とはいえ、ホームセンターで売られている堆肥や培養土が400Bq/kg相当の放射能をもっていると想像しただけで、農業や園芸をやる気をなくした人は相当数いるのではないだろうか。ひどい放射能汚染を免れた地域、あるいは放射能汚染がまったくなかった西日本などの人からみれば、自分の畑や花壇に400Bq/kgのセシウム肥料を撒くなんてとてもできないだろう。
私の印象では、今までに放射能汚染が報告されたのは腐葉土だったと思う(例えば沖縄の場合はここ)。たしかに、木の葉や枝を材料にするわけだから、放射能汚染された森で生産された腐葉土はセシウムをたくさん含んでしまうはずだ。
一方で、鹿沼土や赤玉土といった、軽石や火山灰を原料とする土はどうなのだろうか?汚染されたとか、されてないとかという話し自体をあまり聞かない(個人的に測定してみたというブログはあった。このブログの筆者はLB2045が算定した放射能値をそのまま判断材料にしているが、ガンマ線スペクトルがよく見えないので私としては判断付け難い)。風評被害を恐れた関連自治体が情報の封じ込めでもやっているのだろうか?鹿沼土は挿し木や種蒔きのときに、どうしても使いたい土なので、その安全性が確認されるならば、ぜひとも利用したいとずっと思って来た。そこで意を決して、LB2045を使った18時間測定にかけ、詳細なガンマ線スペクトルを出してみることにした。
今回手に入れたのは、鹿沼土と赤玉土を主原料とする「挿し芽・種蒔きの土」(プロトリーフ)。プロトリーフの直営園芸店は二子玉川の高島屋に出店しているので、利用している人は世田谷や川崎には多いことだろう。この店には、NHK教育テレビの「趣味の園芸」の講師に選ばれている人も勤めているらしく、園芸業界でも認められた立派なお店なんだろうと思う。
さて、測定結果は次のようになった。まずは放射能レベルだが、35.08 Bq/kgとかなり低い値が算出された。とはいえ、0ではない。これがセシウムによる放射能なのか、それとも天然核種による寄与なのかはスペクトルをみないと判断できない。ガンマ線スペクトルは次のようになった。
赤いグラフが35Bq/kgを示したプロトリーフ社の種蒔き土、 緑のグラフは70Bq/kg余りの値を示した八幡山(静岡市)の土壌。 |
グラフを見ると、Cs-134の低エネルギーのピーク(606keV)に相当する付近に、はっきりしたピークはあるももの、796keVにあるべきCs-134のピークは見られない。つまり、このピークはBi-214のピーク(609keV)と解釈すべきだろう。福島原発の影響を被っていないと結論した名古屋城のデータをみても、Bi-214の寄与はだいたい60 Bq/kg程度はある。なによりも明らかなのは、Cs-137の660keVのピークが見られない点だ。以上の考察より、算出された「35Bq/kg」という値は、セシウム汚染によるものではなく、天然核種の寄与だと思われる(上で紹介したブログの結果も、おそらくBi-214によるものであろう)。
ということで、プロトリーフのこの土は、安心して園芸に利用してよいことがわかった!これは朗報だ。また一般に鹿沼土や赤玉土は汚染されてない可能性が高いこともわかった。火山灰や軽石にはセシウムは沈着しにくいという仮説を立てることにし、これから少しずつ検証してくこととする。
そういえば、友人が昨年浅間山に登山したとき、群馬側の山頂付近で土壌を採取したといっていた。高峰の汚染調査から、群馬側の汚染は結構強いのではないかと疑っているが、浅間の土は火山灰が主成分だろうから汚染が弱くなっている可能性がある。ぜひとも確認したいものだ。
[追記]2015年のプロトリーフ「バラの土」の測定結果はこちら。
[追記2]2016年のプロトリーフ「クリスマスローズの土」の測定結果はこちら。
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