2012年2月13日月曜日

事故の力学法則(4):O-ringとエンジンの問題

首都ワシントンに飛ぶ前に、カルテックの敷地内にあるNASAのJPL(ジェット推進研究所)で、NASA技術者たちと意見交換する機会をもったファインマンは、そこでO-ringの問題について知る。

Oリングというのは、輪っか状のゴムのことで(形がOに似ているからOリング)、真空ポンプやホースの継ぎ目など、隙間を塞ぐ必要があるときに使用する。シャトルの固体燃料ブースターは大きな塔のような形をしているが、それを一枚の鉄板で形成するのは不可能なので、小さな円環をつなぎ組み合わせてつくる。このつなぎ目に隙間があると、そこから燃料が漏れて引火し爆発する恐れがあるため、Oリングで封じこめるわけだ。もちろん、スペースシャトルで使用されたOリングはとても大きなゴムの輪っかだ。

しかし、JPLの技術者たちによると、Oリングの封印を突破して燃料が外部に漏れる事故が起きていることはよく知られており、しかもOリングの内部に設置された亜鉛と酸化クロムの合金からなる断熱材が燃焼の熱で泡状に膨張し、Oリングに損傷を与える可能性があることが指摘されていたという。これが本当なら、燃料タンクの外部にもれた燃料に引火して、シャトルが爆発した可能性が浮上してくる。

もう一つ技術者が指摘したのは、エンジンの安全性だった。エンジンの開発には苦労したし、完成した後も問題がいろいろ持ち上がってきて、打ち上げの度に「何事もありませんように」と祈っていたという(英語の口語で、have one's fingers crossedという)。あるエンジニアは、チャレンジャーの爆発を見て「ああ、やっぱりエンジンがもたなかった」と思ったという。

JPLでの意見交換会の後、飛行機でワシントンDCにファインマンは飛び立つ。そして、NASAの独特の文化に触れて色々と驚くのだった

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