2012年4月14日土曜日

佐久平(千曲川近く)の再評価

信州の東の端にある佐久地域は汚染の境にある。北佐久に属する軽井沢、隣りの御代田町の山岳地帯の一部、そして内山峠を中心とした佐久市と下仁田の県境、さらには十石峠付近の南佐久と秩父の県境などの汚染がとりわけひどい。

面白い事に、線量だけみれば、これらの汚染地域を越えて西に行くと、信州のセシウム汚染は軽微となる。松本、大町、伊那、木曽の汚染はかなり弱いし、八ヶ岳裏の諏訪地域の汚染も軽微なものだ。

ただし、善光寺平、塩田平(上田や小県)、そして佐久平の汚染がどうなっているかはあまりわかっていない。この地域は千曲川にそって大きな盆地となっているが、それはかつてのフォッサマグナに広がる海の名残(その後、火山噴出物などによって浅くなり巨大な湖となった)だ。つまり、この千曲川のある平らな谷に沿って、軽井沢に侵入したセシウムクラウドは長野市まで流れ込んでも不思議ではない。(国立環境研究所のシミュレーションでは事実そうなっていた。)実際に土壌や線量を測定したら汚染があったという報告もあるし、それほどひどくないという報告もある。場所によって局所的に汚染があるかもしれないが、広域的にみれば汚染が軽微なのかもしれない。これから詳しい調査をしなければならない地域であることは確かだ。

今年の正月に採取した佐久平の千曲川ちかくの砂土のγ線スペクトルには、なんとなく構造があるように見えたが、それがセシウムのモノであるかどうかは断言できなかった。そこで、関西の「無汚染地帯」のスペクトルと比較してみることにした。同じ方法で分析した名古屋の土は汚染はかなり弱いという結論になったが、果たして佐久平はどうか?結果は次の図のようになった。

左が佐久平、右が北の丸(東京)のスペクトル。
右のスペクトルの縦軸のスケールは、左のスペクトルの
6倍になっている点に注意。
参考のために、セシウム三兄弟の構造がよく見える皇居北の丸のスペクトルと並べてみた。セシウム134の604keVのγ線ピークに相当する場所に山があるのがわかる。しかし、これはビスマス214の609keVのピークと被っている可能性がある。というのは、セシウム137の660keVのピークが目立たないからだ。さらに、セシウム134の796keVのピークは見当たらない。なんらかの構造が無いわけでもないが、完全なセシウム三兄弟の構造があるか?と問われれば、「成していない」と答えるべきだろう。

うさん臭い構造がビスマスなどの自然放射性物質からのγ線の寄与なのか、それともそれらの自然放射線に埋もれたセシウムのピークが隠れているのかは、LB2045では判別つかない。これも名古屋と同じで、ゲルマニウム検出器による測定をすれば白黒つくであろう。

佐久平は広いし、東の山際(佐久山地)の群馬県境はひどい汚染があるわけだし、この結果で安心するわけにはいかないだろう。汚染地域の山地から、佐久平中心部の千曲川河畔に向けて、どのように汚染の度合いが変化(減少)しているのか、詳細な研究が必要だと思う。

私の測定によれば、それは汚染地域の境界のすぐ外で、意外に急速に減少しているように思う。たとえば、森泉山の山裾と頂上では、線量が大きく変化したのは、典型的な事例だろうと思う。

0 件のコメント: