2020年10月17日土曜日

NHKの未来少年コナンの再放送

なぜか、日曜の深夜(日付が変わって月曜の深夜というべきか?)の時間帯で、未来少年コナンが再放送されている。そもそも、子供向けのアニメーションだったはずだが、今時の子供はもう興味を示さないと言うのだろうか?もちろん、40年前の「子供たち」は、いまでも熱心にこのアニメーションをみるだろう(私もその一人である)。

今回の再放送では第一回は見逃した(ずいぶん前に、衛星放送でキャプテンヒューチャーが再放送されたとき、最終回の3回前に気づいたのに比べればかなりましだが!)。第2回目はなぜか偶然見た。それ以来、毎週楽しみにしているのだが、最初に見た時の「赤色」の鮮やかさは昔見た画質とは明らかに違うもので、非常に驚いた。オープニングの、街が火に飲み込まれるシーンの赤色や、ラナの赤い服、歌の最後の夕焼けの赤などが非常に印象的で、この「デジタルリマスター版」に引き込まれた理由の一つとなった。

数週間見続けた後、突然、画面の比率のことが気になった。昔のテレビに合わせて作ったこのアニメーションであるから、横長の最近のテレビで放映すれば横に隙間ができるはずだ。しかし、今回の再放送では隙間なく、ちょうど画面に収まっている。こういうとき、よくあるのが「切り取り」である。今、ネットで日本アニメーションが未来少年コナンのオリジナル版の動画を公開している。

NHKの再放送の放映回に合わせてエピソードを公開しているので、画像を比べてみると、やはり「頭が切れている」ことがわかった。宮崎駿の「縦方向」のアニメーションは、上下の隙間を存分に使いこなすわけだが、横長の画面に合わせて切り取ってしまったせいで、頭が不自然に切り取られ、ダイナミックさが失われているような気がした。しかし、もともとの出来がいいから、こういう瑣末はあまり気にしなくていいだろう。だいたい、5、6週間経つまで、この違和感には気がつかなかったわけだから。

今回の再放送を見ていて、初めて気が付いたことがある。第20話「再びインダストリアへ」から第24話「太陽塔」までが、時間的につながった話だということだ。第24話は先週放映されたばかりだが、この点に注目しながら見ると、とてもおもしろかった。

第20話では、ハイハーバーを午前中(朝?)出発する。青空に向かってフライングマシーンが一直線に飛び立つシーンに、鳥肌が立ったのを昨日のことのように思い出す。マシーン内で機内食を準備し、味わうシーンがとてもいい。コーヒーもうまそうだ。さすが食事のシーンを描かせたら宮崎駿はピカイチである!インダストリアに侵入したのが、夕方である。ハイハーバーとインダストリアの距離感がなんとなくわかる。薄暮の中、ガンシップと一騎打ちとなる。話は21話に移る。

第21話「地下の住民たち」の冒頭で、モンスリーとコナンを乗せたフライングマシーンは撃墜され墜落、二人は捕まる。時間が少しずつ経過し、あたりが暗くなっている。ラナ、ジムシー、ダイスは、地下街へ入り込むため、時間の経過がわかりにくくなる。捕まったコナンが、モンスリーの助けによって、窓から飛び降りるシーンは、夜中になっている。三角塔の窓明りが、暗い夜空に点々と光る様子が印象的だ。(この回の絵コンテは、富野由悠季氏が手がけたことでも有名である。)

第22話「救出」の冒頭は、前回の最後の繰り返しである。モンスリーが盾となってコナンを守る。銃声が聞こえた後、コナンは窓から飛び降り脱出に成功する。撃たれたモンスリーが廊下に倒れるシーンも夜中である。コナンは、夜闇の中、地下街へと侵入する。しかし、爆発に巻き込まれ、流水に飲まれて、地下の深くへと流される。この段階で、全員が地下街に入ってしまい、時間の経過が不明となる。

水攻めに苦しむ地下の住民たちを救うため、ラナは自ら捕虜になることを選ぶ。ラナは(ラオ博士が捕らえられている)三角塔の上階へ連れていかれるが、住民たちは装甲シャッターの下に閉じ込められる。コナンが、ダイスとジムシーと合流し、トロッコを被って、水中行進を試みるシーンは、ギガントの翼をかけるシーンや、磁力手枷をつけたまま水中に沈没するシーンと並んで、傑作だと思う。個人的にはダイスが躓く2度のシーンが好きである。

ラオ博士に太陽エネルギー復活を協力させるために、ラナは一本橋の拷問にかけられる。ラナが空中にせり出していく時、地平線が朱色に染まる。実は長年、このシーンを「夕方」だと思っていたのだが、これまでの経緯を考えると、 「夜明け」と見るべきであることに初めて気がついた。地下の住民たちが水責めで苦しめられていたシーンは、徹夜での奮闘だったのだ。今回のこの「発見」により、宮崎駿のアニメーションにはまだまだ「隠れた伏線」というのがたくさんあるんじゃないか、と思った。コナンたちが、酸素切れとなったトロッコを放棄し、最後の酸素を使って入り口目指して必死に泳いでいたのも、夜明けであったのだ。だから、出口が明るく遠くに見えたのである。

外界に出たコナンたちは、夜明けを待って銃殺されることになっていたモンスリーの処刑場に偶然出る。このあたりも、時間の流れに注意すると、モンスリーの夜通しの苦しみが想像でき、より面白さが増す。モンスリーを助け、三角塔を目指して走り出すのも夜明けである。空中の一本橋で墜落の恐怖と闘いながら、左右前後に揺れるラナを下から見つけたコナンは、ラナをめがけて駆け出す。これも夜明けのシーンだったのである。

第23話「太陽塔」。そして、ついに太陽塔のレプカを追い出すことに成功する。レプカが逃げ出すのは、鏡の集光アンテナに置かれたラオ博士のフライングマシーンだった。鏡に青空が写り、ウユニ塩湖のような景色広がる。日が昇り、日中になったことがわかる。フライングマシーンが墜落するシーンも、青空が背景であった。その後、ラオ博士の指揮による衛星の復活作業のシーンが続く。屋内のシーンであるが、時間がかかる様子が想像できる。というのも、最終段階になったとき、コナンたち全員が夜の帳が下りた三角塔の屋上に集まっているシーンへと変わるからだ。1日が過ぎ夜になったことがわかる。満点の夜空に動く「星」が現れる。真上に来た時、太陽エネルギーのビームが三角塔めがけて降臨する。三角塔に明かりがつく。暗かった夜の風景が、人口の光によって照らし出される。エスカレーターや動く廊下、イリュージョンの部屋など、テクノロジーの復活のシーンの後、屋上に出た一行は、再び夜明けを見る。明るくなり始めたところへダイスがやってきて、沈没船の引き上げのためコナンたちはサルベージ船に向かうことが告げられる。朝日の中、3人が走って港へ向かう。こうして、ハイハーバーを出発してまる2日間の大冒険のシーンが終わる。

時間の流れが連続的であることに気をつけて見ると、非常に緊迫した、盛りだくさんの山場のシーンであることがわかり、新たな面白さを感じることができた。特に第22話「救出」は、わずか30分の放映なのに、60分、あるいは120分近くの長さに感じられるほど、充実している。

明日は、ついに最後の山場の山場である、「ギガント」の回である。決着は、来週の「インダストリアの最期」につくから、2回分のエピソードになる。非常に楽しみである!


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