2013年11月30日土曜日

アイソン彗星は消滅したのか?

多くの人が楽しみにしていたアイソン彗星が「消滅した」というニュースが流れた。とりわけ日本では悲観的な報道や報告が多い。たとえば、国立天文台ではSOHOの観測データを下に「彗星の核が消滅し、融け残った残留物のみが空間に拡散したような状態」と状況分析している。しかし、この分析は簡単な文章のみによるもので、肝心の画像データを示しながらの説明ではない。国内のアマチュア天文家が多数、観測写真を投稿するastroarts.co.jpでも悲観的な報告となっている。ただ「長い尾が見れない」だけだとし、彗星自体が観測できなくなったとは書いてない。「明るい残留物も見える」と注意深い書き方になっているのは、まだあきらめていないという意志の現れだろうか?

海外のサイトでは「まだあきらめないぞ」という論調のものが目立つような気がする。特に、アメリカのアマチュア天文雑誌のSky and Telescope誌は12月初めの観測機会を虎視眈々と狙っている。

確かに彗星のコアのほとんどの部分が太陽風(放射線)と熱によって消滅してしまったようだが、SOHOの最新のデータを見るとかなりの量の残存物(debris)が残っていて、彗星の軌道上を塊になって移動しているように見える。欧米の天文学者の中にはこれを「アイソンのお化け(Ghost of ISON)」とか「シュレディンガーのアイソン」とか呼んで、「消滅し、かつ消滅していない」彗星と考えている人にいる。

SOHOのC3カメラの画像データ。
sohodata.nascom.nasa.govより。

ハリーポッターに出て来たNearly headless Nick(ほとんど首無しのニック)のように、欧米の化け物の代表格に「首無しxxx」というのがあるが、近日点通過後のアイソン彗星もHeadless ghost comet(首無しお化け彗星)と呼ぶべき「ゾンビ」彗星となっていれば、12月の初旬のチャンスになれば、見える人には見えるかもしれない!

追記:更に最新の画像データを見てみた。.....明らかに輝きが失われている。太陽風をかぶるたびに、どんどん暗く、拡散していく様子も確認できる。もはやこれまでか。
上の写真の8時間後のSOHOのデータ。
更に追記:もはや彗星の形はほとんど残っていないように見える...後ろの2つの恒星が透けて見えるほどに拡散している。さようなら、アイソン彗星。

2013年11月17日日曜日

久しぶりの太陽黒点の観測

久しぶりに太陽黒点観測を行った。詳細はこちら

COP19で日本は火だるま状態

かつて鳩山政権が発表し世界中から賞賛を浴びた、二酸化炭素排出量の大幅な抑制目標を「やっぱ、やーめた」と発表した阿部政権(日本)に対し、各国代表から「無責任だ!」などの批判が相次ぎ、日本代表はCOP19で火だるま状態になっている、と英国の新聞The Guardianが報じている。

2013年11月13日水曜日

ラブジョイ彗星の観測

年末にかけて増光が注目されていたアイソン彗星は、期待外れの目算が高くなってきたようで、当初の予想通りには明るくなっていないらしい。おまけに朝方の観測となるため、朝の弱い人にとっては非常に困難な観測となっている。

その一方で、ラブジョイ彗星は、現在はアイソン彗星以上に明るく輝いている上に、夜半まで待てば蟹座と「獅子座の頭」の間に見つかるらしく、観測しやすいという。

そこで、アイソン彗星の前にラブジョイ彗星の観測に挑戦してみることにした。木枯らしが吹いて「冬」となった今、夜の冷気は体の芯まで凍えさせる。しかし、そのエメラルドグリーンの輝きを夜空に見つけた瞬間、寒さを忘れて観測に没頭してしまった。


春に観測したパンスター彗星(Comet Pan-Starr)は、夕焼けに照らされた「赤い彗星」だった。が、こちらは冬の冷気の中で、青緑色に神々しく輝いている!

尾の方向を見るために、強めの画像処理をしてもの。
iso6400(60sec)を4枚、加算平均したもの。
寒さの中、極軸合わせがなかなかはかどらず、精度を妥協してしまった。が、それは良い判断だったと思う。なぜなら、彗星の位置をなかなか同定できなかったからだ。精度を妥協しなかったとしたら、彗星探しの段階で寒さに絶えられず諦めてしまったことだろう。

見つけ方は、ふたご座の「頭」と北斗七星の「水汲み部」を結ぶ平行線を思い浮かべつつ、その線に沿って蟹座のプレセペ星団から左に若干視線をずらせばよい。この日は、獅子座の頭のちょっと右に彗星は位置していたようだが、日付が変わった直後では、しし座はまだ高度が低く、座標の目印としては使えなかった。

それにしても、この緑色は美しい。これは太陽風に分解された炭素分子が光っている色らしい。彗星は「生命の種」であると最初に言ったのはFred Hoyleだっただろうか?

ラブジョイ彗星は、今月下旬にかけて更に増光、尾も延びてくるらしい。観測もしやすいので、楽しみな天体となってきた。次は、がんばってアイソン彗星に挑戦してみよう。

目印に使ったふたご座(Gemini)と蟹座(Cancer)にある星団も観測してみた。どちらも以前にも観測したことがあるが、綺麗なので、ついつい撮影してしまった。

M35(散開星団):2600光年
右上に見える小さな星雲はNGC2158:1万6千光年.

M44:プレセペ星団





2013年11月11日月曜日

アルビレオの二重星:再挑戦

二年前にチャレンジして失敗した「はくちょう座のアルビレオ」の観測に再挑戦してみた。

木枯らし1号が吹いた後、急激に気温が下がり、日が沈む頃になると冬の寒さとなった。手袋をしないと手がかじかんでしまう。「秋はこれにておしまい」とばかりに冬の星座が東の空に昇ってきた。それでも、夏の大三角は北から西の空にかけて、いい角度で傾き、観測に絶好の位置につけている。アルビレオを狙うのは今年は今が最後となろう。海王星や天王星の観測に後ろ髪を引かれもしたが、半月のあまりの明るさに、うお座もやぎ座も肉眼には映らなかったので、そちらの観測は今宵はあきらめた。

A80Mfを使用する。先日購入した「新兵器」の、Celestron zoom eyepiece 1.25"を利用することにした。

この接眼レンズは拡大率を連続的に変えることができる。つまり、倍率が低い状態で天体を探して視野に収めてから、天体像を拡大できる。通常は倍率の異なる接眼レンズを付け替えなくてはならないが、その度に望遠鏡の位置がずれて天体が視野から外れたり、焦点の設定が大幅に狂ったりして天体を見失ったりと、その観測は困難だ。また、接眼レンズのネジの口径が、Canonの一眼レフカメラに合致しているため、接眼レンズを直接取り付けることができるのも便利な点だ。

肉眼でアルビレオの位置を確認し、ファインダーで望遠鏡の視野に収める。この辺りは、天の川の中となるので、ファインダーに無数の星が見えてしまう。おかげで、なかなかアルビレオを同定できない。寒さの中、辛抱しながら、少し赤い感じの星を探す。意外に高度は低い感じだ。そして、ついにこの二重星をうまく撮影することができた!

ついに捉えたアルビレオの二重星。430光年。
アルビレオは宮沢賢治の「銀河鉄道」の夜に登場する。そこで描写されているように、実際に観測しても、2つの恒星の青と赤の色の対比が素晴らしい!しかし、Wikipediaには「これは真の二重星かどうかは未だに不明」とある。賢治は「真の二重星」つまり互いの周りを周回する2つの星と考えていたが、是非それが本当であって欲しいと願う。なんとかして結論を出して欲しいものだ。

今日の成功は、実は月の存在が大きい。今宵は月齢7.6日の半月だが、ピントを月に合わせてからアルビレオを撮影したのだ。実は、今晩使った接眼レンズを通してみたカメラのファインダーにはアルビレオは写らなかったのだ。そこで、望遠鏡のファインダーを使っておおよその位置を掴み、月面のピントのままバシャリとシャッターを切る。写真で星の位置を確認しながら微調整し、拡大率を上げる。ピントがずれるので、何度か撮影像を用いながら手探りでピントを合わせていく。こんな具合にして、アルビレオの撮影に成功したのだった。もし月がなければ、ピント合わせに時間がかかり、あまりの寒さにやる気が失せてしまった可能性もあったと思う。

2013年11月4日月曜日

東方最大離角の近傍にある金星の半月形

去る11月1日、金星は東方最大離角の位置にいて、太陽からの角度がもっとも広がった。これはもちろん、観測の好機ということを意味する。しかし、今年は台風やら何やらで、天気の悪いが長く続き、なかなか観測することができずにいた。11月1日の夕方も、西の空は厚い雲に覆われてしまい、金星の観測はあきらめざるを得なかった。その後は、忙しくて観測の機会を逸したり、また天気も悪かったりして、なかなか最大離角の特徴である「半月」状態を観測することができなかった。

毎年綺麗な秋晴れが期待できる文化の日すら雨にやられ、今年は本当に異常気象だと思っていたら、11月4日の午後ようやく青空が雲間に覗いて、夕方には西の空が見事に晴れ渡った。やっとこさ、輝く金星の観測をすることができた。

東方最大離角から3日後の金星。
A80Mfを久しぶりにセットし、倍率を上げて拡大すると、見事な「半月」状の金星が浮かび上がった。アダプターを大学に忘れてきてしまったので、コリメート撮影になったが、半月形の金星をなんとか撮影することができた。これから金星は次第に地球に接近し内合へと向かう。金星の大きさが増すと同時に、三日月状の「欠け」も進んでくる。しばらくは、金星の連続観測に励もうと思う。

紅葉の彩り

文化の日の連休に、御牧原に登った。途中の斜面の林は紅葉の赤や黄色で染められていて、それは綺麗だった。目立ったのは、ダンコウバイらしき黄色に葉。それに、黒い葡萄のような実。調べてみると、アオツヅラフジというものらしい。

ダンコウバイの葉とアオツヅラフジの実

アオツヅラフジの実