2018年8月8日水曜日

台風12号の進路

台風12号は、日本列島を東から西に向かって通常とは逆向きに移動したが、これは史上初めてのタイプの台風ではないだろうか?(確認しようと思えば、気象庁のこのホームページでやれないことはないのだが...)そういえば、今年は観測史上初めて関東甲信越が、西日本より先に梅雨明けした。これも「逆転」の現象と関連しているのだろうか?

気象庁の「過去の台風経路」のデータをパラパラとみてみると、台風自体の経路としては東から西に「逆走」するものは珍しくない。それどころか、たくさん存在する。たとえば、昭和二十六年(1951年)の台風3号(4月15日発生,4月23日消滅)はフィリピンの東の海上を東から西に向かって「逆走」している。

気象庁のホームページより(http://www.data.jma.go.jp)、1951年の台風3号の経路図
そもそも、赤道近くの太平洋で発生する台風は「逆走」することで、日本に次第に接近してくる。 それが、ジェット気流に接近するにつれて移動方向が西から東に転回する。この転回のおかげで、今までは日本の上で「順走」すなわち西から東に移動していたのだった。

今回の台風11号の逆走は、かつての典型的な赤道付近の気圧配置が、日本列島近くにまで北上し、かつ、ジェット気流が北極方向に逃げて行ってしまった結果と推測できる。つまり、かなり大雑把に言えば、上述の1951年に熱帯で起きていた状況が、現在では日本列島付近まで北上していると言えるのではないだろうか? 海水温の上昇に伴う気圧配置の北方へのシフト、これが今回の台風逆走に関連する「地球規模の温暖化」というやつの本質なのではないだろうか?

ところで、台風12号は逆走の挙句に、九州の南の海上で反時計周りにくるっと一回転した。この動きを気象庁のスーパーコンピューターがどのように予報したか振り返って見ると、面白いことがわかる。

日本気象協会(http://www.tenki.jp)のホームページより。
7月29日の段階で台風の目は有明湾の奥、佐賀市付近にあった。ここから南下して東シナ海へ抜ける予報は納得のいくものであったが、驚いたのは、その後、屋久島の北西の海上でkink(微分不可能な折れ線)をなして、急に進行方向を変えるというスーパーコンピューターの計算結果であった。テレビの気象予報士は「これはありえない」と信じていないようだった。

7/29の進路予報。矢印の先が"kink"である。(気象庁のホームページより)
台風の進路だって、一応は運動方程式に似たような微分方程式を解いて計算するんだろうから、滑らかな連続曲線になるはずだと多くの人は考えるだろう。実際、今までの台風の進路で滑らかでないものはなかったと記憶している。

気象庁に勤める友人の一人は、スーパーコンピュターを用いた数値予報に関わっているのだが、この友人によると、なかなか物理学の原理から正確な数値予報をすることは難しく、どうしても現象論的な項、すなわち「現実とつじつまを合わせるための項」をたくさん加えざるをえないと言っていた。とすると、不自然な台風進路の予想が出てきても、おかしくはないだろう。

ということで、さすがのスーパーコンピュータも、過去のデータの蓄積をもとに予想することができず、ついに「お手上げ」になってしまったのだろうと、最初は思った。この段階で、台風の進路を滑らかに外挿して考えれば、九州の東を南下、鹿児島の南で東に向きを転回し、Uターンするような形でループを描きつつ、東進するだろうと思われた。つまり、再び太平洋に戻るだろうと考えた。

ところが、最初の図にあるように、結果は豚のしっぽのように小さな弧を描いて、大陸の方へ進んで言ったのである。kinkのある進路予想と、実際の進路を重ねて見たら、驚きの結果が待っていた。

8/2と7/29の台風進路図を重ねたもの(by gimp)
なんと、実際の進路の「豚のしっぽ」を取り除いた部分が、キンクの進路予想とぴったり一致していたのであった!つまり、コンピュータはループの部分を平均化してしまったため、小さなループは、経路の中に特異点がないループ積分のように零寄与であると判断し、最終的には東シナ海へ進むだろうと正しい数値予報をしていたのだ。これには恐れ入った。 我々の気象庁のスーパーコンピュータはなかなか切れ者なのかもしれない。もちろん、ループを予言できなかったのは「負け」であるが、負け方が実によい。

さて、台風13号は、東京めがけてまっすぐ北上しているが、果たしてついに東京にも大雨による大災害がもたらされるのか?それとも、数値計算は大きく外れて、東京はまた無災害のまま切り抜けることができるのだろうか? 個人的には、案外、予報はあたると考えて、大雨、洪水の準備の最低限をやっておこうと思う。

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