2012年6月6日水曜日

金星の日面通過

英国の冬。日の出は遅く、日没は早い。おまけに曇りがちで、ほとんど晴れ間はお目にかかれない。暗く、灰色で、惨めな季節だ。

1639年12月4日。こんな季節に、そしてこんな暗い北国で、ホロックスは金星の日面通過を待たなくてはならなかった。何年も何年も待ったその日がついにやって来た時、彼の鼓動はどれほど早く打っただろうか?そして、その日が明けた時、惨めな灰色の空が英国の地平線に覆いかぶさっていたのを見てどれほど落胆しただろうか?

日没のわずか30分前に、奇跡のように西に傾く夕日が雲間に現れた時、彼の興奮がどれほど高まったか想像するのは難くない。 そして、太陽の表面に黒いビー玉のような影が見えた時、彼の名前は永遠に歴史に刻まれることになった。その感動は科学者だったら理解することができるだろう。この瞬間、この宇宙の秘密を知っているのは彼だけなのだ。目の前に広がるイングランドの凍った大地に一人立ち、至福の時を過ごしたことだろう。

ホロックスの味わった感動には及ばないだろうが、今日(2012年6月6日)、人類史上7回目の金星日面通過の観測を通して、歴史上の科学者/天文学者たちと同じ喜びを共有することができ、本当に幸せに感じる。科学者じゃないと、この素晴らしさは判らないのだろうか?(とはいえ、かく申す私も、8年前の時は完全に無関心だったので、人のことはあまり言えないのです...)とにかく、少しでも見ることができてよかった。金星は本当に大きいと思った。

金星の日面通過(2012年6月6日)
黒点がたくさんあったので、金星の大きさがよくわかる。

ちなみに、ホロックスが信じた「金星日面通過の起きる日」を正確に予言したのが、ケプラーだった!つまり、宇宙の秘密とは、ケプラーの3つの法則と、それから導かれる惑星の軌道、そして太陽系の構造のことだったのだ。

2 件のコメント:

とびねこ さんのコメント...

こんにちは、飛び猫です。御無沙汰してます。(英国から4月に帰国しました。なのであんまり「飛んで」ませんが)。と言ってもクジラさんのブログちゃんと毎日訪れてますよ。金星の日面通過は残念ながら曇り空で見ることができませんでした。午後にちらっと晴れ間ものぞいたようですが授業があったので。。でも、金環日食は見ることができてやはり感動。そんなに暗くならなかったけど少しだけ暗くなり(変な表現)その微妙さが、神秘的な感じでした。おずおずっとお月さまが「失礼します。。」的に重なったのになんとなく奥ゆかしい可愛さ?を感じてしまったのは私だけでしょうか。そしてまたおずおずっと去っていき(笑)。。科学者から見ると擬人的に表現するのは、それこそ非科学的と笑われてしまいそうですが!?。。ところで月面にアリストテレスの名が出てきてたの、初耳(無知。。)でした。アリストテレスは政治学者としては偉大なんですけどね。動画も拝見させていただきました。バックグラウンドミュージックが懐かしのU2だったのでびっくり。(ただ、著作権は大丈夫でしょうかね)なかなか、興味深かったです。ところで、のだめだめ首相はほんとにだめだめですね。ただまだ、党内にも反対の声が多くありひと悶着はありそうですが(ないと困る)。科研費の報告書などで忙しくブログ更新もできませんでしたが、そろそろ再開する予定です。久しぶりだったので長文になり失礼!

kuzzila さんのコメント...

ジョージハリスンのHere comes the moonにしようと思ったのですが、なかなか見つからなかったので手近にあったU2にしました。BGMを入れとかないと、知らないうちにマイクにとられていた「ぶれるな、結構」とか、「あらら」とかいった、自分の独り言が流れてしまうことになり、慌てて修正したんです。(最初の投稿では、独り言がon airされていました...)

いちおう、投稿時に著作権がチェックされるようですが、文句が出てないのでまだアクセスできるようです。最近、音声を消す方法をマスターしたので、苦情が出て再投稿するときはそのバージョンでやろうと思います。

金環食、金星の日面通過など一生に一度の天体現象を観測できて、非常に満足です。梅雨にも入るし、しばらく天体観測は休みにして、放射能汚染の研究に取りかかろうと思ってます。

これからもよろしく。

英国では、再来年かそこらで、今度は水星の日面通過があります。日本では見る事ができません。5月の連休の後なので、そのころに英国旅行にいこうかなと、今から計画してます。