2013年8月18日日曜日

田沢湖の土石流

8月9日、秋田県の田沢湖田沢、先達地区で大きな土石流が起きた。6人の命が奪われるこの大惨事に他人事ではない恐ろしさを感じた。というのも、15日には信州でも諏訪で記録的な大雨(一時間当たりの雨量が75ミリ!)が降り、すぐそこにまで大雨の被害が近づいて来たからだ。しかも、軽井沢の急斜面には多くの別荘が建てられていて、もし大雨が降れば必ずどこかしらが土砂崩れして大きな被害をもたらすだろう。(件の米IT長者邸らしき巨大別荘も急斜面に建築中である...)

そこで、軽井沢の急斜面と田沢湖の土砂災害が起きた斜面の勾配を比較して、どれほどのリスクがあるか検討してみることにした。新聞の情報から土砂崩れを起こしたのは先達地区の標高435mの山であることがわかったので、国土地理院の地図を使って少し調べるとすぐにその山の位置がわかった。
土砂崩れが起きた場所の周辺の様子。
赤い点線(左)が土石流の流れ下った道筋。
右の赤い点線は水力発電の設備(導水パイプ?)。

報道写真などから分析し、土石流の流れ下ったルートを地図中に描いてみた。
時事通信社が撮影した現場の様子
確かに急な斜面が崩落しているが、地図をよく見れば似たような勾配を持つ斜面は至る所に見られるし、もっと急な斜面の場所もたくさんある。同じ雨量があったのに、なぜ周辺の急斜面は崩落せずに、この場所だけが崩れたのか、ちょっと不思議な感じがする。同じ山系の斜面だから、地質だってそうは違うはずも無い。

国土交通省の「専門家」は誰でも思いつくような無難な説明をしていたようだが、どうみても土石流の始まった場所にある人工構築物が土石流発生の引き金になっているように見える。(こちらの方も同じ印象をもったらしい。)

今度はgoogle mapで調べてみた。
土石流の起きた地点周辺。
(google mapを利用。)
この地図を見ると、構造物が水力発電所であることがわかる。他のサイトでも確認したが、これは東北電力の先達水力発電所だった。

国土地理院の地図を見ると、この山の山頂まで地下水路のようなものがかなり上流の川から引かれているのがわかる。その川が増水したとき、地下水路(パイプ?)にも相当な水量が流れてくるはずだ。特に、山頂から水力発電所のある場所までは、発電のために水をパイプの中に勢い良く流し落とすはずだから、それまでの地下水路の勾配と比べ、山頂から下部では水の流路の勾配は急速に大きくなるだろう。だとすれば、パイプに与える水圧はここで急増するはずで、大雨の増水時に上流にあるはずの弁を調節したりしなければ、勾配が急変化する所、つまり山頂近くで水力発電用のパイプが弾け壊れる可能性は高くなるだろう。

報道では東北電力の関わりについての説明がほとんどなかったが、もし上で想像したようなことが真実であるならば、山の急勾配が土砂崩れの直接の原因とは言えなくなる。となれば、この災害は軽井沢の災害に対する予防データにはなり得ないということになる。


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