航空券を予約した段階で、Boeing 787はバッテリー等の不具合のため、世界中で運航禁止となっていた。やはり新型製品には問題がつきものだ。電化製品でも、車でも、PCでも、なるべくは新型の製品は買わないようにしている。
工業製品というのは、満足いくまで開発しきってから市場に投入するのは稀有で、技術の内容の理解が薄い、営業とか企画部門の人々からせっつかれる形で、ある程度「モノ」になると判断されると、見切り発車で販売されてしまうことが多いと思う。こんな感じで、焦って利益を確保しようとする経営者は、長い目で見れば、必ず失敗作を世に送り出すはめになる。長い目で見なくても、こういうやり方でモノを売るならば、大抵の製品は「欠陥品」のまま売りに出されているといってもいいだろう。消費者に買わせ使わせて、性能を「実験」させる。そして、苦情が来る度に改良を重ねる。だから、発売してからしばらく経ったモデルの方が、必然的に完成度が上がる(苦情の多かった分だけ)という訳だ。
ボーイングの新型旅客機787も、飛ばしてみたら性能に問題があることがわかり、「改良のため」世界中の空からしばらく姿を消すことになった。だから、今年の春の段階では、安心して全日空で予約できるものと考えていた。Web予約をして、「今回は早めに予約できてよかった」と余裕をかましていたら、そうは問屋が卸さなかったのだ。ある日、何の気無しに予約したフライト情報を眺めてみたら、運航機体が"Boeing 787"となっているではないか!よく調べてみると、6月1日から見切り発車で運航を再開する予定だという...これには驚いた。
予約した時は、世界中の政府機関で787の安全性は認められていなかった。だというのに、日本の国土交通省の審査にはどうせ通るだろうから、という予測に基づいて、全日空は6月1日以降の欧州便に787を使うことをかなり前から決定してしまった。この事実を知って、慌てて予約をキャンセルし、別の便で行こうとしたがフィレンツェ到着が夜中になるものばかり。「仕組んだな!」と叫んでみても状況は変わらず。そこで別の航空会社にあたりを付けてみることにした。
無駄な時間を費やして、いろいろ調べた結果浮上して来たのがスイス航空。スイスの国営航空(Swiss Air)だったが、事故と9-11の影響で2002年に破綻してしまった。現在はその後継会社のSwiss International airlinesと名前が代わり、こともあろうにルフトハンザの子会社になってしまった....とはいえ、フィレンツェ到着が夕食前の午後6:30、かつスイス航空の実際の運航/運営はスイス人がやるだろうからという希望と、中継地がチューリヒであるという3点の理由により、今回はスイスに決めた。チューリヒは昨年行ったジュネーブと違って、チェルノブイリの影響を大きく受けたとされる。そういう意味でも、チューリヒに降り立ってみたかったのだ。
首尾よく予約の変更もうまく行き、出発を翌日に控えた。と、一通のメールがswissから届く。
SWISS FLIGHT INFO -AT PRESENT WE EXPECT A DELAY OF APPROX. 3HRS 30MIN.WE APOLOGISE FOR THE INCONVENIENCE. REGARDS SWISSなんだこれは?!これに続いて、次のようなメールが数時間後に届いた。
Dear SWISS guest
Your flight LXxxx/xxJUN is delayed. Your connection in Zurich is not confirmed anymore. Therefore you have been rebooked onto LXxxxx/LHxxx via Frankfurt. New departure time Zurich: 19.05h. New arrival time Florence: 22.50h. Your ticket is prepared for check-in at the airport or via web. We apologise for the inconvenience
Regards"My connection in Zurich is not confirmed anymore"だと?!!!なんで、フィレンツェの前に、フランクフルトにいかなくちゃいけないんだ?2回も乗り継ぎ?なんだそりゃ?!しかも、フィレンツェ到着が夜中の11時?それが嫌だからスイス航空にしたんじゃないか!、などとパニック状態になる。慌てて電話をかけ状況を確認することにする。いつものように随分待たされてから、オペレーターにつながった。(ただでさえ旅行の準備で時間が足りないのに、学会の準備に大きなダメージが.......)
SWISS
原因は、機体修理であった。コックピットの窓が破損し、交換を余儀なくされたため、成田にしばらくこの飛行機は釘付けにされてしまったようだ。修理が終わるまでは飛行許可が下りないとのことで、出発が3.5時間遅れてしまうのだという。このため、チューリヒでの乗り継ぎが間に合わなってしまった。チューリヒからフィレンツェに飛ぶ便はそれがその日の最後だという。つまり、チューリッヒで一泊するか、フランクフルトに一端移動し、(私が当初避けていた)夜の便を使ってフィレンツェに到着するかどちらかだが、スイス航空としては後者の手配をしておいた、というのだ。フィレンツェの宿はすでに予約していたので、イタリア語で事情を説明し、キャンセルの手続きを自腹を切らないよううまくやる自信はなかった。しかたないか、と思ったが、日本人のオペレーターに変わると、「どうです?最初からルフトハンザでいきませんか?そうすれば、夕方にフィレンツェに着けますよ。」と誘いを受けた。「二度と使うもんか」と心に誓ったルフトハンザ、そして「二度行くもんか」とこころに誓ったフランクフルト。しかし、利便性のことを考え、折れることにした。こうして、皮肉なことに、2年連続でフランクフルトの土を踏むことになってしまった...出発前だというのに、敗北感がすでに漂い出していた。
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