先日の皆既月食の観測は、最初から最後までキチンとやることができた。これをやったのは小学生の時以来の2回目。あの時も12月の深夜だったと思う。皆既中に赤くなることを知らなかったので、とても驚いた。(そのときのスケッチがどっかに残っているはず。)写真を撮ったとか、望遠鏡を買ったとかいう物質面での進歩は今回の観測においては確かに大きい。しかし、今回の観測があの時の知的レベルと同じでは恥ずかしいので、少し頭を使ってみた。
月食というのは、太陽に照らされた地球の影に月が入り込む現象だから、地球の影の大きさを測ることができる。もっというと、この地球の影の大きさは、地球と太陽の距離、太陽の半径、そして地球の半径という3つの天体量の幾何学的な関係によって決定される。したがって、どれか2つを知っていれば、最後の1つの量は計算して求めることができる。
地球の大きさは天文的な知識がなくてもある程度は想像つくし、天文学を利用すればもっと正確に測定できる。だから、これは既知のものとする。次に、太陽の半径に関しては、日食が存在することから、月と太陽の視直径が同じ程度だ、という事実を利用することができる。(もっと正確には太陽半径と地球太陽間距離の比だが。)普段の状態で、太陽の視直径を直接測るのは、古代は大変だっただろう(理由は単に眩しいから)。でも月ならじっくり観測できるから、月を測って太陽を知ることができるというのは随分助かったはず。
この2つの値を使えば、残りの量、すなわち地球太陽間距離(これを一天文単位という)を、今回の月食のデータ(月食の時間)と合わせることで計算できる。もちろん、ちょっとした幾何学計算をする必要はあるが、今回はこれをやってみることにした。すると、意外に難しいことが判明した。太陽と月の視直径がだいたい同じという近似は大雑把すぎるのだ。それでも、強引な誤差解析をすれば、だいたい1億キロ程度という値は出すことができた。
まず、太陽の視直径は月のそれより30”ほど大きいという事実は重要だ。日食ではこの精度が出し難い。しかし、金星の日面通過を観測することで、より精度の高いデータを得ることが可能だということを最近知った。実際、金星の日面通過を最初に観測した英国のHorrocksは一天文単位を約1億キロだと計算している。最新の値は1.5億キロだから、17世紀始めの観測としては相当正確な計算だ。
実は、来年の6月に金星の日面通過がある。この天体現象は8年、105年、8年、105年という間隔で起きる。実は、前回は8年前の2004年で、このときは英国にいたが、まったくそのニュースを聞かずに過ごしてしまった...ということで、今回の日面通過を逃してしまうと、生きているうちに太陽の視直径を自分で測るのは不可能になる可能性が高い(っていうか不可能)。なんとか成功させたい!
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