2018年9月4日火曜日

シムライノデについて:トルメキアの狸の正体

シムライノデについてもう少し調べてみた

前回の記事で「 国立科学博物館は種の保存を試みていないようだ」と書いたが、それは誤りであった。まずはこの点について訂正しておこうと思う。新聞などの報道には全く触れられていなかったが、よく調べると国立科学博物館の「研究室コラム」というweb pageに記述があった。伐採寸前の数十株がレスキューされたとのことで、ちょっと安心した。保護された株は、筑波実験植物園(筑波大学ではなくて、国立科学博物館に所属)と、東京都植物多様性センター(今回初めて聞いた研究施設だったが、よく調べると調布の神代植物園であった)に待避しているそうである。称賛に値すると思う。

この文書によると、シムライノデに関して研究していたのは、国立科学博物館の植物研究部という部門らしい。また、このコラムを執筆したのは植物研究部の海老原淳博士で、シダ植物の分類学が専門だということである。おそらく、今回のシムライノデ救出作戦の中心人物ではないだろうか?

素晴らしいと思ったのは、シムライノデの自生地の近くに住んでいると思われるアマチュアの研究者(あるいは住民?)の方々が、貴重な森が東京都によって伐採されるという情報をいち早く入手し、それを海老原さんに連絡したことである。これによって、救出が成功したといえる。称賛である。

そして、毎日新聞やその他の報道ではよくわからなかった伐採を実行した東京都の団体の正体であるが、科学博物館の記事によってよくわかった:かつての石原慎太郎東京都知事がその在任中に 突然花粉症を発症した際に、彼が「東京都の杉は全部切ってしまえ!」と命じたあの政策が引き金となっていたのだ。

石原都政で憶えているもの:カラスがゴミを荒らす問題には「カラスの殺処分」、都立大の教授会が気に食わなければ、「古い都立大はお取り潰して、首都大学東京へと、施設と人身刷新」(これは最近、小池現知事により都立大に戻されることが決定したようだ)、そのほか、大赤字を垂れ流して破綻した新東京銀行の設立などなど。強権を発動して無理矢理実行したものの、大失敗したものがすぐに頭をよぎる。うまくいったのは、東京マラソンぐらいか?(いや、もうひとつあった。私が一番石原さんの政策で評価しているのが、ディーゼル車の東京都内走行禁止である。ああいう短絡的だが、実行力のある施策は小池さんには無理だろう)。築地から豊洲への市場移転も、どす黒い問題があることが発覚したのも記憶に新しい。

確かに花粉症に苦しむ人は多く、その症状の直接の引き金になるのは杉花粉である。したがって、杉花粉をなくしてしまえば花粉症が防げると(短絡的な人は)考えたくなるだろう。しかし、杉が名産である紀伊半島や秋田などで花粉症の人が殊更多いという話はあまり聞かない。私が思うに、花粉症というのは大気汚染や飲料水の汚染、さらには添加物を含んだ食品の大量摂取とか、不規則な生活リズムなどによって体が弱り、免疫系統がギリギリまで追い詰められたところへ、最後の一撃として杉花粉がアレルギー症状を発生させるのではないか?産業革命以前の自然環境の復帰や、環境汚染の克服などが優先されるべきであって、こういう諸々の研究成果を待たずに、杉林を一気に切りはらうというやり方は、科学的にはあまりにも幼稚なアプローチに見える。(杉林を伐採したあとの治水治山に関しては、さすがの東京都も考えていたようで、「花粉の少ない杉」の植林を計画していたようで、そこは評価できる。)

石原元都知事の花粉症治療のために、杉の林を皆伐採して花粉の少ない杉へ置換した結果、かけがえのないシムライノデが絶滅したとしたら、歴史家はこのことを「愚行」と書くのか、それとも「善行」と書き残すのであろうか?

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