2015年12月21日月曜日

ドローンの運転練習

ドローンの運転で難しいのは、前後左右が反転したとき。ちなみに、ドローンの軸周りに回転する動きのことをヨー(yaw)という。phantom2では左レバーを左右に動かす事でヨーを行うことができる。

今日も木々の間で360度回転をヨーの操作でやろうとしたのだが、風に流されて木にあたりそうになったため、180度回転のところで操作を中断するはめになった。ここで頭の中にあった左右の対応関係が反転しパニックとなる。なんとか前進(つまり操縦者にドローンを近寄らせる)させて高度を降下、空中でホバリングしたところを手で掴んでエンジンを切り、墜落せずに済んだ。頭のなかで左右を瞬時に切り替えるのは本当に難しい。なんどもシミュレーションしてから、実践に臨むべしと反省したのであった....

2015年12月20日日曜日

djiのドローンを購入:型落ちのPhantom 2を格安で

djiの型落ちドローン、Phantom2を格安で購入した。
Phantom2(djiのホームページより転用)

民間用のマルチコプター製造販売の世界シェア1位のこの会社(dji)は、なんと中国の会社だったのには驚いた。てっきりiRobot系の会社かと思っていた。

現在のdjiの主力機種はPhantom 3。Phantom 2ではカメラが別売り、オプションだったのだが、Phantom3ではデフォルトになった、という理解。(ただし、改良型の「Phantom 2 vision+」では、Phantom3のカメラシステムと同じものを採用している。)

現在Phantom2は全てのモデルが製造終了となり、購入はお店の在庫にあるものだけと限られる。したがって、間もなく購入できなくなるはずである。私が利用したのは大手家電量販店だが、「ここのネットショップでは取り扱い終了」とラベルされていたものを、電話をかけて直接交渉し、全国の店舗の在庫をチェックしてもらい、最後に残った1つをわざわざ遠くの支店から取り寄せて、本店まで取りに行くという約束の下に格安で購入する事ができたのであった。

購入したパッケージを開けてみたら、Zenmuse h3-3dが同封されていた。これは、ビデオ撮影を飛行によるブレから保護してくれるシステム(ジンバルというらしい)で、ビデオ鑑賞時に「飛行酔い」しなくて済むという、素晴らしい機械である。これがおまけで付いてきたのであった。これにより、昨年購入したまま使い途に困っていたGoPro Hero3+を装着できる!ということで、空撮にチャレンジできることになった。Phantom 2+Zenmuse h3-3dという、まさに型落ちのシステムではあるが、話題のドローンを安く使い回せるということで、非常に満足している。

ジンバル(Zenmuse h3-3d)を装着した様子
(djiのホームページより転用)

3度の墜落を経て、プロペラを4枚損傷し、ジンバルの電源コネクターを吹っ飛ばし(とはいえ、GoProの内臓電源を使えば、撮影には支障がなく済んだ)と、満身創痍の状態ではあるが、今では操縦もだいたいマスターし、高高度の撮影に挑んでみようと思っている次第。これまでの飛行時間はだいたい20分程度。バッテリー充電1回分に相当する。

Phantom 2にはかなり優秀な姿勢制御システムが入っているので、基本操作を覚えれば、それほど怖がる必要はないのだが、善光寺や防衛省に墜落しているのを見れば、やはり一定の技量がないと墜落させてしまう恐れがある。怖いのは風(これは自らのプロペラが作る風やそのあおり風も含む)による不安定性だ。建物や木々の近くで運転すると、あおり風を受けて機体が流されることがある。これが建物や樹にぶつかる原因の一つだろう。やはり、グランドなど、広い所で最初は練習したほうがよい。

私の3回の墜落の全ては、建物と樹への接触、衝突による墜落である。高度を2m程度に制限していたので、本体の損傷にまでは到らなかったが、これが対人だと考えると怖いものがある。気をつけたい。少なくとも、20m四方程度の空間が必要だろう。機体が流れたとき、パニックになって操作を間違えても、これだけ広ければまずリカバリーできる。逆にこれより狭いと、リカバリーする前にどこかに衝突する可能性が高まる。

建物や木に衝突すると、プロペラが折れて飛び散る。次いで機体が墜落する。エンジンを止めないと、機体は横転して跳ね回り、さらにダメージが発生するだろう。幸いにして私はそのような「事故」はまだ起こしてない。とにかく、落ちたらまずはエンジンを切ろう!といいたい。しかしパニックになっていると、これがなかなかできないのだ。

2015年12月1日火曜日

冬の到来:車山にて

今週は浅間も蓼科も初冠雪した。霧ヶ峰にも降雪の気配があったが、今日の気温は5度ほどで、日陰を除いてほとんど融けてしまった。車山スキー場はまだまだ雪が少なく、オープンにはほど遠く、人っ子一人いない状態。毎年恒例の「初雪散歩」を、今年も楽しませてもらった。

八ヶ岳、蓼科、浅間、南アルプス...すべての峰峰は雪に覆われていて、青空とのコントラストが素晴らしかった。富士の高嶺も微かに見えて、やはり真っ白であった。



2015年11月30日月曜日

白亜紀前期の化石:山中地溝帯

ひと月ほど前に採集した白亜紀前期の化石のクリーニングをした。できるかぎり、種の同定を試みてみた。もちろん、この地層の化石にはまだ慣れていないので、最初はかなりの確率で間違ってしまうだろう。習熟するにしたがって修正して行きたい。

トリゴニア
まずはトリゴニアの部分化石。細かい種類まではまだ同定していない。この地層からはよく出るらしいが、30分そこそこで質のよい完体を見つけるのはなかなか難しい。

ついで、非対称型のウニ。たぶん、Heterostarと呼ばれるもの。この標本はウニの裏面(肛門が見える)を見せているが、このときの採集では表側を見せている標本も採取できた。
Heteroster yuasansis
次は二枚貝(bivalves)。高知大学理学部の進化古生態学研究室が公開している、白亜紀の二枚貝の図鑑を参考に調べた。この図鑑は、日本の白亜紀二枚貝に特化しているので、使いやすいと思う。この参考文献を頼りに、自分なりに種を同定してみた。

Thetis japonica, Yabe+Nagao(1928):
白亜紀前-中期の二枚貝。「殻表は成長線がほとんど見えず、全く平滑。膨らみが強く、ほとんど円形に近い外形を持つ。殻頂が小さく、尖っている」などという記述がぴったり一致した。大きさは1cmほど。ツキガイの一種だという。

Mesosaccella choshiensis, Hayami:
ジュラ紀から白亜紀(Barremian)にかけての二枚貝。「殻頂はほぼ中央。殻の前後がほぼ対称。殻表はほとんど平滑。」などの記述があてはまると判断。
Mesosaccella choshiensis(左)。
右側の貝の種類は不明。
多分同じ種類だと思うのがこれ。

Turritella sp.:
巻貝に関しては、高知大の図鑑は使えないので、あくまで個人的な判断に留まるが、イギリスの新生代の巻貝によく似ているので、Turritellaと判断。今回の産地では、巻貝は印象化石として産出することが多い。これもそう。
山中地溝帯ではCassiopeという巻貝が産出するそうだが、これは5-6cmの大型巻貝なので、今回採取した1cm程度の標本とは特徴が合わない。


2015年11月28日土曜日

マンションの杭の偽装:続々報

東京新聞の記事によると、さらに基礎杭の工事に関してデータを偽装している会社の数が増えたという。予想通り過ぎて、驚きがないのが驚き。結局、日本のマンションの基礎は信用できないということを確信した。

こうなると「くじ引き」と同じで、当たりか外れかの問題。何千万も払ってやるようなバクチだと思えば、足を洗った方がよいということになろう。しかし、これが、小学校や市庁舎など、公共の建物にまで及んでいるとなると、単なるバクチとは言い切れなくなってくる。更には、高速道路や橋の支柱とか、駅の建物の基礎とかにまで話が及んでくると、地雷原を毎日走らされるようなものだ。

(図は東京新聞のホームページより)

2015年11月27日金曜日

マンションの杭の偽装:続報

マンションの基礎杭の偽装/手抜き工事は、どうも長年にわたって、かつ広く行き渡っている「慣行」のようなものらしい感じがしてきた。今日の報道では
「三谷セキサン」というこの業界最大手が千葉県のマンション駐車場の杭で「手抜き」をやったのを隠していたらしい。

この会社は福井県の小学校の杭工事でもデータ偽装していることが前日に判明しているが、千葉のケースでは「杭の長さが設計寸法より10メートルも短い」施工となっているようで、単なるデータの偽装とはいえない状況だ。

さらに、ジャパンパイルという業界大手の会社も杭打ちのデータを偽装していることが、すでに判明している。

旭化成建材のケースでは、特定の一人が犯したデータ偽装ではなく、60人以上の社員/関連下請けの社員が偽装を行っていた事が明らかとなり、組織的な「偽装」である可能性が高まった。

杭打ちの会社に派遣社員として勤めていた人は、「こんな偽装、この業界では常識。どこもかならずやっているはず」と言っているとのこと。それが本当なら、もう日本のマンションには住めない。

2015年11月11日水曜日

脱原発のテント村の行方

原発政策に異を唱える人々が集まっているテント村が、近々、強制撤去される、という情報を聞いた。本当なんだろうか?しかも、経産省は「土地使用代」として1000万円以上を要求しているという。本当だとしたら、えげつないやり方だ。

「おまえら、貧乏人なんだろ。カネがなかったら、もうこんなことするなよ。後悔するだけだからな(笑)。」という声が、霞ヶ関のビルから響いてくるような、そんな感じがした。

たぶん、テント村の人たちは「はいそうですか」とは言わないだろうから、しばらくは頑張るはず。そうして、最後は当局が力で排除することになるだろう。沖縄や大飯でやったことを、霞ヶ関でもやってみるのだろう。そういうやりかたは、絶対良くない。知性ある人間なら、辛抱強い「話し合い」で解決すべきだ。

2015年11月9日月曜日

逃げる放射能廃棄物の流れ:佐久平から、今度は伊那谷へ

福島原発が爆発した直後、放射能物質に汚染された関東のゴミ(植木や落葉、木材チップ、稲藁などなど)を焼却した灰(8000Bq/kgまでのもの)が、信州佐久(正確には小諸市だが)に持ち込まれた。

持ち込んだのはフジ・コーポレーションという産業廃棄物処理業者。持ち込んだ先は、豊かな農地のど真ん中に、この産廃業者がつくった最終処分場(実際、真横にブルーベリー農園や農業法人の管理する広大な農場などが広がっている)。

軽井沢や御代田、そして小諸の高峰高原や、佐久市の内山など、群馬県境に近いところではひどい放射能汚染が発生した信州だが、そのわずか数キロ先の佐久平まで下りてくると、土壌の放射能汚染は50Bq/kg程度と非常に軽微なレベルに抑えられていた。これは、高度1000m-1300mで関東より飛散してきた放射能プルームを、ちょうどその標高にある佐久山地の山々が防いでくれたからだ。

東京を含む関東平野の汚染の平均は1,000-3,000Bq/kg、ひどい所は10,000Bq/kgを越えるようなところもあったわけだから、信州佐久平に、わざわざ関東から8000Bq/kgの焼却灰を運んできて捨てるのは、「狂気の沙汰だ」と言う人がいてもおかしくないだろう。

しかし、佐久、小諸の人々のなかには、この最終処分場の存在が不合理であることを感じ取っていた人々がいて、市民運動を起こし、最終処分場に放射能汚染された灰などを捨てないように要望しはじめた。長野県、小諸市、そして佐久市の行政や役人たちは、放射能物質の恐ろしさに関しては、まったくの無知で、素人であったため、市民の声に耳を傾けることに失敗しただけでなく、産廃の肩をもつような態度を見せた。自分たちに寄り添ってくれる行政を味方に、産廃業者は自分たちのやっていることは、「県民、市民のためになっている」と勘違いし、こともあろうに、市民運動を潰すような訴訟を起こした。そのやり方は、「スラップ訴訟」というもので、市民運動を展開する中心人物ひとりに狙いを定めて、個人攻撃するやり方だった。

これに、敢然と立ち向かったのが、市民運動のグループメンバーであり、東京弁護士会の保田行雄弁護士、そして環境学者の関口鉄夫先生だった。

保田弁護士は、カネミ油症事件や、薬害エイズ訴訟で厚生省やその監督下にあった化学工業や製薬業者を相手に闘い、そして現在福島原発事故による放射能汚染による損害に対する賠償を巡って、国と東京電力と闘っている弁護士だ。

また、関口鉄夫先生は、廃棄物と環境の問題に長年携わり、近年では放射能廃棄物や、汚染物質などの問題を、「処理」「環境」の観点から研究し、それを市民活動へと応用している「動く」学者だ。東京新聞の「こちら特報部」の記事で、私は関口先生のことを初めて知った。

フジ・コーポレーションは、「埋め立ては安全であり、人々のためになっているのに、それを批判するとはけしからん」という主旨で、市民運動の中心に立っていた長岡直仁さんを、2013年11月(今から2年前)に名誉毀損で訴え、損害賠償として1100万円を請求した。裁判は当初佐久地方裁判所で行われていたが、事の重要性を感じた裁判所は、上田地裁に場所を移し、より経験のあるベテラン裁判官に裁判は引き継がれた。

廃棄物処理を「必要悪」を見なせば、公共の利にかなう、という司法判断が出てもおかしくなく、裁判の行方を、息をのむような緊張感で見守っていたが、今年の春、ついに判決が出て、長岡さんの完全な勝訴、つまり産廃側は「惨敗」に終わった。

県や市の信頼を失うことを恐れたか、自らの名誉を守るために、産廃業者は東京高裁の抗告し、今度は東京の霞が関に場所を移しての闘いが始まった。一般の市民が、裁判のためだけに、わざわざ東京にいくのは大変なことだ。しかも、高裁の雰囲気には異様のものがあって、判決に不服だとメガホンで叫ぶ人やら、原発再稼働反対や、安保関連法案に反対するメガデモの叫び声、さらには裁判に向かうヤクザ風のひとたち、などなど様々な人で周辺は溢れている。こんな環境に身を置き、裁きに参加する心持ちを察するに、針で刺されるような痛みを感じた。フジ・コーポレーションは、弁護士を入れ替え、増員し、巻き返しを測ってきた。資金力にものをいわせて、圧倒しようということだったのかもしれない。

東京高裁の判決は、またもや長岡さんの勝訴だった。産廃側の主張は完全に「棄却」された。(彼らは最高裁にも訴えるつもりのようだが、おそらく無駄足に終わる、と大方の筋は見ている。)スラップ訴訟では、負ける市民活動グループも多くあるようだから、ほんとうにこの結果には安堵した!

ところがである。佐久平で敗北したフジ・コーポレーション(表向きは関連会社のハクトーの名前を看板に掲げているらしいが)は、今度は強い放射能を帯びた焼却灰(8000Bq/kgまでのものならなんでも)を埋める最終処分場を、事もあろうに伊那に建設する計画を新たに構想しているというから驚いた!微弱ではあるが汚染のある佐久平と違って、伊那谷は関西と同じ「セシウムフリー」の地域だ。市田柿や、寒天など食品工業が伝統的に強い「聖域」とよべる信州の地域である。(信州大学の農学部も伊那にある。)この地は絶対に守らなくてはならない。

長野県が、この処分場建設に許可を出すならば、まだまだ産廃業者の息のかかった「役人」が、善光寺平にはまだまだたくさん居る、ということだ。悪いのは産廃だけじゃない。

リニアモーターカーの問題で傷つけられた南信の人々に、さらなる苦難が降り掛かっている。しかし、佐久平で長岡さんを守って闘って勝ったように、こんどもみんなの団結によって、この挑戦をはね除け、信州の自然環境を守りたい。100年、そして1000年の未来のために。(セシウム137の半減期は30年だから、現在の闘いとは、すなわち、少なくとも300年先の未来のための闘いである。)




2015年11月8日日曜日

東欧の線量計

東欧の街に仕事でいった。研究所の前の建物に線量計がついていた。
結構高い値で驚いた。ヨーロッパ人は「ここは標高が高いから」というのだが、地質も影響しているような気もする。一応、土壌サンプルは採取できたので、あとで調べてみたい。ちなみに、この国には原発はまだないはず。

この研究所には野良犬がとても多いのだが、実は町中にもたくさんいるらしい。かつて流行で買われていた犬が、経済の崩壊で捨て犬となり、野生化したのだと説明を受けた。狂犬病がときどき流行るらしく、そうなると町中大騒ぎになるとか。そういえば、狂犬病は死亡率100%であった...

2015年11月7日土曜日

滋賀県に投棄された放射能廃棄物の行方

最初は琵琶湖畔に異様に線量が高い場所がある、という2013年半ば頃の報告だった(このブログでの記述はこちら)。次いで、それは東電が福島から滋賀県に運ばせた、放射能汚染された木材チップであることが判明(東京新聞のスクープ)。

この後、この汚染木材はどうなったのか、最近続報(東京新聞)があったのだが、忙しくて記録するのを先延ばしにしているうちに、リンクが切れてしまった...ということで、ブログに記録してくれた皆さんの情報を以下にまとめてみる。

まずは、今年の9月中頃に、滋賀県高島市の琵琶湖畔に投棄された、放射能汚染された木材チップの一部が、こっそり群馬県前橋市に運搬されていたことが判明した。

さらに、この報道の翌日、この放射能汚染された木材チップは、前橋市の廃棄物処理業者によって「処理」されていたことがわかった。

そして、さらにこの翌日、この「処理」の意味が判明。なんと、「堆肥」となって市場に出回ってしまったという。少なくとも、群馬県産の堆肥は、セシウム汚染されたものが含まれている可能性がある、ということだ。

しかし、前橋に運ばれたのは、不法投棄された汚染木材チップのごく一部だから、全国に分配されていった可能性がある。出所のわからない、堆肥を買ったり、使用したりするのは控えた方がよいだろう。

2015年10月28日水曜日

上空から見たフランス

仕事でパリに行った。CDGに降り立つのは初めて。英国からEurostarでGare du Nordに降り立つというのが、いつもの行き方なのだが、今回はいろいろと面倒くさいことがあって、仕方なく悪評高いCDGに、悪評高いAir Franceでいくはめになってしまった。

案の定、この日はストライキのど真ん中...(リストラ対象者の怒りは凄まじく、執行部の服は破かれたらしく大変なことに...)フランス人の友人にいろいろと情報を教えてもらう。この友人はパリではなく、ストラスブールの研究者なのだが、なんとエールフランスは使わないのだという。私たちの話しをよこで聞いていたドイツ人、イギリス人の友人たちは「うーむ」と唸った後、「さすがはフランス人。よくわかってる!」と賛嘆した。運の良いことに、私がCDGに到着した日は労働者と経営者の間で話し合いが再会された日のようで、空港全体が閉鎖なんてことにはなってなかった....本当によかった。

ところで、パリに行く途中に見えたアルプスが素晴らしい景色を見せてくれた。
French alps from Air France
上の写真を撮った後、アルプスの峰峰に雲が海原のように沸き出して、最後は白い海に浮かぶ島々のようになったのは、とても素晴らしい景色だった。
アルプス山脈なのに、白い海に浮かぶ島のよう。

しばらくすると、広大なフランスの小麦畑の平原が現れ、そして間もなくパリ到着という時になって、眼下に現れた不思議な雲...よく見たら原発から流れる蒸気であった。
眼下に伸びる不思議な雲の正体は....
Nogent Nuclear Power Plant.

Nogent NPPの拡大図
パリの南西100キロメートルほどの場所にあるというこの原発は、後で調べてみると、Nogent NPPという原発で、ちょっと前に反原発のグループが侵入に成功し、垂れ幕を掲げた原発であることがわかった。飛行機だと、ここから、ものの数分ほどで凱旋門が見えてきたので、その近さに驚いた。

そういえば、先ほどのフランス人が、「フランスでは、ワインの放射能検査が行われていて、年代別にどれだけセシウム汚染があるかよくわかっているんだよ」と教えてくれた...チェルノブイリ事故の影響が汚染原因のほとんどだろうが、先ほどのような景色を見てしまうと、その汚染は意外と「自前」のものだってあるのかもしれないと思ってしまったのであった。

今回の旅行では、残念ながらパリの土壌採取はできなかった。件のフランス人は、「フランスには、結構あちこちにホットスポットがあるんだよ!」と教えてくれたので、興味深い。次回は是非!

CDGで買ったワインはChateau Brownというボルドーの赤ワイン。年代はもちろん1986年よりはるか後の「2010年」もの。いくらビンテージといっても、1990年とか、1988年とかのワインは避けた方が良さそうだ。ちなみに、この赤ワインを飲んでみたら、渋みにアクセントがある非常に美味しいワインだったので、満足である。

2015年10月26日月曜日

紅葉の山へ:化石採集

信州の山々では、紅葉はピークを越えつつある。白亜紀の地層から出土する化石を狙って、彩り鮮やかな秋の山に入ってみた。
山中地溝帯と呼ばれる、秩父周辺の山岳地帯に広がる地域で、ジュラ紀から白亜紀にかけての比較的古い地層帯を目指す。この日は、1億3000万年ほどまえの白亜紀前期の、黒い泥岩、これは深めの海底だった場所と思われる、からなる地層で採取した。この産地での採集法はというと、硬い泥岩を拾ってはハンマーで割る、拾っては割る、の繰り返し。


今日は手始めということで、わずか30分ほどの採集に停めておいた。というのも、ここは結構なセシウム汚染地域で、昨年行った土壌測定では600Bq/kgほどの場所。現在も、線量計を持って行くと(dose rae2)0.13μSv/hまで跳ね上がる(麓の町では0.05μSv/h程度)。化石を含む岩石は、崖から最近崩れ落ちたものであり、よく水洗いし、量もわずかであることから、問題はないと考え、必要最低限だけを持ち帰ることにしている。

今回の試験的な採集では次のような標本を見つける事ができた。
Heteraster yuasensis (ウニの一種。ドーバーで取れるMicrasterに似ているタイプ)
Karesteniceras obatai (巻の弱いアンモナイト)
隣りのマテ貝状の化石はおそらくGervillia forbesianaの部分だろう。

Entolium sanchuense? シジミに似ているような...
Thetis japonica, Yabe+Nagao(1928)だと思う。
(Thanks to 田代正之, 「化石図鑑」)
これは、白亜紀前期頃の海棲の二枚貝で、ツキガイ科の貝。シジミじゃない!
他にも3、4点採集したが、整理がまだできてない。

2015年10月25日日曜日

オリオン流星群

ピークを過ぎたオリオン流星群だが、まだ飛んでいるというので、40分ほど夜中に観測してみた。観測を始めてから20分後に、1つだけ、オリオンの右側(西側)に飛ぶのを見る事ができた。

2015年10月16日金曜日

マンションの問題

新築でも中古でも、マンションの購入の際に気になるのが、「安全性」と「強度」だ。大きな地震が関東で発生する確率が高いといわれているだけに、迂闊に大金をドブにすてるようなことはしたくない。しかし、実際にマンションを買おうとする際、基礎の図面とか施工記録、修繕計画や、品質保証の書類などを要求しても、「無い」とか「開示は不可能」とか、なかなか見せてくれないところが多い。とりわけ、中古マンションはその傾向が強く、買う気が失せる。新築物件では比較的よく説明してくれるが、肝心な構造設計書や、コンクリートの強度仕様などは、「契約した人にしか見せられない」と意味の分からないことを言う(購入してから強度が足りないと判っても、それは無意味だ)。

このところ、大手の建設会社による欠陥マンション販売が相次いでいるのは見過ごせない。そこに住む人だけが損害を被るだけでなく、大地震によって倒壊したり、居住不能になったりして、日本全体に経済的、心理的、物理的など多方面にわたって大きなダメージを与える可能性があるから、社会全体の問題だ。またデータの改ざんなど、科学や工学の基本精神をないがしろにする姿勢にも大きな問題がある。技術の高さ、品質管理の水準の高さ、まじめで丁寧な仕事内容、などといった、世界的に良い印象を築き上げてきた日本の技術力が、「結局はその辺の国と同じ低レベルだった」と思われてしまうのは、国家の利害から見ても大きな損失だ。補償問題などが、赤字経営の引き金となり、大手の建設会社が倒産するような事態となることも問題で、社会不安を呼び起こす可能性がある。

そのようなことがないように、しっかりとこれまでの問題を人々は記憶し、嘘や偽装が簡単にはまかり通らぬよう、しっかり見張って行く必要がある。

[最近の欠陥マンション]

  • パークシティ Lala 横浜(三井不動産レジデンシャル、三井住友建設):基礎の杭が浅かったり、支持層に届いておらず、建物が傾いた。また、杭打ち込みデータを改ざん、偽造、転用。
  • ザ・パークハウス グラン南青山高樹町(三菱地所、鹿島建設):配管のための穴が開いていなかったり、位置が間違っていた上、追加工事でのコンクリートのコア抜きで、(強度を高めるための)鉄筋を切ってしまった。結局、完成寸前に、全棟取り壊しで、作り直しとなる。
  • パークスクエア三ツ沢公園(住友不動産、熊谷組):基礎杭が支持層の到達しておらず、マンショんが傾いた。
個人的には、私はしばらくマンションは買う気が失せた。構造仕様が閲覧できない中古マンションなど、問題外だ。

2015年10月4日日曜日

国際宇宙ステーション(ISS)はLinux Debianを採用

一昨年のことになるが、国際宇宙ステーション(ISS)で使用するラップトップPCのOSが、WindowsからLinuxのDebianディストリビューションに変更になったと最近知った。

どうやら原因は、それまで使っていたWindows XPシステムが、軌道上でコンピュータウィルスに感染してしまったことにあるようだ。

また、ISSに積み込むヒューマノイドロボ(ロボノート=Robonaut)「R2」OSにもLinuxが採用された。

宇宙では、Linuxが一番信用できるのであろう。

少し前には、Scientific LinuxというFermiLabが開発したdistributionがISSで採用されていたが、今ではDebianに変わったらしい。CERNはCern Linuxの開発をやめてCentOS(Linux)に変えたと聞く。さて、次に作るシステムには何を使おうか?

2015年10月1日木曜日

地方大学の力:最近のノーベル賞

前に書いたものの中に、「大学教員の研究時間が文科省のせいで激減している」ということを書いた。日本の大学の評価が最近発表されたが、案の定、Times Higher Educationによる順位リストで大幅に位置が下がったという報道が最近あった。

東大はアジア首位の地位を奪われ、43位にまで後退。北京大学(42位)にも抜かれてしまった。京都大学が88位。東工大、阪大、東北大は200位にも入れなかった。

文科省は、10年以内にtop100に10校が入るように、「スーパーグローバル大学」とかいう補助金システムを昨年こしらえたが、見事に滑ってしまった形。こういう「官製アイデア」でうまく行った例はほとんどないと思う。昨年のノーベル物理学賞を受賞した中村さんは、徳島大学出身であることを、文科省は肝に銘じるべきであろう。(追記:今年のノーベル賞も、山梨大学、埼玉大学の出身者だったし、医学賞の受賞者の先生は研究も梨大から北里大と、世界のtop100に到底入りそうもない大学で行ったということ。この先生はしかも定時校の教員から研究者に転身したという素晴らしい経歴の持ち主で、賞賛に値する!中高の教員を絞め上げる、今の文科省のやり方では、教員出身の研究者なんて夢のまた夢ではないだろうか?)

政府のいまのやり方が続けば、中国に抜かれるのは時間の問題だろう。それを防ぐには、文科省の牙を抜いて、大学と中高校に自由を復活させるしかない。夏休みを増やし、教員の帰宅時間を早くし、残業や会議を激減させて、のんびり研究の片手間に教育をする先生を許す雰囲気を復活させるのが、「研究大国」への第一歩となる。

また、巨額な研究資金を、「スーバー大学」や「スーパー高校」だけに配分する今のやり方は、ノーベル賞を「1つだけとる」には役立つかもしれないが、微生物から作る薬や、光るイカの蛍光物質の発見とか、資金をそれほど必要としない、卓越した個の力で取るタイプのノーベル賞の方が沢山取れるんだということを、文科省は知るべきだ。

結局「民主主義」(多様性)が一番強いのである!(エリート主義とか、画一的な全体主義が長持ちしないことは、人間の歴史、科学の歴史、さらには地球の歴史が証明している。)

2015年9月22日火曜日

お土産は日本兵の頭蓋骨

アメリカでは、有名な写真だというのだが、私は初めて見た。太平洋戦争で撃ち殺した、日本兵の頭蓋骨を綺麗に磨いて、アメリカ本国にいる彼女に「お土産」として送ったのだという。この当時、アメリカ兵の多くが、日本人のことを「人間」とは思っていなかったのは明らかだ。マシンガンや火炎放射器で簡単に狩れる「動物(猿?)」くらいのつもりだったのであろう。「彼女」が書いているのは、「すてきなお土産ありがとう」という内容の手紙だそうだ。
Original source: Time.com
戦争は忌み嫌うものであることは確かだし、負けたらとにとにかく悲惨であるのは間違いない。だが、政府や軍に騙されて、実際に戦って殺され、ウジ虫扱いされた日本の若者たちは本当に惨めだ。最近出版された"Severed"という本には、火炎放射器で焼かれ、剥製のようになった日本兵の死体を、玩具のように戦車に吊るしてある写真とか、いろいろな写真が載っている。(翻訳されたものを、最近神保町で見かけた。)

Original source: time.com

日本軍の最大の特徴は、命令する指揮官のほとんどが、戦場の前線には行かないことだ。ナウシカに出てくるクシャナの兄たちがまさにそれを彷彿とさせる。

惨めな死に方をし、死んだ後も惨めな扱いを受け、竹槍で特攻したりジャングルで毛虫を食べたりして必死に戦う姿を、圧倒的に優勢な敵軍に嘲笑され、馬鹿扱いされ、蔑まれて、切り刻まれるのが、伝統的な日本の兵隊の真実なのだ。

そして、これとまったく同じ事を、中国やその他のアジアの人々に行ったのも日本の兵隊だ。まさに身の毛もよだつ。しかし、それが戦争の実態だ。

2015年9月19日土曜日

言論の自由は言論にて勝ち取る、民主主義への挑戦は民主主義で対抗する

かつて小出裕章先生が国会で証言したとき、ガンジーの言葉を引いた。その言葉の中に、現在の日本の政治家たちのほとんどが入ってしまう。

昨年のノーベル平和賞を受賞したマララは教育が大切だという。彼女は頭に銃弾を打ち込まれながら、「言葉」で闘っている。そして「教育」が最強の武器だと主張している。これから日本を担うの次の世代の人々が、憲法とはなにか、民主主義とはなにかについて、水や空気のように馴染んで行くには、正しい教えが不可欠だ。

現在日本を担っている世代は、まともな議論もせず、議論をすれば論理破綻し、ただただ多数決にすがる人が多いようで、広渡先生のいうように「反知性」な感じが非常に残念だ。

東京新聞の記事で、内橋克人氏は「阿部政権の目指すのは軍産複合体」だと主張している。また、テレビ朝日の解説では「外務省が常任理事入りを目指す過程で、武力行使できる国家の建設を目指している」という。これが本当だとすると、「国民主権」を理解していない人間が、自分勝手に(強行採決や嘘の演説)、隠れてこそくな手段(秘密保護法など)で、ごく少数の特権階級に属すると思っている彼らの、自分たちの利益だけを目指す過程で、日本人を「金儲けの道具」として使い捨てようとしていることになる。これは、昭和の初めに日本軍が採用した「金儲け」のやり方とまったく同じだ。

三菱や三井や住友といった財閥の利益のためだけに、飛行機や船に乗って体当たりさせたり、竹槍担いでマシンガンに撃ち殺されてこいと命令して、日本人の命を祖末に使い捨てた、日本軍の戦争のやり方とまったく同じだ。

使い捨ての感覚は、沖縄の人や福島の人が味わってきたし、今も味わっている。そしてなにより、全国の日本人がその感覚をよく知っているはずなのに、多くの人が「カネ」の味に味を占めて忘れてしまった。でも、「自由」の味を知ったもう半分の日本人がいることも確かだ。「教育」によって、後者の数を増やし、民主主義の力に依って、自由で平和な社会を国民自身の手で作り上げ、今行われている政治的愚行とその結果を、形も色も残らないように徹底的に「染み抜き」することは、かならず必ずできる!

2015年9月17日木曜日

量子力学における「変換」の定義

量子力学は、線形代数によって定式化された物理理論と見なせる。特に対角化による基底変換が重要となる。「よい基底」を見つける事ができると、物理が簡単になるからだ。

量子力学の演算子の変換の定義で、いつも迷うのが逆行列か、エルミート共役か、である。つまり、変換Tによって、演算子AがBに変換されるとき、
と書くべきか、それとも
と書くべきか?という迷いだ。

普通はどちらで書いても問題ない。というのは、量子力学で使う変換というのは大抵の場合ユニタリー変換だから、
が成り立つため、どっちの変換定義を選んでも同じことになるからだ。

しかし、そもそもどちらから話しが始まったか、最近どうしても気になってしまい、Dirac, Messiah, Sakuraiで読み直してみる事にした。

Sakuraiでは、逆変換はまったく出て来ない。スカラー積が保存されるべし、というのが基本原理になっていて、最初からユニタリー変換を基軸にして理論を構築していく。アメリカ人(ほんとは日本人だけど)らしい、実際主義な書き方だと思う。

一方、Dirac, Messiahは逆変換から理論を始めている。

MessiahはDiracの教科書を踏襲しているらしく、話しの内容はほとんど同じ。Messiahの教科書は、結局、Diracが「自明」として書かなかった部分を付け足したりや、現代的な用語を使ってないところを現代的に書き直したり、そんな感じの「修正」に過ぎない(と思う)。

Diracは「量子力学の祖」ということでノーベル賞をもらっている訳だから、Diracの教科書が「正統」だろう。これに異を唱えることは、量子力学に挑戦することを意味する(それをやってはいけない、という意味ではない)。少なくとも、私は挑戦しない...それにしても、Diracの書き方は昔風で、用語も現代の観点からすると馴染みのないものが多いので、読み難い。とはいえ、理論自体は明快で、いったん現代の用語との対応がわかれば、「目から鱗」状態になるのは周知の通り。

さて、逆行列からスタートするというのは、探しているカノニカル変換(固有値問題の行列を対角化するような基底への変換と考えていい)が、固有値方程式(特にエルミート演算子の)の固有値を不変に保つ変換であるべしという要請を課しているいるからだ。それがユニタリー変換に制限される理由は、(変換前の)エルミート演算子を(変換後にも)エルミート演算子に変換するという要請である。Diracを読んでいてこのことに気付いたのは、今回が始めて。もちろん、昔読んだ訳だが、先を急いで読んでいたので、こういう細かいところは忘れてしまっていた。

ということで、演算子の変換は逆行列で定義され、それを量子力学の要請によって、ユニタリー変換に制限する、というのが正しい論理のようだ。

2015年7月25日土曜日

東京新聞の物騒な記事:人食いバクテリアが群馬で流行しそうな気配

東京新聞に物騒な記事があった。群馬県で、「人食いバクテリア」というあだ名のついた感染症「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」が急増している気配があるという。「急増」といっても、絶対数は今まで年間に数人程度ださうだから、エボラのように警戒する必要はないとは思うが、嫌な感じはする。

とはいえ、その症状もイヤーな感じだ。劇症が発症した人は手足が壊死、精神が錯乱状態となり、多臓器不全でショック死するようだ。発症から数十時間(つまり1、2日)で30%の人が死に至る劇症だという。これが流行したらエボラのようなパニックとなることは間違いない。劇症化する割合はまだかなり低いようなので、いまのところは安心だが、いつ突然変異を起こして人間に牙をむくかは予想できない。

昨年は群馬県内では5人の患者が発生したが、今年は7月中旬ですでに6人。このペースで増え続けるとよくない感じがする。なにが原因なんだろうか?

2015年7月5日日曜日

プロトリーフ「バラの土」の放射能測定

以前(2014年)「プロトリーフの挿し芽種蒔きの土」の放射能を測定した。園芸用土がどの程度放射能汚染されているか調べようと思ったのがきっかけだが、測定結果を見るとまったく問題がないことが判明して一安心したのだった。

このとき、実はもう一袋、検査のために購入していた園芸用土がある。同じくプロトリーフのバラの土だ。

問題のなかった「挿し芽種蒔きの土」は、主成分が赤玉土、鹿沼土を主成分とする火山灰、軽石由来の用土だったため、セシウムが吸着しにくいのだろう、という分析をした。一方で「バラの土」は基本的には腐葉土なので粘土や落葉を多く含み、汚染地域で採取された原料を使用すれば大量の放射性セシウムを含む可能性が高い。「もしそうならば、相当な放射能レベルを示すはずだ」という予想もあり、「どうせ汚染されてるんじゃないか」という危惧が強く、なかなかこの用土を測定する気にならず、放っておいた。

懸案の場所の測定が一段落し、最近になって久しぶりのこのバラの土のことを思い出した。また、梅雨のじめじめのせいで他の検体の乾きが悪くなってきたので、袋を開ければ測定できるこの園芸用土を調べてみることにした。

プロトリーフの「バラの土」2014年産の放射能測定結果。
26.08Bq/kgとあるが、Bi-214とバックグラウンドによる誤差と見てよいだろう。
喜ばしいことに、セシウム134, 137共にそのピークはまったく確認できない。Pb214,Bi-214そしてK-40といった天然放射性物質のピークだけだ。つまり、2014年産のプロトリーフ「バラの土」は園芸に使用してもまったく問題ない、という結論だ。否定的な予想をしていただけに、この結果は非常に嬉しく思う。

これでわかったのは、プロトリーフは汚染地帯の土や落葉を原料に利用していないようで、これは賞賛に値する。とはいえ、これはあくまで2014年ものの製品であり、今年の土がどうなっているかは、やはり測定してみる他はあるまい。

腐葉土や園芸用土の検査は、これからも定期的にやっていこうと思う。

2015年6月21日日曜日

浅間山の噴火

昨日の午後5時頃、浅間山が2度目の噴火をした。夕方、蕎麦屋へ行くときに、梅雨の雲の合間に、煙の柱が立っているのを見た。翌日になれば撮影できるだろうと思っていた。

たしかに今日の午前中はよく晴れた。が、浅間のところだけ雲が掛かっていて噴煙はまったく見る事ができない...じれったい思いで、午後まで待つことにした。
午前中の浅間の様子。

午後になると嘘のように天気は変わり、雷まで鳴り始めてきた。空のほとんどは雨雲の灰色で埋め尽くされて、梅雨空になってしまった。ところが、今度は浅間の頂上の上だけ雲の切れ目ができて、噴煙が見えてきたという奇跡。それにしても、なんという矛盾だろうか。
午後の浅間と噴煙。
確か前回噴火したときは、ひいきにしていた追分のレストランが潰れた。噴火直後に店主は「風評被害」をとても気にしていたが、それが現実のものとなったのか、それとも他に原因があったのかはわからない。今回もどこか消えてしまう店はあるんだろうか?でもあのときは、東京でも火山灰がうっすら積もったが、今回は信州にも降ってない程度。このまま沈静化するなら問題はないのだが...

2015年5月27日水曜日

セシウム汚染の現状:ツバメの巣の汚染

ツバメの巣は、周辺の泥や藁などを材料とするため、セシウム汚染のレベルを的確に反映する。この点に気付いたのが、鳥類の研究では国内随一の実績をもつ山階鳥類研究所だ。その結果が、東京新聞などに最近掲載された。
東京新聞の記事より引用
図に示された、紫色の地域がセシウム汚染が確認された県。

私も個人的にセシウム汚染の境界を探ってきたが、静岡と愛知に境界があることが、ツバメの巣からも確認できる。やはり南アルプスが盾になったのだ。また、箱根を越えて、富士やそのまわりにも汚染は広がり、八ヶ岳周辺まで広がっているのも、一致している。長野では調べられていないが、きっと美ヶ原から中央アルプスのラインに境界がくるはずだ。

一方、驚いたのは、石川県に汚染が及んでいる点。まだ、自分自身では研究していないが、新潟の汚染は下越(新潟市など)、中越(魚沼市など)に及んでいるのは、群馬や長野との県境の状況からみて、間違いないと思っていたが、上越から親不知、糸魚川をプルームは突破して石川まで汚染が伸びていたのは驚いた。きっと、富山もやられているだろう。問題は、石川のどの部分が汚染されているかだ。予想するに、きっと能登半島の付け根あたりに限られるのではないか?しかし、佐渡にも汚染が広がっているということは、意外にも能登半島の先端も汚染されているのか?興味は尽きない。

また、東北地方の汚染がどこまで広がっているかの、よい指標にもなっている。山形は汚染が確認されたものの、36ベクレル/キロという軽微な汚染に留まっている。この程度の数字というのは、汚染の境界に近いところであることを(私の今までの経験から鑑みて)意味している。きっと、秋田や青森には汚染が及んでいないのであろう。

いずれにせよ、今回の山階鳥類研究所の研究成果は、北陸地方の汚染度合いを緊急に調べなくてはならないと感じさせた、すばらしい結果だと思う。

2015年5月26日火曜日

太陽黒点の増減:マウンダー極小期の再来の可能性

日本物理学会5月号(2015)に、太陽黒点の増減についての論文があった。なかなかおもしろかったので、記録しておこう。

太陽の活動レベルは、約11年周期で変動していることが知られている。ガリレオらによる黒点観測が始まったのが17世紀初頭であり、それ以来4世紀近くに渡り人類は黒点の数を数え続けてきたが、この11年周期の変動は常に確認されてきた。たった一度の例外を除けばだが。

太陽黒点がガリレオらによって観測されてから間もない、1645年から1715年にかけての70年だけは、この11年周期が完全に崩れた。黒点がまったく太陽表面に現れなくなってしまったのだ。この期間は「マウンダー極小期」と呼ばれる。この時期、地球は氷河期に陥ったことが知られている。400年間に渡る太陽観測の歴史の中で、マウンダー極小期のような状態が発生したのは只の一度のみである。どうしてそうなのか、まだ誰も答えを知らない。

2001年に太陽活動のレベルは11年周期の極大期を迎え、2008年の極小期に向けて穏やかに活動を減速させていった。しかし、2008年が過ぎても、太陽の黒点数は今まで通りには回復せず、活動レベルが停滞したままの状態を続けていた。「マウンダー極小期の再来かもしれない」と関連する科学者たちは緊張感に包まれたらしい。

そんな緊張感を尻目に、太陽は2009年に活動レベルを活発化させ始め、2013年には予定された通りの極大期を迎えた。しかし、観測された黒点数は、前回の極大期2001年の半分程度にしか満たず、やはり2008年に長引いた極小期には、なんらかのメッセージが込められているのかもしれないと考える科学者は多いようだ。

実際、過去のデータを見ると、これに似た状況が、マウンダー極小期が発生する22年前、つまり「2周期前」に発生している。とすると、今から22年後に、2度目のマウンダー極小期がやってくるかもしれない。氷河期だ!

太陽黒点の増減が、なぜ地球の気候に影響を与えるのか、その直接的な理由はまだはっきりはわかっていないようだが、今回の論文の筆者は、「銀河宇宙線」から地球を守っている「太陽圏磁場」が関係していると考えている。極小期が長引くと、太陽圏磁場が防いでいた銀河宇宙線に被曝する期間が増え、地球上で雲が発生しやすくなるのだという。

銀河宇宙線というのは、超新星爆発などによって加速された素粒子(主に陽子)である。太陽は銀河系内を回転移動しているが、銀河系の渦巻きのうち、「腕」と呼ばれる領域、つまり恒星密度の高い領域に突入すると、超新星との遭遇確率が上がって、銀河宇宙線のフラックスが大きくなる。私たちの住む天の川銀河において、太陽が「銀河腕」を通過する間隔は約1.4億年と見積もられていて、それは地球物理の測定(深海底の地層データから推測される海水温の変動など)により確かめられているそうだ。

銀河の超新星に由来する、高速で飛来する陽子が地球の大気中で、水やその他の分子と衝突することによって、雨粒の種(雲核)の発生が活発化する、という説を筆者は提唱していて、実験的にもその仮説はよく支持されているようだ。

そうだとすると、太陽の活動レベルの低下によって太陽圏磁場が弱まり、そのタイミングで銀河腕に太陽系が突入すると、地球は大量の銀河宇宙線を被曝することになる。その結果、大気中で雲の発生が活発化し、天気が悪い日が増える。太陽からの日射しが地表面に到達する日が減れば、太陽エネルギーの恵みをうけて巡回する地球表面の環境システムは打撃を受ける。その端的な影響としては、太陽光エネルギーの低下による冷温化が起きるだろう。氷河期の到来である。

英語の先生が、英語ができない...

東京新聞で読んだ記事。

「日本の中学、高校の先生は、英検に合格できないほど英語力が低い...」というニュース。

確か、中学生3年生程度の英語力があれば3級、高校3年(もしかすると2年かも)程度の英語力があれば2級、そして大学生程度であれば準一級がとれるはずだ。私も、中学2年の時、なぜか学校全体で受験することになったので、3級だけは持っている(たしかクラスの半分くらいが合格したと記憶がある)。高校で、文系に進んだ友人たちは、たしか2級の試験勉強を一生懸命やっていて、みんな結構合格していたような記憶がある。(私はTOEFLやSAT/GREの勉強をしていたので、英検はやる気がなくなってしまった。) アメリカの大学に通っていたときに、日本から来た留学生友達たちに聞くと、大抵の人が準一級を持っていた。

こう見てくると、たしかにふれこみ通りの内容だと思う。英検準一級というのは、それほどの特殊技能というわけではない。

ちなみに、一級というのは、通訳の能力も試されるようで、これはなかなかの特殊技能らしい。合格はとても難しいと聞く。(だから準一級が後で創設されたとか。)高校の時の英語の先生の一人は、たしか一級を持っていたので尊敬していた。そういえば、オーストラリアから留学生が来たとき、ちゃんと会話ができたのは、あの先生だけだった...(今から考えると、2級程度の能力があれば、まあ会話くらいなら問題なくできるはずなのだが...)

そして、現在の中学、高校の先生の英語力はというと、大学生レベルといわれる準一級に合格できないまま、学生たちに英語を教えているのだという。これは大きな問題だろう。特に中学校がひどい。英語ができない英語の先生に教わった学生の悲劇は、容易に想像がつく。はやく改善したほうがよいだろう。

とはいえ、なにも準一級だとか、TOEIC何点だとか、試験結果にこだわる必要はないと思う。要は、ちゃんと英語の能力をちゃんともっているかどうかだ。外国/国内の大学でちゃんと勉強してきた人なら、資格なんかなくてもいい英語の先生になれる。たぶん、教員採用の担当官/面接官が英語ができないんだろう。採用試験の面接で、5分も喋れば能力の有無は判断できるはずだから。

2015年5月24日日曜日

アメリカのCarbon-capture projectが終了する可能性

アメリカ政府は、火力発電所で発生する二酸化炭素を回収して地下などに閉じ込める計画(Carbon-capture and sequestration project, or CCS)に資金提供しないと発表。結局、経済的に割に合わないとの判断。うーむ...

2015年5月20日水曜日

LEGO LHC

LEGOでCERNにある素粒子加速器LHC(Large Hadron Collider)を作ってしまえ、というプロジェクト。LHCはヒッグス粒子を発見したことで、ちょっと前に有名になったのだが、その後の科学的な発見が滞っており、この先どういう風に活用すべきか最近ちょっと問題となっている。というような事情とは関係あるのかないのかはわからないが、研究者たちも大分暇を持て余しているようである...

LEGO LHC: The official sites with manuals how to build LEGO-LHC.
CERN HP: An outreach article abouth the LEGO-LHC.

かく申す私も、研究室一杯に広がるような、巨大なのを作ってみようかと思ってしまった次第。

2015年4月16日木曜日

「科学4月号」の甲状腺癌の記事

岩波書店の「科学」4月号に甲状腺癌検査についての分析記事があった。

津田敏秀さん(岡山大学)の記事。発生率は、100万人あたり3人と言われているが、福島県の中通り中部では100万人あたり6人強という数字が出ていて、「原発事故が原因と言わざるを得ない」と述べている。この雑誌にある別の記事(牧野さん)でも「この結果をみると、原発事故と因果関係がないとは言い切れない」とある。

また、小豆川さん(東京大学)の記事も興味深いものがあった。群馬県や山梨県にある「道の駅」(国道沿いにある地域の物産店)で昨年秋(2014年)に購入した舞茸の放射能レベルを測定してみたところ、150-180 Bq/kgという結果となった、という記事だ。政府の出した基準(100 Bq/kg)に従えば、この商品の販売は禁止すべきなのだが、お店で売っている地元の人々に「まずいものを売っている」という気持ちは見受けられないという。つまり、放射能汚染のことを完全に忘れてしまっていて、平然と放射能汚染されたキノコをお土産用に売りさばいているのだという。

個々の事例としては大きな問題ではないだろうが、こういうことが重なりながら、体内に放射能物質は蓄積し、30年とか経った後に、突如として牙をむくのであろう。とりあえず、福島地域の甲状腺癌の発症リスクが問題レベルに達しつつあるのは、警戒の必要があると思う。チェルノブイリのケースと比較すれば、あと1、2年もすれば、100万人に20人とか、60人とか、現在の10倍以上の発生率に跳ね上がる可能性が高いはずだから。


2015年4月8日水曜日

駒場の講義

駒場(東大の教養部)のコマ当たりの時間が105分になったと聞いた。通常90分/コマでやっている大学が多いと思う。

数年前、文科省は「一学期15回の講義をやりなさい」と全国の大学に通達を出した。試験期間や補講の期間を考えれば、このプランだと夏休みが始まるのが8月になってしまう。そんな馬鹿なことありえない、ということで、各大学はオリエンテーションを3月から始めたり、5月の連休を削ったり、補講/追試期間をなくしたりと涙ぐましい努力をして、なんとか8月の頭には夏休みが始まるようにしている。

東大の場合は、ヒトコマあたりの時間を長くする事で、1学期の講義回数を13回に減らし、その分夏休みの開始期間を維持できるように設定したようだ。しかし、その他諸々の制度変更のせいで、試験前の夏休み、試験後の秋休みという国立大学で採用されてきたシステムは大きなダメージを受け、結局講義終了直後から試験期間が始まることになってしまった。今までの学生は、夏休みに自習して学習内容を定着していたとのことだが、それがかなわなくなった。結果として、講義内容を易化しなくてはならない、と知り合いの某教授は嘆いていた。

また今朝の報道で、大学教授/准教授の研究時間が激減した、という記事があった(私は日経で読んだ)。理由は教育に割く時間が増大したからだそうだ。学期あたりの開講数が15なんぞになれば、研究時間はとられてしまうのは当然だ。また、カリキュラム改正だの、導入教育の充実だの、「教育システムの拡充」をやればやるほど、関連委員会が増えて、研究時間が減ってしまう。

結局、文科省は日本の科学・技術の国際競争力を大幅に低減させるのに、「すばらしい寄与」をしたということであろう。それでいて「ノーベル賞の受賞数を50年で30個取る」などという、取らぬ狸の皮算用もしっかりやっているから驚きだ

2015年4月5日日曜日

力学の予習...

昨晩は、皆既月食だったそうだが、厚い雲に覆われてしまい、満月すら観測することができなかった。残念なり。

さて、今年は力学の講義を担当する事になったので、ここひと月ほど講義ノートの作成に時間を割いてきた。実は力学を教えるのは初めてなので、意外に準備は手間取っている。もちろん、学生のレベルにもあわせて行かなければならないので、やりながらの修正はこれからも続くだろう。来週は、TAをやってくれる大学院生とのミーティングもあるので、彼の意見なども聞きながら、直前の微調整を行う予定。

さて、今年の力学の講義で参考にした教科書は次の通り。

  • J.C. Slater and N. H. Frank (柿内賢信訳)「力学」丸善
  • R.P. Feynmann, "Feynman Lectures on Physics" (Wesley and Sons)
など。スレーターの教科書は絶版になってしまったようだが、原書ならネットで読む事ができる(ここ)。スレーターの教科書は、MITでの講義ノートが元になったようだが、アメリカの大学らしく、実用に焦点が絞られている。この教科書では、力学のエッセンスは微分方程式の解法に他ならない、という認識に基づき、徹底的に練習問題を解く。解法も実用的なアプローチを採用することが多く、数学的に微妙なところなどを細々と議論したりはしない。

一方、ファインマンの教科書には、数学の細かい技法に関する記述もあったりするが、物理的な考え方を「くどくどと」書いてあるところが特徴だ。しかし、この「くどくど」感こそがファインマンの素晴らしいところで、ここが味わえるようになれれば、もう力学はマスターしたと思ってよいだろう。

大学における力学の学習では、数学の技巧/技術の習得と平行して行う必要があるので、そこが初年度の学生にはもっとも辛いところだ。線形代数で習うベクトル空間や一次独立の概念、解析学で習う偏微分や線積分など、一朝一夕ではなかなか習熟できない概念が当たり前の道具にように力学では登場するから、初めて見た時は相当困惑する。まずは、あまり深く考えず、テイラー展開や微分方程式の解法など頻出の数学の道具立てが出てきたら、赤ん坊のように「ただただ受け入れる」姿勢が必要だろう。その後で、「どうして」とか「なぜ」の部分を、数学の講義に出席して、埋めて行けばよいと思う。

また、ニュートンのプリンキピアの英訳もここで閲覧することができる。ニュートンによってまとめられた、力学の3つの法則のオリジナルな定義や、運動量の定義などを確認するときに役に立つ。現代の力学の講義では、慣性の法則などはあっさりスルーする傾向があるが、実はそれはとても重要かつ難しい概念であるから、後々でゆっくり噛み締める時間も必要であろう。プリンキピアの最初の方は簡単に目を通しておいても無駄ではないと思う。

2015年3月16日月曜日

「原発標語の作者本人が原発PR看板撤去に反対」というニュース

先日の私のブログで取り上げた「原発PR看板の撤去」という東京新聞の記事だが、その後に動きがあった。

朝日新聞の記事によると、「原子力明るい未来のエネルギー」という標語を(たぶん子供の頃に)提案した作者本人が、その標語を使った原発PR看板の撤去に反対している、という。私と同じ意見の人がいたんだ、と嬉しく思った。しかも、作者本人だ。

原発を未来のエネルギーだと聞かされた少年時代、その標語をあっさりと裏切った原発事故、放射能汚染や避難生活に苦しむ福島県民を助けず、窮状の訴えに耳を傾けない東京電力、汚染水は完全にブロックされているとしらを切る政府....何度も何度も騙されて、本当に悔しい気持ちだと思う。

そして、今度は都合の悪い看板をそおっと外して、自分たちのミスを隠そうとする態度。その反省のない態度に、ついに堪忍袋の緒が切れたのだと察する。署名活動を展開するそうだから、ぜひ協力して行きたいと思う。あの看板は世界遺産になりうる!絶対に!

追記:作者本人による、撤去反対に関するページ

2015年3月13日金曜日

PX-M650Fを購入した:これからの機器はWiFi接続

今までレーザープリンターしか持ってなかったのだが、EPSONのカラーインクジェットプリンターPX-M650Fを購入した。

価格は2万円を切っていて、今年度の予算枠にぴったりと収めることができた。このプリンターはWiFiでローカルネットワークに接続されるので、置く場所を選ばない。また、Fax,コピー/スキャン機能なども兼ね備えていて、10年前のプリンターと比較すると隔世の感がある。
EPSON PX-M650F(エプソンのホームページから引用)
これでデジカメをWiFi化することができれば、データの管理/ハードコピーが自宅のベランダからでもできるようになる!狙いはCanon EOS M2だが、まだちょっと値段が張るので、購入は来年以降かも。でも、SDカードの差し替えなしで、データの転送やプリントアウトできるのは便利!
Canon EOS M2 (キャノンのホームページからの引用)
そういえば、ちょっと前にubiquitousという概念が流行ったが、このようなWiFi接続の機器が増えてくれば、ubiquitousという概念は自然と生活の中に入り込んでくるだろう。

東京新聞3/11の記事より:「封じられる言葉」

「太平洋戦争の反省」とかいって、「あのときどうして戦争を止められなかったのか?」とか、「戦争に反対すればよかった」とか、そういう言葉をよく聞くし、いままでも度々聞いてきた。「戦争の反省を未来につなげる」とかそういう話しもよく聞く。

しかし、現代の日本において(とりわけ福島を中心とする)、この反省は虚しい「建前」にすぎないと心の底より感じた。つまり、今、「戦争をやろう」という話しになれば、ほとんどの日本人は大正や昭和初期の日本人同様に、戦争を止める事はできないだろうということだ。こんな風に感じたのは、東京新聞の記事「こちら特報部(東日本大震災4年特集)」を読んだからだ。

3月11日の記事に、「放射線の影響話しづらい」という見出しの記事があった。一部抜粋してみよう。

「友だち同士でご飯を食べに行っても、放射線のことなんか話題にできない。『これの産地はどこ?』と聞いただけで白い目で見られてしまう」...途中略
「『放射線が心配』という話題を出すと、避難がどうのという話になる。自主的に避難した人は裕福で、かつ故郷を見捨てたと見られがち。ねたみや疎外感を感じる中で、放射線を話題にするのはつらい」
息子が通う保育園では除染していない道路を散歩したり、福島県産の米を給食に使っている。ただ、いじめを懸念して声を上げられずにいる。「弁当を持たせたりすると、自分の息子だけが浮く。何をどこまで訴えたらいいのか...」  
放射線の影響を怖がる人は、自分の意見や主張を貫けず、全体に迎合してしまう。また反対に、放射線の影響を気にしない人は、意見の違いを尊重できず、「仲間はずれ」を徹底的に叩く。これは、かつて「非国民」というキーワードによって、日本国民を全体主義に引きずり込んだ、先の戦争時の状況と瓜二つではないか?

欧米で成熟している「市民」とか「民主主義」という概念が日本人の心のなかにはまだまだ染み渡っていない。江戸時代かそこらの古い封建主義、全体主義や連帯責任なんていう、徳川が編出した古臭いが極めて効果的な支配法にいまだに洗脳されている感じがする。

一方で、ヨウ素131による甲状腺癌の問題に関しても、事実を隠蔽、矮小化しようとするやり方が目立ってきている。戦時中、米軍にこっぴどくやられた日本軍の惨敗ニュースを隠すため、都合のよい新しい言葉を生み出しては(例えば「敗北、退却」を「転進」と言い換えたように)国民の目を欺いた。東京新聞によれば、30万人が癌の検査を行い、109人が癌あるいはその疑いが強いと診断された。子供の甲状腺癌の発症率は2011年以前には「100万人に数人」と言われていたが、2011-2014年の福島県の検査データをまとめれば、「100万人中363人」という結果となった。これは通説の40倍近くの発症率ということになる。通常の科学者ならば、これは「有意な値で、放射線の影響を福島の子供たちは確実に被っている」と結論しなくてはならない。ところが、検査を実施した福島県立医科大学は、いまだに「原発事故とは無関係」と言い切っている。

たしかに、チェルノブイリの原発事故では、甲状腺癌が激増したのは事故から5年後だった。しかし、それは網羅的に検査した結果ではなく、5年目くらいから「あれ、なんかおかしい」と気付き始めた患者が増え始めたということだ。精密検査でみつかる癌は、自覚症状がない場合が多いだろうから、もし福島と同じように早期から精密検査を行っていれば、チェルノブイリのケースだって5年よりも前に子供たちの甲状腺の異常が見つかっていた可能性は高い。

事故から4年が過ぎたが、甲状腺癌との闘いに関してはこれからが本番だ。しかし、関係者の中には、逆に、もう闘いは終わりつつあるかのような態度で事態に対処している人もいるらしい。なんでも、この大事な時期に、検査の対象地域や年齢層を減らそうとすらしているそうだ。「あんまり一生懸命調べたら、たくさん癌患者が見つかってしまって困る」と言っているように聞こえる。

2015年3月12日木曜日

3/11の東京新聞の広告欄にあった本

引き裂かれた「絆」―がれきトリック、環境省との攻防1000日(青木泰著、鹿砦社)

水圏の放射能汚染―福島の水産業復興を目指して(黒倉寿著、恒星社厚生閣)

2015年3月11日水曜日

「原子力明るい未来のエネルギー」が撤去される件

東京新聞の記事で知った。ここは、4年前、満開の桜に看取られて一匹の犬が死んだ場所だ。「原発とはなにか」を理解するためには、この光景はぜったいに忘れてはならない。その意味では、この朽ちた看板は未来永劫このまま朽ちたままにしておかねばならないと思う。願わくば、ここで死んだ犬の像も桜の木の下に建ててもらいたい(本郷なんぞにハチ公の銅像作っている場合じゃない!)。

4年経ったが、手賀沼の上流ではまだ...

セシウム134の、特に606keVのピークが小さくなってきている。きっと今年中にバックグランドに消えて行って見えなくなる地点が続出するだろう。しかし、東京を中心とする関東地方の多くでは、セシウム137のピークと、セシウム134の796keVのピークは依然としてそびえ立っており、まだ数年は土壌汚染の調査は可能だろうと思う。それほど、関東平野の放射能汚染は強かったのだろう。

今日の東京新聞に、手賀沼の上流の土壌汚染の結果が報告されていた。私も手賀沼では2年ほど前に調査していて、だいたい結果は一致している。昨年の3月に測定した結果は、4500Bq/kgだった。採取地点は手賀沼の西岸脇の湿地(東京新聞は川底の土を測定し、1000強の結果が出ている)で、近くの湖岸でフナ釣りに興じる人が数人いたのを覚えている。
Mar. 25, 2014に測定した手賀沼付近の土壌
柏にある(株)ベクミルで聞いた話だと、柏市内を流れる川にはかなりの高線量地帯があって、それが洪水の度に移動するのだという。本日の東京新聞にも、手賀沼に流れ込む大堀川の上流にある防災調節池の土手で、10,000 Bq/kg近くの放射能をもった土がある場所があり、その付近ではいまだに線量が0.5-0.6μSv/hもあるそうだ!信じられない。

2015年3月9日月曜日

Pb-214とBi-214 (III): 広島の場合

広島市の公園で採取した土壌のガンマ線スペクトルを見てみると、次のようになった。
放射能レベルは96Bq/kgだから、およそ100Bq/kg。これはちょっとした「セシウム汚染」地域と同じ程度の値に見える。しかし、スペクトルをよくみると、Cs-137の662keVのピークは影も形もないし、Cs-134の796keVも同様だ。見えるのはBi-214(609keV)とCs-134(606keV)が混ざりあう辺りのピークが一つ、Pb-214の352keV、それにK-40の1460keVだ。つまり、これらの事実から演繹される結論から言うと、「この土はセシウムを含んでいない」ということになる。

広島の土壌が96keVもあると「誤判定」された原因は明らかにBi-214だ。Pb-214のピークの高さから推測するに相当量のBi-214が含まれていると思われる。その寄与をさっ引けば、Cs-134の606keVのピークは存在していないと思う。

広島市は、昨年大規模な土砂災害の被害を受けた。大雨が降ると、花崗岩が風化してできたあの赤い土は保水できず崩れてしまうかららしい。古い地塊が広がる西日本の岩盤は花崗岩でできているところが多く、天然の放射性鉱物を多く含む。U-238系列であるBi-214やPb-214のピークが強く観測されるのは、このせいだろう。

とすれば、セシウム汚染がない状態で、広島地域のBi-214の放射能レベルは常時100Bq/kg程度はあるということだ。外部被曝だけを気にするならば、この程度の放射線を浴び続けても大きな問題はないということなのかもしれない。

2015年3月8日日曜日

鉛214とビスマス214 (II)

Cs-134の606keVのガンマ線と、Bi-214の609keVが重なってしまったと思われるケースをみてみよう。長野県の野辺山(南牧村)で採取した土壌のスペクトルが下図に示す。
野辺山のスペクトル
Cs-137の662keVのピーク、およびCs-134の796keVのピークがわずかに確認できるから、福島原発から放射能プルームが野辺山にも来たことは間違いない。しかし、算出された放射能レベルは65Bq/kgとなっているし、スペクトル中のピークの高さも低いから、その汚染度合いはかなり低いとみてよいだろう。注目すべきは、Cs-134の606keVとBi-214の690keVが重なっていると思われるピークだ。このピークの高さはCs-137の662keVのピークよりも高くなっている。もし、このピークが606keVのCs-134のみの寄与によるものだとすると、このピークの上下関係が説明できない。福島原発では、Cs-134とCs-137の比率は1:1であり、事故から4年経った現在、半減期2年のCs-134は事故直後の25%にまで減衰しているはずだからだ。つまり、606keVのピークは、662keVのピークよりも低くなっているべきだ(理論的には1/4程度に)。これは、Cs-134とBi-214のピークが混合しているから、と解釈すべきだろう。LB2045のROIは、この混合ピークを含んでいるので、算出された65Bq/kgはoverestimateのはずで、Bi-214のピークの高さから推測するに、このスペクトルの放射性セシウムの放射能への寄与は、だいたい10Bq/kgから20Bq/kg程度だろうと思われる。

この図を見ると、352keVのところに綺麗なピークが一つ見える。鉛214(Pb-214)の出すガンマ線が作るピークだ。

Bi-214とPb-214は共にウラン238(U-238)の崩壊系列に属する。つまり、半減期45億年(アルファ崩壊)のU-238を出発点として生成される崩壊生成物(放射性)の系列ということだ。U-238はα崩壊するとトリウム234(Th-234)になる。これがさらに崩壊を繰り返し、つまりアルファ崩壊やベータ崩壊などの核反応が連続して生じると、ラジウム226(Ra-226)にたどり着く。

Ra-226は半減期1600年で、天然鉱物や温泉などに含まれていたりするのを知っている人は多いだろう。ラジウム226がアルファ崩壊してできるのがラドン222(Rn-222)だ。Rn-222は半減期が4日弱と崩壊までの期間が短い上、常温で気体となる性質がある。つまり、岩石や温泉中に含まれる微量の(ウラン系列の)放射性物質はラドンにたどり着いたところで、空気中に浮上していくのだ。空気中のラドンは降水のタイミングで地表に帰ってくる。ラドン(Rn-222)はアルファ崩壊して、ポロニウム218(Po-218)になる。

Po-218は半減期3分でα崩壊し、Pb-214となる。Pb-214はベータ崩壊と電磁崩壊(つまりガンマ線を放出する)を起こして、Bi-214となる。Pb-214もBi-214も半減期が30分程度だ。つまり、Pb-214とBi-214から放出されるガンマ線はペアで出てくることが多いと考えてよいだろう。実際、セシウム汚染がない地域のスペクトルをみると、Pb-214とBi-214のピーク高は同じ程度だ。だとすると、上図のスペクトルに見られる野辺山の場合、Pb-214のピークの高さを考えれば、606/609の混合ピークのほとんどはBi-214だとみてよいだろう。したがって、先に述べたように、実際の放射能レベルは10-20Bq/kgではないかと推測したというわけだ。

(つづく)

鉛-214とビスマス-214(I):エネルギーの近いガンマ線の測定

不勉強のせいで今まであまり気にして来なかったガンマ線がある。鉛214(Pb-214)の352keVのガンマ線だ。事故直後に検出されるヨウ素131(I-131)の364.5keVのピークと混じることで知られているそうだ。最近、三重大学の奥村晴彦教授のホームページを読んでこのことを知った。

I-131が消え去ってからこの調査を始めた私は、セシウムばかりを気にしていて、Pb-214はぜんぜん注目して来なかった。しかし、放射性セシウムの汚染限界について調べ始めると、Pb-214が大事になってくることがわかった。それは、ビスマス214(Bi-214)の609keVのガンマ線が、Cs-134の606keVのガンマ線と、NaI型のスペクトロメータでは、混じってしまうことに原因がある。

エネルギー分解の高い、高性能のスペクトロメータ(例えばゲルマニウムを利用したもの)で、たとえば662keVのガンマ線を測定すると、ちゃんと「662keV」という値を返してくる。「あたりまえのことだ」と思った人は、実験家としては落第だ。

機械、特に測定器というのは、人間が作ったものである以上、理論通りの値を返すことはそうはない。期待される値、あるいは理論値からのズレが測定したときに小さくなるものほど「高性能」「高精度」の機械ということになる。スペクトロメータははガンマ線のエネルギーを測る機械なので、その測定のズレは「エネルギー分解能」という言葉で表現される。つまり、ズレが小さいものほど「高分解能」を持つと言われる。

NaI型のスペクトロメータは、ズレが大きいので、662keVのガンマ線を測っても、測定値として「664keV」を返したり、「658keV」という値を返したりと、662keVの値(真の値)の周りに揺らいでしまう。

「真の値」の周りに揺らぎをもって測定値を返す機械は、何度も何度も測定を繰り返して平均値を計算し、それをもって「測定値」とすれば、より信頼度の高い測定器となりうる。先日の「長時間測定」で米のセシウム汚染は調査するべき、というのは、まさにこのことだ。揺らぎのある場合、その測定値をヒストグラムにまとめると、ガウシアンと呼ばれる釣り鐘をひっくり返しにしたような形になる。ガウシアンの幅が狭いものほど、分解能が高い、つまり高精度の測定器とみなせる。(ガウシアンがピークを持つところは、平均値に対応する。)

もし分解能の低い測定器で、接近する2つのガンマ線を測定したらどうなるだろうか?例えば、Cs-134の606keVとBi-214の609keVのガンマ線のような場合だ。この状況をモデル化すると次のような絵となる。
「分解能の低い測定器」に相当する場合。
赤いガウシアンを606keV、緑のガウシアンを609keVだと見なす。
Peak 1と名前をつけた赤いガウシアン(ガウス型のカーブ)を606keVのガンマ線の測定結果、Peak 2を609keVの測定結果とみなそう。両者共に、真の値(つまりピークの位置)からの揺らぎが大きい。そのため、これら2種類のガンマ線を同時に測定すると、青いガウシアンのようになり、一つの大きなガウシアンのように見えてしまう。つまり、2つのピーク構造を「分解」できないということだ。NaI型スペクトロメータで、Cs-134とBi-214を測定すると、こういう具合に2つのピークはくっついて、混じってしまう。そのため、Cs-134がもたらす放射能は実際には赤いガウシアンの面積だけをもとに算出すべきなのに、青いガウシアンの面積、つまりBi-214の寄与も含めて放射能を算出してしまうため、放射能が強めに算出されてしまう。

一方、分解能の高い検出器を使って、同じように606keVと609keVのガンマ線を同時に計測するとどうなるかというと下の図のようになる。
分解能の「高い」測定器に相当する場合。
揺らぎ(つまりガウシアンの幅)が小さいので、赤いガウシアンと緑のガウシアンの重なりは少なく、同時に測定した状況に相当する青いガウシアンをみても、ほとんど赤と緑のガウシアンの形と同じ形状を保っていることがわかる。つまり、2つのピークが「分解」できているわけだ。これならば、誤って609keVのBi-214に相当する部分を積分せず、606keVのCs-134のピークだけを積分するから、正しい放射能の値が算出できる。

ゲルマニウム型検出器で測定すれば、数keV程度の差があれば十分にピーク構造を分解して調べることができるが、分解能が低いNaI型検出器ではガンマ線のピーク構造が幅の広いガウス形になるため、わずか数keVしか離れていない2つのピークは重なり合って一つになってしまう。放射能の強さを算出するときは、ガウス関数の積分をするだけなので、高い精度で測定したいのならば、Bi-214の寄与がどの程度あるか見積もる必要がある。

(つづく)

2015年3月6日金曜日

福島県の米のセシウム汚染の状況:軽微な汚染の測定法

福島の農産物、特に米のセシウム汚染が2014年はなかった、という報道が昨年の秋頃にあった。正確に言えば、「基準値を越えるような汚染はなかった」というべきだが、人々の頭には、微妙な表現は丸められ削られて入る傾向がある。

NHKでも先日「福島の農産物の売り上げを回復するためには」という内容の番組が流れていた。もう福島の農産物は汚染されていないから、どんどん食べましょうということだと思う。NHKの今の会長はかなり政府寄りの考えをもった人だというから、この手の番組が出てくる度に、政府のプロモーション番組かなと見なしてしまう人は結構いるかもしれない。(そういえば、NHKの9時のニュースのキャスターは、反原発の立場をとっているらしく、それが元で3月末で降板してしまうとかいう噂を耳にした。)

福島県のホームページには、米の放射能検査の結果が公表されている。ほとんどの検査が「測定下限値未満」となっているが、2014年の10月13,16,18日あたりの結果を見ると、ちらほらと「下限値以上」の結果となった検体が報告されている。だいたいが30Bq/kg程度の値で、検出限界値25Bq/kgと同じ程度だ。ということは、福島産の米は、だいたい25Bq/kg前後の平均値でまんべんなくセシウムに汚染されているのでは、という推測をしてもいいだろう。この「推測」を許してしまうのは、下限値と平均値がだいたい同じ程度にもかかわらず、下限値を下げる努力をせずに、測定を25Bq/kgで切ってしまっているからだ。福島県は、100Bq/kg以下だから大丈夫、と高飛車な態度を取るのではなく、1検体でもよいから、徹底的に高精度で測定を行って、消費者の疑問に真摯に答える努力をするべきだろう。

福島県の測定ではゲルマニウムを使った検出器も利用しているようだが、ほとんどの検査に用いられた主力機種はNaIをつかったシンチレータだ。ということは、測定下限値が25Bq/kgというのは、測定時間が20分程度しかないということを意味する。このレベルの測定がどういう測定なのか、今日は考察してみたいと思う。

私が使えるガンマ線スペクトロメータは、ドイツBerthold社のLB2045という機種で、NaIを利用しているので、福島県の主力機種と同等の性能を持っている。この器械の測定時間は、最長で18時間。

そこで、同じ検体を18時間と0.25時間(15分)の2種類の測定時間で行い、その精度の違いを比較してみた。測定に利用したのは、信州東南部にある松原湖付近の山林で採取した森林土(採取は2014年8月、測定は2015年2月)。測定結果は、69Bq/kg(18時間)と73Bq/kg(15分)であり、だいたい70Bq/kgという結果となった。お役人の方々が、「放射能のレベルを知るだけなら、15分でも十分な精度が出る」と考えたとしても無理はない。無駄な仕事を嫌う人なら「18時間なんて測定したら時間と労力と金の無駄」と考えるだろう。果たして本当にそうなのか?

検体土壌を採集した場所は山梨県との県境に近くに位置し、八ヶ岳の東斜面、千曲川の西岸にある。千曲川の東向こうは県境の山岳地帯で、埼玉県の秩父山地に接している(実は群馬県とも接していて、その昔日航機が墜落した御巣鷹山が近くにある。御巣鷹山は群馬県に属する)。この場所には、セシウムのプルームはやってきたが、かなり薄まっていたようで、それによる汚染は軽微であると考えられる。LB2045が算出した約70Bq/kgという値が、「軽微な汚染」を意味するかどうかは、ガンマ線スペクトルを見て判断する必要がある。
18時間で測定した検体のスペクトル。
ピークAはPb-214、BはCs-134とBi-214の混合ピーク、CはCs-137、
Dはほとんど無くなっていて見えないがCs-134に相当するピーク。
EはK-40のピーク。Pb-214, Bi-214,K-40は天然に存在する核種。

まずは、18時間で測定した結果を見てみる。LB2045では、測定時間を18時間にすると、測定限界が2.66Bq/kgとなる。福島県の測定精度の凡そ10倍の精度に相当する。
LB2045が放射能強度を算出するとき、Cs-134のピークBに、Bi-214(ビスマス214)の寄与が混じってしまう。Cs-134から出る606keVのガンマ線と、Bi-214から放出される609keVのガンマ線を分離(区別)する事ができないのだ。これはNaIシンチレータの性能に伴うエネルギー分解能(の粗さ)に由来する(ゲルマなら分離できる)。

Bi-214はU-238の崩壊系列に属し、Pb-214と共存することが多い。この検体でもピークAがはっきり見えていて、Pb-214が相当量存在していることを示唆している。また、事故から4年経ったということは、事故直後に比べてCs-134の量はCs-137の1/4、つまりピークCの高さの25%に低下していなくてはならない。にもかかわらず、ピークBとCがほぼ同じ高さになっているというこは、ピークBはCs-134だけの寄与ではないことを意味している。この解釈を支持するもう一つの理由として、Cs-134の2つ目のピークであるピークDがほとんど目立たないことも挙げられる。

以上の点を考慮すれば、算出された放射能レベルは実際の倍程度と見積もる事ができる。つまり、Bi-214の寄与を引き、Cs-134の減衰を考慮すれば、小海町の土壌は若干のCs-137による汚染で、35Bq/kg程度であろう。Cs-134の寄与がほとんどないということは、この土壌の汚染は「軽微」であると結論してよいだろう。

さて、この検体を15分で測定したら、どんなスペクトルが得られるだろうか?
15分測定で得られたスペクトル
上のグラフが、同じ小海町の検体を15分で測定した場合のスペクトルだ。LB2045の設定では、測定限界は19.52Bq/kgで、福島県の測定精度とほぼ同じだ。グラフを見るとわかるように、統計誤差が大きく、スペクトルはガタガタだ。ピーク構造ははっきりせず、セシウムによる汚染があるのか、天然核種の寄与がどれほどあるのか、まったく判断できない。専門家が見たとしても、「目立ったピーク構造は見られず、(測定精度の範囲で)この土壌には汚染がない」と結論してしまうかもしれない。

18時間の測定では「Cs-137が主な汚染原因の軽微な汚染がある」と判断できたものが、わずか15分の測定では「汚染なし」という結論になってしまう。つまり、15分程度の測定でも検出されてしまうような汚染レベルというのは、(ゲルマで測る必要等ないほど)相当な汚染レベルであるということだ。

福島県の測定ではスペクトルを公開していないから、どんな判定をしているかはわからないが、検出限界を上回る値が出た検体に関しては、確実にセシウムが残留していると言えるだろう。幸い検出限界を下回った検体に関しては、「軽微な汚染」以下である確率が高いだろうが、Bi-214の寄与が混ざった状態で放射能レベルが算出されている可能性があり、実際よりも高く見積もられているかもしれない。長時間測定を行えば(あるいはゲルマで測れば)、セシウム(特にCs-137)のピークが立ち上がっているはずだろうが、それは10-20Bq/kgという低い値になっているだろう。このように、汚染が弱いものほどゲルマで測るべきで、福島県のやっていることは科学的にみれば「できの悪い学生」のやっていることと同じ内容といえる。

測定時間を延ばしたり、ゲルマを使った測定をして、検出限界値を1Bq/kg程度(あるいはそれ以下)まで落とせば、2014年の福島県産米はきっと平均25Bq/kg程度にまんべんなく「汚染」されていることだろう。この結果を公表するときに「検出限界値以下」と丸めてしまうとむしろ不安を煽る。「100Bq/kg以下だから、法律上は可食であって販売してもよい」というだけに過ぎず、消費者にしてみれば「汚染がある」ことには変わりはないからだ。消費者は「どんなに汚染が弱くても、どのくらいの汚染が残っているのかを知りたい」のだ。

ちなみに、福島県の測定の10月18日の結果をよく見ると、いわき市の2つの検体がNaIで異常に大きな値を示したため、ゲルマニウム検出器を使った再検査に回されたことが記録されている。その結果は、72Bq/kgと100Bq/kgだったそうだ。法律の「文言」では「100Bq/kgを越えた」検体だけが販売禁止となるので、100Bq/kgジャストな場合、「2014年のお米は全て基準値を下回った」ことになるのだ。役人の作文能力、イベント処理能力ってすごい!


2015年2月28日土曜日

練馬の線量

練馬区の放射線量は、「原発を考える会@練馬」というグループによって調査されている。その結果は地図にまとめられて公表されている

測定が実施されたのは2011-2012にかけて、つまり事故直後の状況の記録だ。この地図によると、石神井公園の周辺の小学校では0.4から0.6 μSv/hという、かなり高い線量が測定されていた。

あれから4年経っても、土壌汚染が3000 Bq/kg近くも残っているのは、不思議ではないことがわかった。

2015年2月27日金曜日

忙しかった:練馬の放射能汚染

この冬は、とにかく忙しかった。いろんなニュースがあったけれど整理したり分析する時間がなかった。また少しずつ始めようと思う。

さて、今年2015年の「仕事始め」は、久しぶりの放射能測定から行きたいと思う。土壌サンプル自体は昨年の夏に採取したものだが、測定は今月の頭に行った。「もの」は練馬区石神井公園の近くの粘土質の黒土だ。

2011年3月の初めに起きた福島原発の事故から4年....セシウム134(Cs-134)の半減期2年を「2度」迎えたことになる。これは、事故当初に比べ、Cs-134の量が(1/2)2=1/4、つまり25%に減少したことを意味している。ガンマ線スペクトルで見れば、Cs-134のピークは減衰してしまってもう見えないのではないか、という予想する人は多いだろう。実は私もその一人だったのだが、2.5時間測定の後に目にしたスペクトルをみて度肝を抜かれてしまった。
石神井(練馬区):2776 Bq/kg [Feb. 2015]
確かに、605keVにあるはずのCs-134のピークは消えつつある。しかし、まだ見える!796keVにある2本目のCs-134のピークに関しては「くっきり」残っている。そして、Cs-137のピークは662keVの位置に高くそびえ立っている。796keVのCs-134ピークが見える限り、福島原発事故による放射能汚染の調査は続行できる。

事故から4年経っても、まだ調査ができるということは、やっぱり東京の汚染はそれなりにすごかったんだなあ、と改めて思い知らされた。