今日の東京新聞で読んだ記事。(ネットで探すと同じ系列の新聞に同じ記事があった。)
外国人に、広島や長崎に人が今は住んでいるようだけど大丈夫だったの?、とか、いつ放射能が消えたのか?とか質問されることがある。実際、自分も子供の時そう思った。「意外に早く放射能の影響は消えてなくなるのだろう」と勝手に考えてしまったが、実際にはそうではないことがこの記事で初めてわかった。
長崎に落とされたプルトニウム型原子爆弾のせいで、内部被曝してしまった人々の健康調査が、なぜか1989年に中止されてしまった「事件」についての報道だ。1989年といえば、原爆投下の1945年から数えて44年分のデータに相当する。
調査は長崎の爆心地から東に2〜4キロほど離れた西山地区にて行われていた。この地区は、山によって爆心地から遮られているので、熱線や爆風といった原爆の力学的な破壊の影響はまったく受けていない。しかし、「黒い雨」だけが降ったという。ということは、純粋に放射能物質の拡散による「内部被曝」の影響だけを調査できる場所だったといえる。
この調査によると、1945−47年には全住民の白血球が増加(一時的だったそうだが)。1969年には、周辺の地域で黒い雨など原爆の影響を受けていない地域に比べ、二倍ほどの放射性セシウムが体内から検出される。原爆投下から、なんと24年後のことだ!
1987年には、西山地区の人々が甲状腺癌などの癌にかかる確率が、普通の人たち(たとえば東京の人たち)と比べて4倍以上に達していた。
セシウム137は半減期30年だから、30年経てば安心か、というとそうではないことがこれでハッキリわかる。(同じようにヨウ素131も半減期が8日だから、一週間も経てば安心だ、とは言えないはずだ。半減期というのは、1/2になるまでの時間だということを忘れてはならない。)むしろ、20年後とか30年後あたりから健康被害は始まるのだと思う。そして、50年後あたりで問題が顕在化してくることが、この長崎の調査によって示されているように思う。
日米共同で設置された研究所の分析では、西山地区の住民が44年間に浴びた線量の合計は、100μSvだったと推定している。つまり、44年で0.1ミリシーベルト。研究所は「これは十分低い値だから問題ないレベルだ」として調査をやめてしまうわけだが、逆にこれだけ少なくても遺伝子は破壊され、発ガンリスクが4倍も高くなってしまうというのだから驚きだ!
実は研究所に務めていた研究者自身は、内部被曝の調査続行を要望していたが、政府の命令で強引に打ち切られたようだ。明らかに、日米両政府にとって、得られた科学データが都合が悪くなったからであろう。
このデータは、はっきり言って、20年後、40年後の福島の姿を予言してくれるだけに、1989年で調査が終わってしまったのは残念至極だし、政府にとっては思うつぼだろう。でも、今から再開しても遅くはあるまい。
2 件のコメント:
セシウムだけを問題にしてよいのでしょうか:α線、β線、γ線それぞれの計測を
福島第1原発からは、31もの核種がまき散らされたとされています。
セシウムなどγ線の放射線量については、官民ともに数値が世の中に流れています。
ところが、次のような問題も提起されています。
1 α線が危険です
ある専門家によれば、今回福島の事故はチェルノブイリとは全然違い、ご自身が日本各地の放射能をインスペクタープラスで測定してまわったところ、α線が危険だといいます。どうやらプルトニウムがエアゾール状になって拡散した可能性が高いとのこと。関西の人たちも被爆しているとのことです。
日本で安全な場所はほとんどなく、放射線値が低いのは数か所のみとのことです。
2 α線が想定よりもはるかに多い例をインターネットで少なからず見ることができます
① 岐阜県郡上にてα線核種が計測されています。(行政ではなく個人の計測による)
β、γ線を測るもので0.15μsv / h 、50cpm(cpmは1分間に何個放射性物質をカウントしたか、上は50回)
α線も測れるもので計測したら200cpm
(1分間に200個カウント)
つまりβ線とγ線を足したものが1分間に50
α線+β線+γ線=200
単純計算でα線だけで150!!
α線だけでβとγを足したものの3倍です!!
α線核種といえば代表的なものがプルトニウムです!
② その他実測例
神奈川県平塚市 α線85cpm β線0cpm γ線46cpm :α線が全体の65%を占めている。
東京都世田谷区 α線173 β線833 γ線174:α線が全体の15%を占めている。雨樋を計測。2011.8
東京都千代田区麹町:α線が全体の半分程度を占めている:計測の動画を感覚的に解釈した。
3 α線、β線、γ線それぞれの計測を
放射能の専門家は、福島原発の燃料を構成する比率からして、セシウム汚染値を2倍すれば、 総量というか総濃度を推定できるというようなことを言っています。
ところが、上記の岐阜郡上の例は、この推定が適切でないことを示す例かもしれません。
これらもまた、この推定が適切でないことを示す例なのだろうと思います。
そして、これらのように、γ線が全体に占める割合が、想定よりもはるかに小さいならば、現在測定されて発表されている放射線値よりも、実際の放射線は、はるかに高濃度ということになるのではないでしょうか。
セシウム又はγ線のみに着目するのでなく、これからは、大至急、α線、β線及びγ線も、ぞれぞれ、計測して、データを拡散する必要があると思います。
α線は、天然に存在するラジウムやラドンからも出てきます。おそらく、岐阜県のものはそちらの由来ではないかと思います。まずは、測定方法や測定機器などを詳しくお調べになる必要があるでしょう。
また、α線は飛程距離が非常に短いので、飲み込まない限りは問題にならない、というのが物理学者の一般理解です。つまり、α線は親となる放射能物質から数センチ以上は離れることができないので、通常は測定にはかからないはずです。
また、測定の意義ですが、私の場合、外部被曝の総量を測定するのが目的ではありません。あくまで、汚染物質の代表である放射性セシウムを測定するのが目的です。これにより、福島からの放射性プルームがどのように日本を飛んでいったか知りたいのです。予想以上に広範囲に汚染されることを示したいと思って測定してきましたが、その目的はほとんど達成されたと思います。
β線に関しては、ニュートリノという別のタイプの放射線とエネルギーを分ちあうため、CPMからSvに変換する際の誤差を大きくします。「安めのガイガーカウンター」はセシウム137のガンマ線でエネルギー較正しているものが多いので、β線は遮蔽しておかないと正確な値になりません。そんな訳で、β線は遮蔽してます。
現在、海中のストロンチウム90が問題となっていますが、これはベータ線しか出さないので、その検出が困難です。また、プルトニウム239は崩壊系列が複雑なので、簡単な機械や、データ分析では測定は難しいでしょう。一般市民が「正確に」測れるのはセシウム137、134から出るγ線くらいだと割り切って、その相対比率から、他の核種の汚染具合は想像するしかないと私は思っています。なにかいいアイデアがないかな、と思案中です。
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