福島第一原発からやってきた放射能プルームは東京そして関東平野を汚染し西進した。
私が2012年に調べた関西の土壌からはCs-134やCs-137の「セシウム三兄弟」ピーク構造は見つからなかった一方で、東京の町田のセシウム汚染が900Bq/kgほどあることを2012年に確認している。放射能プルームがどこまで進んだか、つまり少なくともLB2045で検出できる数十ベクレル/キロを境とする「汚染限界線」がどこにあるかと問えば、それは関西と関東の間のどこかということになる。単純に考えれば、それは東海地方のどこかになるだろう。ということで、いままでに名古屋や静岡などの調査を行って来た。その結果は、静岡にはセシウム汚染の兆候が確認できるが、名古屋には見られないというものだった。
しかし、限界線に近い地域の汚染はかなり弱く、微妙な判定が求められた。加えて、LB2045のモニター写真を用いてスペクトル分析していたので、ピーク構造の詳細を議論することができなかった。だが、今はLB2045の生成する数値データにアクセスできるようになったので、限界線近傍の微妙な判定をより正確に下せるようになった。そこで、これらの地域の再分析を試みようと思う。
まずは、2年程前に協力者から提供された箱根の宮ノ下(ここは神奈川県)の土壌の分析をやってみよう。宮ノ下は箱根駅伝のコースの一部分であり、富士屋ホテルなどの老舗高級旅館(ホテル?)が軒を連ねるなど、箱根の数ある湯元のなかでも、箱根を代表する温泉街の一つと言っていいだろう。
採取したのは富士屋ホテルの裏手にそびえる浅間山の林である。頂上の標高は800m余り、箱根の南東側の外輪山の一角をなす、箱根の急峻な山々としては典型的な部類だろう。
放射能レベルはかなり低いと予想されるため、測定時間を60分に延長し統計量を稼ぐことにした。この結果、誤差は±3Bq/kg、検出限界は9Bq/kg弱と結構な精度の測定となった。
測定の結果、算出された放射能レベルは112.1 Bq/kgであった。スペクトルを見てみると、きれいな「セシウム三兄弟」が確認できる(つまりCs-137の660keVのピークを真ん中にして、両脇に低めのピークを持ったCs-134の606keVおよび796keVの2つが立っている構造)。箱根の宮ノ下のセシウム汚染は微妙どころか、明瞭だったことにある意味驚いた。汚染限界線は天下の嶮である箱根の山々を越えていってしまったことがこれではっきりした。
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