2014年3月23日日曜日

「地震の日本史」寒川旭著を読む

寒川旭著、「地震の日本史:大地は何を語るのか」(中公新書、2011年の増補版)

この本を購入した主な理由は一つ:貞観地震の後、なにが起きたか知ること。

2007年に初版が出たこの本は、2011年の大地震を受けて増補版がその年の5月に出版された。とはいえ、21世紀に起きた大地震の項目が後ろに付け加わったのみで、本文に加筆修正はされていない。

その49ページに貞観地震(869年)についての「簡単な」記述がある。この地震が広くは知られておらず、その「再来」についての議論もなかったことが伺える。平安時代の前期に、東北地方で発生したこのタイプの大地震は、1150年の時を経て再び仙台平野を津波に襲わせた(こんどは原発事故も伴って)。

注目すべきは、この貞観地震の後に、大きな地震が2ど続いていることだ。ひとつは関東で、そしてもう一つは関西で。前者は貞観地震の9年後、後者は18年後に発生する。それぞれ、関東大震災、そして南海大地震に相当すると考えられる。

878年に南関東を壊滅させた地震は、伊勢原断層によるものと考えられ、神奈川と東京地方が1週間近く揺れ続け、死者を多数発生させたという。建物はほとんど倒壊し、圧死したもの多数。地面は陥没し、街道は不通となったらしい。これが同じパターンでおきるなら、2020年頃に発生することになる。準備期間は残り5年程度ということになろうか?

887年には、仁和南海地震と呼ばれる大地震が関西を襲う。津波の被害は大阪がもっとも甚大で、京都の寺、神社などの建物が軒並み倒れたという。愛知県でも津波の痕跡が発見されており、東海地震が連動したという説もあるようだ。この地震が同じパターンで再来するとすれば、それは2029年ということになる。あと15年だ。

これらの地震が起きたのは、菅原道真が活躍したころのことである....

2014年3月21日金曜日

放射線による奇形昆虫の増加:毎日新聞より

福島第一原発周辺の昆虫の遺伝子が破壊されている。この遺伝子異常による死滅はまだ起きていないらしく、奇形の形質を取り込んだまま成長/生殖しているものが1割強もいる、という報告があった(アブラムシの仲間)。[リンク切れの時はこちら]


避難している住民がいつの日にか福島の地に戻って来て(300年後?)、(大)昔のように虫達と戯れながら夏の一日を過ごすとき、それは今まで見たこともないような奇妙な昆虫(梅図かずおの「漂流教室」?)に囲まれることになるのだろうか?

「崩れた」遺伝子を元に戻すことはもう不可能だ。本当に美しかった、2010年までの「福島の自然の姿」は、もう二度と「復興」できないのであろう。

宮崎駿の「風の谷の...」では、奇妙な昆虫たちがたくさん登場するが、それがどうして地上に現れたかについては説明がなかった。しかし...こういうこと(↑)だったんだろうと思った。「汚れているのは土なんです」とナウシカは叫んだが、このまま行くと我々はきっと彼女が恨むことになる『先の文明』となってしまうだろう。

2014年3月12日水曜日

残雪と椋鳥

椋鳥が残雪の合間を歩き回っていた。最近よく我が家を訪れる。餌となる虫が地面から這い出してき始めたのだろうか?

2014年3月6日木曜日

名古屋城址公園の再測定

名古屋の土壌測定は2012年2月にベクミルで行い、モニター画面の分析により、いろいろと議論した。とにかく微妙なスペクトルの構造を、解像度の低いモニター画面だけで分析したので、結果は二転三転した。最後は汚染はないんじゃないか?という結果に傾いたが自信をもって結論を出すことはできなかった。

今は数値データによる解析が可能となったので、再度測定(しかも180分の長時間測定)を行い、名古屋の汚染の有無について自信をもった結論を出したいと思う。その結果は次のようになった。

カリウム40のピークがひときわ目立つ。その次に気がつくのがCs-134(606keV)らしきピークだが、よくみるとペアであるはずのCs-134(796keV)のピークがない。しかも、Cs-137(660keV)のピークは全く見えない!つまり、このCs-134(606keV)らしきピークは、天然核種のBi-214(609keV)などの寄与であり、セシウムとは無関係だということだ。

つまり、名古屋で採取したこの土にはセシウム汚染はないと考えてよいのだと思う。今回は自信をもって結論できる。もちろん、名古屋城址公園だけいち早く除染している可能性だってあるから、名古屋全域がセシウムフリーとはいいきれない。しかし、「どうもそっちの方向に限りなく近いんじゃないか」と思いたいという気持ちは正直強い。確認するには、名古屋市内の複数の場所でサンプリングをする必要がある。が、しばらく名古屋には行く用事がないので、それまで結論はお預けだ。

ちなみに、放射能は62.85 Bq/kgと算出されたが、これは天然核種の寄与を誤って計算にいれているので、実質は0Bq/kgと考えてよいだろう。しかも、名古屋城址公園のこの場所の土壌はチェルノブイリや核実験の痕跡すら残していない。果たして、名古屋全域でこのような土壌スペクトルが出てくるのだろうか?そうだとしたら、すばらしいことだと思う。

名古屋は、福井原発群、そして浜岡原発の影響を受ける可能性がある。せっかく福島原発事故を切り抜けたのなら、近隣の原発が再稼働しないように頑張るべきじゃないだろうか?避難訓練するより、原発廃止の方が安上がりだし、「絶対安全」だ!中部電力は原発なしでこれまでやってこれたんだから、浜岡にあんな馬鹿みたい大きな防波堤なんか作る必要はないと思う。

2014年3月5日水曜日

いい加減な気持ちで原発を管理するとどうなるか?

こうなる。

リンクが切れたときはこちら

先日起きた巨大なタンクの「てっぺん」からの汚染水100トン漏れ。この壮大な漏れの原因に対する東電の当初の説明は誤りで、実は作業員の操作ミス(「蛇口」の閉め忘れ...)であることが判明している。「どんな些細な事故も防ぐ」などと言ってきた彼らの能力には最初から疑問符がついて居たが、この程度のこともちゃんとできないとは。しかも、事故の分析能力にも劣る気配が...ほんとにこういう技術レベルの人たちに、高度に危険な設備の管理運営をまかせていいんだろうか?

東電は「少しぐらい(100トン程度)は漏れてもいいんじゃね?」とか、まさか言ってはおるまいな。漏れ出した汚染水で汚れた周辺の土を「除去」したそうだが、その土はどこに持っていったのか説明がないのは非常に気になる(海に捨ててない?どうせ汚れてるんだし、とか言って)。

さて、「世界一の水道工学」を自画自賛する「天才的」な小学生がいたとしよう。ある日、この学生は「高度な」水道技術開発の研究に従事した後、単に蛇口を閉め忘れて部屋を水浸しにしてしまった(Oh, my...)。また、「お母さん」のお叱りを考えたとき、あまりの怖さにビビってお漏らしし、「畳の汚染」をも引き起こしてしまった。隠れて畳を運び出し、隣りのアパート前のゴミ捨て場にこっそりと放置し、知らんぷりを決め込む。この小学生が「もう二度とメルトダウンは起こしません」などと宣言しても、お母さんは「嘘おっしゃい!減らず口はまともなことが普通にできるようになってから言いなさい!」と一喝することだろう。


世界一のパンケーキ

「世界一の朝食」とかなんとかで日本で話題になっている(た?)リコッタパンケーキは、要はオーストラリアの「ホットケーキ」だが、英国紙にあった「世界一のパンケーキ」という記事に"Okonomiyaki"が紹介されているのを知って吹き出した。お好み焼きを英訳したものを、さらにカタカナ日本語に戻すと「キャベツベースパンケーキ」となる。

その他、中国と韓国、ベトナムやアフリカの「似たり」も紹介されていたし、「イリギスパンケーキ」と「アメリカパンケーキ」の違いも、フランスのクレープを巻き込みながら解説されていた...(一緒にするなよ、と異口同音の声が世界中から聞こえてきそう)。

2014年3月4日火曜日

イタリアのセシウム汚染:フィレンツェの場合

1986年に旧ソビエト(現在のウクライナ)にあったチェルノブイリ原子力発電所が爆発事故を起こし、大量かつ多様な放射性物質が地球全土に散らばった。近接するヨーロッパの汚染は当然ながらもっとも深刻で、スカンジナビア半島(ノルウェー、フィンランド、スェーデンなど)、アルプス高地(オーストリアやドイツなど)、そして黒海沿岸(トルコも)にまでその影響は広がった。

アルプスに近いイタリアの北部の汚染も深刻で、ミラノ周辺出身の友人達から牛乳の摂取制限が幼少期にあったことを聞いている。

昨年、フィレンツェを訪ねる機会があったので、果たして原発事故から30年近く経った現在、イタリア中部の土壌はチェルノブイリ原発事故の傷跡を残しているのかどうか気になり、サンプルを持ち帰って放射能測定を行ってみた。

採取したのはミケランジェロ広場近くの公園の土壌。キャンプ場らしき看板が近くにあったので、もしかしたらキャンプ場の一角なのかもしれない。微妙なピークなるだろうと予想し、測定は60分にした。結果は次の通り。
出た...見事にセシウム137の「一本ピーク」が660keVのところに屹立している。セシウム134のピークは二本とも痕跡を残していない。これがセシウム137の半減期である30年後の汚染状況なのだ、と思うと鳥肌が立った。というのは、ある意味で、このスペクトルの図は、セシウムで汚染された東日本の30年後の未来を覗き見ていることになるからだ。

鳥肌のもう一つの理由は、30年経っても傷跡が残るという点に(頭ではわかっていたがやっぱり)驚いたからだ。もう少し微妙な判定が必要なほどピークは低いだろうと予想していたのだが、クッキリとその存在を確認できるほどしっかりしたガウス分布型のスペクトルを示している!

しかも、チェルノブイリ事故から30年近くも立っているのに100Bq/kg以上であると算出されている。このスペクトルが消えていくのは、きっと私が寿命を全うしたときなんだろう。

セシウム汚染の限界はどこにあるのか:関東平野の西側の場合(2)静岡市の駿府城

静岡市の駿府城のセシウム汚染の調査については以前このブログに書いた。100 Bq/kg弱と算出され、LB2045のモニターにはセシウムのピークらしい構造がボンヤリ見えた。そのため「静岡はセシウムに汚染された」と結論づけた。

が、より詳細な測定を行うことができるようになった今、この結論を検証する必要がある。測定時間を60分して統計量を増やしたスペクトルはこのようになった。

解釈が難しいスペクトルだと思う。しかし、セシウムの示すピーク構造によく似たパターンが見える気がしないでもない。一つずつ、特徴を確認していこう。

(1)まずはCs-137のピークだが、これがあることは間違いない。いつものように、LB2045のFWHMの性能に基づくガウシアンを重ねて見るとぴったり合う。Cs-137が検出されているということだ。

(2)Cs-134の606keV、つまり左側のピークだが、これは半減期2年のCs-134では事故後3年経った今、相当の減衰が進んでいるはずである。事故当初はCs-137の660keVピークと同じ程度あったので、今はその半分程度にまで「背が縮んで」いないといけない。ところが、このスペクトルでは、606keVに対応するピークはCs-137よりも背が高い。つまり、スペクトルに見えるピークはCs-134単体のものではなく、Bi-214の609keVピークなど自然放射線が混じってしまい、Cs-134があるかどうか判定できなくなっている。

(3)しかし、Cs-134には796keVのところにもう一つピークがある。今回得られたスペクトルには、若干それらしき盛り上がりが見えるような気がする。これがもしピークであるならば、福島原発からやってきた放射能プルーム(の先端?)が静岡市に到達したといえる。しかし、このピーク構造ははっきりしないため、自信をもって結論を出すことは今の所難しい。これを解決するには、測定時間をさらに長くして、統計量をもっととらなくてはならない。

ということで、今回の測定では113.4 Bq/kgという結果を得たが、それが福島原発由来のプルームによる汚染なのか、昔の核実験やチェルノブイリの名残りによるCs-137のシングルピークなのか、まだはっきりした結論は出せない。直感的には、Cs-134の796keVピークはあるように思える...が、再度の測定が必要なのは間違いない。思い切って10時間くらいやてみようか?

2014年3月3日月曜日

セシウム汚染の限界はどこにあるのか:関東平野北部の場合(1)前橋城址

2011年の原発事故の直後に大流行りしたのが群馬大学の早川さんが作成した「汚染地図」。これは市町村や公的機関の測定した「線量」をもとに、汚染地域の予想を図にしめしたもので、国や東電が汚染を隠そうとして情報をなにも発信しない時分は、放射能汚染がどのように広がったか大雑把に知るには結構役立った。

半年以上経ってから、国は航空機を使い、簡易測定ではあるが大規模な汚染分布の調査を始め、その結果を公表した(たとえば東日本の場合はこちら)。高高度から結構なスピードで広範囲を測定するため精度はあまり高くない上に、自然放射線量をごちゃ混ぜに表示した地図は、やはり「大ざっぱな」汚染分布の情報しか伝えてくれなかった。とはいえ、公の情報ということで、多くの人がこの情報の内容を信じた。特に、東京の中心部から西にかけては「放射能汚染がない」という報告は多くの人に間違った希望を与えた(東京も放射能に汚染されていることは、ベクミルや民間測定所に持ち込んで測定した個人個人の努力により少しずつ証明されていったが、大半を占める無関心な都民/国民にはまだ十分伝わっていないと思う)。

実は、以前から気に懸かっていたのだが、早川地図と国の地図が一致していたのは誤った東京の汚染分布だけではなく、関東平野の北部、つまり群馬でも一致していた。特に、高崎と前橋の周辺の汚染があたかも皆無に思えるような、真っ白な「清浄領域」が2つの地図には記載されている。

群馬県の北部には尾瀬が位置し、その北方は日光や那須へと続いている。この辺りは有名なホットスポットとなっていて、NHKの特集番組でその存在が最初に報告された(と記憶している)。別のホットスポットである長野県の軽井沢に接する群馬側の山間部、例えば妙義山や横川などにも、かなり強いセシウム汚染があることもすぐ後に判明した。また続いて報道されたNHKの特番で赤城山や榛名山の火口湖の放射能汚染が伝えられた。このように、上州三山と呼ばれ群馬県民に親しまれて来た群馬の名峰周辺の群馬県北部西部地域が深刻な放射能汚染を受けたことは、さすがに早川地図にも国の地図にも記録されている。

にもかかわらず、深刻な汚染地帯のすぐ目の前にある高崎と前橋にはまったく放射能プルームが到達していないかのような汚染分布図を2つの地図では示していて、なにか不自然な感じを受けた。特に、東京の汚染がないというメッセージは間違っていることを確信してからは、この疑惑はより深くなった。しかし、高崎と前橋にいく機会にはなかなか恵まれず、確認することができなかった。最近運の良いことに、知り合いの一人が前橋に転勤となり、見知らぬ土地で右も左もわからない中、なんとか群馬県庁がある前橋城址の土壌を持って来てもらうことができた。さっそく測定してみると....
セシウム137,134のガンマ線がくっきり浮かび上がり、その放射能は1226 Bq/kgと算出された。Cs-134の減衰を考慮すれば、原発事故直後は2000Bq/kg近くあったと思われる。これは東京中心部の汚染とほぼ同じ程度だ(たとえば東大本郷は2000Bq/kg弱、また東京西部の町田も900 Bq/kg近くの汚染があった)。

前橋や高崎にいくと感じるのが、街全体の開発が進み、コンクリートやアスファルトで一面覆われていることだ。街中の緑は少なく、大規模な公園のようなものはあまり見当たらない。自民王国群馬の公共工事の成せる技なのだろうか?いずれにせよ、このような都市化の進んだ場所ではセシウムは沈着しにくい。ほとんどが排水溝に流れ込み、河川へ逃げて行くため、線量だけみれば低くなったのだろう。地面が露出しているところでガンマ線を測れば、事故の後に到達したであろうプルームの名残りをみることができ、汚染の実態を教えてくれる。きっと高崎も同じように高いセシウム汚染を受けているだろう。ということで、早川地図も国の汚染地図も、東京と同じように、群馬の「清浄地帯」の把握に失敗していた可能性が高まった。もちろん、まだ測定したのは1地点のみであるから、結論は出せないことは断っておこう。

私の想像では、放射能プルームは、高崎や前橋に到達しただけでなく、街に降り立ち放射能汚染を引き起こした可能性が高いと思われる。群馬の2大都市を飲み込んだプルームはさらに西進北進し、妙義や榛名に到達、横川や北軽井沢、嬬恋などを汚染した後、信州へと流れ込んでいったのかもしれない。この推測を確認するには、群馬のサンプルがもっと欲しいところだ。

2014年3月2日日曜日

セシウム汚染限界はどこにあるのか?:関東平野の西側の場合(1)箱根宮の下

福島第一原発からやってきた放射能プルームは東京そして関東平野を汚染し西進した。

私が2012年に調べた関西の土壌からはCs-134やCs-137の「セシウム三兄弟」ピーク構造は見つからなかった一方で、東京の町田のセシウム汚染が900Bq/kgほどあることを2012年に確認している。放射能プルームがどこまで進んだか、つまり少なくともLB2045で検出できる数十ベクレル/キロを境とする「汚染限界線」がどこにあるかと問えば、それは関西と関東の間のどこかということになる。単純に考えれば、それは東海地方のどこかになるだろう。ということで、いままでに名古屋静岡などの調査を行って来た。その結果は、静岡にはセシウム汚染の兆候が確認できるが、名古屋には見られないというものだった。

しかし、限界線に近い地域の汚染はかなり弱く、微妙な判定が求められた。加えて、LB2045のモニター写真を用いてスペクトル分析していたので、ピーク構造の詳細を議論することができなかった。だが、今はLB2045の生成する数値データにアクセスできるようになったので、限界線近傍の微妙な判定をより正確に下せるようになった。そこで、これらの地域の再分析を試みようと思う。

まずは、2年程前に協力者から提供された箱根の宮ノ下(ここは神奈川県)の土壌の分析をやってみよう。宮ノ下は箱根駅伝のコースの一部分であり、富士屋ホテルなどの老舗高級旅館(ホテル?)が軒を連ねるなど、箱根の数ある湯元のなかでも、箱根を代表する温泉街の一つと言っていいだろう。

採取したのは富士屋ホテルの裏手にそびえる浅間山の林である。頂上の標高は800m余り、箱根の南東側の外輪山の一角をなす、箱根の急峻な山々としては典型的な部類だろう。

放射能レベルはかなり低いと予想されるため、測定時間を60分に延長し統計量を稼ぐことにした。この結果、誤差は±3Bq/kg、検出限界は9Bq/kg弱と結構な精度の測定となった。

測定の結果、算出された放射能レベルは112.1 Bq/kgであった。スペクトルを見てみると、きれいな「セシウム三兄弟」が確認できる(つまりCs-137の660keVのピークを真ん中にして、両脇に低めのピークを持ったCs-134の606keVおよび796keVの2つが立っている構造)。箱根の宮ノ下のセシウム汚染は微妙どころか、明瞭だったことにある意味驚いた。汚染限界線は天下の嶮である箱根の山々を越えていってしまったことがこれではっきりした。

2014年3月1日土曜日

軽井沢の西斜面のセシウム汚染:愛宕山の場合

軽井沢の碓氷峠や、離山周辺雲場池も)にセシウム汚染地帯(ホットスポット)があることは、原発事故の起きた2011年に行った調査でわかっている。離山周辺の土壌のセシウム汚染の程度を知るために、γ線スペクトルを測ってみたこともあるが、予想通り5000Bq/kg程度の比較的強い汚染が確認された。

昨年の春の測定では、離山の東斜面ではなく、群馬県境に沿って南北に伸びる山の西斜面に興味を持った。というのは、群馬側から放射能プルームが流れ込んだと仮定すれば、西斜面は「影」となる部分であるから、東斜面に比べて汚染が弱くなるのではないか、と予想した。土壌サンプルを採取してから随分時間が経ってしまったが、やっと測定する余裕が最近出て来たので、この予想があっているかどうか確認してみた。

採集地点は愛宕山の中腹の西斜面だ。2013年5月初旬の測定(Dose RAE2)で、線量は0.09μSv/hだったから、かなり線量は低い。これは東京の西部と同程度であり、東京東部と比べれば「かなり低い」レベルと言っていいだろう。一方、離山の東斜面では0.2μSv/h以上は少なくともあり、汚染が強い場所では0.35μSv/h程度の線量も観測されていた。

東京西部の土壌汚染の平均は経験的にざっと500Bq/kg程度だから、この線量から推し量ると、5000Bq/kgを示した離山東斜面よりも、軽井沢の西斜面は一桁汚染が弱いことが推測される。とすると、やはり「影」予想はあっていたのではないかと期待した。

さて、ベクミル(株)の協力を得て、LB2045γ線スペクトロメータを使って採取した土壌を測定してみた結果が次である。
スペクトルには、特徴的な3つの放射性セシウムのピークが確認できる。これは福島原発による汚染であるという証明だ。そしてセシウム汚染のレベルは700 Bq/kg程度と算出された。ほぼ予想通りの値で、東京の西部と同じ程度の汚染といえる(ちょっと強めだが)。まだサンプル地点は一カ所なので結論はできないが、やはり軽井沢の西斜面は「影」となって、東斜面よりは汚染が弱いのではないかという予想はある程度あっているのではないか、と感じた。

軽井沢の汚染も斑模様になっているようで、状況を把握するためには細かい分布調査が必要だと思われる。