2012年12月29日土曜日

雪の中央道を走る

笹子トンネルの天井崩落事故以来、中央道の下り区間も大月JCTから勝沼までが通行止めとなっている(上りは一宮御坂から大月JCTまで)。明日からは、笹子トンネルの下り線を対面通行にする形で部分開通させるらしいが、今日あえて国道20号を走るつもりで中央道を下ってみた。

最近、首都高4号新宿線は空いているような気がする。そして3号渋谷線は逆に混雑が増したような気がしている。名古屋から西へ向かう交通が、中央道を避け、東名に移ったからだろうと勝手に推測しているが、今日も4号線は実に空いていた。しかし、その快適なドライブも大月JCTまでだった。

八王子から山岳地帯に入ると、最初の「緊張」ポイントである小仏トンネルが現れた。事故以来、久しぶりの中央道のトンネル。やはり怖い。が、よくみるとこのトンネルは丸天井で、排気用の大型扇風機が天井に取り付けられていた。つまり、吊り天井式ではなかった。少し安心したものの、ちらちら天井を眺めるのは危ないので、速めの速度でとにかく通り抜ける事に専念する。この後、中央道は左ルート、右ルートに分岐するのだが、今日は右ルートを選んだ。ここは短いトンネルが集中して現れる。しかし、どれも丸天井だったので胸をなでおろした。なんだ、快適じゃないか、と安心したとたん、車線規制が突然始まり、いきなり一車線まで減少する。慌ててブレーキを踏んで、ハンドルを切る。富士五湖方面への分岐道へ誘導される。笹子峠を国道20号(甲州街道)で抜けるなら、ここ(大月)で下りる必要がある。ICの出口直前のトンネルで突然、前を走っていたバスがハザードランプを出して急停車した。渋滞がいよいよ始まったのだった。

高速道に発生した渋滞列の中で待つこと15分。ほとんど動かない。こんな調子で峠を越えるのは堪え難い。しかも地図をよく見ると甲州街道も結局トンネルを抜けることになるようだ。大渋滞のまま古いトンネルに突入し、そこで長い時間を過ごすのだけは、ご免被りたい。予定を変更し、河口湖まで行くことにする。

予定が変更された結果、河口湖ICで一般道に下り、国道137号で一宮御坂へ抜けるか、それとも更に西へ抜けて国道358号で甲府南を目指すか、あるいは更に更に西へ走って国道52号から中部横断道経由で双葉JCTに出るか、3つのルートのどれかを選ぶことになった。

このとき、NEXCO中日本が、迂回路として137号を推奨しているとは知る由もなかった。今さらながら調べてみると、河口湖ICを下りてから24時間以内に、一宮御坂ICで中央道に復帰すれば高速料金を安くしてくれるとか。どうりで、137号へ抜ける車が多かったわけだ。トラックなどは全部そっちへ行ってしまった。

私はというと、河口湖で下りたとき、間違えて139号を逆走し、西へ向かってしまった。たしかに、甲府は河口湖から見て西の方にあるのだが、137号に乗るにはいったん139号を東方面に「逆向き」に走らないと「正しい向き」とならなかったのだった。途中でこのミスに気づき、右折して河口湖大橋に抜けては見たが、この道がひどく渋滞していたので、「これは河口湖迂回ルートを選んだ車の大勢は137号を通るのだろう」と予想。137号で峠を越えるのはあきらめ、その手前で西湖、そして精進湖へ抜けることにした。

途中、河口湖の畔のカフェで休憩す。雪が降り始めてきた。河口湖大橋の袂にあったカフェは混んでいたが、ここは貸し切り状態。雪が降っていなければ、目の前の湖の向こうに富士が大きく見えただろう。吹雪になり始め、視界が悪くなってきた。富士の半分から上は白い靄に隠され、裾野だけが見えた。暖かいコーヒーを飲み干し、スコーンをほおばって、再出発する。

西湖は雪景色となった。岸辺の岩が妙にごつごつしているな、と思ったのだが、多分あれは溶岩だったんだろうと思う。精進湖の手前は、青木ヶ原樹海だということを忘れていた。久しぶりに訪れた深い樹海も雪に埋もれて白黒の世界と化していた。精進湖のところで、このまま西進して身延からの52号線へ行くか、それとも右折して358号線で峠を越すか、少し迷ったが、交通量が少なそうに見えた後者のルートを選ぶ事にした。吹雪は続いていたが、路面にはまだ積もっていなかった。これはこの後に現れる厳しい山道を抜けるには幸運だったと思う。

この山道に沿って、隠れ里のように深い山のなかにひっそり横たわっていたのが、上九一色村だった。初めて来たが、これほどの奥山だとは思わなかった。警察もここまでくるのは大変だったろう...サティアンがあった場所は、きっとさらに山奥だったはずだ。

上九一色を越え、古いトンネルをくぐると、目の前に甲府盆地が開けて来た。雪は小やみになっていた。甲府南から中央道に復帰する。これで一気に信州まで...と思ったが、双葉JCTを越えた辺りから再び雪が舞い始め、最後は吹雪になってしまった。乗用車とトレーラーの事故があったのは、八ヶ岳SAの手前。辺りは薄暗くなり、雪の白さが際立ち始めた。その景色の中に、非常灯火の赤い火花が幻のように列を成して光る。この辺りから積雪がひどくなり、ノーマルタイヤで走る関東からの乗用車は低速運転し始め、後方へと去っていった。ひどい積雪と吹雪の中、中央道をただ一人走ることになった(時折、諏訪ナンバーの車に追い抜かれたけれど)。日が沈むと気温がぐっと下がり、スタッドレスとはいえタイヤが微妙に滑り始めた。仕方なく速度を落とし、諏訪南まで雪の高速をひた走る。

原村は大雪だった。車を止めて、歩いてみる。ツルツル滑って、転びそうになった。犬は喜んで吹雪の中を走り回っている。車に戻り、試しに急ブレーキを踏んでみた。結構滑る。気温が下がり切ってないので、圧雪すると融けて滑りやすくなるようだ。これから暗闇のなかを、吹雪の霧ヶ峰に向かうのは狂気の沙汰のような気もしたが、久方ぶりの年の瀬の大雪を楽しまない手はない。大門峠を目指すことにする。

白樺湖までの道のりは、予想していたとはいえ、息を飲む道のりとなった。所々でハンドルをとられ、横滑りした。ヘアピン手前ではブレーキを掛けすぎないよう、そして絶対に止まらないように、空回りする車輪を回し続けた。下りの対向車線はスピードが出せず、大渋滞していた。大型のトラックとすれ違う度に、冷や汗をかいた。

雪はまだ降り続いている。ストープの揺れる赤い火が眠気を誘う。暖かい部屋の窓から、積もる雪を眺めるのは至福の時間だ。昨年の美ヶ原の経験が生きたと思う。今年も、これから足を伸ばして、雪の美ヶ原を再訪してみてもよいかも。真っ白の雪に覆われて、誰もいなくなった霧ヶ峰や美ヶ原ほど美しく楽しい場所はない。

年の瀬の夜の雪。

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