2019年1月14日月曜日

チバニアンの問題(2)

チバニアンの認定について、日本国内で「内輪もめ」が起きてしまい、国際会議での審査が凍結されてしまった件について調べてみたら、いろいろと面白いことがわかった。

まず、当初の申請をおこなった国内グループとはどういう人なのか調べてみた。国立極地研究所のプレスリリースに、申請者のリストがあった。このリストはアルファベット順なので、研究を主導する人がどなたか、わかりにくい。産総研のプレスリリースをみると、そのあたりが明確になる。それによると、茨城大学の岡田教授、国立極地研究所の菅沼准教授、千葉大学の亀尾准教授、国立科学博物館の久保田研究員といった方々であるようだ。つまり、「きちんとした科学者のグループ」であることがわかる。

一方、異議を唱えた団体とはどんなグループなのか調べてみた。たとえば、毎日新聞には「別団体」と書かれているだけで、どんなグループかはっきりしない。そこで、個人のブログなどを参考に調べてみると、 「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」という団体であることがわかった。その代表は、茨城大学の楡井教授であるという。この「評議会」についての資料は著しく少なく、正体は不明だ。この団体は、チバニアンの地層がある養老渓谷の場所に、勝手にコンクリート階段を設置したことで報道されたことがある。

さらに調べてみると、いろいろなNPO法人の理事長の職に楡井氏がついているらしいことが判明した。たとえば、「日本地質汚染審査機構」。非常に興味深いことに、この団体のホームページには、安倍明恵夫人からの激励の色紙の写真が貼り付けてあった。色紙には「平成二十八年10月26日」という日付がある。(2016年といえば、森友学園や加計学園に関する活発な動きがあった頃ではないだろうか?)

楡井教授の経歴が気になるところである。まず科研費の情報からは茨城大学には2003-2005年の間は確実に所属(広域水圏環境科学教育研究センター)しているらしいことがわかった。 しかし、現在は、この研究センターには所属していないようだ。2012年2月に開催された講演会の資料には「茨城大学名誉教授」とあるので、その前に退職なさったようだ。

検索を続けると、意外な資料から彼の初期における経歴がわかった。それが久米宏のラジオ番組の過去ログだ。2015年7月に、ラジオ番組に出演し、久米宏と対談したらしい。この資料によると、出身は福島県会津地方出身で、大阪市立大学の学部と大学院を卒業しているそうだ。卒業後の1970年に千葉県庁に就職している。役場の定年は60歳だから、2000年前後に定年退職したことになる。つまり、役人の天下りのような形で国立大学の茨城大学に再就職したということだろう。つまり、この方は、研究者というよりは、実務経験をもった元役人という感じがする。

このラジオ番組で、楡井さんはチバニアン(彼はチバシアンと名付けたかったようだが)の宣伝を行なっているから、2015年7月の段階では、彼は異議を申し立てるどころか、推進派 だったことがわかる。ところが2017年6月の申請時には、研究者グループのリストには名を連ねていないから、2015.7-2017.6の間になにかがあったのは確かである。

同じ茨城大学には、チバニアン提案者の中心人物である岡田教授がいる。彼は理工学系の学科の教授であり、楡井さんの所属していた研究センターとは異なる。想像するに、正統的な研究者である大学教授と、元役人が再就職して誕生した大学教授との間には、意見の隔たりがあったのではないか、ということである。

ここまで調べると、この「異議」というのが科学的に根拠のあるものではないことが薄々わかってきて、なんだか馬鹿らしい気分になってきた。事実、IUGSの審査は、この「異議」について気にもかけなかったらしく、中断していた二次審査を無事に通過したということである。

多くの報道で、今年中にも正式に決定される見込みであると報じられている。安心した!きっと、今年の秋、冬に吉報があるはずである。

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