2011年9月30日金曜日

ついに公表:プルトニウムとストロンチウム

セシウム137、134、およびヨウ素131を同定できるのに、プルトニウム239や240が同定できないわけがない。ゲルマにかければ、同時に測定できるはずだ。

今日になって、プルトニウムと放射性ストロンチウムが、それぞれ50キロと100キロ近く原発から離れたところでも検出された、という報道があったが、これは今の今までひた隠しに隠して来た情報に違いあるまい。

これだけ、重い元素が広範囲に飛び散っているのだから、地下水で漏れて行った訳ではあるまい。飛散地域が、セシウム汚染の地域とだいたい似ていることから、水素爆発やベント時
に飛び散った可能性が高いと思う。そして、それは何を意味するかというと、爆発したときには、格納容器が壊れていて高熱の核物質が原子炉に充満していたということだろう。それが、爆発/ベントの勢いと共に吹っ飛んでいったのであろう。

これはもう、チェルノブイリ以上の惨事と言わざるをえない。放射性セシウムのみならず、プルトニウムや放射性ストロンチウムにも汚染された福島に残された望みはもうないだろう。プルトニウムの半減期は240で六千年、239に至っては2万年...もう我々の文明では追いつかない。

東京新聞の朝刊より:餓鬼と原発

今朝の東京新聞には、日本の大きな問題をえぐり出した記事が複数ある。トップ記事は言うまでもなく、反原発デモの参加者を逮捕した件原発作業員を守らない東電の記事などなど、欲にまみれ、利権にたかって貪る人間たちの浅ましい姿が浮き彫りだ。

餓鬼。貪る者たち。こういう言葉を彼らには与えたい。
餓鬼クイズ:
どれがT電の会長で、どれが社長で、どれがK団連の会長か、当ててみましょう。
(答えは写真の裏。)
さらに、沖縄密約の高裁判決は、日本国民にとって非常に危険なシグナルだと思う。戦争を許し、止めることの出来なかった無責任さが、いまでも日本の深部に巣喰っていることを証明していると思う。証拠がなければ何でもOK、見つからなければやりたい放題。こういう無節操さは、子供にまで浸透しているように思える。東京の自転車の走り方と、日本の国の運営法が同じでは、いずれは滅びてしまうのは必至。

原発や米軍関係で、利権を貪っている者たちは、必死の形相で(餓鬼顔?)自分たちを守ろうしている。原発を止めるといった首相が辞めさせられ、再稼働しますと宣言する人物にすげ替えられてしまうのは、国民の総意とは無関係のところでカネと政治が動いているからだろう。このままいくと、原発は無くなるどころか、再び動き出す。そして、二度目の事故が起きるまで、彼らは搾り取れるだけ搾り取っていくのであろう。そして、最後に、彼らはハワイか、あの世に逃げるはず。願わくば、彼らが餓鬼道地獄に落ちますように。

2011年9月28日水曜日

iptablesのsmtp設定

smtpの設定がうまくいかず、ずーっと困っていた。メールは受け取れるのだが、自分のLANから送信できなかった。これまでWeb mailを使ったりしてしのいできたが、いい加減不便になってたので、覚悟を決めて時間をかけて調べる事にした。こういうのは、ハマると一日くらい飛んでしまう事もあるので、気が進まなかったのだ。最初はうまくいかなかったが、10分ほどで答えが得られた。結果は拍子抜けするほど簡単で、自分のやる気のなさがすべての原因だったと思い知る。

要は、--dportと--sportの両方で指定してやる必要があったのだった。以上。

群馬の汚染地図

文部省と群馬県により、群馬県の放射性セシウム汚染地図が公表された。航空機を利用した測定だという。群馬県の広い範囲が汚染されたしまったことが明らかとなった。福島や新潟との県境のある北部と、栃木との境である東部などは、特に汚染がひどく、栃木や福島の深刻な汚染地域と同程度の汚染が広がる。長野県との境にも中程度の汚染が広がっていて、その中にはホットスポットも見られる。

長野県も調査を開始するという。これで、汚染の実態に一歩近づくことができるだろう。

ちなみに、新聞に公表された地図では、位置関係が今ひとつはっきりしないので、gooの地図と重ねてみた。(Composite処理の応用...)

汚染地域と市町村との関係
尾瀬の周辺、榛名山、赤城山から日光にかけての山間部が広範囲に、かつ強く汚染されている。(これだけでも、かなりショック。日本の名山の多くが汚染されてしまった。)また、多数のホットスポットが関東山地に点在している。気になるのは、十国峠周辺。ここはジュラ紀の地層が広がる山中地溝帯だ!(石堂がやられていたらショックだ。)

一応、佐久町の測定では大丈夫だったが、茂来山周辺の山間部には入っての測定はしていないので、緊急の調査が必要だと思われる。

東電(そして原発を推進して来た者たち)、許すまじ。

面白いことに、高崎や前橋のあたりは汚染が弱い。このあたりで取れる小麦は安心かもしれない。また、嬬恋も、若干のホットスポットはあるが、うまい具合に汚染を免れている。キャベツは大丈夫かも。でも、安中まではやられているので、北軽、嬬恋も(飛行機で捉えきれない)局所的な汚染はあるかもしれない。油断せずにいきたい。

以前より信州の山間部の汚染を指摘してきたが(特に佐久山地と離山)、それももうすぐ確認されるだろう。汚染地域がどのように広がり、薄まっているのか、詳細な地図が必要だ。

2011年9月21日水曜日

盛岡で:前沢牛を食べるか食べないか?

弘前から東京へ戻った日、夕食を盛岡でとった。雨はまだ強くなかったが、小雨が降っていた。八幡平は霧に覆われて、その向こうには十和田湖が広がっているはず。山間部をトンネルを何本もくぐりながら、蛇行しながら南下した。(この辺りに、関東のゴミ焼却灰の処理を引き受けている村があると、最近の報道で知った。先日千葉県からのゴミを埋め立てたが、後で放射能汚染がかなりひどかったことを知り、それ以来関東からの焼却灰の受け入れを拒否しているという。関東のゴミ処理はもうすぐ破綻するかもしれない。それは、保管スペースがなくなるという意味と、放射能汚染が強くなるという二重の意味でだ。)

盛岡の手前で、警察車両がたくさん現れた。雨天時の制限速度を時速80キロに落とすためだろう。しかし、このペースでは東京に帰るのがものすごく遅くなってしまう。そこで、どうせ遅れるのならということで、盛岡でいったん東北道を下りて、夕食にすることにした。

盛岡インター近くの新しいショッピングモールには、連休ということもあって、たくさんの車が集まっていた。わざわざ盛岡まできて、デニーズはない。時間はかかるが、市街地まで車を走らせることにした。

盛岡に来たのは20年ぶりくらい前のことで、駅から随分歩いて、わんこそばの店にいった。供された美味しそうな天ぷらやら煮物に手を出してしまったせいで、100杯のはるか手前でギブアップとなった。今回は、しかし、わんこそばはやめておくことに。東京まで、まだ300キロ以上ある、動けなくなったら大変だ。

モールから駅までは暗い道が続いたが、秋田と違い盛岡の駅前はそれなりの活気があった。そこで、駅前ホテルの1つの和食レストランに入ることにした。

このホテルの入り口で、さっそく放射線測定してみた。大理石で作られていて、時折高めの放射線量が出たが、JB4020で0.12μSv/h(RAMIでやったら、かなりよい収束値となる)となった。大丈夫なのは確かだが、ちょっと高い気がする。これはおそらく大理石の影響ではないかと思う。ちなみに、盛岡は原発から250kmのところにある。これは、原発と軽井沢の距離とほぼ同じ。セシウムクラウドが流れていてもおかしくはないから、影響は皆無とはいえないだろう。現に、早川地図の四訂版では盛岡の北に弱いホットスポットが表示された。

RD1503では時間が足らず13回しか測定できなかったが、RAMIでは良い収束を見せていて、その値は0.2μSv/hだった。ちょっと高い気がするが、果たしてどう解釈するか?やはり、測定時間が10分足らずの測定で結論づけるには短かすぎる。よって、こちらの値は今回は棄却すべきだろう。しかし、もしかしたら、という可能性は残しておいた方がよいと思う。盛岡の汚染の程度はさらなる調査が必要だ。

さて、レストランでは、3つの定食がメニューにあった。(1)ウナギ定食、(2)和牛定食、(3)魚定食。ウナギは愛知産だという。牛は前沢牛。魚については面倒になるので聞かなかった。先ほどの測定を考えると、前沢牛を味わうのもいいかな、と思った。実はこのとき、前沢が岩手のどこにあるか知らなかったのだ。盛岡近辺かな、と勝手に予想していた。しかし、宮城の餌藁を食べて汚染された東北牛のニュースがあったことは確かだし、安全策をとってウナギとしておくか、という気持ちももたげて来た。愛知のウナギなら、きっと盛岡で食べるより野田岩で食べた方が美味しいだろう、ちょともったいないかな、しかし、いくら美味しい前沢牛でもセシウム137入りでは困る。などと、5分ばかり行ったり来たり、考えあぐねた挙げ句、ウナギ定食にすることにした。

さて、平泉近くの前沢SAでの測定結果を先ほどまとめていたとき、はたと思った。「あっ、前沢って、前沢牛の前沢だ....」前沢牛はホットスポットの中(平泉地域)に住んでいるが、どうも市場に広く出回っているようだ...大丈夫なんだろうか?

今、前沢牛のおいしい和牛定食と、ちょっと劣る愛知産のウナギ定食と、どちらを頼むかきめないといけないするなら、判断するのに1ナノ秒もかからないと思う。

2011年9月20日火曜日

秋田にて:久保田城と千秋亭

弘前へいくとき、お昼を秋田でとった。

秋田に来たのは10年ぶり。前回来たのもこの時期だった。数年ぶりにハタハタ漁が解禁になったとかで、珍しいものだからと勧められて、塩焼きを秋田の酒で味わった。美味しかった。また、黒湯へ一人で出向いて閑と湯を楽しんだ。

あのときの秋の趣と異なって、今回の秋田は「夏」だった。台風の風のせいで蒸し暑く、木陰が気持ちよかった。城内にある「千秋亭」というフレンチで昼食を食べようと思ったが、あまりにもフォーマルで気後れしてしまった。次回挑戦ということで。

前回、久保田城を訪ねたときは、学会の最後の講演が終わった後に行ったため、暗闇の中で天守の周りを一周しただけ。今回は昼間だったのでよく見えた。
久保田城(秋田)


それにしても、秋田の中心街の廃れ様には驚いた。大きなデパートやビルがあったはずのところが、広大な空き地になっている。弘前でも、空き地が結構目立ったし、売り地や売り物件も多かった。不景気なんだろうか、やっぱり。

この後、北上して、初めて八郎潟に行った。大きな湖を埋め立てたという。昔から、綺麗な湖を埋め立てるなんて環境破壊も甚だしい、と怒っていたのだが、周りに残った湖を見ると、結構埋まってしまって湿地になっている。八郎潟も、すでに「干潟」状態の湖だったのではないか?と思った。だとすると、先に埋めようが、後に埋めようが同じ運命だ。しかし、埋めたところで、米を作っても食べてくれる人がいない時代(米余り)が来るとは想像できなかっただろう。この地では減反やってるんだろうか?

八郎潟を抜けると、能代があって、その北は白神山地だ。今回は残念だが、白神も岩木山も登る時間は無し。

東京への帰り道:福島にて

平泉でショックを受けたものの、すぐに気を取り直さないといけない。東京に戻るには、まだまだ東北道を南下し続ける必要がある。

一関から峠をどんどん下って、仙台に入る。丘陵地帯一面に、住宅街の白い街灯が広がって、単色のクリスマスツリーのようだ。車内の線量は通常の値。

仙台南、村田JCTを抜け、白石に入る。この辺りから、線量が高くなって来た。ちなみに、車内でのガイガーの位置は、座席とドアの間。ここにおいて、太ももで押さえつけながら安定させて、メモをとった。時速100キロ近くで走行しているし、車のドアや窓で遮蔽しているから、外に置いて測る時よりも、ずっと低めの線量になるはずなのに、国見峠を登るにつれて、0.2, 0.3, 0.4と、瞬間線量は徐々に上昇しはじめた。

福島では、停車して測定しないことにしたが、それでも通常ではありえないような外部被曝をしたと思う。すでに、福島盆地一体が放射線管理区域と化している。ここに暮らす人たちは、勇気があると思う。個人的には、よっぽどの用事がなければ立ち入りたくない。

車内でリアルタイムに測定した結果は、予想よりも低い値となった。正直、平均値で1μSv/hくらいは行ってしまうのではないか、と思っていたが、そういうことは起きなかった。それでも0.4以上の値が何度も瞬間値で記録され、0.55μSv/hというのが最高値となった。

全体のデータを下図にまとめてみた。それぞれの瞬間値(青線)と直近5データの平均(赤線)の両方を表示してある。もちろん、同一地点での収束値を測定していないので、かなりあやふやな意味をもった数値だが、福島盆地全体の時空間の平均値だと考えれば、その恐ろしさがわかる。
白石(宮城)から福島市までの
リアルタイムのガイガーカウンタ測定値。
JB4020で30秒間隔にて測定。

印象としては、峠の森で線量が上がり、アスファルトやコンクリートに覆われた市街地に入ると若干落ちる感じ。それでも0.25μSv/h近くもある。車で走り抜けているのに、追分や碓氷峠と同じような値になっている。福島市の汚染はやはり深刻だと思った。この一帯全てを除染するのは、たぶん不可能だと思う。特に山間部は、除染に入ったものがやられてしまうかもしれないほどで、到底無理だと思う。

「さようなら原発」の集会

昨日、私が東北道を南下している最中に、「さようなら原発の集会」が東京で開かれていた。およそ6万人が集まったという。成功と呼んでよいと思う。大江氏を始め、関係者の人々にありがとう、といいたい。

署名は現在100万人集まったという。大変な数だとは思うが、これではまだ原発を止めることはできない。大江氏らが目指すのは1000万人だから、この10倍必要だ。

この3ヶ月、自分自身で署名の呼びかけを行って来て、正直、厳しさを感じている。原発の恐ろしさを速やかに理解した人は、すでに賛同し署名してしまった。それが100万人ということだろう。つまり、まだ国民の大半は、まだ迷っている。

明確に原発賛成の人も、実は少数だと思う。こういう人は、60歳以上の年配が多いと思う。戦争の困窮に嫌という程苦しめられた経験から、そういう結論になったんだと思う。太平洋戦争の犯罪者は、当時の国民を直接困窮させて苦しめたという意味でも犯罪者だが、この苦しい経験を背負った国民が今、年配者となり、大量の原発推進者と成り果てた結果、その次の世代を苦めていることにおいても、凶悪な犯罪者だと思う。

これからは、原発に賛成する人を脱原発へと導かないといけない。それは、非常に険しい道のりになるだろう。残念ながら、この運動は、まだ歴史的なものとはなっていない。

東京への帰り道:平泉、一関での測定

早川地図で指摘されて以来、宮城以北で唯一ホットスポットとなっているかもしれない、と噂されているのが、岩手の一関だ。(9月11日の最新版の地図によると、平泉がホットスポットのど真ん中になってしまった!)ここは、平泉から目と鼻の先にある。先日、世界遺産に登録されたばかりの平泉は福島の事故で冷や水を浴びせられた格好になった。これが本当なら、平泉の観光客は増えるどころか、大幅に減るだろう。汚染の状況は、同じ世界遺産の日光と似ていると思う。

さて、一関の汚染に関しては、早川先生と一関市の間で交わされた論争に見られるように、未だ決着がついていないように見える。そこで、青森から東京に帰るルートは、あえて太平洋側に設定し、福島ではなく、一関、平泉周辺でJB4020およびRD1503による測定を行うことにした。測定地点は、中尊寺から北に8キロほど離れた、前沢SAの駐車場に面する林の入り口。

盛岡の駅近くのホテルで夕食を食べたりしている内に、雨が激しくなってしまった。真っ暗で土砂降りの東北道をひたすら南下し、紫波、花巻、水沢と次々と通過。途中、岩手県警のパトカーを抜き去ろうとしたら、「そこの車!80キロを維持しなさい」と拡声器で怒鳴られ、仕方なくパトカーの尻につく。彼らのお陰かどうかはともかく、平泉に付いた頃、運良く雨は小雨になり、そして、やがて止んだ。そこで、測定地点を平泉PAではなく、前沢SAに決定する。駐車場に車を止め、雨水に反射する街灯の光で、草むらの状況が見難い。なんとか、林の木の下に広がる草むらに測定器が置けそうなことがわかり、卵蒸し器とアクリル板で遮蔽したガイガー二つを入れ、スイッチを押した。

東北大の堀田さんの牡鹿半島測定の旅を踏まえ、東北地方における早川地図の精度は今ひとつではないか、と思っていたので、一関、平泉の「ホットスポット化」は、誤りだろうとタカをくくっていた。それだけに、出て来た数値に驚いた。ここは、軽井沢の離山の比ではない。0.5や0.6といった数字がオンパレードした!10分間(30秒毎に20回)の測定データをRAMIによって処理、その平均値の収束具合はなかなかよく、揺らぎは小さく収まった。結果は0.47μSv/hだった。(補正値にすると、だいたい0.42から0.43μSv/hほど。)

ちなみに、RD1503では40秒間隔で12回(8分間の測定)分のデータを得た。RAMIに解析では、収束がまだ弱く、結果の信頼度はいま1つだが、凡そ0.60μSv/hという結果となった。高線量の地点でRADEXにRAMIを適用するのは、ちょと嫌だ。というのは、たくさんデータを取ろうとすると、JB4020より時間がかかってしまうからだ。

早川地図では一関を中心に0.5μSv/hだとしていたから、その精度は結構良かったのだ。四訂版では、中心が一関から北にずれているものの、この辺りにホットスポットがあることを指摘したのは正しかった。

平泉は、軽井沢よりも汚染がひどいことは、ほぼ明らか。北の大地が汚染されて、とても残念だ。

刈羽原発の横を通過する

青森に行く途中、新潟の刈羽原発の近くを通過した。送電線が海に面した、里山に突き刺さる風景には圧倒される。そして、トンネルばかりの高速道路から、送電線の先にある海の方を臨んで見たが、海岸に隣接する小山の向こうに原発はあるらしく、原子炉自体を写真に収めることはできなかった。

このすぐ先に、信濃川がつくった広大な新潟平野が広がっていた。日本有数の穀倉地帯は、原発の目と鼻の先に在ることを思い知らされた。福島の米を買う人がいるかどうかはともかく、新潟の穀倉地帯が汚染されれば、日本の農業の1/4近く、そして日本の米の大半が失われてしまうのではないか?そして、刈羽は信州にとても近い!直江津からあっという間に辿り着いてしまった。信州の盆地の向こうには、関東平野があることも忘れてはならない。信州北部の気流は偏西風であり、盆地に沿って東に流れる。例えば、浅間の煙はたいてい関東の方角にたなびいている。そして、標高の高い信州側からなら、この気流は関東山地をいとも簡単に越えていくことだろう。

東京電力刈羽原発は、すぐにでも止めないと、おちおち信州や関東には住んでいられない。

そういえば、昔、仙台から東京への帰り道、福島第一原発の門の前までいったことがあった。あそこにはもう行けないのだ。今回の旅行で見た刈羽原発付近の風景が「もうみることはできない」などと、振り返って書く日が来るのだろうか?想像するだけで、身震いする。

弘前城の近くにあったモニタリングポスト

先日、弘前城を訪ねた際、モニタリングポストを発見した。その日の値はおおよそ0.04μSv/h(40nGy/h)と表示されていた。
弘前城の近くの「中南地域県民局」の敷地にあった
モニタリングポスト。
建物の雰囲気からして、官公庁の所管だろうと思い、東京に戻ってから調べてみると、「中南地域県民局」とかいう青森県庁の所轄機関であることがわかった。そのホームページを覗いてみたが、特にこのモニタリングポストのことは書いてない。

このポストがなにかおかしいなと思ったのは、その電光表示版。東京のモニタリングポストにはないと思う。つまり、青森県の方が、これに関しては「お金がある」ということだ。弘前の町を歩くとわかるのだが、あちらこちらに売り地、売り物件の看板が並び、潰れた商店も目立つ。どう見ても、街全体が東京より景気がいいようには見えない。たぶん、青森県の税金で作った機械ではないんだろう。

また、東京都の説明では、モニタリングポストは、「高所に置かれないと周りの建物に遮蔽されてしまい、意味がない」というのだが、ここは「かなり遮蔽された環境」にポストは設置されているように見える。おそらく、こういう説明は役人による「作文」に過ぎず、単に設置スペースがあったりなかったりなど、建築スペースの都合だけで決まっているのであろう。

東京と青森でルールが異なるし、資金の状況も違うようなので、いったい全体誰がどういうことで、弘前城の目と鼻の先に、こんなものを置こうと思ったのか、疑問に感じた。同僚たちに話してみると、「そりゃー君、青森には六ヶ所村があるからね」と即答が得られた。

つまり、多くの青森県民が行き交うお城の前で、六ヶ所村から漏れる可能性のある放射線や放射能物質をモニターし続けて来た、ということだ。(で、なにも起きてませんよ、といいたいのであろう。よく工事現場に騒音レベルの測定モニターが置いてあるが、あれと似た感じか。)東京都の場合には、近くに原子力施設がないから、「なにも起きてませんよ」と主張する対象がない訳で、電光表示は不必要だったのだろうか。

そこで、モニタリングポストにあった説明板を拡大してみた。
モニタリングポストの解説
連絡先がはっきりしないが、なんとなく「日本原燃株式会社」と書いてあるように見える。そして、連絡先は、案の定、六ヶ所村であった...

調べてみるとあった。日本原燃(JNFL)という株式会社だが、どうみても政府系機関だ。税金を青森や六ヶ所にバラまく出先機関も兼ねているのだろう。株式会社の機械が、青森県庁の敷地内にあるのは、なんか不自然だ。

JNFLのホームページには、青森各地に設置されたモニタリングポストの値がリアルタイムに表示されていた。(操作されてなければ、かなり低い値に見える。)なぜか、弘前はリストに入ってない。今日の値を見ると、六ヶ所村より青森の方が空間線量が高い。本当?!
青森の空間放射線量(ここより引用
一日中測定し続けて、結局は平均値を計算している(揺らぎの表示は一応あるが)。これを見て勉強になる点は、放射線現象はそもそも揺らぎが大きい、という点だろう。(国民生活センターの人は、これを知っておいた方がよいだろう。)

自然放射線量の値を調べると、だいたい0.05μSv/h程度。一応、モニターの値と一致している。
弘前はだいたい0.03から0.05μSv/h程度の自然放射線があるらしい。
モニタリングポストの発見は、「青森県って、原子力と共に歩んで来たんだ」と感じさせてくれた。この林檎やにんにくの美味しい、美しい北の大地が福島のようにならないように「100%」保証するためには、大江氏の言うように、原発を捨てる以外にない。この原発という「機械」だけは、「失敗から学ぶ」ことが許されない。そして、失敗するが人間である(Errare humanum est)、と古代ローマ人ですら、すでに気づいている。

弘前で観測した白鳥座の星雲:gimpによる処理の後

弘前から東京まで一晩で戻った。長い道のりだった上に、台風の嵐、そして福島周辺の高放射線量と、緊張の連続だった。ホットスポットという噂が立った、岩手県の一関周辺では車から降りて、サービスエリアに隣接する林で測定した。しかし、福島では線量が高く、車で走り抜けながらの測定に留め置いた。それでも、RD1507の160秒平均で0.6μSv/hが観測された!おそらく、車から下りて国見や安達太良のSAで測定したら、もっと大きな値が出ていただろう。

嵐の東京にもどり仮眠をとった後、さっそくgimpでコンポジット処理してみた。今回の感度はすべてiso12800。 

まずは、20秒(5枚)、30秒(2枚)、そして40秒露出(4枚)を合わせた、合計320秒で露光した、白鳥座のγ星(サドル)周辺にある蝶々星雲(IC318)。(以前の撮影はこちら。)
蝶々星雲(IC318)と白鳥座γ星(サドル)
天文ガイド10月号に、サドルの左下に見える
散開星団はM29だと説明があった。(4000光年)
今ひとつだが、まあ蝶の形はなんとか見える。

次が、北アメリカ星雲(NGC7000)。白鳥座のデネブの近くにある分子雲で、ファインダー一杯に広がり、見かけ上巨大な天体。今まで何度も挑戦したが、写らなかった天体だ。理由は大きすぎること。ぴったり収めないと、北アメリカ星雲だと判然がつかないのだ。今回撮影してみて、思いのほかデネブより離れていたんだな、と実感することができた。望遠レンズではなく、より広角のレンズを用いて対象を小さくして写した方がよいかもしれない。

北アメリカ星雲(NGC7000)は、写真の左にある。
30秒露光を9枚使ったコンポジット。カメラは改造してないので、真っ赤に写すことは出来なかったが、星雲の分布がなんとか判る程度までなら、記録できることがわかった。何より、位置がハッキリしたのが大きい。次は、横にあるペリカン星雲と合わせて撮影したいものだ。

北アメリカ星雲はハーシェルが発見したのだという。さすが!地球からの距離は約2000光年だという。まだ銀河系の中の天体ということになる。

2011年9月19日月曜日

弘前を訪ねる:M57(こと座のリング星雲)

弘前に到着したその日の夜、天体観測を行った。近くに野球場があって、ナイターの照明が邪魔だったが、それも9時頃には消えた。近づく台風のせいで、水蒸気が多く、透明度は低かった。天の川は見えず、夏の星座も山に大きく傾いてしまった。天頂の星々はなんとか捉えることができたので、白鳥座の星雲とこと座のM57を狙うことにした。

季節外れの猛暑で夜になっても気温が高く、熱電流が流れCCDのノイズが多めに目立つ。星雲の写真はコンポジット処理が必要だが、gimpマシンを持って来てないので、帰郷するまでのお楽しみとす。いっぽう、今回の機材ではM57は小さくしか写らないのでノイズはあまり気にせず。ベガから延びる平行四辺形の短辺の真ん中あたりに、M57はあるはず。CD1のセットを行い、高感度にして30秒露光を行った。
こと座の星々。真ん中あたりにある水色の天体が
M57リング星雲。つまり、超新星爆発の残骸。
上の写真の真ん中辺りに、綺麗な水色の天体が写っているが、それがM57、超新星爆発の残骸だ。拡大してみたのが、下の図。なんとなく輪っかの感じがわからないでもない。

拡大したM57.真ん中の星は写っていない。
口径の大きなレンズを使えば、真ん中にあるはずの中性子星を写せるはずだが、今回それはかなわなかった。とにかく、この水色が美しい。いったいどうしてこういう色になるのか、調べてみたくなった。M57は2600光年の彼方にある。(追記:この水色はヘリウムからの光だという話。)

一方、白鳥座の星雲の方も成果があって、蝶々星雲のみならず、北アメリカ星雲の大半を収めることができた。ノイズがひどく、今のままでは形がはっきりしていない。が、いちおう記録としてここに貼っておこう。

白鳥座の北アメリカ星雲
(追記:gimpで処理したのはこちら。)

2011年9月18日日曜日

弘前を訪ねる:弘前城

次に弘前城へゆく。

弘前の町は、道が少しずつずれていく。平行に走る道がほとんどなく、直行する交差点も少ない。つまり、一度道を間違えると、発散するニュートン法のように、どんどん目的地から離れていってしまうという、迷路のような町だ。これはおそらく、弘前城下としての機能なんだと思う。敵はなかなかお城に辿り着けない。

苦労して、ようやく外堀通りに辿り着き、正門より城内へ入る。大きい。この城の敷地は広大で、城壁の中には無数の桜の木に、大きな植物園がひとつ、そしていくつかの博物館が置かれている。天守閣までの道は広くて真っすぐで、町のそれとはまったく異なる堂々とした大通りとなっている。この道の向こうに、内堀がある。蓮の花は散っていたが、緑の葉が青々と茂っていた。蒸し暑いし、まだここは夏だ。

内堀に架かる赤い橋を渡って、天守閣へ入る。本当の天守閣は、江戸時代に落雷で焼失したいう。そのかわりに、隅櫓を天守に改造して現在にいたると説明があった。地元の人も「桜が無ければ、まぬけな感じがする」と評するこの改造天守は、確かに迫力に欠けて、優しい感じがした。戦乱を潜り抜けた城ではないが、江戸時代からの姿を止めている。太平洋戦争で焼けたりもせず、明治政府に接収されたりもせず、うまい具合に生き残ったらしい。
赤い橋より天守閣を望む。

弘前を訪ねる:放射線測定

弘前に来ている。本州の最北端の青森県ならば、東京よりも涼しいと思ったのだが、そのあてが大きく外れた。特にこの2日間は汗だくだった。異常気象なのか、津軽にはこういう日もあるのか、皆目見当つかず。地元に住む宿の管理人は、あまり気にしていないようで、週末が雨になることだけを気にしている。案外、弘前の9月は暖かいのかもしれない。

宿からは、岩木山の綺麗な裾野が楽しめる。頂上には安寿が祀られているらしい。(安寿と逗子王がこの地の生まれだったとは知らず。涙無しには読めぬ、幼稚園時代の愛読書なり。)岩木山の向こうは白神山地もある。今回は登山をする時間が取れないので、非常に残念。しかし、これだけ暑いと山登りは存外大変かもしれない。
岩木山

雨の降る前に3つやっておこうと思っていた。1つは放射線測定。さすがに、福島の影響は弘前までには来てはいないと思っていたが、自分で測定してみるまではなんとも言えない。青森のリンゴを楽しむためにも、欠かせない測定だ。もう1つが天体撮影。これについては、別の機会に記録しておこう。そして3つ目が弘前城探訪。(実際、台風の影響か、その後、大雨となってしまっった。この土砂降りの中、20分も林檎畑の中で線量をメモるのは困難を極めるだろう...また弘前城は思いの外、大きな城で、土砂降りの中歩いて訪ねるのは苦行となったはず。天体撮影はとうぜん問題外。)

まずは放射線測定。宿のある場所はリンゴ畑に囲まれている丘陵地で、森や林ではない。果樹園を含む耕作地では、草刈りなどによって線量が落ちている可能性がある。が、できるだけ手の入っていない草むらを探して、その上で測定することにした。
リンゴ畑で測定す。リンゴの赤が見事なり。
今回は当然遮蔽付き。JB4020とRD1503の両方で測定してみた。その結果は、前者が0.12μSv/h、後者も0.12μSv/hとなった。分析法はRAMI。補正を入れると、0.07-0.08μSv/hなので、予想通り低線量であることがわかった。これで安心、青森の林檎やにんにくは多分大丈夫だろう。

弘前城の近くに、空間線量のモニタリングポストがあるのを偶然見つけた。値がリアルタイムで電光表示で公開されていた。
弘前城の近くにあった空間線量のモニタリングポスト

多少揺らぎはあったが、40nGy/h前後を示していた。これは、0.04μSv/hに相当する。このデータはJB4040やRD1503の較正に使える。少なくとも、生データが0.1μSv/h以下の場合では、生データから0.04を引いて、その半分程度の値とすればよいと思われる。

2011年9月12日月曜日

RAMIのアルゴリズム

前の投稿で、「RAMIによるデータ処理」だとか、「RAMIのアルゴリズム」だとか、格好いい事を書いてしまったが、要はその都度データを平均を計算して、その値が収束するまで測定を繰り返す。そして値が収束したら、その値を「測定値」として採用するというごくシンプルなものだ。この単純なデータ処理を「RAMI」と呼んでみたにすぎない。

「安価な」ガイガーカウンターは揺らぎが大きいという指摘が在るけれど、RAMIを使えば、ものすごく安定するので、是非試してもらいたい。

例をあげておく。
30秒間隔で5回測定したとする。
それぞれ値が、
1) 0.12
2) 0.14
3) 0.16
4) 0.05
5) 0.10
となったとする。

このとき、リアルタイムに各回で平均値をとる。
1) 0.12 / 1  = 0.12
2) (0.12 + 0.14) / 2 = 0.13
3) (0.12 + 0.14 + 0.16) / 3 = 0.14
....
と言った具合だ。
平均値だけを書くと、
1) 0.12
2) 0.13
3) 0.14
4) 0.12
5) 0.11

このとき、計算の精度は小数第二位までにしておく。RAMIでは第三位を四捨五入して、値を近似する。このような逐次平均計算を何度も繰り返し、収束するまで測定を続けるというものだ。この例では収束値には到達していないものの、生の測定値に比べて、ずいぶん「揺らぎ」が収まっているのがわかる。収束にこぎ着けるには、今までの経験上だいたい40回ほど測定すると収束の具合がハッキリ判断できる。(40回というのは30秒間隔で測定すると、20分に相当する......ここは、もうちょっと改良したい点だ。)

この一連の手順(アルゴリズム)がRAMIと私が名付けたデータ処理法だ。

ベータ線を遮蔽する:JB4020の場合

JB4020も遮蔽してみた。なんとRD1503の結果と一致した!
遮蔽し、かつRAMIによるデータ処理をした
RD1503とJB4020の同一場所における結果。

前回の測定でも随分よい一致を見せていたが、その僅かな差異がベータ線のランダム現象によるものらしい、ということが判って来た。JB4020もRD1503も、データ処理法や遮蔽を行えば、等価な性能をもったガイガーカウンターだということが、これで示せたと思う。

ちなみに、シールド「システム」の概要はこの通り。(入れ物が、卵蒸し器のアルミ箱、蓋が5mmのアクリル板2枚)

ベータ線を遮蔽する

同僚のアドバイスで、β線を遮蔽してから測定することにした。β線はニュートリノのせいでエネルギーが一定にならない上、ガイガーカウンターの多くはセシウム137のガンマ線を用いて単位変換を行っているので、ガイガーカウンタの測定値に「ぶれ」を持ち込む。KEKの議論でも、β線はなるべく遮蔽した方がよい、との結論だった。

β線の遮蔽は、アルミ板か、1センチ以上のプラスチック板で可能だという。ただし、遮蔽板にベータ線が衝突すると二次放射線であるX線が飛んでしまうから、X線を測定するJB4020は注意する必要がある。

そこで、今回はRD1503でのみ実験を行ってみた。用意したのは、卵蒸し器(といっても四角いアルミの箱)と5mmのアクリル板。アクリル板は小さめのものを購入して、2つにカットしてもらった。これが卵蒸し器のサイズにぴったり。

測定は、アルミの箱にガイガーカウンタを入れ、アクリル板で二枚重ねて蓋をする。そうして、20分程度の測定を行う。これを、先日の遮蔽無しの測定と比べたのが次の図。

遮蔽の効果の実験(東京都西部)
緑が遮蔽有り、赤が遮蔽なし。ガタガタしていたグラフが、すっと収束値に向けていち早く落ちているのがわかる。また、収束値も低くなっている。β線の影響を取る去ることができたようだ。これで、より正しい値に近づけたと思う。収束値は0.10で、零点補正を加えると0.06μSv/hとなる。RD1503は若干大きめの値を出す傾向があるので、だいたい0.05μSv/h程度だと思われる。役所による公式値は屋外で0.05μSv/h程度なので、かなりいい結果となった。遮蔽の無い場合は収束値が0.12だったので、これに比べると遮蔽した方は0.02μSv/hほど低くなっている。これからの測定では、遮蔽することにしよう。

2011年9月11日日曜日

「安価な」ガイガーカウンターの使い方:積算逐次平均法

先日のガイガーカウンタのデータ分析について考察した結果、積算逐次平均法(Real-time average method for integrated dose: RAMI)というのを思いついた。「安価な」ガイガーカウンターでも、うまくデータを処理すれば結構役に立つ。

ところで、この処理法を今までのデータに対して適用してみた。練習問題として、軽井沢周辺の測定地点における計測データを、RAMIのアルゴリズムで数値処理したのが、次の図。
積算逐次平均法による測定結果の再分析

この図で注目すべきなのは、測定結果が最後に収束しているかどうかだ。赤(雲場池2)を除いて、だいたい収束しているとは思うが、完全に収束しているとは言い難い。(とはいえ、緑はかなりいい収束。)この結果からわかったのは、測定を10分でやめているのはまずいかもしれない、ということだ。15分?それとも、できれば20分?

少なくとも、雲場池の再再度測定が必要な雲行きになってきた....

それにしても、赤、水色、ムラサキの3つのグラフが、同じ収束値に向かって、収束していく様子は興味深い。汚染レベルが一致しているということだと思うが、何か他に情報が隠れていないかどうか気になる。

2011年9月10日土曜日

国民生活センターの「比較的安価な放射線測定器の性能」について:「ばらつき」について

前回からの続き

次のケースにいってみよう。セシウム137のサンプル線源を利用した、測定実験の結果が図5(および6)にある。これは、まさに大学の学部実験と同じ。まずは、結果の分析から入ろう。線源からの距離をうまくコントロールして、0.115, 1.05, そして5.16μSv/hとなるような状況を作る。これは線源に近づける程、線量が強くなる、という逆二乗則を利用している。セシウム137から出るガンマ線は0.662MeVと決まっており、これが四方八方にランダムに飛び散るので、それを測定しようと言う訳だ。近ければ、たくさんガンマ線が当たるし、遠ければ「密度」が低くなるので線量が低下する。

ALOKAおよびJB4020の結果をまとめると、

正しい値: 0.115  1.05   5.16
...................................................
ALOKA:  0.12    1.10   5.52
JB4020:    0.04    1.00   5.14    

となっている。ALOKAは意外に大きな誤差をもっているのが判る。一方、JB4020は 思いの他健闘している。傾向をいえば、低線量ではALOKAがよい結果を、逆に高い線量ではJB4020がよい結果を残している。中間領域では両者ともに、良い結果を残している。

もちろん、ここで報告書がいいたいのは「実際に直面するのは0.1μSv/h程度の状況であるから、安価なガイガーは役立たず」ということだ。

ここで、問題となるのが「ばらつき」の問題である。実はこの「ばらつき」の原因は、機械の性能に起因するというよりも、むしろデータ処理の方法の違いによることに今日気づいた。処理法を統一し、よりよいものにすれば、「安価な」ガイガーでも、低線量の状況を精度良く測定できると思っている。

注目したのは、「安価な」測定器にも関わらず、「ばらつき」の小さいDose RAE2である。これはCsIを用いたシンチレーションカウンターで、ALOKAのNaIシンチレーションカウンターと同じ機構で作動する。最初はそれが理由だと思ったのだが、よく調べるとそれだけが理由ではないことが判った。データの処理法が「積算法」だったのだ。積算法とは、スイッチを入れてから現在に至るまでの、総被曝量を測定する方法で、足し算してどんどん線量を貯めていく。時間も同時に計測していけば、その時点での時間平均も測定できる。Dose RAE2は積算量を時間で割っているので、揺らぎが小さいのだ。一方、JB4020は30秒毎に平均は取ってくれるが、30秒経ったところでそれまでのデータは捨ててしまう。つまり、直近の30秒平均だけを表示している。ちなみに、RD1503は直近160秒の平均値だ。

短時間の時間平均をとると、放射線のようなランダム現象の場合、そもそも線量値の揺らぎが大きいので、平均値自体も大きく揺らぐ。いっぽう、長時間平均を取ると、瞬間的に生じる大きな揺らぎは、大量に生じた平均値に近いデータの中に没してしまい、なかなか平均値を変化させられてなくなる。つまり、「ばらつき」は減って、値が落ち着く(収束する)。

自然放射線は、離散的に飛んでくるし、宇宙からのガンマ線や、太陽からのガンマ線の場合、またはラドンやカリウムといった天然のガンマ線など、放射線の種類に応じて、一個一個の放射線エネルギーは「ばらつく」のが自然だろう。ガイガーカウンターは、基本的には放射線の個数測定だから、一回一回の線量値がぶれるのは当然だ。一方、Dose RAE2やALOKAといったシンチレーションカウンターの様子をみると、ガイガーカウンタと違って、測定針や表示数値が大きく変化することはない。ゆっくりと動く。これは、ガイガーカウンタと違って、光電管で検知するのが、光子数の時間平均だからなんだろうと思う。つまり、放射線一個一個が検出器に飛び込む度にエネルギー変換をするのではなく、一定の時間内に検知した複数の放射線のエネルギーを平均して測定値としているということだ。ALOKAの時定数の設定値はだいたい30秒になっているから、30秒毎の光子数の積算値を利用して、線量を推定していると思う。

例えば、30秒内に2つのガンマ線が飛び込んで来たとする。一つが0.1μSv/hに相当し、一つが0.5μSv/hに相当するエネルギーを持っているとする。ガイガーカウンタの平均法では(0.1+0.5)/2 = 0.3μSv/hとなる。一方、シンチレータの場合は、0.1μSv/hのガンマ線が100個の光子を出すと仮定すると、0.5μSv/hのガンマ線には500個の光子が出るはず。この場合の平均は(100+500)/30=20個/秒。これを、0.02μSv/hに相当するガンマ線が「まんべんなく」降ってくるというふうに解釈する。次に、二つ目のガンマ線が0.5ではなく0.1μSv/hになったとする。ガイガーカウンターの平均値は0.1μSv/hになるが、シンチレーションカウンターは四捨五入して0.01μSv/hになる。揺らぎを計算すると、ガイガーは0.22μSv/hと大きくなり、シンチレータは0.016μSv/hととても小さくなる!(もちろん、実際にはシンチレータには較正を施してあって、上の計算に補正係数を掛けたり、足したりして表示値にしていると思うが、揺らぎが小さくなりやすいのは変わらないと思う。)

そこで、ガイガーカウンタの揺らぎを小さくするには、データ処理の方法をシンチレータのやり方に近づければよい、ということが思い浮かぶ。しかし、ガイガーでは光子は利用しないので、まったく同じ方法を採用するわけにはいかない。そこで、思いついたのが、積算平均である。

つまり、30秒や40秒で前の測定値を捨ててしまうのではなく、どんどん足し込んでいき、その時点での平均値を、積算値をもとに表示するのである。もちろん、機械のアルゴリズムを書き換えることはできないので、今までと同じように短時間平均値をメモし、それを後で数値処理する。このやり方で計算すると、測定値が一定時間の後、収束する様子がよくわかる。東京の自宅(東京の西部)で20分ほど測定した結果を下の図に掲げる。
積算平均値法で計算したJB4020とRD1503の測定値。
赤線がJB4020、緑がRD1503の結果。前者は5分弱で収束し、その値は0.11μSv/h。(零点補正すると0.07μSv/h) 一方、RD1503の収束は15分程かかり、その値は0.12μSv/h(零点補正して0.08μSv/h)。つまり、両者ともにほぼ一致した値が出るということだ。

国民生活センターの測定では、5分間の「暖気運転」をしてから10回測定するというから、最初の10分間のデータは使わず、その次の10点のデータをグラフから抜き出して処理すると、JB4020の測定値の平均値は0.109μSv/h、そして標準偏差は0.003μSv/h(!)となる。つまり、「ばらつきはほぼ無い」という結果となった。RD1503の場合も同じようにして計算すると、平均値は0.115μSv/h、そして標準偏差は0.005μSv/hとなった。これも「ばらつき」はほとんどない。

このように、ちょっと手間はかかるが、積算平均を用いて測定を行えば、「安価な」ガイガーカウンターでも、「ばらつき」の少ない測定は可能で、収束値に零点補正などの適切な補正を施せば、案外いい精度で測定できると思う。

つまり、先日の軽井沢の蕎麦屋の森での測定における問題は、収束の遅いRD1503に対し、測定時間が短すぎたのが、原因だったと思われる。次回は、この点に留意して再測定してみよう。

しかし、大枚はたいて買ったRD1503が、JB4020に収束速度で劣るとは、なんとも皮肉な結果となってしまった...これからしばらくは、RD1503とJB4020を併用して見たいと思うが、収束速度が遅いことが決定的となれば、RD1503を使う理由はなく、「早い引退」をしてもらうしかないだろう。がっくり。

「安価な」ガイガーが低線量で弱い、というのも、積算平均法と零点補正で確認してみない限り、ちょっと信じられないと思っている。もし、嘘ならば、国民生活センターの報告書は、当局の流したデマということになろう。なんだか、戦時中の戦況報告のようになって来た...

国民生活センターの「比較的安価な放射線測定器の性能」について:強い反論

ハッキリいって、この記者会見も、発表された報告書も、私の周りでは非常に評判が悪い。この会見は「おまえらの祖末なガイガーでなんか正確な値は測れないんだよ。政府の出す数字を信用してりゃいーんだよ!」と横っ面を張られたような感じがする、と憤っていた友人もいた。

特にDose RAE2というCsI型のシンチレーションカウンターが槍玉に上げられていて、その性能の高さを信じていた所有者たちは、ひどく怒っている。

果たして、60万円だしてALOKAのTCS-171を買って来ないと、ちゃんとした測定はできないんだろうか?答えは、あきらかに否である。

しかし、この報告もそれなりにいい点もあるので、その辺りを今回は分析してみよう。また、これをやっている内に、RD1503とJB4020の差がどうして出たのか、はっきりしたのでそれも合わせて検討してみよう。

まず、自明な所からいってみよう。簡易ガイガーカウンタは「正しい絶対値は出せない」という点は、もうほとんどの人が気づいているが、中にはどこぞの週刊誌のように、表示された値を見て驚いてしまう人もいるかもしれない。そういう意味では、国民生活センターの主張はある程度は正しい。

しかし、同じ測定器を使って相対値を見比べるならば、「安価な」ガイガーカウンターでもそれなりに科学的な情報を与えてくれる。さらに、ある地点において、信頼できる測定器と一緒に測れば「較正」もできるので、汚染の有る無し程度なら、かなりの精度で測定することが可能だ。実際、私もそういうふうにして測定を進めて来た。その結果、群馬大の早川さんの汚染地図や、地方自治体が測定して得られた結果と、ほぼ一致する結果を得ているし、それ以上の発見も成し遂げることができた。「安価な」JB4020でも、かなりの仕事ができると、今は自信を持って主張できる。

実は、この報告書でJB4020も槍玉に上げられている。そこで、ここからは各論に入って、報告書の各セクションに述べられている「否定的な結論」について、反論を展開してみたい。

まず、図4のケース。これは、自然放射線を測定した結果。ALOKAは素晴らしい値が出ているが、他の安価な測定器は惨めな結果だ、と述べている。これは、実は「絶対値を出せない」という上記の事実の言い換えであって、特に今更騒ぐような内容ではない。これは零点の修正、つまり較正をすれば除くことのできる誤差だから、まったく問題とはならない。ALOKAだって、ちゃんと較正してないと、「安価なガイガーカウンター」と同じように「惨めな結果」になる。鉛で遮蔽した場合も同じこと。つまり、この実験で言えるのは、「私の高いALOKAはちゃんと較正してありますが、安価なあなたのガイガーは構成してないですね」程度の主張にすぎない。実は、KEKの野尻先生たちの調査によると、RD1503は零点補正が0.04μSv/hあることが知られている。後で述べるように、RD1503もJB4020も同じ程度の零点補正を必要とするので、0.04を引いてやって補正を掛ければ、結構高い精度が出るのである。報告書の図4を見ると、JB4020は、自然放射線量が0.1程度、鉛で遮蔽された場合が0.08程度なので、補正すると、それぞれ0.06と0.04になる。ALOKAの値は、0.06と0.01だから、まずまずの一致を見せている。

また、このセクションだけでなく、ほとんどのセクションで、安価なガイガーは、測定値に「ばらつき」が大きく信頼度が低い、と主張しているが、これはガイガーの使い方をあまり研究して来なかった人、あるいは素人の人と同じレベル、のコメントに見える。これに関しては、後で丁寧に議論したい。

次に、低レベルの自然放射線が正しく測れないのだから、さらに低レベルの食品の汚染に関しては、これらのガイガーカウンターでは測定できない、という箇所が報告書にある。これに関しては二点ほど言いたいことがある。まず、その一は、「そんなことは百も承知。だから、政府は食品の検査をちゃんとやって!」という点。こんな報告書を書く暇があったら、食品の詳細な検査をもっともっとやってもらいたい。「お前らしか測れないんだったら、ちゃんと仕事しろよ!」という怒りの声もあちこちで上がっているようだ。同感。

第二の点は、安価なガイガーで測定できない、と彼らが主張しているのは、食物の放射能汚染は軽微(200-500Bq/kg)と仮定しているからだ。しかし、この仮定は間違っている。稲わらの汚染は75000Bq/kgだったし、その藁を食べた牛の肉は4350Bq/kgだったという。これは500Bqの150倍および9倍だから、線量に換算すると約1.05μSv/hおよび0.06μSv/hとなる。前者ほどの高い線量ならどんな「安価」なガイガーでも「危ないことは」検知できるし、後者だって較正すれば測定可能域だ。政府は、福島の事故を過小評価しようとやっきになっていることは、既に周知の事実だが、ここでもその体質が染み付いているのがわかる。

ちょっと長くなったので、ここでいったん切って、続きは別のセクションに書くことにする。

RADEX 1503 ついに来る。

RADEX 1503がついにきた。ウクライナ製のガイガーカウンタ。

まずは、RADEXのRD1503の特徴について。
基本的な機械的構造はJB4020と同じだろうが、データの処理法が異なる。まずは最初の160秒間は予備測定を行う。この間、数値は刻々と変わっていくが、その値は捨てる。測定は160秒待ってから行う。160秒経つと、40秒毎にデータをリフレッシュする。この際、直近の160秒で平均を取った値を表示する。したがって、20分の測定をやっても、その積算値を利用した平均値は計算してくれない。

当初は、160秒経ったら、その後の表示は全測定期間における積算量の平均値かと思っていた。実は、都心(港区界隈)にある某高層マンションの10階室内で測定したとき、値が0.1から0.16の間を数分の間隔で振動し全く収束する気配が無かったので、なにか変だなと気づいたのであった。

RADEX1503は、残念ながら直近の160秒の平均だけが表示されるのみだから、基本的にはJB4020と同じアルゴリズム。これではRADEXをわざわざ購入した意味が無い。まあ、利用者の多いガイガーカウンタだから、その使い方を研究しておくのは無駄ではないだろう。
(1つだけ良い点は、放射線を検知したときに、画面と音声で教えてくれる点。これを数えればCPMを測定することができる。とはいえ、これをやる気は今のところ無し。)

実は、長時間の総積算量の平均値を表示してくれるのがDose RAE2。このアルゴリズムだと測定の揺らぎが少なく、測定メモをたくさん取らなくて済むので便利。(ちょっと値段が高いのが玉に傷。)

さっそく、比較測定を行ってみた。両者を隣同士において同時に測定する。



「蕎麦屋」の駐車場に接する森



測定の様子:左がRD1503で、
右がJB4020
測定場所は、軽井沢の塩沢湖入り口近くの蕎麦屋。この店の第二駐車場に面する森の中で、落ち葉の上に置いて測定。JB4020はいつものように、30秒間隔で20回測定し、その平均を取る。一方、RD1503は160秒待ってから最初の一回を測定し、それ以降は2分毎に5回測定し、計6回の平均値をとる。このやり方でやったところ、大きな差異が出てしまった。
JB4020: 0.17μSv/h、一方RD1503: 0.23μSv/h. ちょっとRADEXの方が値が大きい感じがする。JB4020は、軽井沢の汚染マップでみると、だいたい他の場所と首尾一貫した値になっている。

この違い、どうやって理解したらいいのだろうか

ちなみに、この蕎麦屋は初めて入った。暖簾の感じは良かったのだが、中に入ってがっくり。ちょっと狭いし、がちゃがちゃした雰囲気。団体客が30人、また40人と、大型バスでどんどん入ってくる。その度に、埃が舞うような気がしてあまり気持ちよくない。これなら、追分の蕎麦屋の方がいいかも。けんちん汁のセットメニューはボリューム感があったが、埃まみれかと思うと食欲が失せた。

2011年9月7日水曜日

今朝の新聞記事二本:大江氏の会見と武田氏の発言

大江健三郎氏の会見があったそうだ。
「経済合理性や生産性ばかりにとらわれない理念を掲げる勇気と見識を求める」と。


梅雨明けの頃より、あちこちのチャネルで「さよなら原発の署名」をお願いしたが、反応は鈍かった。署名するだけの勇気がないタイプの人と、原発の怖さが判らないタイプの人と二つに分かれていて、結局「勇気と見識」の欠如がその主な理由だった。


新しい総理大臣の「原発再稼働宣言」が出た以上、大江氏は黙っていられなかったのだと思う。危機感があったんだと思う。私たちは、この危機感を共有し大勢で行動することで、大江氏(と私たち自身)の命を守らなければいけないと思う。(大江氏に中坊氏の二の舞を踏ませてはならないし、我々も、太平洋戦争で無意味に死んでいった人々と同じ運命をたどらないよう闘わなくてはならない。)


一方、武田氏の発言についての報道もあった。「東北の野菜を子供は食べないで」というテレビでのコメントに、一関市長が苦情を言ったというもの。この先生、ちょっと問題が多いことは確かだが、本質は正しいと思う。


ただ、間違っていたなと感じるのは、「東北」とひとからげにしてしまった大ざっぱさ。秋田や青森が、千葉、埼玉、茨城、群馬と比べて、とりわけ汚染がひどいとは思えない。やはり、「少なくとも、福島とその周辺の県の農産物を子供が摂取するのは避けた方がよい」程度の表現にしておくべきだったと思う。


子供に汚染食物を食べてほしくないという切実な気持ちに関しては、武田先生の気持ちを評価したい。テレビではっきり言えない人が多い中、不注意はあったが、勇気ある発言だったと思う。日本国政府やその自治体が、客観的かつ科学的な食物汚染の評価をほとんどやってないのは、世界的にも有名で、強い批判を浴びている。消費者や国民は、東電や政府のミスを押し付けられていることに、気づく必要がある。私たちは、自分の健康を害し、自らの命を削ってまで、彼らの「裕福な暮らし」を支えてあげる必要はまったくないと思う。例えば、原爆で殺された人やいまだに後遺症に苦しむ人たちが飲まされた煮え湯は、まさにどこかに住む「お金持ち」の生活を裕福にするためだけに、命をかけて「摂取」させられた、ということを忘れるべからず。(それでいて、そのお金持ちたちはなんの痛みも犠牲も払っていないのだから、割にあわないことこの上ない。)

2011年9月4日日曜日

テルマエ•ロマエ(1−3)を読む

テルマエ•ロマエ(Thermae Romae)とは、ローマの浴場という意味だが、最近読んだ漫画の題名だ。知的なばからしさ、可笑しさを楽しめる傑作喜劇。Thermaeは明らかにthermo(テルモ、熱)という意味だろう。

ローマの浴場設計士が、折々につけ、現代の日本にタイムスリップしては、日本の温泉文化、風呂文化に接し、それをローマの浴場に活用するという笑い話。

Bathに行った時や、英国に散らばるRoman townの遺跡に必ず見られる浴場の跡を見る旅に、ローマ人と日本人の風呂好きには共通点があると前々から思っていた。同じことを考えた人が居たと知ったただけでも、嬉しく思う。

昨年、一巻を読んで面白いと思ったのだが、続編を買う程ではないなと思っていた。しかし、第三巻が書店に積んであったのをみて、思わず買ってしまった。第一巻の地獄谷の猿の温泉はおかしかったが、第三巻の温泉街の話、与作の歌を歌いながら五右衛門風呂に浸かるおじさんの話など、どれも笑いを噛み殺しつつも、結局、最後は声をあげて爆笑せざるをえない傑作が相次ぐ。たぶん、第三巻が一番面白い。

作者ヤマザキマリ。出版はエンターブレイン(eb!)、 2011.5.7に初版。(買ったのは初版第二刷)近々、阿部寛主演で映画化されるという。うまく撮れば傑作になるはず。期待大。公式サイトで、第一話が無料で読める。

森の落ち葉のセシウム137:予想通り

東京新聞に森林のセシウム137汚染の記事が載った。予想通りの内容だった。放医研の先生の説明によると、セシウム137は葉に付きやすく、落ち葉に蓄積されやすいという。その通りの結果が、雲場池その他の測定で示されている。

共同通信社の測定によると、浪江町の森林で40μSv/h超を観測したという。京大原子炉の先生によれば、これは「人間の住める水準ではない」という。政府や政府寄りの専門家は「森林の除染」を口にするが、科学的に判断できる専門家たちの意見は「それは不可能」。ちなみに、チェルノブイリ周辺の森林は放棄されたという。おそらく、真実は「福島の森林はもう腐海化した」ということだと思う。マスクや防護服を付けてしか入れない場所なんだと思う。本当に残念だ。

ちなみに、政府が「除染」するならば、その廃棄物の処理場所が必要となるが、それは東電に「返却」するに限る。原子炉から来たものは原子炉に戻すべし。

天然のキノコの汚染

福島の天然もののキノコの汚染が報道されていた。案の定だ。産地は福島県棚倉町、福島第一原発から100キロほど離れたところにあり、白河の近くだ。キロあたり28,000Bqが検出されたという。早川地図によると、このあたりの空間線量はおおよそ0.25μSv/hで、これは軽井沢離山東部雲場池追分碓氷峠など)や佐久山地物見岩神津牧場周辺や下仁田)の黄色ピンに相当する地域と同じ水準だ。

軽井沢周辺についての報道はまだないが、おそらく今回の福島キノコと同程度の汚染はあるだろう。県、あるいは町は調査し、その結果を公表した方がいいだろう。さもないと、結構食べちゃう人は多いと思う。

今年は、関東や東海が産地の松茸などは食べないほうがいいと思う。恐ろしいことに、もしかすると来年以降も影響はでるかもしれない。腐葉土についたセシウム137は、ほんとうに流れ難いと思ったから。

2011年9月2日金曜日

gimpで比較明合成を試みる

月刊星ナビの8月号に「比較明合成」についての記事があった。なんのことやら、チンプンカンプンだったのだが、コンポジットをやっている内にだんだん意味がわかってきた。

ノイズを消すときは、「平均値」をとってデジタルデータを合成する。例えていえば、黒いものと白いものを足して二で割れば、灰色になるということだ。白より灰色の方が、黒い背景にはより目立たなくなる、という原理だ。

一方、「加算」という合成モードもあった。これは、足し算するだけなので、明るいものに明るいものを重ねればより明るく、暗いものに暗いものを重ねればより暗くなる。しかし、暗いものに明るいものを重ねると、明るい物体は少し暗くなってしまう。ノイズの乗ったデータを単純に加算すると、ノイズがあちらこちらに散らばった写真になるだろう。しかし、ノイズが少ないデータならば、短時間露光した写真を重ねることで、長時間露光したかのような効果が得られるに違いない。(試してないので、断定はできないが...)

日食の展開を重ね合わせたり、惑星の運行を重ねるときは、単純加算にすると暗いところと明るい星が重なるので、重なりの始めに置かれた惑星がだんだん暗くなってしまう、という問題が起きる。そこで比較明合成が出番になる。

比較明合成とは、明るいものに合わせて合成していく方法だ。背景の明るさがだいたい同じくらいで、対象となる天体よりも暗ければ、何度合成しても天体が暗くなっていくようなことはない。恒星の日周運動や、惑星の逆行、日食や月食の連続写真などは、この方法でうまく合成できる。

今回、練習のために、今年の春から記録を付けて来た、土星の逆行写真をつかって、比較明合成をやってみた。その結果がこれ。
比較明合成による土星の運動
2011年4月から7月までのデータで練習。



軽井沢の放射能汚染:仮説崩壊(追分ショック)

追分に蕎麦を食べにいった。久しぶりに温かい天ぷら蕎麦を食べる。おいしかった。

離山の東西仮説を確かめるには追分で測定するべきで、さっそくやってみた。その結果は驚きのものだった。

離山から西に離れること5キロほど、また標高はちょうど1000mの場所にある追分は、仮説によれば0.1μSv/h(ただしJB4020の生データで)程度のはずで、汚染は無い地域のはず。しかし、測定結果は、碓氷峠雲場池と同じで、0.27μSv/hだった.... 自分の仮説はこれで完全に破れた。軽井沢の汚染は思ったより広がっているようだ。ショックだ。

御代田も、浅間山麓の辺りは汚染されているのかもしれない。雪窓公園は0.11と低く出たが、手入れされた芝生が広がっているので、除染されてしまっただけなのかもしれない。引き続き調査を広げる必要があると感じた。

今回測定したのは、蕎麦屋さんの前を走る国道18号から、ちょっと脇に入った場所にある雑木林の中。今までのように地表に置いて測定した。地表の状況は、雲場池同様の落ち葉。おそらく、蕎麦屋の駐車場(アスファルト)で測ると、雲場池の湖畔で測定したような低い線量が出たと思う。なんとなく、軽井沢の汚染は、落ち葉や苔に埋もれた山間部や雑木林、大きな別荘地の庭、そして湿地帯など、自然にあふれた場所が(皮肉にも)ひどい結果になっているような気がしてきた。

今までの結果をまとめると次のような地図となった。
実は、今日は他にもいろいろ測定に行く予定だったが、蕎麦を食べ終わる頃、激しい雨がついに降り出してしまったため、中止にした。それでは東京に戻ろうと予定を変更すると、今度は関越が花園まで通行止めだという。しかたなく、こちらもあきらめる。その後、いったん雨脚は弱まって関越は通行止めが解除されたものの、家に着くとまた強く降り出して来た。今度は山梨の方から強い雨が侵入してきたようだ。台風の影響が少ないことを祈る。(これでセシウム137が流れ出してしまうかどうかも、興味有り。)

[追記]2012年の秋に行った、軽井沢の土壌の放射能測定の結果はこちら

2011年9月1日木曜日

高峰高原のチョウと野草

高峰高原で見つけた野草と蝶の写真をここにメモしておく。いつもながら、高山のFauna and Floraはすばらしいと思う。

奥の長い山が高峰山(2106m)

名前わからず(キク科ですね。)

ヤナギランが咲き始めた

マツムシソウはどこも今がピーク

ベニヒカゲ(高山蝶らしい)

ツリガネニンジンはもう萎れ始めた。

ヤマハハコ

おそらくハクサンオミナエシ

アサギマダラ(これは高山蝶)
たぶんハクサンフウロ

信州のせシウム汚染の度合い:高峰高原へ

国立環境研究所のシミュレーションによると、軽井沢から流れ込んだセシウムクラウドは、小諸、上田、そして長野市へと流れていったとある。実際、上田や長野の下水汚泥にはセシウム137が蓄積されているし、農産物にも微量ながら影響が出ている。

標高800mの地点の、御代田町雪窓公園での測定結果は「緑ピン」、つまり汚染無し(あるいは軽微)だった。佐久市や南佐久にも汚染地域は(佐久市/下仁田町の県境を除いて)今のところ存在していない。もしシミュレーション通りにセシウムが流れたなら、より標高の高い、たとえば1000m以上のところにホットスポットがあっても不思議ではない。碓氷峠と離山は1200m程度のところにあり、そこの汚染がひどいとなれば、浅間山の中腹あたりに汚染地域があるかもしれない。そこで、今回は、浅間山の西側の高峰高原に登ってみることにした。

今回は、標高の低いところから高いところにかけて、軽井沢より西の地域に汚染された場所がないのか調べるのが目的。そこで、5つの地点での測定を行うことにした。
(1)小諸市御影のツルヤの芝生:標高700m(2)きのこの森レストラン(菱野温泉への分岐):標高1000m(3)浅間山登山道入り口(浅間山荘への分岐):標高1200m(4)車坂峠信州側:標高1950m(5)車坂峠(黒斑山登山道入り口):1980m

(1)標高700m地点:暑い。直射日光を受けつつ、ツルヤの芝生にて測定。結果は0.10μSv/h。緑ピン。佐久平と同じ水準。

(2)標高1000m地点:浅間サンラインから上りに転じる。軽井沢から続く1000m道路が菱野温泉に到着する直前に、きのこの森という食堂がある。地元のキノコで料理を振る舞ってくれる。が、今年はちょっと遠慮したい気分。キノコ、稲わら、そして腐葉土はセシウム137をよく吸収する性質がある。路側の駐車スペースの荒れ地(野草の上)で測定。結果は0.14μSv/h。ちょっと高めの緑ピン。


(3)標高1200m地点:天狗の路地から浅間山にアタックするときの登山道への入り口。ここに駐車して、浅間山荘まで徒歩でいくのがよくやるパターン。浅間山荘事件の舞台となったところでもある。(同名の山荘がかつて軽井沢にあり、そちらが事件の舞台。こちらの浅間山荘は小諸市にあり、事件とは無関係。)ここは、汚染の強かった離山や碓氷峠と同じ標高地点。ただし、浅間山の陰になっているところ。駐車場に車をとめて、付近の森の中で測定。結果は0.10μSv/h。佐久平と同じ水準。緑ピン。どうも、セシウム137はここで地表に降りなかったと見える。とすると、もっと高い地点か?
浅間山荘入り口



(4)標高1950m地点:高峰高原の車坂峠(1973m)の直前に、車の駐車できるスペースが道路脇にある。ここに路駐して測定を行う。さすがに眺めがよい。涼しくて気持ちのよい場所だった。測定結果は0.11μSv/h。低い...どうもセシウムクラウドは高峰に雨を降らせてないようだ。ここは汚染がないと思う。

車坂峠直前の信州側

測定の様子
(5)標高1980m地点:黒斑に至る登山口で測定。ここはちょっと高めの0.14μSv/hが出たが、緑ピンの分類だ。これで、本日の測定は終了。

測定の様子

測定場所にあったコケモモの実
まとめ:さっそく高峰での測定結果を汚染マップに入力してみよう。軽井沢の部分も合わせるとしたの図のようになった。
軽井沢の西の様子。小諸—高峰のラインは緑ピンとなった。
この地図を見る限り、浅間山の西や小諸、御代田そして佐久平はセシウム汚染が無い、あるいはかなり軽微であるような感じを受ける。(もちろん、私の持っているガイガーカウンタの精度の範囲内で。)標高が高いからといって、必ずしもセシウム入りの雨は降らなかったようだ。

次に興味があるのが、浅間山の東の地域、そして菅平、蓼科へかけての地域だ。セシウムクラウドは北佐久、南佐久の平を越えて、次は蓼科、八ヶ岳、そして御牧が原の山間地に当たったはずだ。少なくとも、菅平、鹿教湯で強い雨が降ったことは分かっているので、盆地の『対岸」に軽井沢や佐久山地のような汚染地域があってもおかしくはないだろう。

[追記:2013年5月に再度調査に入った。]