2012年1月29日日曜日

信州佐久が強い放射能を持つ焼却灰の埋め立て処理をしている件

信毎の7月の記事にもあるように、佐久市と小諸市の境にあるフジコーポレーションという廃棄物の最終処分場には、現在、8000Bq/kg以下の放射性物質を含む焼却灰や煤塵が埋め立てられている。その出所は、群馬県太田市を筆頭とする関東や山梨の諸県だ。(ちなみに、汚染のひどい船橋太田市から受け入れているのは大問題だ。)

この放射能物質の採集埋め立て廃棄に関しては、佐久市/小諸市の住民全員に対しての説明がなかった。(県や市は、住民のごくごく一部、主に商工関係者や集落の区長のみには、こっそり説明をしたらしいが。)昨日の県による説明会では、市民の不安や不満が爆発したようで、短い質疑応答時間では怒号や野次の飛び交う状況となり、時間は大幅にずれこんだという。その怒りの多くは、「知らないうちに持ち込まれた」という驚きに現在はあるようだ。しかし、忘れてはいけないのは、佐久地域が、関東地方に便利なゴミ捨て場として選ばれているという点だ。オリンピックだとかいう名目で、美しい妙義/佐久山地の環境を破壊して大慌てで作った高速道路が、今度は、関東から放射能物質を運び込む「コンビニエンス道路」として使われている。

佐久市の平野部や小諸市は、軽井沢町や佐久市の群馬県境部(内山峠や荒船などの佐久山地)と違って、セシウム汚染の程度は非常に少ない。ちなみに、ガイガーカウンターで測定し、「0.05μSv/h」が観測された地点で土壌を採取し、ベクミルのLB2045で測定したスペクトルを見てみよう。

まずは、千葉県市原市の土壌。ここで、Gamma RAEII RというCsIシンチレーターで地上一メートルの空間線量を測った人がいる。その値は0.05μSv/h。Gamma RAEのシンチレータは揺らぎが少なく、絶対値も結構いい値が出せる機器なので、このまま補正無しの値と受け取っていいだろう。この程度の線量なら「低いぞ、安心」となるが、そうは問屋が下ろさないことが、LB2045のスペクトルを見るとわかる。セシウムの3つの「きれいな」ピーク(セシウム三兄弟)が立ち上がり、明らかなセシウム汚染が見て取れる。(汚染の程度は左上の612Bq/kgという数字が参考になるが、この値も大きな誤差を含むことは覚えておかねばならない。)
市原市の土壌をLB2405で測定した結果。セシウム三兄弟のピークが
綺麗に浮き上がっている。
前にも登場した佐久市の千曲川近くの農地で採集した土壌に、再登場願おう。この場所の地表線量は、JB4020で測定した値に補正をかけると0.05μSv/hだった。おおよそ、上の市原と同じような値だ。しかし、そのスペクトルは明らかに市原のものとは異なる。
佐久市の土壌をLB2045で測定した結果。セシウム三兄弟の
ピークは目立たない。
スペクトルには弱いピーク構造は見えるが、それは明らかなセシウム三兄弟のピークとはなっていない。この土地のセシウム汚染は軽微だと思われる。

現在、長野県が行っていることは、千葉県、群馬県を含む「非常にセシウム汚染の強い場所」から、「非常にセシウム汚染の弱い場所」に、セシウム137とセシウム134を大量に運び込んで、汚染を広げているという愚行だ。(法には触れていないと、県や市は主張するけれど、「法」が「科学」に劣ることは、このスペクトルを見れば明らかだ。なんなら、佐久市が得意な住民投票をやってみればよい。前回の住民投票の結果を見ればあきらかだが、役人や政治家と違って、この街の市民は賢いから、「法」に従うか、「科学」に従うかはきちんと判断できると思う。)

汚染のある地域で排出される高濃度の汚染廃棄物は、その地域内に停めるべきだ。その地域の人間の少ない場所に移動するのがよいだろう。エントロピーは増大するというのが、熱力学の第二法則だ。無理矢理エネルギーをつぎ込んで、局所的にエントロピーを減少させても、大域的に見ればエントロピーはさらに上昇してしまう。汚い部屋を綺麗にすると、疲れて老化が早まるようなもんだ。だから、エントロピーの増加は、極力さけなければならない。

長野県や、廃棄物処理会社は、きちんと測定して、放射能漏れはない、といっているが、securitytokyo.comなみの測定をやってそういう結論を出しているのかどうか?まさか、アロカの簡易型線量計を持ち出して、「0.05μSv/hですから安全でーす」などと、間抜けなことをやっていはいないと思いたい。最低でも、ゲルマで土壌/水の測定は行い、測定時間は24時間は最低確保してもらいたいものだ。

反対する人々は、団結して資金を集め、少なくともLB2045を手に入れ、24時間測定をやり始めれば、1Bq/kg程度の測定は可能になる。手元にある測定器で測定を定期的に行って、自分たちの生活を守っていくべきだろう。自分で測定するのが一番正確だ!




2 件のコメント:

enniethebear さんのコメント...

いつも有益な情報をご発信いただきありがとうございます。

<焼却灰の受け入れについて>

焼却灰や137Csや134Csなどで汚染された廃棄物の処分場所(保管場所)に関しては、
 1)当該汚染物質の現在位置付近
 2)放射性物質が生成された場所
 3)除染が困難で利用できない場所
 4)受け入れてくれる場所
などが考えられると思います。

いずれかを選択をするには、自然科学的視点と社会科学的視点からの検討が必要かと思います。 純自然科学的には、1)~3)が選択されるべきと思われます。 しかし、現実的には社会科学的視点を無視することは出来ないと考えます。 営利上の理由が選択に影響することは受け入れられません。

私が在住する京浜地区は、低線量の廃棄物を受け入れる方向に進んでおります。 私はこれに反対しません。 社会的連帯の有用性と科学的リスクの比較衡量結果が理由の一部ですが、原発の危険性(特にジルカロイの危険性)を知りながら原子力村の住人達の主張を分析することなく、福島から供給された電力の恩恵を享受してきたことへの自責の念もまた理由の一部です。 この受け入れにより被害が生じるとすれば、この被害を主に受けるのは私の世代ではないのですが・・・。

原発事故に係る国(日本国政府)の法的責任に関しては、私の知る限りでは充分には議論されていません。 私見では、法人たる国は東電とともに「共同不法行為」をなした者であり、その責めに任ずべきことは明らかです。

kuzzila さんのコメント...

ご意見ありがとうございます。

この問題については、みんなでオープンに議論していく必要がありますね。

川崎の土壌を自分で検査してみて、改めて関東の汚染のひどさと広さを認識しました。信州や東海地方は、関西よりは汚染はあるものの、そのレベルは関東よりずっと落ちます。レベル3のところから、レベル2やレベル1の場所に、汚染物質を運ぶのはあまり賢いやり方ではないと僕は思います。ある意味、レベル1は国宝だと思いますので、新たな原発事故でレベル3にされる前に、なんとか手を打たないといけないと思います。

神奈川は残念ながらレベル3になると思います。ただ、レベル4、レベル5の場所もありますから、そういう場所から受け入れる方向に拡大解釈されないよう、京浜地区の方々は気をつけないといけないと思います。まちがっても、福島原発の炉心を横浜や川崎でで処理するなんてことは許してはいけないと思います。