Littlehampton(West Sussex)にいった。引き潮のいい時間帯だったし、久しぶりの夏の日差しが照ったせいで、海岸には多くの人がいた。私の狙いは、波打ち際(というか、波が引いた後の、砂と礫の境界線上)に転がるウニの化石である。ここの化石はすべてflint化していて、それが長年月波に洗われ、礫に擦られて、磨いたようになっている、独特の化石だ。日本には産出しないと思う。
Flintは火打石だ、と高校の英語で習った記憶が有る。確かにそうらしいが、日本にある火打石とちょっと見かけが違う。最初に、現地の人に、「これはフリントっていうんだよ」と教えてもらった時は、疑ってしまった。調べると、古代の生物の遺骸やその堆積物が変質したもので、酸化硅素からなる鉱物とのこと。一方、日本の火打石は水晶や石英で、これは溶岩中の鉱物として産出する。化学成分は同じなのに、その履歴がこうも異なるとは、と感心せざるをえない。南イングランドや北フランスなど、英仏海峡を囲む石灰岩の地域にごろごろ転がっているが、世界的にはこの辺りにしかあまりみられないという。南イングランドでは、家や塀の壁のブロック代わりにフリントを積み上げてつくるほど、ごろごろあるので、まさに「路傍の石」状態で最近では気にもとまらない。
しかし、それがウニの形をしているとあっては気もそぞろである。現地に着くやいなや、さっそく目をさらにして探索開始。今回はなかなか手強かったが、1時間で5つ発見、4つを採集した(一つはあまりに摩耗がひどく捨ておいた)。そのうちの3つが、Scutataと呼ばれる楕円形のもの。残りの一つが、初めて採集した丸い形のウニだった。特徴からするとEchinocorysの一種だと思われるが、その下の種名が判然としない。こういうときは仕方ないので、Echinocorys sp.と学名をつけるらしい。私もそれに従うことにした。
ウニのデータベースとしては、ロンドンのNatural History Museumが素晴らしい。ただ、量が多すぎて不便だ。このリンクをすべてたどって、ウニの種類を同定するのは至難の技、というより小学生の居残りの書き取りのように多大な苦痛をともなう。
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