2016年3月30日水曜日

劣化する黄鉄鉱化した化石

10年ほど前に英国で採集したpyrite fossils(黄鉄鉱化した化石)を久しぶりに鑑賞しようと思い、標本箱を開けてみて驚いた。「分解が進んでいる!」

海底の粘土層などに埋もれた古生物が、酸素の少ない環境で分解されるとき、酸化したり、腐敗したりするのではなく、硫化することがある。特に、英国のCharmouth周辺で採取できるジュラ紀のアンモナイトの化石には、硫化して黄鉄鉱に変わったものがある。これは磨くとキラキラ光るので非常に美しい。しかし、黄鉄鉱は空気に触れると酸化が始まり、分解してしまう。これをpyrite decayと呼んで、化石/鉱物コレクターが非常に恐れる現象だ。したがって、空気との接触をできる限り防ぐために、ニスの塗布などの保護皮膜によって保存することを試みる...が多くの場合は無駄骨に終わる、と昔聞いた。博物館でも保管に失敗してしまうことも多々あると。絶対自分だけはそうはなるまい、とべたべたとニスを塗りまくって保管し、ついに10年目を迎えたというわけだが、その結果は惨憺たるものであった。

pyrite decayが始まったfolkstoneのアンモナイトの化石。
写真に撮ったのは、pyrite decayが進んだ化石のほんの一部に過ぎない。すでに、ぼろぼろの粉状になって、形が崩れてしまったものもあったが、損傷部をカネブラシで擦ってみたら、なんとか救済できそうなものもあった。CharmouthのCrucilobiceras densinodulumとPromicrocerasがそれ。久しぶりに磨いたらピカピカになった。
 
左:promicroceras 右:crucilobiceras
果たして、次の10年を生き延びることはできるだろうか?

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