最初の悩みは、「神様をどこで調達しようか」である。通常は、村の回覧板で「神様の注文承ります」という広告が秋の終わりに回ってくるので、そこで注文しておけば、年の瀬までには氏子の人たちによって玄関先までちゃんと届けられる。しかし、今年はちょうどその時期に「江戸詰め」しており、注文すること能はず。生まれて初めて、ネットで「神様の購入」と検索をかけてみた。すると、近場の神社が2つ候補に上がった。今回は、やや南の方にある山間の神社を選んだ。社務所に電話を入れると、「2時に閉めるから、早く来」とのこと。また、注文する時は「神様3つ下さい」というのではなく、「お札を3つ」といった方が良いらしい。ちなみに、天照大神は800円、地元の神様は500円だという。地獄の沙汰も金次第というのは聞いたことがあるが、神様もお金で買えたとは知らなかった...
住んでいる村より南に下ること、車で30分程。山に囲まれた谷間の集落にその神社はあった。三重塔の偉容にどぎもを抜かれる。樹齢1000年以上もあるケヤキや杉の大木が林立し、不思議な世界に迷い込んだような錯覚を受ける。この塔は鎌倉時代の作だそうで、国の重要文化財に指定されているとは知らず、驚きの連続だった。氏子の人たちは、杉の生葉を威勢良く燃やしていて、あたりは煙に包まれていた。
神様を購入した神社にあった三重塔。 室町時代のもので、国の重要文化財であった... 知らなかっただけに驚いた。 |
つぎに、「ごぼうじめ」と呼ばれるしめ縄を調達に、今度は村の北西にある道の駅へ。ここには地元の物産が集まっていて、いろいろ便利なものが手に入る。お正月飾りのコーナーにいってみると、ごぼうじめは一本120円だった。4本調達する。思えば、笠地蔵のお話も年の瀬に金がなくて年越し/正月の準備ができずに苦労する話だ。年越しは何かと金が掛かるものだと思い知った。
家に戻ってさっそく「屋敷神様」を祠に納める。「ごぼうじめ」を立てかけ、細縄で縛る。昨年の神様を回収し、まとめて近くの神社の境内にある「神様捨て」に奉納する。これはいってみれば焼却炉であって、氏子の人がタイミングをみて適宜、火を付けて旧いお札などを燃やしていく。有り難いのか、罰当たりなのか、かなりすれすれの線ではないだろうか?
神様のお札は自宅の高い所に祀ることにした。お神酒は省略。来年は徳利をどこぞで調達する必要があろう。それよりも、祠の数をもう少し増やし、隣家の侵入を神頼みでなんとか防がんと、小諸の方へ探しにいくことにした。北国街道沿いにちょっとした石屋があったので話を聞いてみると、小振りのもので4万円だという。材質は中国産の御影石。まあ食べる訳ではないから、と買って帰ろうとしたら、なんと重くて独りでは持ち上げられない。仮に持ち上がったとしても、車に直接載せると傷だらけになるというので、毛布などを持参してから出直すべきとアドバイスされる。取り付けを依頼しようかと思ったが、店開きが1月14日だとのんびりしたことを言う。これまでのやりとりをまとめて考えると、今年は諦め、しばし様子を見る方がよかろうということになった。
飯綱山と呼ばれる丘に登り、年の瀬の夕暮れを眺めることにした。
小諸から見た富士山。左のごつごつしたのは(多分)瑞牆山。 その左にある一番高いのが甲武信岳だろう。 |
家に戻って来て、大晦日の全ての準備を完了したことを確認。イタリア産の白ワインを開け、ほろ酔い気分で夕方の観測に向かう。金星が西の山の端に沈みゆくところ。2013年もこれでおしまいなり。
金星はやぎ座の下にあって、西の空に沈んでいった。 やぎ座のα(二重星)とβが見える。 |