信州佐久/小諸で、高い放射能を持った廃棄物(焼却灰など)を最終処分していることを以前この場に記した。その産廃業者はフジ・コーポレーションというが、実はこの周辺には他にも産業廃棄物の処理場がある。
7月18日の信濃毎日新聞の記事によると、イーステージという産廃業者の埋め立て地の近くで、県が井戸水の水質検査を行ったところ、国の基準値を越える「地下水の鉛汚染」が確認されたという。
重金属よりも、質量が小さく、水に溶けやすい性質をもつアルカリ金属はもっともっと、漏れやすいはずだ。つまり、重金属ですらきちんと処理できないとすれば、フジ・コーポレーションに埋め立てられた大量のセシウム137を始めとする放射能物質は、さらに高い確率で、付近の地下水を汚染する可能性がある。
佐久盆地から長野市の善光寺平にかけては盆地が連なっていて、そこには千曲川が流れている。(盆地が連なる理由に関しては以前書いた。)フジ・コーポレーションから漏れ出した汚染水は、地下水やら表層水の形で、この千曲川に流れ込み、上田や長野市に向けて下っていく。実際、上田で獲れたウグイ(地元ではハヤという)が3ベクレル/キロ程度の汚染があったことが報告されている。ちなみに、チェルノブイリ周辺の、膀胱癌を患った患者の尿を調べてみると、6ベクレル/キロ程度に汚染されているそうだ(これは児玉先生の「内部被曝の真実」に書いてある)。
実は、発ガンの怖さだけでなく、こういう人たちの遺伝子損傷の方が恐ろしいことを最近知った。つまり、6Bq/kgの体液を持った人間本人ではなく、彼らの子供、そしてその子供たち...の方が苦しみが大きいということだ。これを理解するには、「チェルノブイリハート」というドキュメンタリー映画を見れば実感できる。体全体が、弱い放射能で汚染されても、そこから飛び出る放射線のエネルギーは簡単にDNAを破壊できる。(特にP53という遺伝子が放射線によって損傷を受けると、遺伝子修復もできなくなる。)この状態が30年も続けば、生殖細胞はガタガタに壊れるはずで、「ヒト」という生物が正常に「再生産」されなくなる可能性が高まる。欠陥遺伝子の集積ほどおそろしいものはない。世代を重ねる度に、生物学的に「人間」から遠ざかってしまうからだ。非人間でありながら、人間から出発したものの....おそらく、巨神兵だって、レプリカントだって、もとは人間の遺伝子から作られた「製品」だろう。
福島の原発事故からたった一年しか経っていないのにこれだけの汚染があるということは、汚染の拡散が速いペースで広がっている可能性がある。最近の大洪水などによって、汚染物質の流出が加速する恐れもある。
自治体も政府も、自然と科学を甘く見ないほうがいい。
熱力学の第二法則を知っている者ならば、即座に信州への放射能廃棄物(死の灰)の持ち込みをやめるだろう。微量であろうとも検出されてしまったら、もうすでに手遅れだ。エントロピーの時間の矢は、膨大なエネルギーと犠牲を払わなければ、その向きを変えることはできないからだ。
1 件のコメント:
Kuzzila 先生
いつも興味深い情報をありがとうございます。
信濃毎日新聞の記事を発見できておりませんが、鉛が産廃由来であれば、産廃を遮蔽型最終処分場でなく他のタイプの処分場に収容したか、遮断型が破損して漏れた可能性があります。 ゴムシートを敷き込んで漏出を防止するタイプの処分場など安定化に関する虚構そのもので論外です。 これは常識なのですが、行政は知らないふりをしているのです。 重金属の漏れだしは、古い処分場の周辺を調べれば多数発見されると思います。
遮断型で大容量のものは殆ど見かけません。 万が一、焼却灰を最終処分する場合、少なくとも遮断型でなければならず、私見では少なくとも150年は大地震等でも破損しない構造でないとダメです。
神奈川県の知事が横須賀市の県営処分場に焼却灰を最終処分しようとしたのですが、私には特別強固な遮断型を用意するようには受けとれませんでした。 黄色の大きなプラスチックバッグを手にして説明会で立ち往生する知事の姿が印象的でした。
核燃料サイクルが断念されてワンス・スルーに移行しそうな雲行きなので、失業対策として焼却灰は核燃料再処理工場で鉛たっぷりのCRT廃ガラスなどで固めた上で放射性Cs誕生の地に戻し、時が過ぎるのを待つしかないのかも知れません。
千曲川のウグイの件の関連ですが、濁っている時の湯川の水は要注意です。 森泉山だけでなく、他の水源地の表層土にも多くの放射性Csが残っており、極めて徐々にではあっても流出を続けているのは確実です。 生物を含め、局所的濃縮がおこらないことを期待します。
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