佐久平の真ん中には千曲川が流れている。新潟に入るとこの川は信濃川と名前を変えるが、信州人にとって日本一長い川は「千曲川」だろう。(実際「信濃川」だけの長さを測ったら、利根川の方がずっと長い川になるはず。)その千曲川の東側には、関東山地につながる佐久山地があり、ジュラ紀をはじめとする古い地質が広がる。一方、西側は八ヶ岳などの火山から噴出した溶岩が主で、どちらかというと新しい地質を持つ。
今までの放射線量の測定は、千曲川の東(川東)ばかりだったので、そろそろ西側を調査しようと思い立つ。群馬の県境までは間違いなく汚染は進んでおり、境から僅かに信州側に入ったところも汚染がある程度進んでいる(軽井沢、内山荒船など)ことが、いままでの調査でわかった。また、県境を越えても少し西へ進めば汚染の程度は軽微になり、平尾富士や志賀の谷までくると佐久の山々の線量はかなり低くなる。では、これで佐久平より西は大丈夫かといえば、そうとは限らない。セシウムクラウドが高度を保って西へ飛んでいけば、佐久平を通り越して、標高1000mあたりで蓼科や八ヶ岳など「川西」の山々に吹き付けるからだ。
そこで、まずは佐久平の西の端にある低い山々の調査に出ることにした。(1)蓼科へと続く里山の1つで「うぐいすの森」と呼ばれる別荘地、および(2)御牧原の斜面、そして(3)望月へ入るときに越える瓜生坂峠で測定を行った。全ての地点の標高は800m前後で、若干1000mを切る。予想としては、汚染はないはずである。
(1)うぐいすの森
黒沢明の映画に「隠し砦の三悪人」というのがあったが、まさにここは隠し砦ならぬ隠れ別荘地。なんの変哲もない村を通り抜けると、軽井沢のようによく整備された別荘地が現れた。別荘の住民しか入らないから、自然がよく残っていてとても静か。秋を満喫できる。ログハウスが多い気がした。買い物は佐久平のショッピングセンターでできるから、蓼科にこもって町から遠ざかってしまったり、軽井沢のように渋滞にはまったりせず、快適な暮らしができそうで、心引かれるものがあった。
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(2)瓜生坂
中山道の宿の一つの浅科塩名田宿を越えると、次第に道は登りとなって峠道となる。それが瓜生坂だ。この峠を越えると望月宿となる。さらに登って笠取峠を越えると和田宿があり、そのまま和田峠を抜ければ諏訪にでるが、僅かに北に路をとって美ヶ原や松本にも抜けることもできる。このあたりは、江戸時代、碓氷峠に次ぐ難所だったと思う。
現在の瓜生坂には小さなトンネルがあるが、こちらは昭和初期の古くて暗くて細い「時代もの」。おそらく平成になってからだろうが、隣の山にもっと大きなトンネルが掘られ、メインの通行は現在そちらに行ってしまっていて、瓜生坂の古いトンネルは今ではとても静かだ(というか、むしろちょっと怖いかも)。
観測は、瓜生坂トンネルを抜けて望月に入ったところ、斜面を削って造成したグランドに面する雑木林で行った。曇り空の薄暗い中、小雨がぱらついてきたがなんとか測定中には本降りにならずに済んだ。ここは、JB4020とRD1503の値はよく一致し、前者が0.11、後者が0.10μSv/hという結果となった。ここも問題無い。
(3)御牧原の斜面
ここは、佐久平にできた古湖のうち、もっとも古いものの湖底だといわれている。佐久平の西の端に広がる大きな台地で、千曲川によって削られた急坂に囲まれている。
御牧原の斜面。この丘を登ったところに平ら大地が広がっているとは ちょっとこの景色からは思えない。斜面の向こうに見えるのは浅間連峰。 手前の、道が走り水田が広がる平らな部分は、佐久平の西端にあたる場所。 |
この台地には川がないので、溜め池が無数にあり、雑木林がよく残り、そしてなにより登ってしまえば平らなので景色がよい。浅間、蓼科がよく見えるし、千曲を眼下に見下ろすこともできる。付近には温泉もたくさん湧いている。アリスの不思議な国に迷い込んだような錯覚を持つかもしれない。今回は、御牧原の台地に登りきらず、その斜面の森で測ることにした。セシウムクラウドが斜面に吹き付けてないか、チェックしたいからだ。
御牧原に登る途中の森で測る |
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