2013年12月31日火曜日

大晦日の準備

今年は「村のしきたり」にならってみることにした。年越しに必要なのは、まずは新しい神様だ。次に、屋敷神という神様を、家の敷地にある祠の数だけ用意する。家の各部屋を清める笹のお祓い(魔法使いの杖みたいなもの)も必要なのだが、村で一本つくって共有するため、個人個人で勝手なタイミングで使うことができない。「村長」に尋ねると、今年はすでに回してしまったというので、泣く泣く諦めることにした。

最初の悩みは、「神様をどこで調達しようか」である。通常は、村の回覧板で「神様の注文承ります」という広告が秋の終わりに回ってくるので、そこで注文しておけば、年の瀬までには氏子の人たちによって玄関先までちゃんと届けられる。しかし、今年はちょうどその時期に「江戸詰め」しており、注文すること能はず。生まれて初めて、ネットで「神様の購入」と検索をかけてみた。すると、近場の神社が2つ候補に上がった。今回は、やや南の方にある山間の神社を選んだ。社務所に電話を入れると、「2時に閉めるから、早く来」とのこと。また、注文する時は「神様3つ下さい」というのではなく、「お札を3つ」といった方が良いらしい。ちなみに、天照大神は800円、地元の神様は500円だという。地獄の沙汰も金次第というのは聞いたことがあるが、神様もお金で買えたとは知らなかった...

住んでいる村より南に下ること、車で30分程。山に囲まれた谷間の集落にその神社はあった。三重塔の偉容にどぎもを抜かれる。樹齢1000年以上もあるケヤキや杉の大木が林立し、不思議な世界に迷い込んだような錯覚を受ける。この塔は鎌倉時代の作だそうで、国の重要文化財に指定されているとは知らず、驚きの連続だった。氏子の人たちは、杉の生葉を威勢良く燃やしていて、あたりは煙に包まれていた。
神様を購入した神社にあった三重塔。
室町時代のもので、国の重要文化財であった...
知らなかっただけに驚いた。
神主に「神様1つと屋敷神様を3つ下さい」とたのむと、「2つで十分ですよ。わかってくださいよ!」と言われるようなことはなかったが、お札は地元神にしたので500円、屋敷神は3つで900円であった...

つぎに、「ごぼうじめ」と呼ばれるしめ縄を調達に、今度は村の北西にある道の駅へ。ここには地元の物産が集まっていて、いろいろ便利なものが手に入る。お正月飾りのコーナーにいってみると、ごぼうじめは一本120円だった。4本調達する。思えば、笠地蔵のお話も年の瀬に金がなくて年越し/正月の準備ができずに苦労する話だ。年越しは何かと金が掛かるものだと思い知った。

家に戻ってさっそく「屋敷神様」を祠に納める。「ごぼうじめ」を立てかけ、細縄で縛る。昨年の神様を回収し、まとめて近くの神社の境内にある「神様捨て」に奉納する。これはいってみれば焼却炉であって、氏子の人がタイミングをみて適宜、火を付けて旧いお札などを燃やしていく。有り難いのか、罰当たりなのか、かなりすれすれの線ではないだろうか?

神様のお札は自宅の高い所に祀ることにした。お神酒は省略。来年は徳利をどこぞで調達する必要があろう。それよりも、祠の数をもう少し増やし、隣家の侵入を神頼みでなんとか防がんと、小諸の方へ探しにいくことにした。北国街道沿いにちょっとした石屋があったので話を聞いてみると、小振りのもので4万円だという。材質は中国産の御影石。まあ食べる訳ではないから、と買って帰ろうとしたら、なんと重くて独りでは持ち上げられない。仮に持ち上がったとしても、車に直接載せると傷だらけになるというので、毛布などを持参してから出直すべきとアドバイスされる。取り付けを依頼しようかと思ったが、店開きが1月14日だとのんびりしたことを言う。これまでのやりとりをまとめて考えると、今年は諦め、しばし様子を見る方がよかろうということになった。

飯綱山と呼ばれる丘に登り、年の瀬の夕暮れを眺めることにした。
小諸から見た富士山。左のごつごつしたのは(多分)瑞牆山。
その左にある一番高いのが甲武信岳だろう。
蓼科や八ヶ岳がよく見えるのはわかるし、美ヶ原や上小の山々が見えるのはわかる。しかし、富士が見えると知って非常に驚いた。浅間の斜面に暮らす小諸の人は昔から富士を見ながら暮らしていたんだな、とカルチャーショックを受けた。

家に戻って来て、大晦日の全ての準備を完了したことを確認。イタリア産の白ワインを開け、ほろ酔い気分で夕方の観測に向かう。金星が西の山の端に沈みゆくところ。2013年もこれでおしまいなり。
金星はやぎ座の下にあって、西の空に沈んでいった。
やぎ座のα(二重星)とβが見える。

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