気象庁の「過去の台風経路」のデータをパラパラとみてみると、台風自体の経路としては東から西に「逆走」するものは珍しくない。それどころか、たくさん存在する。たとえば、昭和二十六年(1951年)の台風3号(4月15日発生,4月23日消滅)はフィリピンの東の海上を東から西に向かって「逆走」している。
気象庁のホームページより(http://www.data.jma.go.jp)、1951年の台風3号の経路図 |
今回の台風11号の逆走は、かつての典型的な赤道付近の気圧配置が、日本列島近くにまで北上し、かつ、ジェット気流が北極方向に逃げて行ってしまった結果と推測できる。つまり、かなり大雑把に言えば、上述の1951年に熱帯で起きていた状況が、現在では日本列島付近まで北上していると言えるのではないだろうか? 海水温の上昇に伴う気圧配置の北方へのシフト、これが今回の台風逆走に関連する「地球規模の温暖化」というやつの本質なのではないだろうか?
ところで、台風12号は逆走の挙句に、九州の南の海上で反時計周りにくるっと一回転した。この動きを気象庁のスーパーコンピューターがどのように予報したか振り返って見ると、面白いことがわかる。
日本気象協会(http://www.tenki.jp)のホームページより。 |
7/29の進路予報。矢印の先が"kink"である。(気象庁のホームページより) |
気象庁に勤める友人の一人は、スーパーコンピュターを用いた数値予報に関わっているのだが、この友人によると、なかなか物理学の原理から正確な数値予報をすることは難しく、どうしても現象論的な項、すなわち「現実とつじつまを合わせるための項」をたくさん加えざるをえないと言っていた。とすると、不自然な台風進路の予想が出てきても、おかしくはないだろう。
ということで、さすがのスーパーコンピュータも、過去のデータの蓄積をもとに予想することができず、ついに「お手上げ」になってしまったのだろうと、最初は思った。この段階で、台風の進路を滑らかに外挿して考えれば、九州の東を南下、鹿児島の南で東に向きを転回し、Uターンするような形でループを描きつつ、東進するだろうと思われた。つまり、再び太平洋に戻るだろうと考えた。
ところが、最初の図にあるように、結果は豚のしっぽのように小さな弧を描いて、大陸の方へ進んで言ったのである。kinkのある進路予想と、実際の進路を重ねて見たら、驚きの結果が待っていた。
8/2と7/29の台風進路図を重ねたもの(by gimp) |
さて、台風13号は、東京めがけてまっすぐ北上しているが、果たしてついに東京にも大雨による大災害がもたらされるのか?それとも、数値計算は大きく外れて、東京はまた無災害のまま切り抜けることができるのだろうか? 個人的には、案外、予報はあたると考えて、大雨、洪水の準備の最低限をやっておこうと思う。
追記:結局台風13号の経路はこのようになった。
この台風は東京に被害をほとんど与えなかった。
2018年、東京が最も被害を受けたのは台風24号であった。
台風の中心が東京のわずかに西側に来たため(長野県を通過)、吹き込んでくる風により、東京で倒木が相次いだようだ。
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