2012年2月17日金曜日

東京新聞「環境総合研•池田副所長に聞く」:復興の足かせ論について

池田氏がまっさきに疑問を投げかけたのが、最近、政府がプロパガンダのように繰り返している「がれきは復興の足かせだ」というキャッチフレーズ。

池田氏によると「被災地になんども足を運んでいるが、『がれきがあるから復興が進まない』という話は聞かない。(途中省略)がれきが復興の妨げになっているかのような論調は、国民に情緒的な圧力を加えているだけだ」という。

そもそも「復興」とは何か?

「復興」とは、住民を助け、もとの暮らしを取り戻すことだと思うが、政府や官僚たちは、それ以上のことをやろうとして欲張っていないだろうか?選挙対策の人気とりと見なしている雰囲気はないだろうか?今、被災地に必要なことは、大きな道路を引っ張ってきて、新しい街の区画を割り振ることじゃないだろう。こういうのは、もう少し後だってちっともかまわない。むしろ拙速に行って、取り返しのつかない間違いを犯せば、住民を苦しめることになる。そんなことより、緊急にやるべきことはいくつかあって、それらはやる気になれば案外速やかに片付いてしまう。

まず、これから先10年間、人間が住める場所と住めない場所を明確に宣言することだろう。住めるというのは、農業で生活の糧を稼いでいる人たちが、そこで農業をできるかできないか、酪農をできるかできないか、漁業を続けることができるかできないか、をはっきりさせることだ。これを曖昧にしているから、戻る/戻らない、去る/とどまる、といった無意味な論争、争いが生じてしまっている。チェルノブイリのときは、強制移住の地域の定義策定を最初にやった。

次に、「住めない」と定義された地域の人たちに、賠償金を十分に支払うことだ。これをケチって、なるべく少なく払おうとするから、もめ事が生じる。大きな過失を犯してしまった東電と政府は、彼らの生活と命に対して十分な賠償を速やかに払うべき。これが終わらないと、人々は不安で仕方ないはず。復興なんて気持ちにはならない。十分な経済基盤ができてこそ、元気も湧くし、未来も見えてくる。土地を奪って放浪させた上に、一文無しにさせ、その上「元気を出せ!復興だ!」とやるのは、地獄の責め苦を与えるのと同じだ。

最後に、雇用の確保だが、それこそ地元でがれきを処理すれば、雇用が生まれる。東京のゼネコンや建築会社を使うと、地元の雇用は生まれないから、絶対に被災地以外の企業に仕事を割り振ってはいけない。建築、土建はすべて地元で調達すべし。スピードはこの際関係ないから、足りない材料があったら、その製造会社を東北につくるところから始めるべし。基礎を固めず、大急ぎで形だけ整える復興はぜったいに次の地震と津波を切り抜けられない。セイタカアワダチソウのような背の高い雑草や、もやしのようにひょろ長く短時間で育てるようなことはせず、時間がかかっても立派な森となるようにブナの苗を植えるべきだ!東北の人たちが納得でき、幸せになるようにお金を使うべきだ。

2 件のコメント:

enniethebear さんのコメント...

がれきとは直接関係ないのですが、内部被曝の視点から興味ある記事が。

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<共同通信配信> 2012/02/17 02:02

食品に含まれる放射性セシウムの新基準値案について厚生労働省が実施していた意見公募に対し、案の妥当性について厚労省から意見を求められていた文部科学省放射線審議会の前会長、中村尚司東北大名誉教授が「福島県の農漁業に甚大な影響を与える」などとして、公募期間中に反対意見の「投稿要請」とも受け取れる依頼を関係学会の会員らにメールで送っていたことが16日、分かった。

メールには丹羽太貫現会長の名前も出していた。中村前会長は「反対意見の投稿を要請したつもりはない」と話している。

厚労省によると、寄せられた約1700件の意見のうち、もっと厳しくすべきは約1400件。

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怖い話です。 沈黙してはならないことを改めて痛感しました。

長野県には、大きな時間遅れ系からの汚染による内部被曝につき説明に努めております。

kuzzila さんのコメント...

「もっとも厳しい基準にするべき」という意見が大多数を占める情勢の中、もっと緩い基準を採用して、放射能汚染地域の農漁業を「助けたい」と考えた「専門家」が、「緩い基準の方がよい、という意見をもっと出すように」と動員をかけた、ということですね。

放射能汚染地域で、農業や漁業を続けても、いずれは消費者からそっぽを向かれますし、内部被曝の健康被害が現実となる数十年後にはトドメをさされます。そのときには、放射能汚染地域で農漁業をやっている人も、そこからの産物を食べてしまった人も、すべての人が大きなダメージを受けることになるでしょう。

「とりあえず」とか、近視眼的な解決というのが最悪のシナリオです。科学者はもっと遠くまで見通す眼力が必要とされる職業なのに。

情報、ありがとうございます。