2013年8月31日土曜日

福島の小児甲状腺癌:東京新聞の記事から

8月21日の東京新聞の記事に、福島の小児甲状腺癌の確定者が合計で18人(疑いのある人を含めると43人)に増えたことが報道されていた。その内訳は次の通り。

調査年   被験者   確定者    疑いのある人
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2011年  41,000人           9人                       4人
2012年       135,000人          9人                      21人
2013年         17,000人   調査中                調査中
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確定者の数は変わらないが、疑いのある人の数が急に増えているように見える。
もちろん被験者の数が2012年は3倍近くに増えているため、という説明がもっともで、実際そんな風に説明されたはずだ。いうなれば、これがバックグランドレベルということだろうか?被験者は18歳以下ということだが、チェルノブイリ事故では、事故後5−8年経過したころ甲状腺が増え始めている。あと二年....今年は被験者の数が少ないので3、4人前後となるはず。そうなることを祈る。

2013年8月30日金曜日

いるか座の新星:出現前後の比較

gimpのしきい値アルゴリズムを使って、画像データから余分な星を落として、新星の有無を比べやすいよう白黒画像にしてみた。こうして見ると、新星が明るく輝いている様子がよくわかる。残念ながら、2011年のデータはピンぼけで、星の像がやたらと大きくなってしまっている。とはいえ、星の配置はよくわかるので問題はないはず。

いるか座の新星を確認するための比較:Nov. 2011と
Aug. 2013. 星の連結は任意のもので、星座というわけではない。
星の分布を見やすくするための、単なる便宜上の線。

2013年8月27日火曜日

M16とM17ω星雲

明るいうちにCD-1のスコープの微調整をしておいたので、今日は60秒まで露出しても点像が写せた。天の川も久しぶりに出たので、いろいろな天体を蠍座から始めて上方に向けて探ってみた。まずはM16とM17ω星雲。
左下がM17ω星雲、右上がM16散開星団
ω星雲は、写真の天地逆にすると、水辺に泳ぐ白鳥のように見えることで有名。どちらも5000年光年前後の天体。

2013年8月25日日曜日

いるか座の新星:ついにとらえた

夜空を見上げてみると、今年の夏初めての天の川が広がっていた!

さっそく、いるか座の新星の観測に入る。現像してから何時間も参考資料をもとに位置を確認するもののなかなか場所が特定できない。辛抱強くSky&Telescopeやastroarts.co.jpの拡大星図を利用して、星の位置関係を特定していく。そしてようやく基準の星が判別つき、そこかたどっていくと...あった!ついに、いるか座の新星をとらえることができた。
いるか座の新星
新星の位置がわかったので、これから定期的に撮影を行って、減光具合を調べていこうと思う。それにしても、CD-1を微調整して、iso3200で60秒の露光をかけて撮影しないと、きちんとこの新星は撮影できないようだ。先日のペルセウス流星群のときの写真を見てみたが、流星対策で雑な設定にして撮影したので、これほど暗い星はほとんど写っていなかった。そのため、新星の有無の比較分析は不可能に近いことを知ってがっくり。新星が消え去る1年後まで待つしかない。

追記:昔のデータをほじくり返してみたら、2011年11月に撮影した写真がなんとか使えそうな感じだったので、ここにメモっておこう。ピントが甘く、星の位置がピンポイントではわからないのが残念だが、新星が無いことくらいは確認可能。
いるか座の新星が無い頃。
Nov. 20, 2011



2013年8月24日土曜日

高峰の分岐にて(2):ピークの位置がセシウムとは違う?

高峰の分岐で測定したガンマ線スペクトルを詳しく見てみた。速報では「セシウムピークがよく見える」と書いたが、よくみるとセシウムのピークとは違う場所にあるように見える。まだ目分量なので断定はできないが、おそらくTl-208(583.2keV)とBi-212(727.3keV)のピークのような気がしている。詳細は、ベクミルに持ち込んでLB2045で検証してみるまではわからない。とにかく、統計が少ないので、もう一度高峰へいって測定してみる必要があると思う。

高峰山への分岐で測定したスペクトルは
セシウムピークとは違うような気がして来た。
セシウムなら0.75を挟んで2つの山ができるはずだからだ。

2013年8月22日木曜日

電気伝導理論の発展

電気伝導理論の発展をまとめたReview articleがあった。Baymらが1987にまとめたもの。この論文、数式が一つも無い!

L. Hoddeson, G. Baym and M. Eckert,
Rev. Mod. Phys. 59, 287 (1987)

2013年8月21日水曜日

Tonight is a Blue Moon

今晩の満月はブルームーン。雲間に現れた瞬間になんとか観測できた。
2013年のブルームーン
今年の夏は、6月21日の夏至から始まって、9月20日の秋分の前日まで。この間に満月が4回起きる(June-23, July-23, Aug.-21, Sep.-19。ちなみに6月の満月はスーパームーンだった)。欧米の習慣では、一つの「季節」に4回の満月が起きる時、その3回目の満月をBlue moonというらしい。ちなみに、今晩のブルームーンを逃すと、2016年5月まで待たなくてはならないらしい。

ブルームーンのついての記事はこちらとか、こちらとか、こちらとか。


2013年8月19日月曜日

高峰山の分岐にて:とりあえずは速報

高峰山へ登った。車坂峠にあるホテル内に美味しいレストランがあることがこの間の連休に登ったときに判明し、久しぶりにまた食べたくなったというのと、夏バテを取るために温泉に入りに来たのだ。ひと風呂浴びる前に、汗を軽く流そうということで高峰を目指したのだが、ランプの宿から登ったためハイキングみたいな登山だった。水ノ塔を後ろに見ながら急斜面を20分ほど登る。途中、シュロソウやらヤマネズミの死骸やらいろんなものに出会う。
夏の水ノ塔山。なんとなく赤ザレが広がっているような...
この斜面を登り切った所が高峰ホテルから来る道と合流する地点となっていて、高峰の山頂への分岐になる。マルハナダケブキの黄色が夏の緑の背景にクッキリと浮かび上がってはっとする。きれいな場所だ。
高峰山の分岐地点。

ここで線量およびガンマ線スペクトルを測定してみた。今年の連休に来たときは高峰ホテル(車坂峠)で線量を測定し0.05μSv/hで汚染はほとんどないものと考えた。また、2011年の秋に訪れた時の線量も、佐久平に比べちょっと高い感じはしたが、LB2045特有の零点補正をすれば0.06μSv/hとなり汚染は軽微だと判断した。こういう背景もあったので、どうせたいしたことにはならないだろう、とは思ったが、せっかく器械を持って来たので測るだけ測っておこうと思い直し、検出器部分を地面に向けて5分間、ガンマ線スペクトルの測定を行った。すると驚いたことに、かなりはっきりしたセシウムのピークが現れたのだった!DoseRAE2で線量を見ると0.07-0.10μSv/hとなっていた。「ちょっと高いかも、ここは」と緊張感が走った。

分岐で測定した簡易ガンマ線スペクトル。
高峰は車坂峠よりも南にせり出しているから、きっと高峰山頂付近はもっと汚染が強いだろうと考え、土壌採集はそちらでやることにした。ところが、山頂直前と山頂で線量を測定してみると、各々0.06μSv/hおよび0.04μSv/hとなり、線量がどんどん降下していく結果となった。土壌採取は0.06μSv/hの地点で行ったが、この結果からすると北に戻れば戻る程、死の灰による汚染が強くなるような印象だ。この日は天気の変化やレストランや温泉にいく都合もあり....きちんと調査を続けずに下山してしまった。近々再度調査してみる必要があろう。
高峰山頂上(2091.6m)。山頂での線量は0.04μSv/h。
いままで、NHKで公表された汚染シミュレーションを参考にしていたので、軽井沢から信州側に侵入したプルームは浅間山麓に沿って西側に流れていったと考えていた。とすると、浅間山の「影」となる高峰高原は汚染が弱いはずで、実際今までの線量調査はそれを裏付けるような形になっていた。

しかし、よく考えると、今までの調査は全て南斜面にあたる小諸側、つまり信州側での調査/測定であり、北斜面にある嬬恋つまり群馬側の測定をおろそかにしていた。今回、北に行けばいくほど汚染の気配が強くなる傾向がわかったので、もしかすると放射性プルームは軽井沢から侵入したのみではなく、北軽井沢や嬬恋、鬼押出しなどのある群馬側を這っていったのかもしれない、という感触を持ち始めている。草津や尾瀬の汚染が結構強いらしいという噂は聞いているので、この予想は案外あっているのかもしれない。いずれにせよ、調査を続ける必要がある!

山頂から蓼科を臨む。

2013年8月18日日曜日

田沢湖の土石流

8月9日、秋田県の田沢湖田沢、先達地区で大きな土石流が起きた。6人の命が奪われるこの大惨事に他人事ではない恐ろしさを感じた。というのも、15日には信州でも諏訪で記録的な大雨(一時間当たりの雨量が75ミリ!)が降り、すぐそこにまで大雨の被害が近づいて来たからだ。しかも、軽井沢の急斜面には多くの別荘が建てられていて、もし大雨が降れば必ずどこかしらが土砂崩れして大きな被害をもたらすだろう。(件の米IT長者邸らしき巨大別荘も急斜面に建築中である...)

そこで、軽井沢の急斜面と田沢湖の土砂災害が起きた斜面の勾配を比較して、どれほどのリスクがあるか検討してみることにした。新聞の情報から土砂崩れを起こしたのは先達地区の標高435mの山であることがわかったので、国土地理院の地図を使って少し調べるとすぐにその山の位置がわかった。
土砂崩れが起きた場所の周辺の様子。
赤い点線(左)が土石流の流れ下った道筋。
右の赤い点線は水力発電の設備(導水パイプ?)。

報道写真などから分析し、土石流の流れ下ったルートを地図中に描いてみた。
時事通信社が撮影した現場の様子
確かに急な斜面が崩落しているが、地図をよく見れば似たような勾配を持つ斜面は至る所に見られるし、もっと急な斜面の場所もたくさんある。同じ雨量があったのに、なぜ周辺の急斜面は崩落せずに、この場所だけが崩れたのか、ちょっと不思議な感じがする。同じ山系の斜面だから、地質だってそうは違うはずも無い。

国土交通省の「専門家」は誰でも思いつくような無難な説明をしていたようだが、どうみても土石流の始まった場所にある人工構築物が土石流発生の引き金になっているように見える。(こちらの方も同じ印象をもったらしい。)

今度はgoogle mapで調べてみた。
土石流の起きた地点周辺。
(google mapを利用。)
この地図を見ると、構造物が水力発電所であることがわかる。他のサイトでも確認したが、これは東北電力の先達水力発電所だった。

国土地理院の地図を見ると、この山の山頂まで地下水路のようなものがかなり上流の川から引かれているのがわかる。その川が増水したとき、地下水路(パイプ?)にも相当な水量が流れてくるはずだ。特に、山頂から水力発電所のある場所までは、発電のために水をパイプの中に勢い良く流し落とすはずだから、それまでの地下水路の勾配と比べ、山頂から下部では水の流路の勾配は急速に大きくなるだろう。だとすれば、パイプに与える水圧はここで急増するはずで、大雨の増水時に上流にあるはずの弁を調節したりしなければ、勾配が急変化する所、つまり山頂近くで水力発電用のパイプが弾け壊れる可能性は高くなるだろう。

報道では東北電力の関わりについての説明がほとんどなかったが、もし上で想像したようなことが真実であるならば、山の急勾配が土砂崩れの直接の原因とは言えなくなる。となれば、この災害は軽井沢の災害に対する予防データにはなり得ないということになる。


2013年8月16日金曜日

いるか座の新星:ペルセウス流星群の観測が役に立つかも

8月14日の夜、山形の板垣さんによって、いるか座の近くで新星が発見された

8月12,13日の夜にペルセウス流星群を撮影しようと思って、ちょうど爆発直前の夏の大三角を撮影してあったのを思い出し、急いで確認してみた。一応、いるか、矢、アルビレオなどの領域が撮れていた!このところ信州の夏空は夕立で天体観測が難しい状況が続いているが、晴れ間が広がり次第、再度この星域を撮影しようと思う。光度は6等だというから、なんとか写せると思う。

新星爆発前夜(前前夜?)の夏の大三角領域。
今度同じ所を撮影すれば、円で囲んだ場所に新星が現れるはず。

2013年8月14日水曜日

電流のミクロ模型:Drude模型

学部3年のとき、半導体の伝導現象の実験をやった。半導体に電極がハンダ付けできず、夜中まで実験室に居残って頑張った記憶がある。秋風が冷たくなって来た頃で、定食屋のコロッケ定食のみそ汁が温かくて、体に染み渡った。

あの時に配布された実験ノートを見返してみると、書いてあったのはDrude方程式ではないか!ノートには、Drudeに関することはなんの説明もない。この方程式は1900年にドイツのDrudeが発表したもので、電気伝導現象に対する最初の微視的模型だ。電子が1897年(20世紀直前)にJ. J. Thomsonが発見されるが、その直後の理論であり、賞賛すべき業績ではないかと個人的には思う。

この方程式は完全に古典力学に基づいているが、その結果は排他原理などの量子効果によって正当化され(Sommerfeld-Bethe)、現代物理の観点から再導出しても、同じ結果となるところが面白い。ラザフォード散乱の公式と同じように、古典力学と量子力学の偶然の一致が見られる。

ところで、このDrude方程式は一見して、空気抵抗がある場合の自由落下の問題とか、LCR回路の減衰問題などに出てくる微分方程式と似たような形をしているので、同じようにして解くのかと最初思ってしまう。しかし、ちょっと違うことがやがてわかる。とはいえ、摩擦にあたる項が登場し、緩和時間の概念が導入されるなど、よく似ていることは確かだ。

緩和時間を過ぎ、電流が平衡状態(定常状態?)に収束したとき、そこで成り立つのはオームの法則だ。電流、電圧、電気抵抗の簡単な関係が、電子の運動学の観点から導かれ、さらに電気抵抗の微視的な解釈が与えられるという素晴らしい内容だ。ただ、金属の結晶構造を証明したのが、LaueやBraggによるX線回折による分析だから、Drude模型が提案された1900年よりもずっと後の1911年頃。Drudeが、電気抵抗の正体を、正イオンの格子構造と見破るに到った道すじをもう少し詳しく知りたいと思った。(原子は電気的に中性だから、必ず正負2種類の粒子が伝導現象にも関わるはず、と考えるのはわかる。しかし、正電荷をもつイオンが結晶構造を成して整然と並んでいるという発想はかなり飛躍している気がする。実際J.J.Thomsonはジェリウム模型にハマったわけだし。)

ところで、Slater-Frankの古典的な教科書「力学」を読むと、このタイプの2階の微分方程式が「基礎」であると主張されているように感じる。「力学とは振動である」というロバートフックの信念を肯定するかのように見えて、とてもおもしろい。

2013年8月13日火曜日

ペルセウス流星群:期待外れ

真夜中1時半に起きて、3時まで流星群の観測をした。まず、戸外出るや否や大きく明るいのがカシオペアの近くで尾を引いた。これは幸先よし、と期待したのだが、その後雲が空一面にかかってしまった。2時まで休憩。

2時に観測を再開。雲は去り、夜空に星が輝いていた。これは期待できると胸を踊らせたのだが、流星はあまり飛ばなかった。1時間で14個を観測。明るいものや暗いものなど、色々あった。もっともすごかったのは、牡牛座方面で飛んだ流星。雲が薄くかかっていたのだが、雲越に明るく輝いた。しかも長い尾。ペガサスや白鳥にも明るく長い流星は飛んだ。ペルセウスにも明るい流星が見えたが、尾はとても短かったのですぐに消えてしまった。北極星の周辺では、4つほど飛んだけれど、高度が低く、光害にやられて暗く見えた。カシオペアでも2、3いいのが飛んだ。

しかし、これらを撮影するのは至難の技で、結局今回はひとつも撮影できなかった。ひとつ捉えた!と思ったのがあったのだが、感度をiso800にしておいたら写っていなかった。中ぐらいの明るさの流星だとiso1600以上にしておかないと写らないようだ。

ということで、今回は失敗だった。が取り溜めた写真を使って、日周運動を表現できることに気付いた。gimpの練習になるので、ここに記録しておこう。写真は、カシオペア、アンドロメダ、ペルセウス周辺を、15分間で5枚撮った写真を比較明合成したもの。



2013年8月11日日曜日

ペルセウス流星群の観測

NASAがAug.11-12の夜だというので、ペルセウス流星群の観測をしてみた。よく考えると、北米と日本の時差はほぼ1日程度。(日本の)国立天文台は12,13の真夜中だ、と言っているので辻褄があう...

とはいえ、ピークの前日でも約60分観測して、明るい流星が4つほど、大きな尾を引いて流れるのを観測することができた。3つがカシオペア付近、一つがペガサスの辺り。

実はペルセウス流星群を観測してみたのは、今回が初めて。さて今晩は晴れるだろうか?