野辺山のスペクトル |
この図を見ると、352keVのところに綺麗なピークが一つ見える。鉛214(Pb-214)の出すガンマ線が作るピークだ。
Bi-214とPb-214は共にウラン238(U-238)の崩壊系列に属する。つまり、半減期45億年(アルファ崩壊)のU-238を出発点として生成される崩壊生成物(放射性)の系列ということだ。U-238はα崩壊するとトリウム234(Th-234)になる。これがさらに崩壊を繰り返し、つまりアルファ崩壊やベータ崩壊などの核反応が連続して生じると、ラジウム226(Ra-226)にたどり着く。
Ra-226は半減期1600年で、天然鉱物や温泉などに含まれていたりするのを知っている人は多いだろう。ラジウム226がアルファ崩壊してできるのがラドン222(Rn-222)だ。Rn-222は半減期が4日弱と崩壊までの期間が短い上、常温で気体となる性質がある。つまり、岩石や温泉中に含まれる微量の(ウラン系列の)放射性物質はラドンにたどり着いたところで、空気中に浮上していくのだ。空気中のラドンは降水のタイミングで地表に帰ってくる。ラドン(Rn-222)はアルファ崩壊して、ポロニウム218(Po-218)になる。
Po-218は半減期3分でα崩壊し、Pb-214となる。Pb-214はベータ崩壊と電磁崩壊(つまりガンマ線を放出する)を起こして、Bi-214となる。Pb-214もBi-214も半減期が30分程度だ。つまり、Pb-214とBi-214から放出されるガンマ線はペアで出てくることが多いと考えてよいだろう。実際、セシウム汚染がない地域のスペクトルをみると、Pb-214とBi-214のピーク高は同じ程度だ。だとすると、上図のスペクトルに見られる野辺山の場合、Pb-214のピークの高さを考えれば、606/609の混合ピークのほとんどはBi-214だとみてよいだろう。したがって、先に述べたように、実際の放射能レベルは10-20Bq/kgではないかと推測したというわけだ。
(つづく)
(つづく)
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