2010年2月26日金曜日

入試英語

この時期になると気になるのが試験問題である。ある大学の英語の問題を見たが、なんとも不自然な英語の文章で、受験している学生たちがちょっと気の毒になった。3年間も英語の勉強してきて、これを最後に読まなきゃいけないなんて、まったく時間の無駄に思える。じゃあ、その正反対の、いわゆる難関校はどうなんだろう、と思って、京都大学の2009年の問題を見てみた.これも、ある意味ひどい英語である。少なくとも、高校生がこんな英語読めていったい何の役にたつと言うのだろう?京都大学の英文学以外の先生たちがこれを完璧に訳せるとは到底思えないだけに、これまた、受験生たちが気の毒である。京大英語は癖があると言われているようだが、ちょっと癖が強すぎるのではないか?逆に、感心したのが東北大学の問題。研究者になってから一般的な論文で使うレベルの英語が出題されていた。これが高校生で読めるなら、あとは専門の科学分野をマスターするだけだ。そうしたらすぐにでも論文発表できるだろう。

京都大学の問題はちなみに「爪楊枝の文明論」についてであった。(文化人類学というべきか?)太字のところを訳せ、ということだが、その周辺の英文は果たしてヒントとなりうるのだろうか?


Many of the most common things that we encounter in everyday life are also among the most elegant solutions in fitting form to function.Thus the familiar paper clip has long been widely admired by architects and designers for being a graceful loop-within-a-loop spring that silently does its job.The sewing needle, with its sharp, elongated point balanced by its soft oval eye, is a classic example of opposites united in a manufactured product. But such things, being made of steel, are many times removed from the raw materials from which they begin. These are not things easily made from scratch by a single person. Small things made of wood are more organic, closer to nature and formable by an individual with little more than a sharp knife and a patient hand.



日常生活の中にありふれている道具の多くは、目的の用途にただ単に適うだけでなく、もっともエレガントな方法で機能するように設計されている。その意味で、よく使われる「紙止めクリップ」は多くの設計者やデザイナーから、長いこと尊敬を集めてきた:その二重に丸め込まれた美しいバネ構造が、粛々と、そして確実にその機能を果たす事にに対して。また、縫い針は、長く延びた尖端がゆるやかな楕円型の孔とうまい具合に調和していて、正反対のもの同士がうまく組み合わされた手工業品の中でも、もっとも優れた古典的な例の一つである。しかし、このような鉄でできた製品は、元となる原材料から繰り返し切り出されなくてはならない。一人の人間が、何も無いところから、このようなものを作るというのは、そう簡単なことではない。木でできた小さめの道具なら、有機的で自然にやさしく、よく研がれたナイフ一本と根気さえあれば、個人であっても製作することは可能だ。


太字のところが問題文だが、ここでは"loop-within-a-loop"というのが(高校生には)難しいかもしれない。そもそも、日本の高校生はあまりクリップを使って紙を束ねないから、paper clipがどんなものか知らないと、これを訳すのは大変じゃないかと思う。この問題を出した先生は、欧米への留学経験が長い人かな、という想像がつく。確かに、イギリスではpaper clipの方がホチキスより人気があった。イギリスのホチキスは品質が悪く、1cmほどの紙の束を留めようとすると、貧弱にも針が折れ曲がってしまって、なんど悪態をついたことか。(問題分にsilently does its jobとあったが、確かにクリップなら誰もわめいたり、悪態をついたりはしない。)ちなみに、悪態をついてから半年後に一時帰国した時、まず麻布十番の文房具屋で買ったのは日本製のホチキスと大量の替針であった。(ちなみに英語ではホチキスはstaplerという。)

問題文からは外れるが、その次に難しいのがfrom scratchと、縫い針の行りの"a classic example of opposites united"か?
from scratchに関して言うと、これを最初に見たのは、よくプログラムをスクラッチから書き出す、という使いかただった。何も無いところから、最初のひと掻きから、ということだろう。最初にこの言葉を会話で使った時"from the scratch"といってしまい、大笑いされた。ブルースリーの強敵「鉄の爪」でも想像してしまったのであろうか?theはつけてはいけないのである(theというのはイメージを固定するのだ....、とこの時、体感した)。

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