2014年8月4日月曜日

「ファインマン物理学II 光、熱、波動」

ファインマン、レイトン、サンズ著(富山小太郎著)
岩波書店(1968年)

富山先生は物理学者であり、確かに格調高い翻訳になっている。読んでいて楽しい。しかし、やはり訳がよくわからないところがあちこちに見受けられる。該当する場所を原著で読んでみると、「なーんだこういうことか!」とすっと頭に入ってくる。

例えば,「1-5 フェルマーの原理のもっと正確ないい表わし方」において、ラジオ波の波長に比べて、隙間の大きさが短いときに回折現象が生じる説明がある。この部分の翻訳を読むとなんのことなのかよくわからない。もちろん、なんとなく何を言いたいのかはわかるのだが、英文を読んだ時の明瞭さといったら、「目から鱗が落ちる」といったら語弊があるが、霧がすーっと晴れてもボンヤリ影のようにしか見えなかった古城とその庭園の花々の姿がさーっと色鮮やかにその姿を眼前に表したときの感激に似ている。

どうも意訳が多いようで、ファインマンの書いた文章の機微を重視するというよりは、物理的な内容の正確さを優先している。その結果、「ファインマンの」というよりも、「富山先生」の講義になってしまっているような感じだ。これもやはり、原著で読むべき作品だと思った次第。

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