2011年11月8日火曜日

スペクトル分解による観察の仕方

天体の研究をやるならスペクトル分解は欠かせない。以前いろいろ試してみたが、やり方が今ひとつわからず、カメラで回折格子の箱を覗き込むのは肉体的に非常に苦しかった。(手は二本しかないのに、回折格子の箱とカメラを持った上に、ピント合わせと3つの仕事を同時にやらなければいけない!)

あれから色々模索してみたが、結局は専用のシステムを作る(買う)必要があるのかな、とあきらめていた。ところが、昨日偶然見つけたこのサイトに素晴らしい方法が紹介されていた!

回折格子のシートを、レンズに直接貼るのはためらわれるので、レンズカバーに貼付けてみた。静電気のせいか、非常によく密着する。これで、いろんな光源を覗いてみると、見える見える!ただ、電球の形のまま光が分解するので、いわゆるスペクトルの形状にならない。なるほど、だからスリットを通して光源の形を細長くした上で分解していたんだ!とようやく当たり前のことに気付く。(自分ではそれなりに大きな発見だった...)

最初は切りやすいからという理由だけで、小さな紙に切れ込みを入れて観測してみたが、紙の外から漏れてくる光と干渉して像がごちゃごちゃになる。なるほど、だからニュートンは部屋を閉め切ったんだ!と、新たな発見。今回は、光源が太陽ではないので、電球を覆い隠す程度の大きな、でも薄めの雑誌(市町村の情報紙がちょうどよい)に薄く切れ込みを入れて覗いてみると....おーっ、となる。
雑誌の切り込みで作った、暖色蛍光灯のスペクトル。
0次(左の原色)と1次(右のスペクトル)の
干渉縞を同時に測定。
切れ込みの形が嫌な場合は、画像処理ソフト(iPhotoなど)で、中央部を細く切り出してしまえばよい。

回折格子は、複数の干渉模様を生じる。中央の原色(スペクトル分解してないもの)が0次、その次が1次、その向こうが2次,...となっていくが、高次のパターンの明度は小さくなっていくので、撮影が難しくなる。むろん露出時間を長くすれば写ると思う。高次のスペクトルは屈折角度が大きいので、スペクトルが広がる。したがって、スペクトルの詳細な構造が研究できる。太陽の吸収線(フラウンホーファー線)などはこうやって、高次のスペクトルを長時間露光して記録したものだったのだ!!!

上の蛍光灯の2次のスペクトルを撮ってみた。ここまでなら肉眼でまだ見えるが、随分暗くなっているのがわかる。
左の明るいスペクトルは1次。右の散らばったスペクトルが2次。
面白いことに、2次のスペクトルで消えてしまった成分がある。これは、1次のスペクトルでみた時ぼやけているように見える成分だが、おそらく蛍光物質からの放出された成分。蛍光は散乱光だから強度が落ちるはずで、2次のスペクトルでは暗くなったものと思われる。長時間露光したら、浮かび上がるんだろう。とはいえ、2次のスペクトルを観察すれば、水銀自体の輝線スペクトルのみが観測できる訳で、これはこれで面白い。

次は、前回も撮影したLED電球のスペクトル。これも今回のやり方でやると、随分綺麗に、そして何よりも「楽に」とれる。
LED電球のスペクトル
青とそれ以外のところに、暗い断裂帯があるのがわかる。(強度スペクトルを描くのはどうやればよいのだろう?やっぱり、写真データの分析だろうか?)

星のスペクトル分解を撮影してみたかったのだが、あいにく今夜は曇り空。そこで、街灯を撮影してみた。
街灯のスペクトル。真ん中の点状の街灯のスペクトルは
写真の欄外。右の細長い蛍光灯のスペクトルのみが写っている。
半年程前に突如登場した眩しい街灯。政府の省エネ対策とやらで取り付けられたLED街灯であることがよくわかる。(青とそれ以外のところに、暗帯がある。)光源が遠くなると、一次のスペクトルの回折角度は結構大きくなるようだ。ちなみに2次のスペクトルは肉眼には見えなかった。

さて、次は天体のスペクトル分解にチャレンジしてみよう。


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