2013年2月6日水曜日

センター試験:数学IAの第二問の最後の問

さて、この大問の最後は平行移動の問。y=2x2を平行移動して、点(p,q)を通過するようにするには、x → x-p, y → y-qと変換する。

実はこれは物理でいうところの「ガリレオ変換」(あるいは並進移動)に相当する。大学で力学を習えば、「ニュートン方程式はガリレオ変換に不変で、その意味では相対性を持っている。しかし、4次元空間におけるローレンツ変換には不変ではないから、真の意味では相対性理論にはなってない」などといった講義を受けるはずだ。絶対座標の有無や、座標変換の理論を習いながら、慣性や慣性系の意味などを学ぶ。

このような理論や概念の説明に進む前に、計算でつまずかれては、話の腰を折られるようなものだ。この問題を作った先生は、大学一年生に力学を教える時、楽をしたいと思ったのかも。

さらに、非相対論的な量子力学でも並進変換は登場する。ここではハミルトニアンが並進対称性を持っている所から出発して、運動量保存則を導出する。量子状態の並進変換はexp(-iaP/ℏ)というLie群型のユニタリー演算子によって実現される。ここでは、並進距離はaで表され、Pは運動量演算子に対応する。(この表現は1次元だが、運動量演算子の可換性により、容易に三次元の場合へと拡張できる。)具体的には、exp(-iaP/ℏ) H exp(iaP/ℏ) = Hであることを利用して、aに関しての無限小変換に対してTaylor展開を行い、HP-PH=0、すなわち[H,P]=0を導出する流れとなる。(Hはハミルトニアンを表す。)話が飛びすぎてしまったので、この辺りで試験問題に戻ろう。

この問題では、y-q = 2(x-p)2を出発点として、この放物線が、ある瞬間t1において3点O, P, Qを通ることを利用して、t1を計算しようというものだ。あたえられた放物線に沿って「運動」しているP,Qは時間tによってパラメーター表示できるので、それを平行移動した放物線の式のx,yに代入する。また、Oを通ることから、q=-2p2という条件が手に入る。qは負の数であることは明らか。このようにして、3点を通ることから得られる条件式を3つ求め、それを連立して解いて、3つの未定変数p,q,t1を決定するだけ。計算が煩雑になりがちだが、相殺する項をうまく抜き出してやると、上のp、qに関する関係式以外は、t1とpの一次式になることが判明する。この連立方程式を解いて、2つの未定数を決定し、最後にqを計算する。

こういうパラメータ表示は、数値計算などでよく使われる。モデル計算や数値シミュレーションでもよく使う手法だ。大学に入って来た学生がパラメータ表示を使いこなせしてくれたら、すぐに理論の説明に取りかかれるから教えやすいのは明らか。これはよい問題だと思う。

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