2012年3月18日日曜日

Cotswoldで化石採集

今回はさらに二カ所、化石採集に向かった。最初はWest SussexのLittlehampton.ここは以前の記事にも書いた場所。やっぱり嵐が少なかった今年の冬は、打ち上げられる化石の量もすくないようで、30分程歩いてようやく一つ見つけただけ。いつもと同じscutataだったし、あまり品質もよくなかったので、そのまま置いてきた。

海がだめということがわかったので、翌日はCotswoldに向かう事にした。普通、英国旅行にきてCotswoldに行く人は、お茶を飲んだり、英国庭園を見て楽しんだりするだろう。しかし、化石ハンターにとっては、Cotswoldは一億8千年前のジュラ紀中期の化石が産出する場所なのである。Cotswoldの黄色い石でできた町並みは美しく、Cotswoldの象徴だ。しかし、その石こそがジュラ紀に形成された石灰岩が酸化して色づいたものであることは、化石ハンターしか知らないだろう。この黄色い岩石はOoliteと呼ばれ、大物の化石を産出することで有名だ。実は、Cotswoldはアンモナイトや恐竜の化石もたくさん出る、隠れた名産地なのだ!

Chipping Camdenの町並み。家の石材が黄色なのが
Cotswoldの特徴であり、美しさの中心だ。しかし、これは
Ooliteというジュラ紀の石灰岩が酸化したものなのだ!
今回訪れた場所は、Chipping Camdenという所の近くにある崖だ。この日は終日霧がまいていて、なにやら幻想的な雰囲気だった。丘を下り、霧の中に、この町が浮かび上がってきたときは、おもわず感嘆の声を上げてしまった。まずは、この町にあるBadger's HallというTea roomで腹ごしらえ。お昼が午後1時ころから始まるイギリスでは、正午直後に行くと店はガラガラ。石炭が燃える暖炉を独り占めして、セロリがメインの野菜スープ、サンドイッチ、そして紅茶(Cream tea)をまずは楽しむ。寒い日だったので、スープが特に美味しかった。

お昼を済ませ、買い物をしてから、採集地点に向かう。途中間違えてStratford upon Avonに行ってしまった。丘を下るときに方角を違えてしまったらしい。迷いながらもようやく現地にたどり着く。

この場所はゴルフ場の敷地の端にあたり、崖が長く続いている。最初は芝生の緑に覆われているが、20分も歩くと黄色の崖が姿を現した。この崖の崩落を丁寧に観察すると化石が採集できるというわけだ。しかし、今回は初めて訪れたこともあり、勝手が分からずに時間を無駄にしてしまった。化石が採集できる場所を突き止めたところで、この日は引き上げることにした。夕方には宿に戻りたかったからだ。

黄色の崖が広がる採集地点。
それでも、腕足類が詰まった岩を採集することができた。最初にしては上出来だと思う。一億8千年前の腕足類で、おそらく死骸が固まった海底の様子を表していると思う。結構潰れたり、割れたりしている化石が多い。種の同定はおいおいやっていこうと思う。

岩石の見事な黄色はまさにCotswoldの家並みの色。よく見ると、直径1mm程度の小さな丸い粒子が含まれている。これは岩石成分が丸く結晶化したものらしい。同じような岩石は、Jurassic coastのさらに先のところでも見る事ができるから、地層の分布はDorsetからCotswoldにかけて伸びているのだと思う。

Ooliteの岩石に含まれる化石

口が段違いのタイプのBrachiopod
とにかく今回の採集旅行の景色は「黄色」だった。英国の化石採集は「色」の採集でもある。Doverの白亜の化石は白、Dorsetのジュラシック海岸は黒や灰色、そしてCotswoldは黄色。あと見てないのは、Cornwallの赤のみ。これはもの凄く古い化石でほとんど形が残ってないらしい。あまりに大昔で生物の形態は原始的になりすぎ、フデイシとかクラゲとかそういうタイプの化石になってしまうようだ。

2 件のコメント:

とびねこ さんのコメント...

Kuzzilaさん
イギリスにいらしてたんですね(私はちょうど渡仏中でした。)。コッツウォルズは好き(イギリス人の言う、ラヴリ~♪)で何回かいっています。
Chipping Camdenの町並みの黄色、確かに美しい、というか、どこか郷愁を誘う、というか、全体がかわいらしい町(おとぎはなしにでてくるような。。)ですよね。その黄色い壁がOoliteというジュラ紀の石灰岩が酸化したものからできているとは。「一億8千年前のジュラ紀中期の化石が産出する場所」。Cotswoldsが「アンモナイトや恐竜の化石もたくさん出る、隠れた名産地」とはしりませんでした。今度行くときは私も探してみようかな~?(素人には無理?)

kuzzila さんのコメント...

「5歳の女の子、直径50センチの巨大アンモナイトを発見!」などと英国の新聞では時々報道されるように、Cotswold周辺の石切り場からは大物が出るそうです。昔から狙っていたのですが、海岸に比べ浸食が少ないので行くのをためらっていました。当たり外れが大きい(多分外れの方が圧倒的に多い)と思っていたのです。実際、今回の化石もやっと見つかった感じです。ただ、散歩好きの人なら、footpathの長散歩をしているうちに大物を見つけられるかもしれません。単に拾い上げるだけです。掘ったり、砕いたりしなくていいので、誰でも採集できると思います。ただ、犬と羊と兎のうんちにはお気をつけて。(間違えて拾い上げないように。私は一度だけやってしまいました。アンモナイトによく似ていたので...)

Oxfordの自然科学博物館や、Londonの自然科学博物館に行き、どんな化石が採集できるのか事前に見ておくとよいと思います。何が化石か知らないと、目で見ていても化石と思わず、通りすぎてしまうのです。採集を切り上げて駐車場に戻る帰り道に大物を見つけたときなどは、どうしてこんなに大きい化石を行くとき見落としたのか?と不思議に思う事が多々あります。見ていて見ていないのですね。