東大(文京区本郷) |
実は、ここは、セシウム汚染がひどいのではないか?という噂が立ったり消えたりした、いわく付きの場所なので、他に測定に適当な場所はあったとは思うが、自然と足がここに向いてしまった。近くには楠の大きな木があるので、その下の土を薄く削ってベクミルで測定してみることにした。
楠のある場所 |
表面5ミリ程度の深さで、だいたい30平方センチ程度の広さから薄くかき集めた。採集地点にJB4020をおいて、(地表面の)線量測定をしてみると0.13μSv/h(生データ)という値が出た(もちろんRAMI解析で)。ちょっと高めだが、補正すれば0.08μSv/h...まったく問題無いとNHKの解説員は説明するだろう。
また、放射能汚染の実態や解決策など様々な研究の進む東大ともあれば、自分のキャンパスの状況はよく把握しているだろう、と皆思うだろう。隣の上野の汚染は結構ひどいので、東大の敷地が汚染無しというわけにいかないはずだ。とはいえ、このシンボルとも言えるこの場所は、きっとよく整備してあるだろう、汚染があればキチンと除染したことだろう....などと勝手に想像していたのだが、この予想は簡単に裏切られた。(東電のお偉方や上級技術者を生み出しているのも、ここ東大の工学部や経済学部であるわけで、彼らの主張で、東大は「汚染されているはずはない」から何もしなくていい、ということになったのかもしれないが...)
ベクミルのLB2045に計測をかけた直後から、採取した土壌のスペクトルには、セシウム三兄弟のピークが林立し、あっというまに、およそ2000Bq/kgの強い汚染があることが明らかとなってしまった。今まで測定した中では、松戸の土に次ぐ強い汚染だ。
上野や日比谷の汚染も加味すれば、東京東部の土壌には強いセシウム汚染があることがはっきりした。もっと詳しく調べれば、文京区や台東区は相当汚染されていることが判明するだろう。東京電力の原子力発電所から放出された放射能物質で汚染されたのは、千葉の柏や松戸だけではなかったのだ。
東大(本郷)の土壌のセシウム汚染。 見事なセシウム三兄弟のピークが出た。 |
また、線量だけで汚染の有無を判断するのは、なかなか難しいということも再確認できた。今までの結果を復習してみると、0.15μSv/h以下の場所の土壌が汚染されているかどうかは、ガイガーカウンタやシンチレータで調べるだけでは判断がつかない。LB2045などのスペクトロメータによって、γ線のスペクトルを確認するまでは、汚染の有無はわからない。(汚染の程度は、スペクトルの山を積分すればわかる。)
今日この場所には、外国人留学生がベンチに寝そべっていたり、近所の子供達が這いつくばって泥だらけになって遊んでいたり、受験生が記念写真をとっていたりと、昔と同じ微笑ましい風景があった。まさかこれほどの汚染がある場所にいるとは、彼らは露も思っていないだろう。東京は汚染されているという認識はそろそろ強くもったほうがよいのではないだろうか?(このきれいなγ線スペクトルを見た後で、「基準値以下なら大丈夫」などと、まだ言えるだろうか?)
5 件のコメント:
KUZZILA 先生
いつも興味深い情報をご提供いただきありがとうございます。 今回は懐かしく画像を拝見しました。
ところで、ひとつ質問させていただきたく思います。
先生は多くの場所の土壌をベクミルで測定されています。 今回はサンプルの採取方法につき「表面5ミリ程度の深さで、だいたい30平方センチ程度の広さから薄くかき集めた」と具体的に説明していただきました。 東大構内以外の土壌サンプルもすべて同様に約5mmほどの深さで採取されたのでしょうか?
よろしくお願いを申し上げます。
enniethebearさんへ、
厳密にいうと、採集地点によって地面の状態が異なるので、いつも同じというわけにはいきません。
ただ、東大(本郷)の場合は採集しやすかったです。同じような状況だったのは川崎や北の丸の場合です。
名古屋と佐久のケースは、結構深く掘りました。測定をやり始めたばかりだったので、結構いい加減に採集しましたが、だいたい1センチから2センチ程度まで掘り下げました。広さとしては10x10平方センチ程度です。
東大農学部の塩沢氏の論文によれば、5センチ程度の深さまでセシウムは浸透するということなので、今はこれ以下の深さまでならだいたいよし、と考えてます。ただ、あまり深く掘ると大量の土砂となるので、最近はできるだけ薄く表面をひっかくように採集する方針に統一しました。
次は軽井沢の周辺を予定していますが、落葉や腐葉土となっていて採取しにくいと思います。深めに掘るかもしれません。
KUZZILA 先生
土壌サンプルの採取方法につき早速に詳細な説明をいただき御礼を申し上げます。 この情報に基づき、“明確な汚染”と“強い汚染”につき考えてみたいと思います。
重ねてありがとうございました。
がーん!!東大本郷も、かなり汚染されちゃってるんですね。。残念です。あの楠の下で時々、お弁当食べたり、猫と遊んだり、友達としゃべったりしてました。。ていうか、空間の放射線量はあんまりあてにならないのですね。今はわりと空間線量落ち着いちゃってるので安心かとおもいきや。。もうあんまり行くこともなくなっちゃってるのですがずいぶん通ったところだし、今も多くの若い学生さんも通っているのですよね。。都内(目白)の幼稚園の土壌検査したところセシウム134と137それぞれ100ベクレル/kgいってたので結構大騒ぎになって、お友達のドイツ人のパパさんが(ドイツ人はかなりうるさいです)庭遊び制限してくれ!といってました。東大はそれよりずっと高い。。早川先生、児玉先生も言うように、特に子供や若い人たちには、土や、風塵や、汚染物がたまりやすい側溝などに気をつけて!と、(少なくともここしばらくは)いいつづけていかないといけませんね。。
とびねこさんへ、
コメントありがとうございます。
空間放射線量は低くくても、それは汚染が無い、ということを意味しないことを、僕も最近知りました。
線量だけみれば、東京のほとんどは汚染されてないように思えます。結局シーベルトというのは、「人間の健康にどれだけ害を与えるか」という指標の単位なので、ものすごく曖昧な量なのです。(そもそも、ガイガーカウンターは線量を測る機械ではなく、放射線の個数を測る機械ですし。)
東京の汚染は確実にあり、それはこれから300年間続きます。私たちが生きている間に、もう2010年の世界に戻ることはないと思うと非常にがっくりきます。
東大本郷の汚染がひどくて驚きましたが、今までの結果をまとめると、お茶の水界隈あたりに「境界」があって、それより東が汚染がひどいと思われます。皇居やそれより西にある新宿、渋谷などは本郷ほどは汚染されてません。が、その汚染具合は一様で、500Bq/kg程度です。
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