2015年11月30日月曜日

白亜紀前期の化石:山中地溝帯

ひと月ほど前に採集した白亜紀前期の化石のクリーニングをした。できるかぎり、種の同定を試みてみた。もちろん、この地層の化石にはまだ慣れていないので、最初はかなりの確率で間違ってしまうだろう。習熟するにしたがって修正して行きたい。

トリゴニア
まずはトリゴニアの部分化石。細かい種類まではまだ同定していない。この地層からはよく出るらしいが、30分そこそこで質のよい完体を見つけるのはなかなか難しい。

ついで、非対称型のウニ。たぶん、Heterostarと呼ばれるもの。この標本はウニの裏面(肛門が見える)を見せているが、このときの採集では表側を見せている標本も採取できた。
Heteroster yuasansis
次は二枚貝(bivalves)。高知大学理学部の進化古生態学研究室が公開している、白亜紀の二枚貝の図鑑を参考に調べた。この図鑑は、日本の白亜紀二枚貝に特化しているので、使いやすいと思う。この参考文献を頼りに、自分なりに種を同定してみた。

Thetis japonica, Yabe+Nagao(1928):
白亜紀前-中期の二枚貝。「殻表は成長線がほとんど見えず、全く平滑。膨らみが強く、ほとんど円形に近い外形を持つ。殻頂が小さく、尖っている」などという記述がぴったり一致した。大きさは1cmほど。ツキガイの一種だという。

Mesosaccella choshiensis, Hayami:
ジュラ紀から白亜紀(Barremian)にかけての二枚貝。「殻頂はほぼ中央。殻の前後がほぼ対称。殻表はほとんど平滑。」などの記述があてはまると判断。
Mesosaccella choshiensis(左)。
右側の貝の種類は不明。
多分同じ種類だと思うのがこれ。

Turritella sp.:
巻貝に関しては、高知大の図鑑は使えないので、あくまで個人的な判断に留まるが、イギリスの新生代の巻貝によく似ているので、Turritellaと判断。今回の産地では、巻貝は印象化石として産出することが多い。これもそう。
山中地溝帯ではCassiopeという巻貝が産出するそうだが、これは5-6cmの大型巻貝なので、今回採取した1cm程度の標本とは特徴が合わない。


2015年11月28日土曜日

マンションの杭の偽装:続々報

東京新聞の記事によると、さらに基礎杭の工事に関してデータを偽装している会社の数が増えたという。予想通り過ぎて、驚きがないのが驚き。結局、日本のマンションの基礎は信用できないということを確信した。

こうなると「くじ引き」と同じで、当たりか外れかの問題。何千万も払ってやるようなバクチだと思えば、足を洗った方がよいということになろう。しかし、これが、小学校や市庁舎など、公共の建物にまで及んでいるとなると、単なるバクチとは言い切れなくなってくる。更には、高速道路や橋の支柱とか、駅の建物の基礎とかにまで話が及んでくると、地雷原を毎日走らされるようなものだ。

(図は東京新聞のホームページより)

2015年11月27日金曜日

マンションの杭の偽装:続報

マンションの基礎杭の偽装/手抜き工事は、どうも長年にわたって、かつ広く行き渡っている「慣行」のようなものらしい感じがしてきた。今日の報道では
「三谷セキサン」というこの業界最大手が千葉県のマンション駐車場の杭で「手抜き」をやったのを隠していたらしい。

この会社は福井県の小学校の杭工事でもデータ偽装していることが前日に判明しているが、千葉のケースでは「杭の長さが設計寸法より10メートルも短い」施工となっているようで、単なるデータの偽装とはいえない状況だ。

さらに、ジャパンパイルという業界大手の会社も杭打ちのデータを偽装していることが、すでに判明している。

旭化成建材のケースでは、特定の一人が犯したデータ偽装ではなく、60人以上の社員/関連下請けの社員が偽装を行っていた事が明らかとなり、組織的な「偽装」である可能性が高まった。

杭打ちの会社に派遣社員として勤めていた人は、「こんな偽装、この業界では常識。どこもかならずやっているはず」と言っているとのこと。それが本当なら、もう日本のマンションには住めない。

2015年11月11日水曜日

脱原発のテント村の行方

原発政策に異を唱える人々が集まっているテント村が、近々、強制撤去される、という情報を聞いた。本当なんだろうか?しかも、経産省は「土地使用代」として1000万円以上を要求しているという。本当だとしたら、えげつないやり方だ。

「おまえら、貧乏人なんだろ。カネがなかったら、もうこんなことするなよ。後悔するだけだからな(笑)。」という声が、霞ヶ関のビルから響いてくるような、そんな感じがした。

たぶん、テント村の人たちは「はいそうですか」とは言わないだろうから、しばらくは頑張るはず。そうして、最後は当局が力で排除することになるだろう。沖縄や大飯でやったことを、霞ヶ関でもやってみるのだろう。そういうやりかたは、絶対良くない。知性ある人間なら、辛抱強い「話し合い」で解決すべきだ。

2015年11月9日月曜日

逃げる放射能廃棄物の流れ:佐久平から、今度は伊那谷へ

福島原発が爆発した直後、放射能物質に汚染された関東のゴミ(植木や落葉、木材チップ、稲藁などなど)を焼却した灰(8000Bq/kgまでのもの)が、信州佐久(正確には小諸市だが)に持ち込まれた。

持ち込んだのはフジ・コーポレーションという産業廃棄物処理業者。持ち込んだ先は、豊かな農地のど真ん中に、この産廃業者がつくった最終処分場(実際、真横にブルーベリー農園や農業法人の管理する広大な農場などが広がっている)。

軽井沢や御代田、そして小諸の高峰高原や、佐久市の内山など、群馬県境に近いところではひどい放射能汚染が発生した信州だが、そのわずか数キロ先の佐久平まで下りてくると、土壌の放射能汚染は50Bq/kg程度と非常に軽微なレベルに抑えられていた。これは、高度1000m-1300mで関東より飛散してきた放射能プルームを、ちょうどその標高にある佐久山地の山々が防いでくれたからだ。

東京を含む関東平野の汚染の平均は1,000-3,000Bq/kg、ひどい所は10,000Bq/kgを越えるようなところもあったわけだから、信州佐久平に、わざわざ関東から8000Bq/kgの焼却灰を運んできて捨てるのは、「狂気の沙汰だ」と言う人がいてもおかしくないだろう。

しかし、佐久、小諸の人々のなかには、この最終処分場の存在が不合理であることを感じ取っていた人々がいて、市民運動を起こし、最終処分場に放射能汚染された灰などを捨てないように要望しはじめた。長野県、小諸市、そして佐久市の行政や役人たちは、放射能物質の恐ろしさに関しては、まったくの無知で、素人であったため、市民の声に耳を傾けることに失敗しただけでなく、産廃の肩をもつような態度を見せた。自分たちに寄り添ってくれる行政を味方に、産廃業者は自分たちのやっていることは、「県民、市民のためになっている」と勘違いし、こともあろうに、市民運動を潰すような訴訟を起こした。そのやり方は、「スラップ訴訟」というもので、市民運動を展開する中心人物ひとりに狙いを定めて、個人攻撃するやり方だった。

これに、敢然と立ち向かったのが、市民運動のグループメンバーであり、東京弁護士会の保田行雄弁護士、そして環境学者の関口鉄夫先生だった。

保田弁護士は、カネミ油症事件や、薬害エイズ訴訟で厚生省やその監督下にあった化学工業や製薬業者を相手に闘い、そして現在福島原発事故による放射能汚染による損害に対する賠償を巡って、国と東京電力と闘っている弁護士だ。

また、関口鉄夫先生は、廃棄物と環境の問題に長年携わり、近年では放射能廃棄物や、汚染物質などの問題を、「処理」「環境」の観点から研究し、それを市民活動へと応用している「動く」学者だ。東京新聞の「こちら特報部」の記事で、私は関口先生のことを初めて知った。

フジ・コーポレーションは、「埋め立ては安全であり、人々のためになっているのに、それを批判するとはけしからん」という主旨で、市民運動の中心に立っていた長岡直仁さんを、2013年11月(今から2年前)に名誉毀損で訴え、損害賠償として1100万円を請求した。裁判は当初佐久地方裁判所で行われていたが、事の重要性を感じた裁判所は、上田地裁に場所を移し、より経験のあるベテラン裁判官に裁判は引き継がれた。

廃棄物処理を「必要悪」を見なせば、公共の利にかなう、という司法判断が出てもおかしくなく、裁判の行方を、息をのむような緊張感で見守っていたが、今年の春、ついに判決が出て、長岡さんの完全な勝訴、つまり産廃側は「惨敗」に終わった。

県や市の信頼を失うことを恐れたか、自らの名誉を守るために、産廃業者は東京高裁の抗告し、今度は東京の霞が関に場所を移しての闘いが始まった。一般の市民が、裁判のためだけに、わざわざ東京にいくのは大変なことだ。しかも、高裁の雰囲気には異様のものがあって、判決に不服だとメガホンで叫ぶ人やら、原発再稼働反対や、安保関連法案に反対するメガデモの叫び声、さらには裁判に向かうヤクザ風のひとたち、などなど様々な人で周辺は溢れている。こんな環境に身を置き、裁きに参加する心持ちを察するに、針で刺されるような痛みを感じた。フジ・コーポレーションは、弁護士を入れ替え、増員し、巻き返しを測ってきた。資金力にものをいわせて、圧倒しようということだったのかもしれない。

東京高裁の判決は、またもや長岡さんの勝訴だった。産廃側の主張は完全に「棄却」された。(彼らは最高裁にも訴えるつもりのようだが、おそらく無駄足に終わる、と大方の筋は見ている。)スラップ訴訟では、負ける市民活動グループも多くあるようだから、ほんとうにこの結果には安堵した!

ところがである。佐久平で敗北したフジ・コーポレーション(表向きは関連会社のハクトーの名前を看板に掲げているらしいが)は、今度は強い放射能を帯びた焼却灰(8000Bq/kgまでのものならなんでも)を埋める最終処分場を、事もあろうに伊那に建設する計画を新たに構想しているというから驚いた!微弱ではあるが汚染のある佐久平と違って、伊那谷は関西と同じ「セシウムフリー」の地域だ。市田柿や、寒天など食品工業が伝統的に強い「聖域」とよべる信州の地域である。(信州大学の農学部も伊那にある。)この地は絶対に守らなくてはならない。

長野県が、この処分場建設に許可を出すならば、まだまだ産廃業者の息のかかった「役人」が、善光寺平にはまだまだたくさん居る、ということだ。悪いのは産廃だけじゃない。

リニアモーターカーの問題で傷つけられた南信の人々に、さらなる苦難が降り掛かっている。しかし、佐久平で長岡さんを守って闘って勝ったように、こんどもみんなの団結によって、この挑戦をはね除け、信州の自然環境を守りたい。100年、そして1000年の未来のために。(セシウム137の半減期は30年だから、現在の闘いとは、すなわち、少なくとも300年先の未来のための闘いである。)




2015年11月8日日曜日

東欧の線量計

東欧の街に仕事でいった。研究所の前の建物に線量計がついていた。
結構高い値で驚いた。ヨーロッパ人は「ここは標高が高いから」というのだが、地質も影響しているような気もする。一応、土壌サンプルは採取できたので、あとで調べてみたい。ちなみに、この国には原発はまだないはず。

この研究所には野良犬がとても多いのだが、実は町中にもたくさんいるらしい。かつて流行で買われていた犬が、経済の崩壊で捨て犬となり、野生化したのだと説明を受けた。狂犬病がときどき流行るらしく、そうなると町中大騒ぎになるとか。そういえば、狂犬病は死亡率100%であった...

2015年11月7日土曜日

滋賀県に投棄された放射能廃棄物の行方

最初は琵琶湖畔に異様に線量が高い場所がある、という2013年半ば頃の報告だった(このブログでの記述はこちら)。次いで、それは東電が福島から滋賀県に運ばせた、放射能汚染された木材チップであることが判明(東京新聞のスクープ)。

この後、この汚染木材はどうなったのか、最近続報(東京新聞)があったのだが、忙しくて記録するのを先延ばしにしているうちに、リンクが切れてしまった...ということで、ブログに記録してくれた皆さんの情報を以下にまとめてみる。

まずは、今年の9月中頃に、滋賀県高島市の琵琶湖畔に投棄された、放射能汚染された木材チップの一部が、こっそり群馬県前橋市に運搬されていたことが判明した。

さらに、この報道の翌日、この放射能汚染された木材チップは、前橋市の廃棄物処理業者によって「処理」されていたことがわかった。

そして、さらにこの翌日、この「処理」の意味が判明。なんと、「堆肥」となって市場に出回ってしまったという。少なくとも、群馬県産の堆肥は、セシウム汚染されたものが含まれている可能性がある、ということだ。

しかし、前橋に運ばれたのは、不法投棄された汚染木材チップのごく一部だから、全国に分配されていった可能性がある。出所のわからない、堆肥を買ったり、使用したりするのは控えた方がよいだろう。