2012年11月5日月曜日

栃木県のセシウム汚染:日光と那須高原

東日本の主要な別荘地のうち、軽井沢と那須高原がホットスポットになっているのではないか、という噂が福島原発の事故直後から発生していたが、今ではそれは真実だったことが判明している。また、世界遺産である日光と平泉の汚染も、噂ではなく真実であることが現在確認されている。

軽井沢については、自分自身で調査してみて、その汚染の深刻さを実感している。また、平泉も自分自身で確かめた。一方、栃木県にある那須高原と日光については今まで訪れる機会がなく、手をつけていなかった。幸運なことに、八王子市民放射能測定室という団体があって、そこでは測定したデータの公開をしてくれている(スペクトルも!)。また、友人達の持ち寄ってくれたサンプルも幾つか手に入り、ベクミルで測定することができた。これらのデータをまとめ、栃木のセシウム汚染地図を部分的に作成してみた。

栃木県(とその周辺)のセシウム汚染地図
(矢板は1735, さくらは1408 Bq/kgに訂正)
まず目につくのが、世界遺産の日光だ。日光東照宮の土壌サンプルは3120 Bq/kgを示した。華厳の滝も、中禅寺湖の周辺も、高いレベルの放射能汚染が土壌に見られる。

また、那須塩原の駅前で採取した土壌サンプルも2973 Bq/kgを記録している。軽井沢と並び、避暑の別荘地として名高い那須高原も、死の灰を被ってしまった。きっと、探しまわれば、森泉山のようなホットスポットが那須にもあるだろう。
那須塩原駅前の土壌のセシウム汚染
測定は初夏に行ったのでCs-134の崩壊が
まだあまり目立たない。
この2地点の間にある、矢板周辺も2000Bq/kg程度の高い汚染を示している。宇都宮を含む、この大きな盆地の汚染はNHKも早くから指摘していた(NHKスペシャル「広がる放射能汚染」)。この盆地は福島の中通りからの南への延長であり、またベント当日の2011. 3. 15に雨が強く降った地域らしい。そのため、放射能プルームの成分が地表に降下して、土壌の放射能汚染をもたらしたと分析されている。

左:矢板の駅前花壇、右:さくら(栃木)の民家の庭、
における土壌のセシウム汚染
地図の汚染分布をみると、プルームは盆地の中心を南下しながら、日光の方へ分岐したように見える。もしかすると、別のベントが原因なのかもしれないが。日光を越えると、新潟になってしまう。しかも米所の魚沼が近い...新潟のコシヒカリが汚染されたという話はまだ聞かないが、まだ油断はできない。

おもしろいことに、栃木の高汚染地域の周辺に、500-800 Bq/kg程度に汚染された地域が広がっている。水戸の670 Bq/kg(筑波大学のキャンパスは625 Bq/kg)、桐生の704 Bq/kg(群馬県が除染を実施したという黒保根は668 Bq/kg)、そして沼田の790 Bq/kgなどだ。さらに興味深いのは、福島県南部の山間部では550 Bq/kgと意外に低く出た点だ。放射能プルームはかなり大きな塊だと思われるが、その濃度にはばらつきがあって、風向きや降雨の有無によってずいぶん汚染の様子が変わってしまうようだ。予想するのは本当に難しい。

そういえば、矢板は8000 Bq/kgを越える高濃度放射能廃棄物の最終埋め立て処分場の候補地となり、その計画を推進したい政府と白紙撤回を求める地域住民との間の対立が起きている。矢板周辺は2000Bq/kgの汚染がすでにあって、それはすでにかなり高いレベルの汚染ではあるけれど、8000 Bq/kgの「死の灰」と比べれば、1/4でしかない。汚泥を焼却したり濃縮したりして、廃棄物の量を減らそうとした「浅はか」な解決法の末路が、超高濃度の放射性廃棄物の誕生の原因となっている。人のいない広大な場所が確保されていない限り、放射能で汚染された物質は決して焼却したり、濃縮してはならないのだ。出て来た悪魔を封印する場所が無いとなれば、この世は地獄と化してしまう。(「エクソシスト3」の悪魔にがんじがらめにされた神父のシーンが思い浮かんでしまった...)


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