2012年11月10日土曜日

茨城のセシウム汚染:鹿嶋はホットスポットか?

鹿島神宮から3キロも東に行けば、もう太平洋に出てしまう。逆に西へ同じだけ行けば、北浦だ(さらに5キロも西進すれば霞ヶ浦)。鹿嶋は水に囲まれた砂州状の地理を持っている。

鹿嶋の海岸には先の大震災では津波が押し寄せ、海岸から1、2キロの場所は波にのまれてしまった。ただし、そのわずか先は高台になっていて、あやうく難を避けたという。幸運にもギリギリのところで津波を免れた民家から、庭の土をもらう事ができたので、ベクミルで測定してみた。

鹿嶋の沿岸部は津波の被害にあっているので、一面、砂質の土壌に現在は覆われている。もちろん、原発事故が起きたのは津波の襲来後だから、鹿嶋にやってきたセシウムのうち、津波を被った場所では砂に「死の灰」は降り掛かったと思われる。セシウムは砂には沈着しにくいので、雨水などによって現在は海の方へ洗い流されてしまった可能性がある。

一方、津波の被害を免れた場所には粘土質の土が残っている可能性がある。そこにはセシウムが現在でも沈着しているだろう。とはいえ、もともとが砂州であった鹿嶋の地は、土壌の母体が砂だろうから、それほどセシウムは沈着していないと高をくくっていた。実際、秋田の海岸や、神奈川の海岸など砂浜で測った今までのデータには、セシウム汚染の痕跡は見られなかった。とはいえ、神奈川も秋田ももともと汚染の少ない場所だった。砂質だからといって、福島に圧倒的に近い茨城の海岸の放射能汚染が低いとはいいきれないともちょっとは思った。とはいえ、その思いは「ほんのちょっとだけ」だった。

だから、ベクミルで鹿嶋の土のスペクトルを見た時、驚いてしまった。セシウム134, 137のピークが屹立し、その値は5000 Bq/kgを越えていた。これは、福島の周辺地域、あるいは柏、松戸、そして軽井沢といった「ホットスポット」級の高い汚染だ。
鹿嶋の土壌のγ線スペクトル
鹿嶋がホットスポットではないか?という噂や議論はあまり聞いた事がない。そこで、ネットサーチをかけてみたら、一件ヒットした。このページではガイガーカウンタによる線量測定だが、鹿嶋は全体的に0.2μSv/h前後の高い線量レベルにあり、その中に1カ所0.5μSv/hという非常に線量の高い場所があることが報告されている。またお隣の潮来で3.6μSv/hという超高線量を叩き出した場所があることもわかった。

つぎに、文科省の汚染地図を確認してみた。すると鹿嶋にはセシウムが結構降っていることが記録されていた!
文科省の航空機による放射線測定地図
鹿島灘に沿って汚染の濃い地帯が伸びている。そして鹿嶋は点状に濃く汚染された地域、つまり文字通りのホットスポットとして表されているのがわかる。しかし鹿嶋に留まらず、汚染は霞ヶ浦の周辺へと広範囲に渡っていて、牛久の東側に殊更汚染のひどい場所(これが真のホットスポットかも)がある。千葉の印西市から、茨城の稲敷まで高いセシウム汚染地帯があるのもわかる。成田の汚染もひどそうだが、汚染レベルは一つ下らしい。つくば市も成田と同じレベルにあるという。

群馬大学の早川さんのいわゆる「早川マップ」では、関東のホットスポットをつくった放射能プルームの、太平洋側からの侵入口として鹿嶋を捉えているように見える。

稲敷の土も採集できたので、ベクミルで測定してみた。結果は1250 Bq/kgと鹿嶋よりは汚染レベルは一つ下ではあるが、やはり高い汚染水準だった。

また筑波大学、水戸市などの土壌についても測定してみると、それぞれ625 Bq/kg,および665 Bq/kgとなって、稲敷に比べると汚染レベルはさらに一つ下のレベルであることがわかった(神奈川などと比べれば圧倒的に高い汚染ではあるが)。

土壌の放射能地図
全ては、文科省の汚染地図と首尾一貫した結果といえる。

鹿嶋はホットスポットなのか、それともホットスポット周辺の高汚染地帯なのか?これを判断するには、牛久の東に行って土壌サンプルを取り、ベクミルで確認する必要がある。また、印西市などでもサンプル採取して、鹿嶋と同レベルかどうか確認することも大切だろう。予想するに、この辺りのセシウム汚染は、文科省の地図がかなり正確に記述していると思う。が、結論は確認作業が終わってからにしよう。

最後に、ひとつ面白いことがあるので、メモっておこう。
鹿嶋市のホームページでは、市内の小学校の校庭の線量を毎月公表している。最新のものでもよいのだが、分かり易いように、例えば昨年の12月の報告を見てみる。どの小学校も概ね「低い」値なのだが、なぜか「大同東小学校」だけがずば抜けて高い値を示している。実は大同小学校は鹿嶋の北にあり、その位置は高台の森の中だという。google mapで見てみると、海には近いが確かに少し高台になった森の裏手に位置しているように見える。一方、線量の低い、たとえば「平井小学校」は海岸脇にあって、ここは津波に襲われたという。(現在も砂とがれきに覆われているとか。)google mapで確認すると納得である。

鹿嶋市役所が、律儀に線量を毎月測定し公開してくれているのは、ありがたい。しかし、その解釈は載ってないので、住民はこの結果を見てもピンと来てないのではないだろうか?もちろん、これから書くのは一つの説に過ぎないが、それほど外れてはいないだろう:

鹿嶋市が「ホットスポット」かどうか上で議論したわけだが、それとは逆に、鹿嶋市役所の測定では、域内の小学校の校庭の線量はそれほど高くはないようだ。一見矛盾しているように見えるが、これは津波と関係している可能性がある。つまり、線量の低く出た小学校の中には、津波に襲われて砂を被った校庭となっている可能性があり、とすると、セシウムはあまり沈着しないため雨水などで洗い流されて線量が落ちてしまう。一方、津波に襲われず、高台などにあって山土を多く含んだ土壌の校庭には、原発事故直後に降り注いだセシウムなどの死の灰が汚染当初の状況をよく保存したまま残っていて、その結果、線量が高くなっている、というものだ。大同東小学校のグループ(津波被害無し)、平井小学校のグループ(津波被害有り)の2つに分けて、線量がどうなっているか調べた上で、校庭の土質、そして土壌のγスペクトルなどを丁寧に調べることで、情報の意味も変わってくることだろう。鹿島市役所は、ぜひとも丁寧な(科学的な)調査をやるべきだと思う。


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