西アフリカで、エボラ出血熱という伝染病が手の付けられない状態になった、というWHOの宣言が最近あった。これまでに1000人近くの患者が死んでいる。今回の伝染病の蔓延(outbreak)に関しての死亡率はこれまでのところ50%という。
先日大学からの帰り道に聞いていたAFNで、エボラ出血熱のことばかり取り上げていたので、どうもおかしいと思って耳を澄ますと、救援のためにアフリカに駆けつけたアメリカ人医師がついに感染してしまったという。これまではアフリカに住む現地人の犠牲者ばかりだった。感染者は特別機でアメリカ国内に搬送され治療を受けている、というところまで聞いたが、そのときは「致死率90%近くのこのウイルスに罹患したら、治療もなにもあったもんじゃない。ただ、隔離措置して終わりじゃないだろうか?」と思っていた。
ところが、家に帰ってNYtimesの記事を読んで驚いた。なんとアメリカは密かにエボラ出血熱の治療薬を作成していたのだ!ZMappと呼ばれるこの薬はまだ実験段階で、使用は承認されてないそうだが、「いま使わずにいつ使うのだ?」とばかりに、感染患者に投与され、しかも効果が出ているらしい。研究者たちは「効果があるかどうか結論づけるには、まだ時期尚早」と慎重なコメントを出しているらしいが、もしかするとエボラ出血熱にかかっても、アメリカの現代医学なら、もしかしたら治療してしまうかもしれない。すごい...
(新聞には、感染者は2人とあり、2人ともZMapp投与後、症状は安定しているという。)
ただ、この薬を開発した薬品会社MappBioの従業員はわずか9人、しかもその資金のほとんどが軍からの出資だということで、アメリカ人たちはその胡散臭さに神経を尖らせている。アメリカ人だけ助かって、アフリカ人は見殺しにされるのか?といった論調も出ているようだ。オバマは「まだ承認されていない薬だから、広く適用するわけにはいかない」といっているようだ。また、実験段階にあるため、大量生産の体制ができておらず、数に限りがあると製薬会社は言い訳している。
NYtimesによれば、ZMappの生産方法は次の通り。エボラウィルス蛋白をマウスなどに注射し、これに反応して発生した抗体を回収。回収された抗体は、人間に適合するように遺伝子操作される。この遺伝子は、(植物としての)タバコの葉に埋め込まれる。こうして植物が生産する「人間向けに遺伝子操作されたネズミの抗体」が、葉の成分となって「収穫」され、薬品へと精製される。このタバコ(植物)は厳重に管理された研究室の中のみで栽培されていて、花粉や種のみならず、植物自体が外部の畑に漏れ出さないように注意深く管理されている。実は、このやり方は、以前トウモロコシなどに適用しようとしたらしいが、一般の食品用途のトウモロコシが遺伝子汚染を起こす可能性があるとされ、研究続行が棄却されていたのだ。しかし、それを軍が資金援助することで、密かに研究を続行させていたらしい。タバコという、ちょっと変わった作物に適用することで、遺伝子汚染を最小限に食い止めようとしたのかもしれない。
いずれにせよ、いままで「治療薬もワクチンも存在しない、致死率90%の、死の伝染病」と言われ、恐れられたエボラ出血熱だが、「金持ちには治療薬が用意」されてあると知って、非常に驚くと共に、いささかやり切れない気分になった。しかし、STAP細胞で「もめてる」日本の医薬界のレベルは、アメリカに比べて圧倒的に低い所で這いつくばっている感じもあり、米国の恐ろしさにおののく前に、恥ずかしさも感じた次第なり。
とはいえ、西アフリカに飛んで、エボラと闘う日本人医師もいると聞いた。彼らの勇気と高い能力に敬意を表したい!
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