古典力学の第一法則に「慣性の法則」というのがある。多少物理学上の正確さは損なわれるが、この法則の内容は「止まっているものは止まり続けるし、動いているものは止まらない」と表してよいだろう。
政治家や国家が間違いを犯す時、それはまさに慣性の法則に従っているように見える。今までやったことがないことは(外部の力が働かない限り)やらないことにし、やってしまったことは(よっぽどの圧力がかからない限り)やり続ける。それがいいとか悪いとか主体的に判断する「知的生命体」としてではなく、ただ単に慣性の法則に従う「物体」のよう振る舞うから興味深い。そういえば、将棋倒しの事故の解析などでも、押し寄せる人間の流れを「意思をもった知的生命体」としてではなく、「流体」として考えると比較うまく説明できると言う話を以前聞いた。集団というのは単なる物理体となるのだろうか?最近買った「原発危機と東大話法」にも同じようなことが書いてあった。
実は、スペースシャトル(チャレンジャー)が爆発した事故のときも、この「慣性の法則」がNASAの上層部に生じていたという話がある。ノーベル物理学賞を受賞したアメリカの理論物理学者、R.P.ファインマンが書いた"What do you care what other people think?"という本にその内容が書いてある。
福島原発の事故が人災であると思うなら、この本は読む必要があるだろう。ファインマンは、事故調査委員の一人として事故の原因解明にあたったが、驚くべきこと(それは日本の原発政策や日本政府の態度と全く同じであることだが)を幾つか発見する。そして、調査委員会での経験に基づき「国がどんな間違いを犯したのか」について詳細に語っている。あまりにも相似性があり、国家の振る舞いというものは、その国固有の文化や歴史に依らず、「普遍の原理」に従うのではないか?と疑ってしまうほどだ。それを「事故の力学法則」と呼ぶことにしよう。
スペースシャトルの爆発事故を許したNASAの場合、事故の力学法則がどう働いたか見てみる。
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