知らなかったのだが、とある週刊誌の記者が7月上旬に軽井沢で空間線量の「測定」をしたという。科学者でない彼らの測定を信じるかどうかは読者の判断に委ねるが、数字を見た限りかなり高めの数字が出ていると感じる。(実際より高い数字が書いてある、という意味。)
測定方法についての記述がないのでなんともいえないが、想像するにこういうことだろうと思う:安めのガイガーカウンタを購入し(例えばJB4020など)、おそらく30秒モードなどに設定して、数分から数十分測定を行ったのだろう。そして、表示された値の中で、最高値のみを「測定値」として記録すると、ああいう値(”スーパーホットスポット"とか呼んでるらしい....)になると思う。
確かに、私の測定でも、碓氷峠で0.39μSv/hという値が10分の内に2度出たが、同時に0.12μSv/hと0.16μSv/hも1回づつ出た。これらを平均すると(2*0.39 + 0.12+0.16) / 4 = 0.265μSv/hとなる。(これでも高いくらい。信頼できる平均値を求めるなら測定回数を増やしていって収束する回数を見つけるべき。)放射線現象の特質により、安いガイガーカウンターの瞬間測定値は乱高下する傾向がある(リンク先の図は碓氷峠見晴台での測定結果)。だから、瞬間値はあまり信頼せず、長時間平均を採用すべきだと思う。
例えば、最高時速100キロ以上で走ることのできるチーターは、一時間後に100キロ離れた町まで走って買い物に行けるかというと、そうはならない。彼らが全力で走れるのはせいぜい140mくらい、つまり5秒程度しか全速力で走れないのである。一時間後にチーターの位置を測定してみたら、出発点から200m程度しか離れていないところでへばっていた、なんてことになるのである。平均時速にして、わずかに0.2km/h。人間より「遅い」ことになる。いうなれば、チーターから200mも離れていれば、私たちの方が足が「速い」わけで、「走って逃げ切れる」のである。(自分で試してみようとはちょっと思わないが....)この例からわかるのは、今気にすべきことは半減期30年のセシウム137による長期間の被曝線量だから、ポツポツと稀にしか来ない放射線の瞬間線量がちょっと高めだとしても、その長時間平均値が低ければ問題ない、ということだ。(チーターには食われない、ということ。)
[追記:1個の放射線が飛んできてDNAを部分的に破壊するとする。生物はある程度時間をかければガンマ線一個程度で傷付いたDNAなら修復できるだろう。この生物が放射線によって健康被害を受けるかどうかは、DNAを修復するまでに次のガンマ線が何回飛んでくるか、さらに修復までに細胞分裂が何回起きるかによって大雑把に決まるだろう。たとえば30秒以内に、誕生、成長、そして死を迎えるような短寿命の、人間サイズの生物を仮に考えよう。またこの生物のDNAの修復時間1分とする。つまり、この生物は一生損傷したDNAを修復できないとする。このような生物にとって、瞬間の放射線量が0.5μSv/hのような比較的高いエネルギーをもったガンマ線が一発あたるのは致命的だろう。損傷したDNAを使って次から次へと細胞を作ってしまうからだ。一方、寿命が10年間の、似たような大きさの生物を考えよう。とはいえ、幼少期は細胞分裂が盛んなので、成長した後の状態、つまり細胞分裂が落ち着いた状態を考える。この生物も1分でDNAを修復できるので、ガンマ線の年間平均エネルギーが低ければ、30秒間に一回高いガンマ線を浴びたとしても、次の60秒間に弱いガンマ線しか来なければ、この間にDNAを修復してしまうだろう。むろん、成人しているので細胞分裂のスピードは遅く、修復してから細胞分裂が起きる。このような状況では、稀に起きる高エネルギーのガンマ線被曝は健康にあまり大きな影響を与えないだろう。喩えでいうと、波打ち際の砂に描いた漫画の大作が、波に部分的に消される様子を考えればよい。大きな波が来ても、次の大波が来るまでに、漫画を修復できれば、この漫画を読むことはできる。実際テレビ画面がこれと全く同じで、瞬間的に映像は作られすぐに消えてしまう。が、人間の脳が映像の消滅を認識する前に、再度映像を点灯しているだけだ。したがって、よく見るとテレビ画面は点滅している。人間の意識の反応時間より短い間隔で変な映像を途中に入れたりしても、それを見抜くことはできない。]
私の測定の場合20回測定の平均値を採用しているが、一応、ある地点で、20分で40回測定した場合と、10分で20回測定した場合の平均値を比較し、大差ないこと(ほぼ収束していること)を確かめてある。
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