2012年10月19日金曜日

Level Aの汚染地帯:軽井沢の土壌のセシウム汚染

次は軽井沢を見てみる。軽井沢は、昨年から線量計を使って重点的に調べて来たが、いろいろな理由により、土壌を採取してγ線スペクトルをみるという調査がなかなか進んでいなかった。今回は手始めに、離山周辺の山林中の土壌を調べてみた。

まず、地形について述べておこう。採集したのは山の斜面で、その上部は尾根状になっている。この斜面も、その上部の尾根も別荘地になっている。尾根部の比較的平らなところは、本来ならば地面は厚い落葉の層で覆われているのだが、この別荘の主人はそれを徹底的に排除した。つまり「除染」したわけだ。一方、その下の斜面には落葉は残り、クヌギの林となっている。

この場所で線量を測ってみると(DoseRAE2)、尾根部分は一面が0.2μSv/h程度(今年の夏の段階)ある。斜面一帯もおおよそ同じ値だが、一カ所線量が0.35μSv/hと高めになっている場所があった。木の根元部分で、斜面を流れ下った土砂が溜まりやすいのだろう。この場所は線量が高すぎてDoseRAE2の動作が不安定になるので、JB4020によるRAMI解析を行って、0.35μSv/hという結果を得た。

今回のγ線スペクトルは、斜面にある木の根元付近(0.35μSv/hが出た場所)の土のものだ。その結果は次の通り。
軽井沢の土壌のγ線スペクトル
凡そ5200 Bq/kgという値が出たが、CPSのスケールを見ると2倍になっているので、ここのセシウム汚染は「レベルA」、つまり私の定義では2000-3000 Bq/kg相当ということになる。これは、伊達(福島)や東大(本郷)と同じ程度の汚染に相当する。
(追記:この後の考察で、測定質量の規格化が弱いことを考慮すれば、測定器の数値をそのまま信じた方がいいという結論になった。)

スペクトルを重ねて見ると、伊達市のものとほぼ同じ感じだが、軽井沢の方が伊達のものより少し高くなっている。これは、LB2045が算出した放射能の強度、つまりベクレル数と首尾一貫した結果となっている。言い換えれば、除染した軽井沢の別荘地の方が、除染していない福島北部の民家よりもセシウム汚染はひどい、ということだ!この結果は、山林除染の難しさを示していると思った。

レベルAの汚染地帯
おそらく、軽井沢のこの場所では、斜面上部を除染してしまったゆえに、風雨によって汚染された土砂が動きやすくなり、斜面を流れ下ってしまったのだろう。その一部が木の根もとに溜まって、ミニホットスポットのようなところを作り出してしまったと考えられる。

セシウムで汚染された山林は落葉を残すべきだろう。そうすれば、スポンジのように雨を吸収してくれるので、土砂の流出を(ある程度)防いでくれるだろう。結局、除染をしても線量は0.2μSv/hもあったわけだから、山林は除染をしても線量はあまり落ちない上に、斜面の下にミニホットスポットを作り出してしまう恐れがある。

効果の少ない除染に多額の費用を費やすのは無駄ではないだろうか?チェルノブイリのように、山林除染はあきらめるのが論理的だろう。しかしこれは、汚染された山林には300年は入れないということを意味する。原発事故というのはこういうものだということを、心に刻まないといけない。

最近、除染を加速するよう指示を出した総理大臣は、こういうことをちゃんと理解していないのではないか?(ましてや、処分場も決まらないうちに、除染を加速して放射能廃棄物を増やしてしまうのは、愚策ではないだろうか?)


2 件のコメント:

enniethebear さんのコメント...

Kuzzila 先生

継続して放射性物質による汚染問題に取組んでおられることに敬服しております。

ところで、LB2045の測定結果の読み方nなどにつき極めて初歩的な質問をさせて下さい。

<質問1>
スペクトラムを表示しているグラフの縦軸の単位“CPS”は、被測定サンプルの全量についてなのでしょうか、それとも、例えば“被測定サンプル1kg当り”などに正規化されているのでしょうか?

<質問2>
137Csの約662keVのピーク(当然かなり尖)の頂点の値は、134Csの約563、約569、約605keVの3個のピークが合体して1個に見えるピーク(当然かなり鈍)の裾野により“有意味に”嵩上げされており、同様に134Csの合体ピークの頂点の値も“少々”嵩上げされているのでしょうか?

134Csの約563、約569、約605keVの合体ピークの頂点の高さは、同約796、約802keVの複合ピークの頂点の高さの略々1.2倍強程度かと思います。 これに、137Csの裾野と左下がりのバックグラウンドの裾野が重なることにより、両者の差が大きく見えると推定しています。 これらは、本年2月25日付の先生の東大本郷のサンプルに関して私が質問させていただいた件と関係があります。

<質問3>
先生の“線量”の測定値は、特段の記述がない場合地表高1mでしょうか、あるいは地表でしょうか?

以上、極めて初歩的な質問で恐縮ですが宜しくお願いを申し上げます。

kuzzila さんのコメント...

質問1:いい質問だと思います。今までまったく気にしておりませんでした...恐縮です。LB2045を使った測定では、検体の質量および容量の値を入力します。

容量については規格化をおこない、測定容器100%、つまり検出装置をすっぽり覆い隠すほど土壌がある場合に修正されます。ただ、ある程度の誤差がどうしてもはいります。

質量に関しては規格化されないと思います。Bq/kgの値のみが質量を考慮した値となり、CPSには反映されてないと思います。ただ、どの検体もよく乾燥させますし、石や根はできるだけ取り除き土/砂だけにしてますので、自然と質量は自然と200g程度に共通化されてきます。もちろん±50g程度の誤差はありますが。

質問2に関してですが、裾上げはあります。Bq/kgのソフトウェアではいろいろと修正をしているようですが、その詳細は公開されてないので、LB2045の測定結果は「参考」にすぎないと思ってます。

質問3ですが、いつも地表面に置いて測ってます。持ち上げると若干変わる場合もありますが、DoseRAE2の場合、あまり変わらないケースが多いので、蚊にさされないためにに地表面におきっぱなしにして、測定値としてます。こんど1mの場合と比較してみたらどうなるか、調べてみます。

質問ありがとうございました。特に質問1は参考になりました。