級だとか、TOEIC何点だとか、試験結果にこだわる必要はないと思う。要は、ちゃんと英語の能力をちゃんともっているかどうかだ。外国/国内の大学でちゃんと勉強してきた人なら、資格なんかなくてもいい英語の先生になれる。たぶん、教員採用の担当官/面接官が英語ができないんだろう。採用試験の面接で、5分も喋れば能力の有無は判断できるはずだから。

2015年5月24日日曜日

アメリカのCarbon-capture projectが終了する可能性

アメリカ政府は、火力発電所で発生する二酸化炭素を回収して地下などに閉じ込める計画(Carbon-capture and sequestration project, or CCS)に資金提供しないと発表。結局、経済的に割に合わないとの判断。うーむ...

2015年5月20日水曜日

LEGO LHC

LEGOでCERNにある素粒子加速器LHC(Large Hadron Collider)を作ってしまえ、というプロジェクト。LHCはヒッグス粒子を発見したことで、ちょっと前に有名になったのだが、その後の科学的な発見が滞っており、この先どういう風に活用すべきか最近ちょっと問題となっている。というような事情とは関係あるのかないのかはわからないが、研究者たちも大分暇を持て余しているようである...

LEGO LHC: The official sites with manuals how to build LEGO-LHC.
CERN HP: An outreach article abouth the LEGO-LHC.

かく申す私も、研究室一杯に広がるような、巨大なのを作ってみようかと思ってしまった次第。