測定時間を20分にして得られたスペクトル全体は次の通りとなった。
コンプトン散乱で反跳した光子は電子との散乱によってエネルギーを失うが、逆に見れば散乱電子は光子からエネルギーをもらうことになる。検出器は散乱電子がつくる電流測定をもとに光子のエネルギーを算出するので、計測器に現れる「ガンマ線のエネルギー」は散乱電子が担うエネルギーに相当する。
このエネルギーが最大となる場合がコンプトン端なので、θ=180°の場合の反跳光子のエネルギーE(θ=180°)を、最初に持っていた光子のエネルギー(つまり今は1461keV)から引けばよい。K40の1461keVのガンマ線の場合、計算するとだいたいコンプトン端は1244keVとなる。つまり図のコンプトン端(compton edge)の位置はだいたい1244keVということになる。
ちなみに式で書くとコンプトン端は次式で与えられる。
ただし、Eγは光電ピークのエネルギー(つまり今は1461 keV)である。
次に、K40の1461 keVの光電ピークをGaussian fittingしてみた(gnuplot使用)。初期値は昨日の善光寺のスペクトル分析で得たK40の光電ピークのGaussian fittingのパラメータにした。結果は次の通り。
さすがに昨日のfittingより綺麗にできた。つまり717番目のチャネルが1461keVに相当するということだろう。この線形関係がすべてのエネルギー領域で成り立つと仮定すれば、Cs-137の662 keVのピークは325番チャネルに相当する。Cs-134の606 keVと796 keVのピークは、それぞれ 280番と368番チャネルに相当することとなる。
この結果を昨日の長野市のデータに重ねて見るとこうなった。
ちなみにセシウムの3つのピークを、その間隔は保ったまま平行移動(右に9チャネル分、つまり+9)してみた。相対エネルギーは出せるかどうかに興味があるのだが、結果はだいたい次の通り。
さて肝心のspillover correctionだが、ROI(region of interest、要は積分範囲)をCs-134,137、そしてK-40のピーク、およびそれらのtailが含まれるように設定し、一度20分の測定にかける。出て来たCPSの積分値の比をみると1.187389となった(つまりコンプトン散乱が起きる確率の方がちょっとだけ大きいということ)。これをもとにLB2045を設定すると、K40の光電ピークの面積を基に、ROI中に含まれるK40のコンプトン散乱スペクトルをさっ引いてくれる。昨日得たベクレル値(210Bq/kg)も、spillover correctionを適用して求めた値である。
追記:以前、LB2045のパンフレットを用いて、LB2045のスペックについて検討したことがあった。半値幅つまりσについての情報もそこで議論したのだが、果たしてその通りの性能が出ているかどうか、今回の実験で確かめることができる。パンフレットには「Cs-137の660keVピークで7.5%(FWHM)」とある。これは、半値幅は660keVの7.5%だ、という意味だから、σ=25keVという意味だ。今回得られたK-40(1460keV)のGaussian fittingではσ=14.3(チャネル幅)なので、チャネルの単位をkeVに変換すると(これは1460keVのピークが717番目のチャネルに来たということを利用する。つまり 14.3 * (1460/717) =29keV)、σ=29 keVに相当する。仕様に近い値となっている。おそらくCs-137試料でやったら仕様通りの値になるのではないだろうか?(時間がないので今は後回しにします...)
0 件のコメント:
コメントを投稿