2015年10月28日水曜日

上空から見たフランス

仕事でパリに行った。CDGに降り立つのは初めて。英国からEurostarでGare du Nordに降り立つというのが、いつもの行き方なのだが、今回はいろいろと面倒くさいことがあって、仕方なく悪評高いCDGに、悪評高いAir Franceでいくはめになってしまった。

案の定、この日はストライキのど真ん中...(リストラ対象者の怒りは凄まじく、執行部の服は破かれたらしく大変なことに...)フランス人の友人にいろいろと情報を教えてもらう。この友人はパリではなく、ストラスブールの研究者なのだが、なんとエールフランスは使わないのだという。私たちの話しをよこで聞いていたドイツ人、イギリス人の友人たちは「うーむ」と唸った後、「さすがはフランス人。よくわかってる!」と賛嘆した。運の良いことに、私がCDGに到着した日は労働者と経営者の間で話し合いが再会された日のようで、空港全体が閉鎖なんてことにはなってなかった....本当によかった。

ところで、パリに行く途中に見えたアルプスが素晴らしい景色を見せてくれた。
French alps from Air France
上の写真を撮った後、アルプスの峰峰に雲が海原のように沸き出して、最後は白い海に浮かぶ島々のようになったのは、とても素晴らしい景色だった。
アルプス山脈なのに、白い海に浮かぶ島のよう。

しばらくすると、広大なフランスの小麦畑の平原が現れ、そして間もなくパリ到着という時になって、眼下に現れた不思議な雲...よく見たら原発から流れる蒸気であった。
眼下に伸びる不思議な雲の正体は....
Nogent Nuclear Power Plant.

Nogent NPPの拡大図
パリの南西100キロメートルほどの場所にあるというこの原発は、後で調べてみると、Nogent NPPという原発で、ちょっと前に反原発のグループが侵入に成功し、垂れ幕を掲げた原発であることがわかった。飛行機だと、ここから、ものの数分ほどで凱旋門が見えてきたので、その近さに驚いた。

そういえば、先ほどのフランス人が、「フランスでは、ワインの放射能検査が行われていて、年代別にどれだけセシウム汚染があるかよくわかっているんだよ」と教えてくれた...チェルノブイリ事故の影響が汚染原因のほとんどだろうが、先ほどのような景色を見てしまうと、その汚染は意外と「自前」のものだってあるのかもしれないと思ってしまったのであった。

今回の旅行では、残念ながらパリの土壌採取はできなかった。件のフランス人は、「フランスには、結構あちこちにホットスポットがあるんだよ!」と教えてくれたので、興味深い。次回は是非!

CDGで買ったワインはChateau Brownというボルドーの赤ワイン。年代はもちろん1986年よりはるか後の「2010年」もの。いくらビンテージといっても、1990年とか、1988年とかのワインは避けた方が良さそうだ。ちなみに、この赤ワインを飲んでみたら、渋みにアクセントがある非常に美味しいワインだったので、満足である。

2015年10月26日月曜日

紅葉の山へ:化石採集

信州の山々では、紅葉はピークを越えつつある。白亜紀の地層から出土する化石を狙って、彩り鮮やかな秋の山に入ってみた。
山中地溝帯と呼ばれる、秩父周辺の山岳地帯に広がる地域で、ジュラ紀から白亜紀にかけての比較的古い地層帯を目指す。この日は、1億3000万年ほどまえの白亜紀前期の、黒い泥岩、これは深めの海底だった場所と思われる、からなる地層で採取した。この産地での採集法はというと、硬い泥岩を拾ってはハンマーで割る、拾っては割る、の繰り返し。


今日は手始めということで、わずか30分ほどの採集に停めておいた。というのも、ここは結構なセシウム汚染地域で、昨年行った土壌測定では600Bq/kgほどの場所。現在も、線量計を持って行くと(dose rae2)0.13μSv/hまで跳ね上がる(麓の町では0.05μSv/h程度)。化石を含む岩石は、崖から最近崩れ落ちたものであり、よく水洗いし、量もわずかであることから、問題はないと考え、必要最低限だけを持ち帰ることにしている。

今回の試験的な採集では次のような標本を見つける事ができた。
Heteraster yuasensis (ウニの一種。ドーバーで取れるMicrasterに似ているタイプ)
Karesteniceras obatai (巻の弱いアンモナイト)
隣りのマテ貝状の化石はおそらくGervillia forbesianaの部分だろう。

Entolium sanchuense? シジミに似ているような...
Thetis japonica, Yabe+Nagao(1928)だと思う。
(Thanks to 田代正之, 「化石図鑑」)
これは、白亜紀前期頃の海棲の二枚貝で、ツキガイ科の貝。シジミじゃない!
他にも3、4点採集したが、整理がまだできてない。

2015年10月25日日曜日

オリオン流星群

ピークを過ぎたオリオン流星群だが、まだ飛んでいるというので、40分ほど夜中に観測してみた。観測を始めてから20分後に、1つだけ、オリオンの右側(西側)に飛ぶのを見る事ができた。

2015年10月16日金曜日

マンションの問題

新築でも中古でも、マンションの購入の際に気になるのが、「安全性」と「強度」だ。大きな地震が関東で発生する確率が高いといわれているだけに、迂闊に大金をドブにすてるようなことはしたくない。しかし、実際にマンションを買おうとする際、基礎の図面とか施工記録、修繕計画や、品質保証の書類などを要求しても、「無い」とか「開示は不可能」とか、なかなか見せてくれないところが多い。とりわけ、中古マンションはその傾向が強く、買う気が失せる。新築物件では比較的よく説明してくれるが、肝心な構造設計書や、コンクリートの強度仕様などは、「契約した人にしか見せられない」と意味の分からないことを言う(購入してから強度が足りないと判っても、それは無意味だ)。

このところ、大手の建設会社による欠陥マンション販売が相次いでいるのは見過ごせない。そこに住む人だけが損害を被るだけでなく、大地震によって倒壊したり、居住不能になったりして、日本全体に経済的、心理的、物理的など多方面にわたって大きなダメージを与える可能性があるから、社会全体の問題だ。またデータの改ざんなど、科学や工学の基本精神をないがしろにする姿勢にも大きな問題がある。技術の高さ、品質管理の水準の高さ、まじめで丁寧な仕事内容、などといった、世界的に良い印象を築き上げてきた日本の技術力が、「結局はその辺の国と同じ低レベルだった」と思われてしまうのは、国家の利害から見ても大きな損失だ。補償問題などが、赤字経営の引き金となり、大手の建設会社が倒産するような事態となることも問題で、社会不安を呼び起こす可能性がある。

そのようなことがないように、しっかりとこれまでの問題を人々は記憶し、嘘や偽装が簡単にはまかり通らぬよう、しっかり見張って行く必要がある。

[最近の欠陥マンション]

  • パークシティ Lala 横浜(三井不動産レジデンシャル、三井住友建設):基礎の杭が浅かったり、支持層に届いておらず、建物が傾いた。また、杭打ち込みデータを改ざん、偽造、転用。
  • ザ・パークハウス グラン南青山高樹町(三菱地所、鹿島建設):配管のための穴が開いていなかったり、位置が間違っていた上、追加工事でのコンクリートのコア抜きで、(強度を高めるための)鉄筋を切ってしまった。結局、完成寸前に、全棟取り壊しで、作り直しとなる。
  • パークスクエア三ツ沢公園(住友不動産、熊谷組):基礎杭が支持層の到達しておらず、マンショんが傾いた。
個人的には、私はしばらくマンションは買う気が失せた。構造仕様が閲覧できない中古マンションなど、問題外だ。

2015年10月4日日曜日

国際宇宙ステーション(ISS)はLinux Debianを採用

一昨年のことになるが、国際宇宙ステーション(ISS)で使用するラップトップPCのOSが、WindowsからLinuxのDebianディストリビューションに変更になったと最近知った。

どうやら原因は、それまで使っていたWindows XPシステムが、軌道上でコンピュータウィルスに感染してしまったことにあるようだ。

また、ISSに積み込むヒューマノイドロボ(ロボノート=Robonaut)「R2」OSにもLinuxが採用された。

宇宙では、Linuxが一番信用できるのであろう。

少し前には、Scientific LinuxというFermiLabが開発したdistributionがISSで採用されていたが、今ではDebianに変わったらしい。CERNはCern Linuxの開発をやめてCentOS(Linux)に変えたと聞く。さて、次に作るシステムには何を使おうか?

2015年10月1日木曜日

地方大学の力:最近のノーベル賞

前に書いたものの中に、「大学教員の研究時間が文科省のせいで激減している」ということを書いた。日本の大学の評価が最近発表されたが、案の定、Times Higher Educationによる順位リストで大幅に位置が下がったという報道が最近あった。

東大はアジア首位の地位を奪われ、43位にまで後退。北京大学(42位)にも抜かれてしまった。京都大学が88位。東工大、阪大、東北大は200位にも入れなかった。

文科省は、10年以内にtop100に10校が入るように、「スーパーグローバル大学」とかいう補助金システムを昨年こしらえたが、見事に滑ってしまった形。こういう「官製アイデア」でうまく行った例はほとんどないと思う。昨年のノーベル物理学賞を受賞した中村さんは、徳島大学出身であることを、文科省は肝に銘じるべきであろう。(追記:今年のノーベル賞も、山梨大学、埼玉大学の出身者だったし、医学賞の受賞者の先生は研究も梨大から北里大と、世界のtop100に到底入りそうもない大学で行ったということ。この先生はしかも定時校の教員から研究者に転身したという素晴らしい経歴の持ち主で、賞賛に値する!中高の教員を絞め上げる、今の文科省のやり方では、教員出身の研究者なんて夢のまた夢ではないだろうか?)

政府のいまのやり方が続けば、中国に抜かれるのは時間の問題だろう。それを防ぐには、文科省の牙を抜いて、大学と中高校に自由を復活させるしかない。夏休みを増やし、教員の帰宅時間を早くし、残業や会議を激減させて、のんびり研究の片手間に教育をする先生を許す雰囲気を復活させるのが、「研究大国」への第一歩となる。

また、巨額な研究資金を、「スーバー大学」や「スーパー高校」だけに配分する今のやり方は、ノーベル賞を「1つだけとる」には役立つかもしれないが、微生物から作る薬や、光るイカの蛍光物質の発見とか、資金をそれほど必要としない、卓越した個の力で取るタイプのノーベル賞の方が沢山取れるんだということを、文科省は知るべきだ。

結局「民主主義」(多様性)が一番強いのである!(エリート主義とか、画一的な全体主義が長持ちしないことは、人間の歴史、科学の歴史、さらには地球の歴史が証明している。)