2014年4月17日木曜日

セシウム汚染の限界はどこにあるのか:静岡市の詳細な土壌測定

1年ちょっと前に「静岡市のセシウム汚染」というタイトルでブログ記事を書いた。(千葉県柏市の民間測定所のベクミルにて)駿府城の土壌を測定した結果、ガンマ線スペクトルには放射性セシウムのピークがクッキリと浮かび上がり、放射能レベルは93 Bq/kg程度という結果が出た。

また、箱根がセシウムで放射能汚染されていることも書いた。つまり、セシウム汚染の限界は、箱根を越えて静岡にまで及んでいるということがはっきりしたといえる。(これは富士山とその周辺が放射能で汚染されている可能性を示唆する。)

静岡放射能汚染測定室の発行する最新号の会報でも発表されているように、静岡市はその全域で放射性セシウムによって薄く汚染されており、雨風によって拡散している場所がある反面、逆に集積してしまっている場所もあるという。特に山間地ではお茶の栽培が盛んだろうから、セシウムを取り込みやすい茶の汚染は、場所によっては無視できない程度はあるかもしれない(実際、理研/東工大の牧野さんはTC300でも検知できたようだ)。

以前の私の記事では、静岡市で測定した他のポイントについては触れなかったが、実は静岡市南東部にある八幡山頂上付近、および登呂遺跡付近でも土壌を採取、保存していた。それをBelthold社のLB2045ガンマ線スペクトロメータで長時間測定するべく、倉庫から取り出して検出器にかけた。また、駿府城の土も長時間測定にかけて再度測定してみた。

採取地点と結果をまとめた地図は次の通り。

測定時間は、駿府城は結果がすでにわかっているので60分に抑え、一方で登呂遺跡は120分、八幡山は18時間の精密測定を行った。また、DoseRAE2による線量測定は、登呂遺跡、八幡山ともに0.05μSv/h程度と低い値だった。

放射能レベルはだいたいどこも100 Bq/kg以下程度なので、60分も測定すれば、放射能レベルの値自体はだいたい収束することは、今までの経験から判っている。ただ、綺麗なスペクトルをとるには18時間測定が必要となる(今週は忙しかったし....)。

ガンマ線スペクトルを見ると、すべての地点でセシウムのピーク構造が確認できた。(登呂遺跡のデータは30 Bq/kg以下だったので、120分測定だとかなり「心の目」でみる必要はあるが....)八幡山と駿府城のデータを重ねてみると次の図のようになる。

駿府城のスペクトルは、八幡山のデータに比べ、データにばらつき(ギザギザ)が目立つ。これは前者は60分の測定なのに対し、後者は18時間もかけているからで、統計誤差に違いがあるからだ。当然八幡山の方が綺麗なスペクトルデータとなっている。しかし、このデータから放射能レベルを算出する際はスペクトルの平滑化をやっているはずなので、測定時間がある程度あれば(この程度の放射能レベルであれば60分程度以上)、値は収束しているので、時間をかけてもあまり違わなくなる。

どちらのスペクトルにもCs-137の660keVピークがはっきりと確認できる。また、796keVにあるCs−134ピークも確認できる(とりわけ駿府城の方は)。一方、606keVにあるはずのCs-134のピークは604keVにでる天然核種であるBi-214と混ざってしまっているはずなので、その解釈には注意が必要。とはいえ、796keVのCs-134ピークが見えていることから、静岡市の広い範囲が、福島原発事故によって放射能汚染されていることは事実だ(かなり弱いけれど)。

八幡山。住宅街に突如現れる小高い丘。
一つ忘れてはならないのは、Cs-137のピークの高さだが、もしかすると太平洋におけるかつての核実験の名残りや、チェルノブイリ原発の事故の残りも寄与している可能性があることだ。

もう一つ注意すべきは、登呂遺跡のデータだが、ここは遺跡公園になっており、その周辺は弥生時代の水田が再現されている。もしかすると、工事が入って土壌がかき混ぜられている可能性もある。他の2つの地点に比べて低い値が出ているが、そのまま受け入れてよいかどうかは注意が必要だと思う。実はこれは駿府城の方にも適用できることだが、なるべく影響の少なそうな場所を選んで採取したので、オリジナルの汚染をかなりの程度で再現していると(私個人は)考えている。
登呂遺跡。稲作の痕跡が日本で初めて発見された
弥生時代の集落跡。写真左側に水田が再現されている。

八幡山の方は森の土を採取したので、かなりの確度でオリジナルの汚染度合いをよく表していると思う。

八幡山の風景は南と北で随分異なる。
左は南側斜面。よく整備されていて登りやすい。
右は北側斜面。道はあるがかなりの急斜面。
まだ測定地点が少ないため、静岡の汚染分布がどのようになっているかは結論が出せない。今のところ、手持ちのデータから推測すると山際の方をプルームが流れていったようにみえる。上の地図中のA,B,C,Dとラベルした場所を調査して、もう少し詳細に分析してみたい。Aは標高差で汚染がどのように異なるかを知るためのよい調査場所となるだろうし、Dは久能山/日本平の方角なので、石垣イチゴへの影響を考える上で重要な地点となるだろう。
八幡山からの遠景。(左)日本平方面、地図上のD地点に対応。
(右)地図上のB地点に対応する北側の眺め。

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