まずは、駅近くのホテルで寿司を楽しむ。和歌山の魚だということで、久しぶりに、刺身を注文する。先日も報道されていたが、福島の原子炉には亀裂や穴が空きまくっているようで、水位はわずかに60センチ。毎日9トンの水を注ぎ込んでおきながら、そのほとんどが漏れているということは、ストロンチウム90どころか、プルトニウム239やその他の恐ろしい「死の灰」のほとんどが、きれいさっぱり環境、つまり海に今でも流れこんでいるということだ。そんな場所の魚(つまり関東近海の太平洋)は到底楽しんで食べる事などできっこない。しばらくは、寿司を食べるのは関西のみのつもり。ということで、結局この店には二度食べにきた。探せばきっともっと美味しいところはあるはずなんだろうが、神戸というのは食べる場所を探すのがなかなか難しい。
すこし斜面にそって移動してみた。神戸のこの辺りは、六甲山の斜面に沿って高級住宅街が展開されている。神戸の大地震の傷跡はもうないように見える。それにしても、こんな斜面に高層建築を建てて大丈夫なんだろうか?もう地震は当分やってこないと高をくくってないだろうか?杞憂に済めばいいのだが。
六甲山に登ってみる。意外に高い山で驚いた。山頂までの道のりはグニャグニャ曲がりくねっている。谷に大きな橋がかけてあったところで道を間違え、危うくトンネルの向こう側の丹波に抜けてしまうところだった。
関西とはいえ、6時半を過ぎると夕闇が迫ってくる。この日は、接近した金星と木星の丁度真ん中に細い三日月が入り込んでいて、非常にきれいだった。(写真を撮ってみたが手ブレがひどくうまく行かなかった。残念。)
神戸の夜景はそれなりにすごかった。しかし、この灯りを手放しで喜ぶことはできないと思ったのも事実。少なくとも、せっかくの綺麗な星空が見えなくなってしまうのは見過ごせない。しばらくすると土星が上がって来た。今は、火、木、金、土が観測できる素晴らしいタイミングなのだが、いかんせん天気が悪い。神戸も東京並みに寒いと思った。(翌日、六甲はすごい吹雪となり、真っ白の世界と化した。下から登ってくると、嘘のような景色の変化でとても驚いた。たぶん、学会会場に居ただけの人たちは、神戸の山の方で積雪があったなんて説明しても、「わかった、わかった。ところで、今日4月1日だっけ?」と笑われるだけで、きっと信じてもらえないだろう。)
夜の六甲山と神戸の夜景 |
翌日、空き時間を使って再び六甲山を目指した。六甲の頂上付近は路面が凍結ぎみで緊張する。しかし、そこからちょっと南にくだっただけで雪は消えてしまった。ものすごく局所的な気候変化だ。神戸って実は変化に飛んだ、おもしろい場所なのかもしれない。この日の目標は線量測定と土壌採集。まずは、JB4020で線量を測定する。
六甲山系のとある山頂にて。 |
自然放射線量分布図 |
六甲の花崗岩 |
さて、線量測定の結果はというと、RAMIによる平均値は0.1μSv/h(生データ)となった。補正すると、0.05μSv/hに相当する。これは地質学会のデータ通りの値だ。つまり、福島原発事故に由来した汚染による、線量上昇は無いと解釈してもいいだろう。(もちろん、γ線スペクトル分析をしてより確証を高める必要はあるが。)この場所の測定でおもしろかったのは、一度だけ0.21μSv/hという値が表示されたことだ。これは、予想通りに結構高めの自然放射線がときどき六甲の山からは出ているということだろう。同じ0.1μSv/hという平均値が出ても、関東の汚染が弱い地域では各々の測定値で0.2μSv/hを越える値が出たのを見た事はない。(0.16μSv/h程度が上限のことが多い。しかし、東大本郷では0.2μSv/h以上の値が観測されている。)