つい先ほど、世耕大臣のtweetが更新された。苫東厚真火力発電所はタービン部分が発火しており、復旧に一週間以上かかるという。いわゆる「悲報」というやつである。
泊原発の非常用電源の燃料がもつことを祈るしかない... まずい状況になりつつある。
2018年9月6日木曜日
北海道の大停電に伴う泊原発の状況(2):火力発電所の状況と、泊原発の非常用電源の数
北海道の電力供給システムは、報道によると、苫小牧にある苫東厚真火力発電所が基礎となっていて、ここが動かなくなると北海道全域の電力供給に影響がでるそうである。いわゆる「ブラックアウト」しやすい体質であったということだ。
地震の揺れを感知して、この火力発電所は停止したらしいが、ここが止まるとその歪みが北海道全域に波及してしまうようだ。それが実際に本日発生し、北海道の火力発電所が全て停止、という状況になってしまったようだ。
当初は、水力発電所の電気を使って、苫小牧の火力発電所を再稼働し、順次北海道内の火力発電所を再稼働していく方針であったが、苫東厚真火力発電所の施設本体に損壊が見つかったそうで(それがどういう損壊はわからない、深刻なのか、軽微なのか?)、当初の計画は実行できないことになった。
停電の解消して原発を危機から救う作戦は、したがって、当面は実行できない見込みとなり、心配な状況が続く。
日経の過去の記事に次のようなものがあった:泊原発は2015年に貯水設備を増設。電源がなくとも(重力の作用で)冷却水を一週間程度は供給できる。
北海道電力のホームページで、泊原発のスペックを調べようと思ったが、アクセスが殺到したようで、現在サーバーはダウンしている。 代わりに、原子力規制委員会が公表している安全アセスメントに関する文書を参考にすることにした。
この文書によると、非常用電源は各原子炉に2台付属している。泊原発は3機の原子炉があるので、6台ということになる。また、移動用の電源車両も複数準備してあるそうである。これが本当なら、確かに一週間は電源なしでも持ちこたえられそうな気がする。
少し安心した...
地震の揺れを感知して、この火力発電所は停止したらしいが、ここが止まるとその歪みが北海道全域に波及してしまうようだ。それが実際に本日発生し、北海道の火力発電所が全て停止、という状況になってしまったようだ。
当初は、水力発電所の電気を使って、苫小牧の火力発電所を再稼働し、順次北海道内の火力発電所を再稼働していく方針であったが、苫東厚真火力発電所の施設本体に損壊が見つかったそうで(それがどういう損壊はわからない、深刻なのか、軽微なのか?)、当初の計画は実行できないことになった。
停電の解消して原発を危機から救う作戦は、したがって、当面は実行できない見込みとなり、心配な状況が続く。
日経の過去の記事に次のようなものがあった:泊原発は2015年に貯水設備を増設。電源がなくとも(重力の作用で)冷却水を一週間程度は供給できる。
北海道電力のホームページで、泊原発のスペックを調べようと思ったが、アクセスが殺到したようで、現在サーバーはダウンしている。 代わりに、原子力規制委員会が公表している安全アセスメントに関する文書を参考にすることにした。
この文書によると、非常用電源は各原子炉に2台付属している。泊原発は3機の原子炉があるので、6台ということになる。また、移動用の電源車両も複数準備してあるそうである。これが本当なら、確かに一週間は電源なしでも持ちこたえられそうな気がする。
少し安心した...
北海道の大停電に伴う泊原発の状態
今朝未明(2018年9月6日午前3時ごろ)に、北海道で起きた大地震により、現在北海道全域が停電している。大停電、いわゆる「ブラックアウト」状態である。
これにより、北海道の岩内(ニセコの近く)に近い場所にある泊原発の電源が喪失となった。福島原発が爆発した時を思い起こさせる嫌な展開である。ただ、現在は非常用のディーゼル発電機が作動し、それを電源として使用済み燃料のための冷却システムを稼働している。
使用済み燃料というのは、使用前の核燃料に比べて、圧倒的な放射能強度を持ち、そこから出てくる崩壊熱はたいていの金属を溶かしてしまうような高温(数千度)を発生するため、冷却する必要があるのだ。日本の主な原発は水冷式を採用している。水は100度(ただし、1気圧の場合。もし台風が近づいているならもう少し低い沸点になるはず)で沸騰してしまうので、水を循環させて常に冷たい水を供給する必要がある。
したがって、電源喪失というのは、使用済み燃料の安全管理の観点からすると、最大の問題であるといえる。もし、非常用電源の燃料が尽きてしまえば、冷却用の水はみるみる沸騰して干上がり、灼熱の放射能物質は遮蔽壁を溶かすことになるだろう。そこから染み出す使用済み燃料の中には、揮発性の放射性物質、例えばヨウ素131とか、セシウム137とか...嫌な名前が再登場することになる。こうなると、付近の放射能汚染が発生する。特にヨウ素131は空気や水(川、海、雨)に溶け込んで、子供達の体に入り込むと、深刻な内部被曝を引き起こし、甲状腺癌の発生リスクが上昇する。また北海道以外に住む人にも影響は発生するだろう。それは、北海道の農産物(牛乳、チーズ、ヨーグルト、牛肉、羊肉、鶏肉、それに野菜など)に対する放射能汚染が広がり、「風評被害」も発生したりして、食生活が混乱する可能性は大いにある。
多くの人が気になるのは、この発電機があと何時間もつのか?そして、北海道電力による電気の復旧は間に合うのか?ということであろう。北海道電力の状況を知ることは、現場の担当者でもはっきりしたことは言えないだろうから、そちらを調べるのは後にして、まずは非常用ディーゼル発電機の稼働限界時間について調べてみることにした。
まだ直接の情報は見つかっていないが、東海原発を管理する「げんでん」(日本原子力発電株式会社)の説明文が見つかったので、ここに引用しておこう。
この文書によると、東海原発の非常用電源一機につき八時間の連続運転が可能であるという。一つの発電機で、東海原発の冷却システムのすべてを作動させることができるという。電源は全部で3機あるので、二十四時間、すなわち1日は連続運転させることが可能だという。また、施設内の貯蔵タンクからの補給が可能であれば、一週間以上の連続運転が可能だと説明されている(福島のケースで考えると、このあたりが実際には問題となるはずで、現実にはホースが破れたとか、つなぎ目が変形して入らないとか、タンクにヒビが入って貯蔵タンクは空になったとか、いろいろな問題が起きる可能性はあろう)。毎日新聞の報道でも「一週間程度」という数字は出ているし、世耕経産省大臣のtwitterにも(根拠は薄弱だが)「一週間分は確保している」と書いてある。(追記:毎日新聞は、さきほど非常用電源の継続時間を「10日間」に変更した。)
この文章を書いている最中に、世耕大臣による新たなtweetがあり、「苫東厚真火力発電所に損壊が発見された」ということである。北海道電力による電源の復旧はまだ先になりそうで、こちらはかなり心配である。
泊原発のスペックに関する調査は引き続き行うことにして、とりあえずはここまでわかったことをまとめてみた。
これにより、北海道の岩内(ニセコの近く)に近い場所にある泊原発の電源が喪失となった。福島原発が爆発した時を思い起こさせる嫌な展開である。ただ、現在は非常用のディーゼル発電機が作動し、それを電源として使用済み燃料のための冷却システムを稼働している。
使用済み燃料というのは、使用前の核燃料に比べて、圧倒的な放射能強度を持ち、そこから出てくる崩壊熱はたいていの金属を溶かしてしまうような高温(数千度)を発生するため、冷却する必要があるのだ。日本の主な原発は水冷式を採用している。水は100度(ただし、1気圧の場合。もし台風が近づいているならもう少し低い沸点になるはず)で沸騰してしまうので、水を循環させて常に冷たい水を供給する必要がある。
したがって、電源喪失というのは、使用済み燃料の安全管理の観点からすると、最大の問題であるといえる。もし、非常用電源の燃料が尽きてしまえば、冷却用の水はみるみる沸騰して干上がり、灼熱の放射能物質は遮蔽壁を溶かすことになるだろう。そこから染み出す使用済み燃料の中には、揮発性の放射性物質、例えばヨウ素131とか、セシウム137とか...嫌な名前が再登場することになる。こうなると、付近の放射能汚染が発生する。特にヨウ素131は空気や水(川、海、雨)に溶け込んで、子供達の体に入り込むと、深刻な内部被曝を引き起こし、甲状腺癌の発生リスクが上昇する。また北海道以外に住む人にも影響は発生するだろう。それは、北海道の農産物(牛乳、チーズ、ヨーグルト、牛肉、羊肉、鶏肉、それに野菜など)に対する放射能汚染が広がり、「風評被害」も発生したりして、食生活が混乱する可能性は大いにある。
多くの人が気になるのは、この発電機があと何時間もつのか?そして、北海道電力による電気の復旧は間に合うのか?ということであろう。北海道電力の状況を知ることは、現場の担当者でもはっきりしたことは言えないだろうから、そちらを調べるのは後にして、まずは非常用ディーゼル発電機の稼働限界時間について調べてみることにした。
まだ直接の情報は見つかっていないが、東海原発を管理する「げんでん」(日本原子力発電株式会社)の説明文が見つかったので、ここに引用しておこう。
この文書によると、東海原発の非常用電源一機につき八時間の連続運転が可能であるという。一つの発電機で、東海原発の冷却システムのすべてを作動させることができるという。電源は全部で3機あるので、二十四時間、すなわち1日は連続運転させることが可能だという。また、施設内の貯蔵タンクからの補給が可能であれば、一週間以上の連続運転が可能だと説明されている(福島のケースで考えると、このあたりが実際には問題となるはずで、現実にはホースが破れたとか、つなぎ目が変形して入らないとか、タンクにヒビが入って貯蔵タンクは空になったとか、いろいろな問題が起きる可能性はあろう)。毎日新聞の報道でも「一週間程度」という数字は出ているし、世耕経産省大臣のtwitterにも(根拠は薄弱だが)「一週間分は確保している」と書いてある。(追記:毎日新聞は、さきほど非常用電源の継続時間を「10日間」に変更した。)
この文章を書いている最中に、世耕大臣による新たなtweetがあり、「苫東厚真火力発電所に損壊が発見された」ということである。北海道電力による電源の復旧はまだ先になりそうで、こちらはかなり心配である。
泊原発のスペックに関する調査は引き続き行うことにして、とりあえずはここまでわかったことをまとめてみた。
2018年9月4日火曜日
高尾自然科学博物館の閉館と再開
シムライノデの(唯一の)群生地を東京で発見した渡嘉敷裕氏の所属を調べているうちに、東京都立高尾自然科学博物館のことについて知ることとなった。渡嘉敷氏はこの博物館に所属していたと思われる(博物館の沿革を読むと、どうやら館長ではなかったようだ)。
この博物館は平成16年、すなわち2004年に廃館となっている。理由は東京都の財政難であった。この時期の都知事は誰か調べてみると、またもや登場、石原慎太郎氏である。渡嘉敷氏の研究拠点を奪ったのも、渡嘉敷氏が発見したシムライノデの群生地を破壊するよう指示したのも石原氏だったということだ。調べていて、これにはショックを受けた。
ただ、高尾、多摩の人々の温かい支援を受けて、この博物館は2015年に「Takao 599 museum」として再開したのは、嬉しい限りである。貴重な資料、標本、所蔵品がそのまま移管されたようで、一安心である。一方で、ブラジルの国立博物館は気の毒である。この火事も予算削減が原因で、そのきっかけがオリンピック開催による財政難だというから、石原さんと関係ないわけではないかもしれない。
この博物館は平成16年、すなわち2004年に廃館となっている。理由は東京都の財政難であった。この時期の都知事は誰か調べてみると、またもや登場、石原慎太郎氏である。渡嘉敷氏の研究拠点を奪ったのも、渡嘉敷氏が発見したシムライノデの群生地を破壊するよう指示したのも石原氏だったということだ。調べていて、これにはショックを受けた。
ただ、高尾、多摩の人々の温かい支援を受けて、この博物館は2015年に「Takao 599 museum」として再開したのは、嬉しい限りである。貴重な資料、標本、所蔵品がそのまま移管されたようで、一安心である。一方で、ブラジルの国立博物館は気の毒である。この火事も予算削減が原因で、そのきっかけがオリンピック開催による財政難だというから、石原さんと関係ないわけではないかもしれない。
シムライノデについて(2):発見の経緯
シムライノデについて、もう少し学術的な面を調べてみた。参考にしたのは、この論文である。
芹沢俊介「日本産イノデ類の新種および雑種」植物研究雑誌(1979年)
Shunsuke Serizawa, "New species and hybrids of the Japanese Polystichum polyblepharum group", Journal of Japanese Botany, Vol.54, No.5 (1979)
この論文によると、発見は1965年である。つまり人類がその存在に気づいてから、わずかに半世紀をちょっとだけ上回っただけである。
発見者は志村義雄氏とある。おそらく静岡大学教育学部生物学教室に所属していたお方である。ネットで見つかるシダ類に関する出版物の豊富さから推測するに、日本のシダ研究の第一人者のお一人であったと思う。シムライノデの「シムラ」というのは発見者の名前であった。
シムライノデが最初に見つかった場所は静岡県御殿場市との記述であるが、現在静岡県では「絶滅した」と報告されている。志村氏が発見した場所には10株ほどがあったそうだが、その場所には現在一株も残っていないのだろう。環境省が2000年に発表した「維管束植物レッドリスト」では絶滅危惧IA類(CR)に記録されている。もし今回の伐採で自然生息が消滅するならば、次回の改訂版には「野生絶滅(EW)」に 分類されてしまうのではないだろうか?
志村氏の発見の後、渡嘉敷裕氏(この文献によると、旧「東京都高尾自然科学博物館」の学芸員のお方のようである) によって東京都多摩地域の山間地で群生地が発見された。この群生地というのが今回伐採されてしまった場所だと思われる。つまり、その後の研究/探索にもかかわらず、他の群生地は見つからなかったということだろう(あるいは見つかっても機密にされた可能性が高い)。
発見地 で採取された標本をみると、葉長が70cmにもなるものがあり、大型のシダと思われる。その後、神奈川県と中国浙江省でも発見されたという。この二箇所に現在も生息しているかどうかは不明である。神奈川県の個体の一部は標本にされ、東京大学農学部に所蔵されているそうである。
面白いことに、多摩のこの群生地で、シムライノデによく似たもう一つの新種が1970年に発見されている。これはトウキョウイノデと名付けられた。このシダも今回の伐採で絶滅の危機に瀕しているはずであるが、国立科学博物館の海老原氏の記述にはトウキョウイノデに関しては全く触れられていない。もしかしたら、こちらは後に広範囲に発見されているのかもしれない。
芹沢俊介「日本産イノデ類の新種および雑種」植物研究雑誌(1979年)
Shunsuke Serizawa, "New species and hybrids of the Japanese Polystichum polyblepharum group", Journal of Japanese Botany, Vol.54, No.5 (1979)
この論文によると、発見は1965年である。つまり人類がその存在に気づいてから、わずかに半世紀をちょっとだけ上回っただけである。
発見者は志村義雄氏とある。おそらく静岡大学教育学部生物学教室に所属していたお方である。ネットで見つかるシダ類に関する出版物の豊富さから推測するに、日本のシダ研究の第一人者のお一人であったと思う。シムライノデの「シムラ」というのは発見者の名前であった。
シムライノデが最初に見つかった場所は静岡県御殿場市との記述であるが、現在静岡県では「絶滅した」と報告されている。志村氏が発見した場所には10株ほどがあったそうだが、その場所には現在一株も残っていないのだろう。環境省が2000年に発表した「維管束植物レッドリスト」では絶滅危惧IA類(CR)に記録されている。もし今回の伐採で自然生息が消滅するならば、次回の改訂版には「野生絶滅(EW)」に 分類されてしまうのではないだろうか?
志村氏の発見の後、渡嘉敷裕氏(この文献によると、旧「東京都高尾自然科学博物館」の学芸員のお方のようである) によって東京都多摩地域の山間地で群生地が発見された。この群生地というのが今回伐採されてしまった場所だと思われる。つまり、その後の研究/探索にもかかわらず、他の群生地は見つからなかったということだろう(あるいは見つかっても機密にされた可能性が高い)。
発見地 で採取された標本をみると、葉長が70cmにもなるものがあり、大型のシダと思われる。その後、神奈川県と中国浙江省でも発見されたという。この二箇所に現在も生息しているかどうかは不明である。神奈川県の個体の一部は標本にされ、東京大学農学部に所蔵されているそうである。
面白いことに、多摩のこの群生地で、シムライノデによく似たもう一つの新種が1970年に発見されている。これはトウキョウイノデと名付けられた。このシダも今回の伐採で絶滅の危機に瀕しているはずであるが、国立科学博物館の海老原氏の記述にはトウキョウイノデに関しては全く触れられていない。もしかしたら、こちらは後に広範囲に発見されているのかもしれない。
シムライノデについて:トルメキアの狸の正体
シムライノデについてもう少し調べてみた。
前回の記事で「 国立科学博物館は種の保存を試みていないようだ」と書いたが、それは誤りであった。まずはこの点について訂正しておこうと思う。新聞などの報道には全く触れられていなかったが、よく調べると国立科学博物館の「研究室コラム」というweb pageに記述があった。伐採寸前の数十株がレスキューされたとのことで、ちょっと安心した。保護された株は、筑波実験植物園(筑波大学ではなくて、国立科学博物館に所属)と、東京都植物多様性センター(今回初めて聞いた研究施設だったが、よく調べると調布の神代植物園であった)に待避しているそうである。称賛に値すると思う。
この文書によると、シムライノデに関して研究していたのは、国立科学博物館の植物研究部という部門らしい。また、このコラムを執筆したのは植物研究部の海老原淳博士で、シダ植物の分類学が専門だということである。おそらく、今回のシムライノデ救出作戦の中心人物ではないだろうか?
素晴らしいと思ったのは、シムライノデの自生地の近くに住んでいると思われるアマチュアの研究者(あるいは住民?)の方々が、貴重な森が東京都によって伐採されるという情報をいち早く入手し、それを海老原さんに連絡したことである。これによって、救出が成功したといえる。称賛である。
そして、毎日新聞やその他の報道ではよくわからなかった伐採を実行した東京都の団体の正体であるが、科学博物館の記事によってよくわかった:かつての石原慎太郎東京都知事がその在任中に 突然花粉症を発症した際に、彼が「東京都の杉は全部切ってしまえ!」と命じたあの政策が引き金となっていたのだ。
石原都政で憶えているもの:カラスがゴミを荒らす問題には「カラスの殺処分」、都立大の教授会が気に食わなければ、「古い都立大はお取り潰して、首都大学東京へと、施設と人身刷新」(これは最近、小池現知事により都立大に戻されることが決定したようだ)、そのほか、大赤字を垂れ流して破綻した新東京銀行の設立などなど。強権を発動して無理矢理実行したものの、大失敗したものがすぐに頭をよぎる。うまくいったのは、東京マラソンぐらいか?(いや、もうひとつあった。私が一番石原さんの政策で評価しているのが、ディーゼル車の東京都内走行禁止である。ああいう短絡的だが、実行力のある施策は小池さんには無理だろう)。築地から豊洲への市場移転も、どす黒い問題があることが発覚したのも記憶に新しい。
確かに花粉症に苦しむ人は多く、その症状の直接の引き金になるのは杉花粉である。したがって、杉花粉をなくしてしまえば花粉症が防げると(短絡的な人は)考えたくなるだろう。しかし、杉が名産である紀伊半島や秋田などで花粉症の人が殊更多いという話はあまり聞かない。私が思うに、花粉症というのは大気汚染や飲料水の汚染、さらには添加物を含んだ食品の大量摂取とか、不規則な生活リズムなどによって体が弱り、免疫系統がギリギリまで追い詰められたところへ、最後の一撃として杉花粉がアレルギー症状を発生させるのではないか?産業革命以前の自然環境の復帰や、環境汚染の克服などが優先されるべきであって、こういう諸々の研究成果を待たずに、杉林を一気に切りはらうというやり方は、科学的にはあまりにも幼稚なアプローチに見える。(杉林を伐採したあとの治水治山に関しては、さすがの東京都も考えていたようで、「花粉の少ない杉」の植林を計画していたようで、そこは評価できる。)
石原元都知事の花粉症治療のために、杉の林を皆伐採して花粉の少ない杉へ置換した結果、かけがえのないシムライノデが絶滅したとしたら、歴史家はこのことを「愚行」と書くのか、それとも「善行」と書き残すのであろうか?
前回の記事で「 国立科学博物館は種の保存を試みていないようだ」と書いたが、それは誤りであった。まずはこの点について訂正しておこうと思う。新聞などの報道には全く触れられていなかったが、よく調べると国立科学博物館の「研究室コラム」というweb pageに記述があった。伐採寸前の数十株がレスキューされたとのことで、ちょっと安心した。保護された株は、筑波実験植物園(筑波大学ではなくて、国立科学博物館に所属)と、東京都植物多様性センター(今回初めて聞いた研究施設だったが、よく調べると調布の神代植物園であった)に待避しているそうである。称賛に値すると思う。
この文書によると、シムライノデに関して研究していたのは、国立科学博物館の植物研究部という部門らしい。また、このコラムを執筆したのは植物研究部の海老原淳博士で、シダ植物の分類学が専門だということである。おそらく、今回のシムライノデ救出作戦の中心人物ではないだろうか?
素晴らしいと思ったのは、シムライノデの自生地の近くに住んでいると思われるアマチュアの研究者(あるいは住民?)の方々が、貴重な森が東京都によって伐採されるという情報をいち早く入手し、それを海老原さんに連絡したことである。これによって、救出が成功したといえる。称賛である。
そして、毎日新聞やその他の報道ではよくわからなかった伐採を実行した東京都の団体の正体であるが、科学博物館の記事によってよくわかった:かつての石原慎太郎東京都知事がその在任中に 突然花粉症を発症した際に、彼が「東京都の杉は全部切ってしまえ!」と命じたあの政策が引き金となっていたのだ。
石原都政で憶えているもの:カラスがゴミを荒らす問題には「カラスの殺処分」、都立大の教授会が気に食わなければ、「古い都立大はお取り潰して、首都大学東京へと、施設と人身刷新」(これは最近、小池現知事により都立大に戻されることが決定したようだ)、そのほか、大赤字を垂れ流して破綻した新東京銀行の設立などなど。強権を発動して無理矢理実行したものの、大失敗したものがすぐに頭をよぎる。うまくいったのは、東京マラソンぐらいか?(いや、もうひとつあった。私が一番石原さんの政策で評価しているのが、ディーゼル車の東京都内走行禁止である。ああいう短絡的だが、実行力のある施策は小池さんには無理だろう)。築地から豊洲への市場移転も、どす黒い問題があることが発覚したのも記憶に新しい。
確かに花粉症に苦しむ人は多く、その症状の直接の引き金になるのは杉花粉である。したがって、杉花粉をなくしてしまえば花粉症が防げると(短絡的な人は)考えたくなるだろう。しかし、杉が名産である紀伊半島や秋田などで花粉症の人が殊更多いという話はあまり聞かない。私が思うに、花粉症というのは大気汚染や飲料水の汚染、さらには添加物を含んだ食品の大量摂取とか、不規則な生活リズムなどによって体が弱り、免疫系統がギリギリまで追い詰められたところへ、最後の一撃として杉花粉がアレルギー症状を発生させるのではないか?産業革命以前の自然環境の復帰や、環境汚染の克服などが優先されるべきであって、こういう諸々の研究成果を待たずに、杉林を一気に切りはらうというやり方は、科学的にはあまりにも幼稚なアプローチに見える。(杉林を伐採したあとの治水治山に関しては、さすがの東京都も考えていたようで、「花粉の少ない杉」の植林を計画していたようで、そこは評価できる。)
石原元都知事の花粉症治療のために、杉の林を皆伐採して花粉の少ない杉へ置換した結果、かけがえのないシムライノデが絶滅したとしたら、歴史家はこのことを「愚行」と書くのか、それとも「善行」と書き残すのであろうか?
2018年9月3日月曜日
シムライノデとその生息地の壊滅
シムライノデについての報道(毎日新聞2018.Aug.21) に衝撃を受けた人は結構多いのではないだろうか? 腐海の森を焼き払おうとする一連の「愚行シーン」が宮崎駿の「ナウシカ」に出てくるが、それを思い出させる。
トルメキアのクシャナやペジテのリーダーのように、資金力のあるもの、政治的に力のあるものは、ついつい自分のことを「偉い」と思ってしまいがちで、なにをやっても褒められると考えたくなるものだが、自然科学の「偉さ」は金や実用性だけでは測れないものがある(例えば、「腐海遊び」と称される、ナウシカが独自に解明した腐海の研究など)。研究資金に困窮している科学者が、崇高で貴重な研究をしていることは多いし、「(日常の生活に)役立つ」ことが必ずしも「文化の水準」と同義であるとはいえない(むしろ非常に弱い相関でしかないことが多いのではないか?)ことを知ってもらいたいと切に思う。今回のシムライノデの問題は、異なる集団における「偉さ」の定義が平行線のように噛み合わないことに原因がある。
シムライノデは目立たない、控えめな風貌のシダ植物である。実際に野山で見たことはないし、写真でみたこともほとんどない。山で見かけたって同定はできない。だいたい、この記事が出るまで、その存在についてはまったく知らなかった。
東京の住宅地にはイヌシダという、日本原産の、案外よいシダが生えているのは知っている(wikipediaによれば、分布はユーラシア大陸東部とその沿岸諸島、つまりアジア東部だという)。英国のある造園家は「(東京のガーデナーが)イヌシダを目の敵にして必死に引っこ抜き、その跡地にガーデンセンターで買ってきたポット苗を植えるのは笑止千万だ」と評しているほどヨーロッパ人にはイヌシダはエキゾチックな観葉植物に見えるらしい。信州の山林で見かける大型のシダ、例えばヤマドリゼンマイだったり、クサソテツ(コゴミ)は信州の山なら無数に生えていて、あれをガーデンセンターで買う気はまったく起きないが、通信販売で買うと結構な値段がする。また、ゼンマイやワラビは、英国の森では採り放題である(現地人にあれを食べる風習はない)。
シムライノデは数が少なく珍しい、つまり希少である、というところが最大の問題である。写真でみても、私にはイヌシダと区別はつかないし、ヤマドリゼンマイのように見栄えはしないし、クサソテツやワラビのように食べられるわけでもない。しかし、多摩地方近辺の限られた森にしか育たない、と言われれば採集に行きたくなるし、高値をつけて買いたくもなる。が、その一方で「雑草」にしか思えない人は、草刈り鎌で切り払うだろうし、除草剤を撒き散らして枯らしてしまうのかもしれない。
今回の問題も、多くの報道で「盗掘を恐れるあまりに繁茂地を隠した挙句、無知な人間に切り払われて壊滅状態となってしまった」と解説している。難しい問題だと思った。
英国なら、すかさず採取してKew Gardenで栽培しながら(DNA保存やその他のあらゆる科学的手段を使って)種(しゅ)の保存を試みることだろう。日本の場合には、国立科学博物館の研究員が、シムライノデが生息する「秘密の森」に関していろいろ把握していたらしいが、その森を買い取って研究林にしたり、生育環境について研究を行い、東大や筑波大の実験林で栽培/保護したり、といったことはやっていなかったようだ。
政府は、こういう「科学」に惜しみなく研究費を投入するべきだ。島国である日本には貴重な植物が多く、19世紀からヨーロッパ諸国の「植物狩り(プラントハンティング)」の格好の標的であった。牧野博士も、自分の自宅に野草を集めてきて種の保存と確保の努力に全力を費やしている。ボヤボヤしていると、世界中のみんなに持って行かれた上、自分では絶滅させて「持っていない」なんていう恥ずかしいことにもなりかねない。
トルメキアのクシャナやペジテのリーダーのように、資金力のあるもの、政治的に力のあるものは、ついつい自分のことを「偉い」と思ってしまいがちで、なにをやっても褒められると考えたくなるものだが、自然科学の「偉さ」は金や実用性だけでは測れないものがある(例えば、「腐海遊び」と称される、ナウシカが独自に解明した腐海の研究など)。研究資金に困窮している科学者が、崇高で貴重な研究をしていることは多いし、「(日常の生活に)役立つ」ことが必ずしも「文化の水準」と同義であるとはいえない(むしろ非常に弱い相関でしかないことが多いのではないか?)ことを知ってもらいたいと切に思う。今回のシムライノデの問題は、異なる集団における「偉さ」の定義が平行線のように噛み合わないことに原因がある。
シムライノデは目立たない、控えめな風貌のシダ植物である。実際に野山で見たことはないし、写真でみたこともほとんどない。山で見かけたって同定はできない。だいたい、この記事が出るまで、その存在についてはまったく知らなかった。
東京の住宅地にはイヌシダという、日本原産の、案外よいシダが生えているのは知っている(wikipediaによれば、分布はユーラシア大陸東部とその沿岸諸島、つまりアジア東部だという)。英国のある造園家は「(東京のガーデナーが)イヌシダを目の敵にして必死に引っこ抜き、その跡地にガーデンセンターで買ってきたポット苗を植えるのは笑止千万だ」と評しているほどヨーロッパ人にはイヌシダはエキゾチックな観葉植物に見えるらしい。信州の山林で見かける大型のシダ、例えばヤマドリゼンマイだったり、クサソテツ(コゴミ)は信州の山なら無数に生えていて、あれをガーデンセンターで買う気はまったく起きないが、通信販売で買うと結構な値段がする。また、ゼンマイやワラビは、英国の森では採り放題である(現地人にあれを食べる風習はない)。
シムライノデは数が少なく珍しい、つまり希少である、というところが最大の問題である。写真でみても、私にはイヌシダと区別はつかないし、ヤマドリゼンマイのように見栄えはしないし、クサソテツやワラビのように食べられるわけでもない。しかし、多摩地方近辺の限られた森にしか育たない、と言われれば採集に行きたくなるし、高値をつけて買いたくもなる。が、その一方で「雑草」にしか思えない人は、草刈り鎌で切り払うだろうし、除草剤を撒き散らして枯らしてしまうのかもしれない。
今回の問題も、多くの報道で「盗掘を恐れるあまりに繁茂地を隠した挙句、無知な人間に切り払われて壊滅状態となってしまった」と解説している。難しい問題だと思った。
英国なら、すかさず採取してKew Gardenで栽培しながら(DNA保存やその他のあらゆる科学的手段を使って)種(しゅ)の保存を試みることだろう。日本の場合には、国立科学博物館の研究員が、シムライノデが生息する「秘密の森」に関していろいろ把握していたらしいが、その森を買い取って研究林にしたり、生育環境について研究を行い、東大や筑波大の実験林で栽培/保護したり、といったことはやっていなかったようだ。
政府は、こういう「科学」に惜しみなく研究費を投入するべきだ。島国である日本には貴重な植物が多く、19世紀からヨーロッパ諸国の「植物狩り(プラントハンティング)」の格好の標的であった。牧野博士も、自分の自宅に野草を集めてきて種の保存と確保の努力に全力を費やしている。ボヤボヤしていると、世界中のみんなに持って行かれた上、自分では絶滅させて「持っていない」なんていう恥ずかしいことにもなりかねない。
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