この一年で準備したのは、まず投影板。Vixenの純正で約1万円した。結構高い。投影板の観測で一番勉強になったのは、太陽の軸決め。正確に言えば、地球の回転方向を利用して、太陽の上下を定義する方法。しばらく流して(地球の自転のこと)、黒点の動く方向を見極めてから、黒点の位置を記録する。地球の回転は意外に速いし、投影板は触れるとぶれてしまうし、手書きの黒点記録はとても大変だった。そこで、カメラでバシャッと撮ってしまう方法に切り替えたが、投影板の撮影では必ず像が斜めになってしまうから、記録した画像の座標変換が必要になる。計算が案外ややこしくて、未だに解いてない....投影板の観測は、でもそれなりに楽しくて、結構長い事やってしまった。おかげで、ファインダーを使わず、影の面積が最小になるように望遠鏡を太陽に合わせる方法も身につけることができた。
次に購入したのが、ソーラーフィルター。つい最近、Stargazeという天体観測機材の専門店から購入したばかり。5000円ほど。A80Mfの口径に合わせてフィルターを加工してくれるのは嬉しい。でも、それが厚紙のソケットなので、はっきり言って消耗品。せめて、薄手のプラ板か何かにしてくれたら、もう少し長持ちすると思うのだが。それでも、フィルターを使って望遠鏡で観測する黒点は、投影板と違って黒点の滲みなんかもよく写る。このフィルターの安全性はなかなか高く安心して使えるのもいい。性能は可視光は10万分の1減光。赤外線に関しては、テレビのリモコンの赤外線を使って透過実験をやってみたところ、まったく透過しない。OKだ! 電話で問い合わせてみると紫外線もよく遮断するようデザインされているそう。安全第一で設計されているとのこと。さて、フィルターを使うと「黒点流し」の方法で太陽の座標を決めることができない。最初はどうしたらよいのかちょっと困ったが、ネットサーチしてある方法を知った: 30秒間隔でペア写真を撮っておけばよいのだ。得た画像をPCで解析して、太陽の座標を数値的に決める事ができる。javaで書いたプログラムを使って、回転角度の計算をしたりした。軸を揃えた画像を比較暗合成して、黒点の移動の様子を調べたり、太陽の自転軸の角度を調べたりした。フィルターのお陰で、ずいぶん黒点観測の解析が進んだように思う。やっぱり、楕円から円への座標変換をしなくても、最初から丸い太陽で写ってくれた方が解析はやりやすい。ただ、このフィルターは10万分の1に減光するので、ちょっとでも雲がかかると像が写らなくなってしまう。快晴のときしか観測できないとなると、機会が限られてしまう。黒点観測は毎日やるのが基本なのでこれは不利だ。何より肝心の金環食本番で、ちょっとでも太陽が雲に入ったり、薄雲がかかったりしてしまうと、肉眼では見えるのに望遠鏡で見つからない、なんていう恐ろしい事態だってありえる。Stargazeに「もう少し減光度合いの弱いものも作らないのか?」と聞いてみた所、その予定はないとのこと。10万分の1の製品を作るだけで手一杯というのが理由。残念。
そして昨日、ついにNDフィルターが手に入った!品薄で、入手困難だと噂されていたので、あまり期待はしていなかったのだが、間際になってなんとか手に入れることができた。(ちょっとした奇跡かも。)これはカメラの望遠レンズに付けて利用する。ケンコー•トキナーのND100,000で、15,000円足らず。結構値は張るが、stargazeのソーラーフィルターに比べれば、割安なのは明らか。肉眼で覗いてみると、太陽が白く見えた。説明書に依ると、iso100, f/8.0で1/2000secにするとよく撮れるというので、さっそく手撮りしてみた。1/2000秒なら意外に手ブレは目立たない。
快晴の正午頃に、真上を向いて手撮り。手ブレがあまり目立たない! |
これで、機材の全ては準備できた。明日一日使って、高度の確認や露出のテストなどをやってみようと思う。CD-1を使って大まかにでも追尾できれば、撮影は楽になると思うので、夜の間に極軸合わせをやっておいてもいいだろう。
天気予報だが、一週間以上前の予報でみた絶望的な状況から、改善しつつあるように思える。(一週間で予報がころころ変わるということは、天気予報は当たらないということを暗示しているのだろうか。)
JWAによる金環食当日の天気予報。 左から、5/11, 5/16, 5/19に発表されたもの。 |
金環食は、意外にコースから外れた所で観測した方がおもしろいかも。角度がつけば、なんらかの天文量の計算ができるかもしれない。
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